鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※3月23日より再開しました。現在の連載物のメインは
この話になります。
克克で、歓楽街を舞台にしたお話です。
良ければ読んでやって下さいませ。
夜街遊戯(克克) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17 18
―ようやく待ち焦がれていたものを与えられて、意識の全てがその
快感に集中していった
「あっ…あぁぁぁ!!」
焦らされ、高まった肉体にとってはその強烈な感覚は一種の暴力にも
等しかった。
足をあられもなく広げられながら、深々と相手のペニスに最奥まで
串刺しにされてしまう。
克哉は大声を上げていきながら、懸命に相手の欲望を受け入れていく。
この街に最初に来た時も、たった今まで…背後から攻められ続けて…相手の
顔が見えない状況だった。
だが、この瞬間…二人は向き合った状態のまま身体を繋げていた。
大きく足を開かされて、相手の体重がしっかりと掛けられていて…克哉にとっては
やや苦しい体制だったが…眼鏡の顔が見える安心感の方が強かった。
お互いに、大きく目を見開きながら…見つめ合い続ける。
―お前のその言葉は、本心か…?
そう耳元で、囁かれたことは克哉にとっては衝撃だった。
どうせこの時間は…相手にとってプレイの一環に過ぎないというのなら、
恐らくこちらの本気も、戯れで流されるだろう。
半ばそれを覚悟した上で…けれど一度ぐらいは相手にダメだと承知の上で
この想いを告げてみるのも一興だろう。
そんな想いで告げた『本心』に、相手がそんな反応をするなんて思っても
みなかった。
「はっ…はぁ…ぁ…はぁ!」
乱暴に腰を突き入れ続けられる。
狭い内部は荒々しく、もう一人の自分のペニスによって蹂躙されていた。
相手が身体を揺すり上げる度に、グチャヌチャ…と音が響き続けていた。
お互いに、信じられないという想いを瞳に宿しあいながら…見つめ合う。
相手の本心を探り出そうと、その真意を見出そうと必死になるが…強烈な
快感に頭が蕩けかけて、何もかもがどうでも良くなりかける。
けれど瞳で問いかける…もう一人の自分の眼差しは怜悧で厳しくて。
曖昧なままでは許してくれそうになかった。
だから、必死の想いで訴えかけていく。
「やっ…こん、な…状態で、答え…られない…よっ!」
今の、眼鏡の一言はいわば…克哉にとっては思いがけない呼び水に
等しかった。
流されると思っていた演技した上での、告白。
それに…相手が、反応を示してくれた時に…直感的に思ったのだ。
今…伝えなくては、いけないのだと…。
もう…激しい攻めに、演技しようなんて意識なんてとっくの昔に吹き飛んで
どうでも良くなってしまっている。
―お互いの目線が、火花を散らす勢いでぶつかり合う
その瞬間…相手の激しい腰使いが止んでいって…お互いに荒い
呼吸を整え始めていった。
克哉はその瞬間、もう一人の自分の瞳に…強烈な感情の色を垣間見た。
「…お前が、あのままじゃ答えられないっていうから…止めてやったぞ。
さあ…答えろ。さっきのお前の言葉は…何だったんだ…?」
顎をしっかりと捕まえられて、しっかりと顔を固定された状態で
問い質されていく。
いつの間にか…先程までのこちらをからかっているようなそんな態度が
払拭されてしまっていた。
「…お前が、その気にさせてみろって…言ったんだろ…」
「あぁ、確かに言った。だが…あれは遊びの上のものにしては…少々
熱がこもり過ぎじゃなかったか…?」
ここで一瞬、克哉は迷った。
あれはあくまで…迫真の演技だったと言い張るか、本当のことを言うか
かなり葛藤した。
どう返答するか…言葉に窮していく。
(…本当の事を、言うべきなのか…? あの好きだ、という言葉だけは…
まぎれもなくオレの本心だっていう事を…?)
けれど、相手にとって…自分とのセックスは遊びに過ぎないのならば。
プレイの一部に過ぎないと…そう想うなら、真剣な気持ちを訴えたところで
空しいものが残るだけだ。
そう考えて…一瞬、演技だったと言いそうになった。けれど…。
「…本心、だよ…」
けれど自尊心を守ろうという気持ちよりも…本音が、ポロリと自然と
零れてしまっていた。
色んな感情が溢れて来てグチャグチャだった。
快楽ではなく…気持ちが昂ぶり過ぎて、瞳から涙が滲み始める。
胸に切ない思いが満ちていく。
「オレは…お前の事が、好き…なんだよ…!」
泣きながら、気づけば…訴えかけてしまっていた。
一度溢れてしまったら、もう止められなかった。
その想いで…ここまで彼を追いかけて来た。
どうしても会いたいと思ったし、勇気を絞ってここまで来たのだ。
その果てに…ただの遊び相手としか、セックスの相手程度にしか見られていない
現状はあまりに悲しくて、切なくて。
それでも…嫌われたくない一心で、相手の流儀に合わせようとした。
けれど…もうダメなのだ。
(オレは…お前に、これ以上…単なる遊び相手としか扱われないことに…
もう、耐えられないよ…!)
自分は好き、なのだ。
本気で身も心も欲しいと望んでしまっている。
なのに…その相手に、セックスの相手程度にしか思われない現実が痛かった。
一度自覚したら…もう、抑えきれなかった。
嫌われてしまうかも知れない。呆れられてしまうかも知れない。
全身全霊を掛けて、抑え続けていた本心が溢れて…克哉の意思に反して
暴走してしまう。
「だから…もう、遊びは嫌だぁぁぁー!!!」
相手の首元に両腕を伸ばして、しがみつきながら…克哉はその本心を
絶叫しながら訴えていった。
お前の、本気が欲しい。真剣な気持ちが欲しい。
胸の奥から溢れるのは、そんな真実。
泣きながら、相手の唇に噛みつくようなキスを落としていく。
…克哉の激情に、眼鏡は…驚きを隠せなかったようだった。
茫然となりながら…克哉の叫びを、激しい口づけを受けていき…そして…。
「判った…」
そう短くだけ告げて、眼鏡は再び…荒々しい律動を開始していった。
「あっ…!!」
突然、前触れもなく…こちらのもっとも感じる部位を抉るように抽送を開始
されてしまって、克哉はビクリ! と大きく全身を跳ねさせていく。
だがそれでも…眼鏡は一切、容赦する様子を見せなかった。
瞬く間に呼吸すら満足に出来なくなるぐらいに、身体が追い詰められてしまう。
「やっ…も、やだ…! 遊びなら…こんな、事は…もうっ…!」
克哉は身を捩って、必死になって訴えかけていく。
叫んで、自分でもようやく…胸に潜んでいた本心を知った。
その直後だからこそ…もう、戯れならば…この夜の街で過ごす自分たちの
時間の全てが相手にとっては遊戯に過ぎないのならば…もういっそ
抱かないで欲しかった。
「オレに、本気じゃないなら…もう、抱かないで…くれよ…!」
何度も逃れようと、克哉は必死になってもがいていく。
その間に激しい腰使いは、一旦和らぐ形になった。
深く身体は繋がっているのに、心が通い合っている実感はまだ
二人は感じられていなかった。
ジタバタと暴れる克哉宥める為に、懸命にもう一人の自分は…
手を伸ばし続けていた。
気づけば…お互いの指を絡ませ合うように、手が繋がれていた。
「…お前は、本当に…鈍い、な…。少しは、落ち着いて…考えたら、
どうなんだ…」
「な、にが…だよ…」
手を深く繋がれた瞬間、克哉の抵抗は弱まっていく。
その時、克哉は思いがけないものを見た。
こちらを見下ろす…もう一人の自分の眼差しが、呆れた色をにじませながらも
とても優しかったことを…。
「この流れでも、まだ…俺がお前を抱いている…その事実が…
答えだと、判らないのか…?」
「えっ…」
「遊びなら、抱くなとお前が言ったんだろうが…それでも、お前は…
判らない、のか…?」
「…っ!」
その言葉に、絶句して…反論の言葉を失ってしまう。
代わりに…見る見る内に克哉の顔は真紅に染まっていった。
それはあまりに遠まわし過ぎて、不器用過ぎて…判りづらいものだった。
けれど…その一言でようやく気付く。
相手もまた…戯れの気持ちだけで、こちらを抱いていた訳ではないという
その事実を―
「ずる、い…よ…」
克哉の声は知らず、震えてしまう。
一旦は治まりかけた涙が、再び目元から滲み始める。
「オレは…お前に、はっきりと…好きって…そう、伝えたのに…どうして、
お前は…そんなに、判りづらい形で、しか…言って、くれない…んだよ…」
ポロポロポロ…と透明な涙が流れつづける。
もう快楽とか、激情で…顔はクシャクシャだった。
お世辞にも綺麗だとか、可愛いとか言えない表情。
けれど…剥き出しの想いを伝えている克哉のその顔は、眼鏡の心を
強烈に揺さぶっていた。
「たった…一言で、良いから…好きだと…言って、くれよ…」
―その一言だけでも、構わないから
これだけ、自分は彼を好きなのだ。
だからどうか…この時間を戯れにしないで欲しい。
自分だけが好きなのではなく、相手も同じように想ってくれているのだと…
求めてくれている実感を、自分は…欲しくて堪らなかったのだ。
子供のように、剥き出しの想いをぶつけてくる。
今までの人生で…体裁も何もかもを放り棄てて、こんな本音を誰かに
伝えたことなど…克哉にとっては初めての経験だった。
暫く、沈黙が落ちていく。
無言の時間が流れる間、克哉の心臓はずっとバクバクと激しく脈動を
続けていた。
先程まではお互いにあんなに…食い入るように見つめ合っていたというのに
今では本気で恥ずかしい上に…相手に呆れられたんじゃ、という不安でまともに
顔を見ることが出来ない。
目をぎゅうっと瞑っていきながら…相手の返答を待ち続けていくと…。
「…まったく、お前は…本当に手間が掛かる…奴だな…」
そう呟いた眼鏡の口調は、少しだけ予想より柔らかいものだった。
「えっ…?」
そして克哉が呆けている隙に、もう一人の自分の顔が寄せられていく。
あ、と思った時には遅かった。
克哉の唇はしっかりと眼鏡の唇で塞がれてしまっていて…。
―好きだ
と…待ち望んで止まなかった一言が、ようやく…彼から伝えられた。
その瞬間、嬉しくて仕方なくて。
胸の中から…何か温かいものがジワリと溢れて来て止まらなかった。
その瞬間…克哉は、紆余曲折の末に…やっと得難いものを手に入れられたような
気持ちになっていった。
「凄く…嬉しい…よ…ありが、とう…『俺』…」
「…そうか。なら…俺を全力で、これから…感じろ…」
「うん…」
克哉は、相手をしっかりと内部に納めた状態で…泣きそうな顔で、
笑みを浮かべていった。
気づけば、先程着せられた衣類も…相手が纏っていたスーツも全てが
取り払って、ベッドの上で身体を重ね合っていた。
改めて両者とも全裸になっていくと…それから律動を開始されていく。
何度も途中で止められてしまっているせいで、再開されれば瞬く間に…
お互い熱くなって、今度こそ言葉を交わし合う余裕など失くしていってしまう。
その一言を聞いたら、衣類も虚飾も…全てを無くしてしまいたくなったから。
克哉が至福の顔を浮かべていくと…もう一人の自分の表情も随分と穏やかな
ものになっていく。
こんなに優しい顔など、今まで見たことなかった。
(…『俺』って…こんな顔も、出来たんだな…)
トロリ、と淫蕩な表情を浮かべながら克哉は…相手のその表情に
見蕩れていった。
好きだ、という想いが溢れていく。
止まる事を知らず、自分の胸の中で広がり続けている。
やっと、自分は…見つけることが出来たのだと…克哉は思った。
―誘惑が多いこの街は、沢山の戯れの恋で満ちている
傷つけあわない為のルール
温もりだけを求める為の流儀
心を伴わないようにすることで、相手が他の相手を選んでも
目の前から去っても…恨みに思わないように心がける
そういった条件の元で刹那の恋を求める夜街
ここに迷い込んだから、克哉は…自分との事は彼にとって遊びに
過ぎないのだと絶望すら感じた。
けれど…そう、最初は眼鏡にとって…克哉との事は戯れだった。
だが克哉の中で気持ちが育っていく過程で、同じ想いは眼鏡の中にも
育っていたのだ。
しかし、それが真剣なものだと先に自覚したのは…克哉の方が先だったと
それだけの話だったのだ。
そして…開き直りが入っていたとは言え、克哉は本心を口にした。
其処でようやく…眼鏡の心にあった虚飾を取り払えたのだ。
相手に拒絶されるかも知れない。
嫌われてしまうかも知れない。
そんな恐怖心が湧いて、己の心を欺いて…意地を張って相手に好きだと
伝えられないことは誰にだってあるだろう。
けれど本当に欲しいものは、勇気を出して真実を伝えなければ…得る事など
出来ないのだ。
戯れの恋でも、その中で本気の想いを宿して…それをぶつければそれが
真剣な恋愛に発展する可能性だってあるのだ。
人の心は移ろいやすく、変化しやすい。
なら…真実の気持ちを伝えれば、それが本当の愛になる事だって…勇気を
出して向き合う事さえできれば…可能性は、あるのだ…。
「好き、だよ…『俺』…」
克哉は、何度も何度も…やっと言えるようになった本心を伝えながら
全身で相手を受け止めていく。
一度、開き直って正直になれば…もう怖いものなど、何もなかった。
そして待ち望んでいた言葉を、相手も返してくれる。
「俺、もだ…」
短い一言。されどずっと克哉が欲しかった相槌。
嬉しかった、そのまま死んでも悔いがないぐらいに満たされていく。
そうして、快楽で頭の中が真っ白になる。
息が詰まって、そのまま苦しいぐらいの強烈な悦楽。
それを相手と共有していきながら…。
「んぁー!!」
相手の腕の中にしっかりと包みこまれていきながら…一際高く克哉は啼いていき、
そうして…まどろみの中に意識を緒としていったのだった―
この話になります。
克克で、歓楽街を舞台にしたお話です。
良ければ読んでやって下さいませ。
夜街遊戯(克克) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17 18
―ようやく待ち焦がれていたものを与えられて、意識の全てがその
快感に集中していった
「あっ…あぁぁぁ!!」
焦らされ、高まった肉体にとってはその強烈な感覚は一種の暴力にも
等しかった。
足をあられもなく広げられながら、深々と相手のペニスに最奥まで
串刺しにされてしまう。
克哉は大声を上げていきながら、懸命に相手の欲望を受け入れていく。
この街に最初に来た時も、たった今まで…背後から攻められ続けて…相手の
顔が見えない状況だった。
だが、この瞬間…二人は向き合った状態のまま身体を繋げていた。
大きく足を開かされて、相手の体重がしっかりと掛けられていて…克哉にとっては
やや苦しい体制だったが…眼鏡の顔が見える安心感の方が強かった。
お互いに、大きく目を見開きながら…見つめ合い続ける。
―お前のその言葉は、本心か…?
そう耳元で、囁かれたことは克哉にとっては衝撃だった。
どうせこの時間は…相手にとってプレイの一環に過ぎないというのなら、
恐らくこちらの本気も、戯れで流されるだろう。
半ばそれを覚悟した上で…けれど一度ぐらいは相手にダメだと承知の上で
この想いを告げてみるのも一興だろう。
そんな想いで告げた『本心』に、相手がそんな反応をするなんて思っても
みなかった。
「はっ…はぁ…ぁ…はぁ!」
乱暴に腰を突き入れ続けられる。
狭い内部は荒々しく、もう一人の自分のペニスによって蹂躙されていた。
相手が身体を揺すり上げる度に、グチャヌチャ…と音が響き続けていた。
お互いに、信じられないという想いを瞳に宿しあいながら…見つめ合う。
相手の本心を探り出そうと、その真意を見出そうと必死になるが…強烈な
快感に頭が蕩けかけて、何もかもがどうでも良くなりかける。
けれど瞳で問いかける…もう一人の自分の眼差しは怜悧で厳しくて。
曖昧なままでは許してくれそうになかった。
だから、必死の想いで訴えかけていく。
「やっ…こん、な…状態で、答え…られない…よっ!」
今の、眼鏡の一言はいわば…克哉にとっては思いがけない呼び水に
等しかった。
流されると思っていた演技した上での、告白。
それに…相手が、反応を示してくれた時に…直感的に思ったのだ。
今…伝えなくては、いけないのだと…。
もう…激しい攻めに、演技しようなんて意識なんてとっくの昔に吹き飛んで
どうでも良くなってしまっている。
―お互いの目線が、火花を散らす勢いでぶつかり合う
その瞬間…相手の激しい腰使いが止んでいって…お互いに荒い
呼吸を整え始めていった。
克哉はその瞬間、もう一人の自分の瞳に…強烈な感情の色を垣間見た。
「…お前が、あのままじゃ答えられないっていうから…止めてやったぞ。
さあ…答えろ。さっきのお前の言葉は…何だったんだ…?」
顎をしっかりと捕まえられて、しっかりと顔を固定された状態で
問い質されていく。
いつの間にか…先程までのこちらをからかっているようなそんな態度が
払拭されてしまっていた。
「…お前が、その気にさせてみろって…言ったんだろ…」
「あぁ、確かに言った。だが…あれは遊びの上のものにしては…少々
熱がこもり過ぎじゃなかったか…?」
ここで一瞬、克哉は迷った。
あれはあくまで…迫真の演技だったと言い張るか、本当のことを言うか
かなり葛藤した。
どう返答するか…言葉に窮していく。
(…本当の事を、言うべきなのか…? あの好きだ、という言葉だけは…
まぎれもなくオレの本心だっていう事を…?)
けれど、相手にとって…自分とのセックスは遊びに過ぎないのならば。
プレイの一部に過ぎないと…そう想うなら、真剣な気持ちを訴えたところで
空しいものが残るだけだ。
そう考えて…一瞬、演技だったと言いそうになった。けれど…。
「…本心、だよ…」
けれど自尊心を守ろうという気持ちよりも…本音が、ポロリと自然と
零れてしまっていた。
色んな感情が溢れて来てグチャグチャだった。
快楽ではなく…気持ちが昂ぶり過ぎて、瞳から涙が滲み始める。
胸に切ない思いが満ちていく。
「オレは…お前の事が、好き…なんだよ…!」
泣きながら、気づけば…訴えかけてしまっていた。
一度溢れてしまったら、もう止められなかった。
その想いで…ここまで彼を追いかけて来た。
どうしても会いたいと思ったし、勇気を絞ってここまで来たのだ。
その果てに…ただの遊び相手としか、セックスの相手程度にしか見られていない
現状はあまりに悲しくて、切なくて。
それでも…嫌われたくない一心で、相手の流儀に合わせようとした。
けれど…もうダメなのだ。
(オレは…お前に、これ以上…単なる遊び相手としか扱われないことに…
もう、耐えられないよ…!)
自分は好き、なのだ。
本気で身も心も欲しいと望んでしまっている。
なのに…その相手に、セックスの相手程度にしか思われない現実が痛かった。
一度自覚したら…もう、抑えきれなかった。
嫌われてしまうかも知れない。呆れられてしまうかも知れない。
全身全霊を掛けて、抑え続けていた本心が溢れて…克哉の意思に反して
暴走してしまう。
「だから…もう、遊びは嫌だぁぁぁー!!!」
相手の首元に両腕を伸ばして、しがみつきながら…克哉はその本心を
絶叫しながら訴えていった。
お前の、本気が欲しい。真剣な気持ちが欲しい。
胸の奥から溢れるのは、そんな真実。
泣きながら、相手の唇に噛みつくようなキスを落としていく。
…克哉の激情に、眼鏡は…驚きを隠せなかったようだった。
茫然となりながら…克哉の叫びを、激しい口づけを受けていき…そして…。
「判った…」
そう短くだけ告げて、眼鏡は再び…荒々しい律動を開始していった。
「あっ…!!」
突然、前触れもなく…こちらのもっとも感じる部位を抉るように抽送を開始
されてしまって、克哉はビクリ! と大きく全身を跳ねさせていく。
だがそれでも…眼鏡は一切、容赦する様子を見せなかった。
瞬く間に呼吸すら満足に出来なくなるぐらいに、身体が追い詰められてしまう。
「やっ…も、やだ…! 遊びなら…こんな、事は…もうっ…!」
克哉は身を捩って、必死になって訴えかけていく。
叫んで、自分でもようやく…胸に潜んでいた本心を知った。
その直後だからこそ…もう、戯れならば…この夜の街で過ごす自分たちの
時間の全てが相手にとっては遊戯に過ぎないのならば…もういっそ
抱かないで欲しかった。
「オレに、本気じゃないなら…もう、抱かないで…くれよ…!」
何度も逃れようと、克哉は必死になってもがいていく。
その間に激しい腰使いは、一旦和らぐ形になった。
深く身体は繋がっているのに、心が通い合っている実感はまだ
二人は感じられていなかった。
ジタバタと暴れる克哉宥める為に、懸命にもう一人の自分は…
手を伸ばし続けていた。
気づけば…お互いの指を絡ませ合うように、手が繋がれていた。
「…お前は、本当に…鈍い、な…。少しは、落ち着いて…考えたら、
どうなんだ…」
「な、にが…だよ…」
手を深く繋がれた瞬間、克哉の抵抗は弱まっていく。
その時、克哉は思いがけないものを見た。
こちらを見下ろす…もう一人の自分の眼差しが、呆れた色をにじませながらも
とても優しかったことを…。
「この流れでも、まだ…俺がお前を抱いている…その事実が…
答えだと、判らないのか…?」
「えっ…」
「遊びなら、抱くなとお前が言ったんだろうが…それでも、お前は…
判らない、のか…?」
「…っ!」
その言葉に、絶句して…反論の言葉を失ってしまう。
代わりに…見る見る内に克哉の顔は真紅に染まっていった。
それはあまりに遠まわし過ぎて、不器用過ぎて…判りづらいものだった。
けれど…その一言でようやく気付く。
相手もまた…戯れの気持ちだけで、こちらを抱いていた訳ではないという
その事実を―
「ずる、い…よ…」
克哉の声は知らず、震えてしまう。
一旦は治まりかけた涙が、再び目元から滲み始める。
「オレは…お前に、はっきりと…好きって…そう、伝えたのに…どうして、
お前は…そんなに、判りづらい形で、しか…言って、くれない…んだよ…」
ポロポロポロ…と透明な涙が流れつづける。
もう快楽とか、激情で…顔はクシャクシャだった。
お世辞にも綺麗だとか、可愛いとか言えない表情。
けれど…剥き出しの想いを伝えている克哉のその顔は、眼鏡の心を
強烈に揺さぶっていた。
「たった…一言で、良いから…好きだと…言って、くれよ…」
―その一言だけでも、構わないから
これだけ、自分は彼を好きなのだ。
だからどうか…この時間を戯れにしないで欲しい。
自分だけが好きなのではなく、相手も同じように想ってくれているのだと…
求めてくれている実感を、自分は…欲しくて堪らなかったのだ。
子供のように、剥き出しの想いをぶつけてくる。
今までの人生で…体裁も何もかもを放り棄てて、こんな本音を誰かに
伝えたことなど…克哉にとっては初めての経験だった。
暫く、沈黙が落ちていく。
無言の時間が流れる間、克哉の心臓はずっとバクバクと激しく脈動を
続けていた。
先程まではお互いにあんなに…食い入るように見つめ合っていたというのに
今では本気で恥ずかしい上に…相手に呆れられたんじゃ、という不安でまともに
顔を見ることが出来ない。
目をぎゅうっと瞑っていきながら…相手の返答を待ち続けていくと…。
「…まったく、お前は…本当に手間が掛かる…奴だな…」
そう呟いた眼鏡の口調は、少しだけ予想より柔らかいものだった。
「えっ…?」
そして克哉が呆けている隙に、もう一人の自分の顔が寄せられていく。
あ、と思った時には遅かった。
克哉の唇はしっかりと眼鏡の唇で塞がれてしまっていて…。
―好きだ
と…待ち望んで止まなかった一言が、ようやく…彼から伝えられた。
その瞬間、嬉しくて仕方なくて。
胸の中から…何か温かいものがジワリと溢れて来て止まらなかった。
その瞬間…克哉は、紆余曲折の末に…やっと得難いものを手に入れられたような
気持ちになっていった。
「凄く…嬉しい…よ…ありが、とう…『俺』…」
「…そうか。なら…俺を全力で、これから…感じろ…」
「うん…」
克哉は、相手をしっかりと内部に納めた状態で…泣きそうな顔で、
笑みを浮かべていった。
気づけば、先程着せられた衣類も…相手が纏っていたスーツも全てが
取り払って、ベッドの上で身体を重ね合っていた。
改めて両者とも全裸になっていくと…それから律動を開始されていく。
何度も途中で止められてしまっているせいで、再開されれば瞬く間に…
お互い熱くなって、今度こそ言葉を交わし合う余裕など失くしていってしまう。
その一言を聞いたら、衣類も虚飾も…全てを無くしてしまいたくなったから。
克哉が至福の顔を浮かべていくと…もう一人の自分の表情も随分と穏やかな
ものになっていく。
こんなに優しい顔など、今まで見たことなかった。
(…『俺』って…こんな顔も、出来たんだな…)
トロリ、と淫蕩な表情を浮かべながら克哉は…相手のその表情に
見蕩れていった。
好きだ、という想いが溢れていく。
止まる事を知らず、自分の胸の中で広がり続けている。
やっと、自分は…見つけることが出来たのだと…克哉は思った。
―誘惑が多いこの街は、沢山の戯れの恋で満ちている
傷つけあわない為のルール
温もりだけを求める為の流儀
心を伴わないようにすることで、相手が他の相手を選んでも
目の前から去っても…恨みに思わないように心がける
そういった条件の元で刹那の恋を求める夜街
ここに迷い込んだから、克哉は…自分との事は彼にとって遊びに
過ぎないのだと絶望すら感じた。
けれど…そう、最初は眼鏡にとって…克哉との事は戯れだった。
だが克哉の中で気持ちが育っていく過程で、同じ想いは眼鏡の中にも
育っていたのだ。
しかし、それが真剣なものだと先に自覚したのは…克哉の方が先だったと
それだけの話だったのだ。
そして…開き直りが入っていたとは言え、克哉は本心を口にした。
其処でようやく…眼鏡の心にあった虚飾を取り払えたのだ。
相手に拒絶されるかも知れない。
嫌われてしまうかも知れない。
そんな恐怖心が湧いて、己の心を欺いて…意地を張って相手に好きだと
伝えられないことは誰にだってあるだろう。
けれど本当に欲しいものは、勇気を出して真実を伝えなければ…得る事など
出来ないのだ。
戯れの恋でも、その中で本気の想いを宿して…それをぶつければそれが
真剣な恋愛に発展する可能性だってあるのだ。
人の心は移ろいやすく、変化しやすい。
なら…真実の気持ちを伝えれば、それが本当の愛になる事だって…勇気を
出して向き合う事さえできれば…可能性は、あるのだ…。
「好き、だよ…『俺』…」
克哉は、何度も何度も…やっと言えるようになった本心を伝えながら
全身で相手を受け止めていく。
一度、開き直って正直になれば…もう怖いものなど、何もなかった。
そして待ち望んでいた言葉を、相手も返してくれる。
「俺、もだ…」
短い一言。されどずっと克哉が欲しかった相槌。
嬉しかった、そのまま死んでも悔いがないぐらいに満たされていく。
そうして、快楽で頭の中が真っ白になる。
息が詰まって、そのまま苦しいぐらいの強烈な悦楽。
それを相手と共有していきながら…。
「んぁー!!」
相手の腕の中にしっかりと包みこまれていきながら…一際高く克哉は啼いていき、
そうして…まどろみの中に意識を緒としていったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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