鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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―眼鏡とMr.Rが別の部屋で対峙していた頃、克哉は朝食の準備を
終えて、静かにもう一人の自分が来る事を待っていた。
「…あいつ、来るの遅いな。窓から、様子を見てくるって言ってさっき…
この部屋を出て行ったけれど…。何かあったのかな…?」
洋風の大きなテーブルの上で頬杖をついていきながら克哉は
大きな溜息を突いていった。
この暑い時期に、部屋中のカーテンを閉め切っているせいか…エアコンを
起動させていない処はどこも暑かった。
机の上には二人分の朝食が並んでいる。
まだ作ったばかりなので、トーストも目玉焼きもホカホカと湯気を立ち上らせていた。
(呼びに行った方が良いのかな…?)
ふと、そんな考えが過ぎったが…どうにか打ち消していく。
克哉自身も、ここ数日でこの屋敷の身辺が酷く慌しい事は気づいていた。
三日前から、窓から視線を感じて、もう一人の自分は…カーテンを閉めて、外部に
簡単に姿を晒さないように指示を出していた。
とは言っても、人がいる家を…いないように振る舞うのは限界がある。
現代の生活では、照明、水道、ガス、電気の類を使わないで生活するのは
かなりの不便が伴うし、どれだけ巧妙に隠しても…電気メーターを見れば一発で
屋敷に今、人がいるかどうかは判ってしまうものだ。
自分よりもそういった細かいことに見通しが利いてしまう分だけ、『俺』が
どれだけ神経をピリピリさせながら過ごしていたかを良く知っていた。
その事を思い出して、深く溜息を突いていく。
「…本当に、迷惑ばかり…掛けて、いるよな…」
ギュっと唇を噛み締めながら、苦い顔を浮かべていった。
二人でいる時は、出来るだけ心配を掛けたくないから…笑顔を浮かべるように
努めていたせいで、ドっと疲れが出て来た。
もう一人の自分への強い想いと、申し訳ないという気持ちが克哉の中でない交ぜに
なっている。
室内が静かなせいだろう。壁に掛けてある立派な時計の秒針の音が酷く大きく
耳に響いてくる。
その音と、こちらの鼓動の音が妙に重なって…緊張していった。
「………」
ふと、携帯を開いていく。
そして…何通も、何通も書き掛けたメールを読み返していった。
その宛先は「五十嵐 太一」。
相手がこちらの番号を今でも消していないように、克哉の方も…番号やメルアドは
アドレス帳に残ったままであった。
其処には、彼に伝えたいと思った自分の言葉のカケラが無数に打ち込まれている。
けれど、それは綺麗に纏まらず…未送信のまま、未送信フォルダに残されていた。
眼鏡は、警戒の為に屋敷の中や外を巡回したり…銃の訓練の為に1~2時間程、
克哉と別々の行動を取る事が多かった。
その間に書き綴られた、言いたい言葉。
胸の中に詰まっていた何かを、こういう形で吐き出すことによって…克哉の
心は、日々…少しずつだが整理されていったのだ。
(今でも、太一の事を…オレは、愛しているんだな…)
自分で書いたメールの文面を読み返して、しみじみとそう思った。
『書く』という事は、自分の想いがそのまま…文面に表れる。
それで…ぼんやりとだが、克哉は自分の本心が見えた気がした。
そう、自分は太一を愛している。
記憶を思い出して数日が経った今、その事実を彼は静かに認めていた。
けれど、それ以上に…克哉の中では、もう一人の自分の存在が大きくなって
しまっていたのだ。
「…二人共、良く…こんなオレを本気で愛してくれているよな…」
太一も眼鏡も、自分に対して真剣な想いを寄せてくれている。
その事実が嬉しいと思う反面、酷く克哉にとっては重かった。
どちらかの手を取らなければならないのなら…もう一人の自分が良い。
そう考えて、あの日…電話応対したけれど、記憶が鮮明になると同時に…
本当にそれで良いのか、と迷う心が生まれて来た。
どちらを選んでも、自分も選ばなかった方も深く傷つけていく。
だが、真剣な気持ちを持ってくれているからこそ…中途半端なことを
したくなかった。
同時に、ここ数日…酷く後悔していたのだ。
胸の痛みに躍らされて、あんな言い方をしてしまった自分自身を。
だからここ数日、単独行動をしている間は…少しでも太一に、こちらの
真意を伝えたくて何度も何度も、こうやってメールを打ち続けていた。
試行錯誤な毎日。
けれど、歪なものになってしまったとは言え…真剣に愛した人間に、
何か、を伝えたいと克哉は思っていた。
真実を傷をつけるならば、せめて…その想いを。
自分を庇う為に、目を逸らすのではなく…本気で向き合って、太一に
気持ちを伝えたかった。
―けれどそれを、どうやって伝えれば良いのか克哉は迷い続けていた
人を傷つけない為に、人と当たり障りなくしか接してこなかった。
本気で本音をぶつけあったり、ケンカなどした経験がなかった。
心を殺して、人に合わせる生き方をずっと続けていた克哉には…それは
ひどく難しいことで。
迷いながら、それでも15分程…必死にまた、メールを打ち込んでいった。
―それはまた、完成するには遠い想いのカケラ。
だが、一言一言…紡いでいくことで、自分の中で確かに組みあがっていく。
自分は確かに、もう一人の自分を選んだ。
それによって、太一を傷つけた。
けれど…だからこそ、自分は言わなければいけない事があると思った。
伝えなくてはいけない想いを、今度こそ向き合って告げなければならないと
覚悟を決めていた。
真実とは、常に人を傷つける要素を孕む。
本当の事から目を逸らし、傷つかない生き方をすれば…楽には
なるだろう。
けれど、其処に本当のものなど生まれはしない。
道に迷いながら、間違いながら…克哉は、自分が取るべき道を
発見し始めていく。
其れが、彼の心の中で完成して、一つの結晶となるのは…もう、
間近の事であった―
終えて、静かにもう一人の自分が来る事を待っていた。
「…あいつ、来るの遅いな。窓から、様子を見てくるって言ってさっき…
この部屋を出て行ったけれど…。何かあったのかな…?」
洋風の大きなテーブルの上で頬杖をついていきながら克哉は
大きな溜息を突いていった。
この暑い時期に、部屋中のカーテンを閉め切っているせいか…エアコンを
起動させていない処はどこも暑かった。
机の上には二人分の朝食が並んでいる。
まだ作ったばかりなので、トーストも目玉焼きもホカホカと湯気を立ち上らせていた。
(呼びに行った方が良いのかな…?)
ふと、そんな考えが過ぎったが…どうにか打ち消していく。
克哉自身も、ここ数日でこの屋敷の身辺が酷く慌しい事は気づいていた。
三日前から、窓から視線を感じて、もう一人の自分は…カーテンを閉めて、外部に
簡単に姿を晒さないように指示を出していた。
とは言っても、人がいる家を…いないように振る舞うのは限界がある。
現代の生活では、照明、水道、ガス、電気の類を使わないで生活するのは
かなりの不便が伴うし、どれだけ巧妙に隠しても…電気メーターを見れば一発で
屋敷に今、人がいるかどうかは判ってしまうものだ。
自分よりもそういった細かいことに見通しが利いてしまう分だけ、『俺』が
どれだけ神経をピリピリさせながら過ごしていたかを良く知っていた。
その事を思い出して、深く溜息を突いていく。
「…本当に、迷惑ばかり…掛けて、いるよな…」
ギュっと唇を噛み締めながら、苦い顔を浮かべていった。
二人でいる時は、出来るだけ心配を掛けたくないから…笑顔を浮かべるように
努めていたせいで、ドっと疲れが出て来た。
もう一人の自分への強い想いと、申し訳ないという気持ちが克哉の中でない交ぜに
なっている。
室内が静かなせいだろう。壁に掛けてある立派な時計の秒針の音が酷く大きく
耳に響いてくる。
その音と、こちらの鼓動の音が妙に重なって…緊張していった。
「………」
ふと、携帯を開いていく。
そして…何通も、何通も書き掛けたメールを読み返していった。
その宛先は「五十嵐 太一」。
相手がこちらの番号を今でも消していないように、克哉の方も…番号やメルアドは
アドレス帳に残ったままであった。
其処には、彼に伝えたいと思った自分の言葉のカケラが無数に打ち込まれている。
けれど、それは綺麗に纏まらず…未送信のまま、未送信フォルダに残されていた。
眼鏡は、警戒の為に屋敷の中や外を巡回したり…銃の訓練の為に1~2時間程、
克哉と別々の行動を取る事が多かった。
その間に書き綴られた、言いたい言葉。
胸の中に詰まっていた何かを、こういう形で吐き出すことによって…克哉の
心は、日々…少しずつだが整理されていったのだ。
(今でも、太一の事を…オレは、愛しているんだな…)
自分で書いたメールの文面を読み返して、しみじみとそう思った。
『書く』という事は、自分の想いがそのまま…文面に表れる。
それで…ぼんやりとだが、克哉は自分の本心が見えた気がした。
そう、自分は太一を愛している。
記憶を思い出して数日が経った今、その事実を彼は静かに認めていた。
けれど、それ以上に…克哉の中では、もう一人の自分の存在が大きくなって
しまっていたのだ。
「…二人共、良く…こんなオレを本気で愛してくれているよな…」
太一も眼鏡も、自分に対して真剣な想いを寄せてくれている。
その事実が嬉しいと思う反面、酷く克哉にとっては重かった。
どちらかの手を取らなければならないのなら…もう一人の自分が良い。
そう考えて、あの日…電話応対したけれど、記憶が鮮明になると同時に…
本当にそれで良いのか、と迷う心が生まれて来た。
どちらを選んでも、自分も選ばなかった方も深く傷つけていく。
だが、真剣な気持ちを持ってくれているからこそ…中途半端なことを
したくなかった。
同時に、ここ数日…酷く後悔していたのだ。
胸の痛みに躍らされて、あんな言い方をしてしまった自分自身を。
だからここ数日、単独行動をしている間は…少しでも太一に、こちらの
真意を伝えたくて何度も何度も、こうやってメールを打ち続けていた。
試行錯誤な毎日。
けれど、歪なものになってしまったとは言え…真剣に愛した人間に、
何か、を伝えたいと克哉は思っていた。
真実を傷をつけるならば、せめて…その想いを。
自分を庇う為に、目を逸らすのではなく…本気で向き合って、太一に
気持ちを伝えたかった。
―けれどそれを、どうやって伝えれば良いのか克哉は迷い続けていた
人を傷つけない為に、人と当たり障りなくしか接してこなかった。
本気で本音をぶつけあったり、ケンカなどした経験がなかった。
心を殺して、人に合わせる生き方をずっと続けていた克哉には…それは
ひどく難しいことで。
迷いながら、それでも15分程…必死にまた、メールを打ち込んでいった。
―それはまた、完成するには遠い想いのカケラ。
だが、一言一言…紡いでいくことで、自分の中で確かに組みあがっていく。
自分は確かに、もう一人の自分を選んだ。
それによって、太一を傷つけた。
けれど…だからこそ、自分は言わなければいけない事があると思った。
伝えなくてはいけない想いを、今度こそ向き合って告げなければならないと
覚悟を決めていた。
真実とは、常に人を傷つける要素を孕む。
本当の事から目を逸らし、傷つかない生き方をすれば…楽には
なるだろう。
けれど、其処に本当のものなど生まれはしない。
道に迷いながら、間違いながら…克哉は、自分が取るべき道を
発見し始めていく。
其れが、彼の心の中で完成して、一つの結晶となるのは…もう、
間近の事であった―
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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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