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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 克哉は暫く落ち着かない様子で、もう一人の自分と茶髪の
若い男性とのやりとりを見守っていた。
すぐ目の前にいるのにお互いに別の人間と話している状態なので
声を掛ける事が出来なかった。
 
(…どうしよう)
 
 こんなに近くにいるのにこのまま、あいつが他の人間と
消えてしまうのを見送るのだけは嫌だった。
 自分がモタモタしている間に別の人間と夜を過ごしたかも
知れないという事実はショックだったけれど、すぐ側にいるのに
黙って指を加えているなどしたくなかった。
 
(…どう思われても良い。ユキさんにキチンと断りを入れよう…)
 
 いきなり割り込んだら茶髪の若い男にも怪訝そうな目で
見られてしまうかも知れなかった。
 けれど人目を気にして何もしないで見過ごしたくない。
やっとそう決心してユキの方を向き直っていくと…そこでようやく
克哉は、彼もまた浮かない顔をしている事に気付いた。
 さっきまでのこちらをからかって楽しそうにしていた時とは
別人のような、切なくて寂しそうな視線を…茶髪の若い男性に注いでいた。
 
「…あの、もしかしてあちらの若い男性はユキさんの
知り合いの方ですか…?」
 
「…あぁ、そうだよ。結構頻繁にやりとりをしている相手かな…」
 
 静かな声で、彼は頷いて肯定していった。
 やはり、と思った。
 自分が『俺』が別の人間と一緒にいるのを穏やかな気持ちで
みれないように…この男性もまた、あの茶髪の若い男が別の人間と
話している事実に気が気じゃないのだろう。

(…あぁ、きっとこの人は今…オレと似たような気分を味わっているんだな…)

 そう思うと、さっき際どい発言でからかわれたり唐突に頬にキスをされた
時に感じた抵抗感が、一気に薄らいで…代わりに親近感を覚えていった。
 
「お好きな方、なんですか…」

「ん…そうかな。リョウ、と言ってね。この間…告白して振られた相手」

「えっ…?」

 予想外の答えが戻って来て、克哉は一瞬言葉を失う。
 けれど目の前の男性は何でもない事のように笑って、あまり気持ちが
乱れた様子を見せずに口にしていく。

「…そんなに気を遣わなくていいよ。告白って言っても…『俺はお前が
他の男と寝て欲しくない。出来れば真剣に付き合ってやってくれないか』
…みたいな、そういう感じでそこまで重いものじゃなかったし…」

「けれど、その…好きだから…そう伝えた訳ですよね?」

 自分だってそうだ。
 眼鏡が他の男を抱いたら、穏やかじゃいられない。
 今、こうしてリョウ、という男性と話しているだけでもこんなに心が乱されて
仕方ないのに…ホテルに消えたり、そんな真似をされたら…と想像する
だけで胸が痛くなった。
 いつの間にか、二人のやりとりよりも…ユキの言葉の方が今は
気になった。何となく相手が傷ついているような、そんな気がしたから。
 けれど目の前の男性は、首を振って静かに告げた。

「…あぁ、俺はあいつに執着しているけれど…あいつは俺一人に絞るほど
まだ気持ちが行っていない。それだけの事だよ。
 だから…まあ、それなら告白はなかったことにしようとすぐに撤回したし。
あまり気にする事はないよ。…こういう街では、一夜のセックスは遊びと
同じだしね。その遊びにすぐに本気になるのは…ルール違反だし」

「それ、でも…」

「…そういうお前さんも、あちらの顔が良く似ている男性に執着しているんじゃ
ないのかい? さっきから凄く落ち着かない顔しているし…」

 相手に再び指摘されて、克哉は少し動揺していく。
 けれどここで取り繕っても仕方ないとすぐに思い直して正直に伝えていく。

「…はい、そうです。さっきも言った通りオレが探している相手というのは
あいつの事で…貴方の言う通り、執着しています。きっと今…他の人間と
消えられたりしたら、穏やかではいられないぐらいは…」

 初対面の人間に、こんな事を言うのは少し躊躇いがあった。
 しかし曖昧なままでいたら、きっと今夜ももう一人の自分を見失ってしまう。
 そう思ったら覚悟するしかなかった。
 すると相手は…一瞬だけ穏やかな瞳を浮かべていくと…。

「そうか、同士だな…。今、この時だけは…」

 と言って穏やかな手でこちらの肩をポンポンと叩いた。
 その仕草だけは性的なものを一切含まない、暖かいものだったので克哉も
身を硬くしないで受け入れていく。

「そう、ですね…」

 隣で二人の会話が続いていく。
 それが時々耳に入っている度に克哉は落ち着かなくなったりハラハラしたけれど…
もう少しだけそのまま、目の前の男性と会話を続けていく。

 人の縁は一期一会。
 今夜は縁があったとしても、これきりの出会いになるかも知れない。
 それなら、もう五分か十分ぐらいなら…この人と話していても良いかも
知れないと思い、克哉はそっと相手を見遣っていった。

―あいつの元に行く前に、今…似たような痛みを抱えて、そしてこの店に案内
してくれたこの男性に一言ぐらいは礼を伝えたいと、そう思ったから…


 

 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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