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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※3月23日より再開しました。現在の連載物のメインは
この話になります。
 克克で、歓楽街を舞台にしたお話です。
 良ければ読んでやって下さいませ。

  夜街遊戯(克克)                 5             10 
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  感情を思いの丈、ぶつけたことで何かが見えた気がした。
  相手に嫌われたり呆れられたくない気持ちと、
  自分の希望を叶えたい想いが、グチャグチャになっていて
  好きだと自覚したからこそ、身体だけの関係に抵抗を持ってしまって
  それでも、相手が好きだと…そう不器用に言ってくれたことで
  凄く満たされた筈、なのに…

―翌朝、目覚めたら…もう一人の自分の姿はなくなっていた

 あの瞬間…確かに満たされた筈なのに、起きたらいつものように
彼の姿はないままだった。
 すでに夜は完全に明けていた。
 カーテンの隙間からは眩いばかりの

「…あ、れ…?」

 何かが変わった、と思ったのに…それなのに、こうして夜が明ければ
いつものようにもう一人の存在は夢のように儚かった。
 掴めた筈なのに、まるで掌から零れ落ちてしまったように。
 ベッドの上には克哉一人だけで、その他の温もりはカケラも存在
していないことが…何か、切なかった。

「『俺』…?」

 呼びかける。されど、声は消して聞こえない。
 もしかしてバスルームとか他の部屋にいるのかと考えたが、やはり
すでにこの部屋の中にすでに…他者の気配はなかった。
 克哉の服と、昨晩使用した衣装はソファの上に折りたたまれている。
 ベッドの上にも、自らの身体にも昨夜の名残のようなものは沢山刻まれて
いるのに…あいつの姿だけが、なかった。

「ど、うして…?」

 いや、そんな事は判り切っていた筈だった。
 あいつはもう一人の自分、本来ならこうやって抱き合ったりセックス
したりなどあり得ない存在なのだから。
 けれど…それでも、気づけば惹かれてしまって、昨晩…やっと想いが
通い合ったのだと、そう信じられたのに…。

―現実は、何一つ変わっていなかった

 それが大きく、克哉を打ちのめしていく。
 いつもと同じように、夜明けの頃には幻のように消えてしまう。
 あいつは最初からそういう存在だって判り切っていたのに…。
 心の中は、ぽっかりと穴が空いてしまったかのように空虚だった。

「はっ…は、はは…」

 知らず、自嘲的で乾いた笑いが唇から零れていった。
 何を期待してしまったのだろうか。
 当たり前の恋人関係にでも、これでやっとなれたのだと…自分は昨晩、
幻想を抱いてしまったのだろうか。
 
(バカ、みたいだ…オレって…)

 気づいたら、涙が一筋…目元から零れてしまっていた。
 必死になって夜の街まで追いかけて、求めて。
 感情の全てを叩きつけて、やっと…相手から、真剣な感情を引き出せた。
 けれど…何もかもが脆い、砂上の楼閣のようなものだった。
 得たもの全てが、一夜の夢に過ぎなかったのだろうか?
 自分が求めていたものは…無駄、だったのだろうか?
 ただ、目覚めた時にもう一人の自分の姿がないというだけで…まるで
天国から奈落に突き落とされてしまったような気持ちに陥ってしまう。

「どうして、いないんだよ…」

 知らず、恨み言が唇から零れ出す。
 ただ、いてくれるだけで良かった。
 こうしてやっと待ち望んでいた一言を、あいつが言ってくれたのだから…
そんな特別な日の翌日ぐらい、残っていて欲しかったのに、
 起きたら、あいつの顔を見たかったのに…。
 そんなささいな願いすら、叶わなかったことが克哉を打ちのめしていく。
 客観的に見れば、大したことではないのかも知れない。
 けれど…恋している最中は、そんなものだろう。

―強い幸福と、ささいな出来事での絶望を繰り返す感情の揺れ幅が多い
状態こそが、恋愛というものなのだから…

「いつ、今度は会えるのかな…ったく、あいつはどうして…連絡手段の一つすら
満足にないんだろう…」

 相手をあの一瞬でも、得られたと想ってしまったから…今まで、自覚
しなかったそれ以上を望む『欲』が生じる。
 会いたい、と強く願う。もっと一緒にいたいという気持ちが溢れて止まらない。
 そこでようやく、克哉は思い至った。
 もう一人の自分との連絡する方法など、一つも持っていないことを。
 そもそも…歓楽街に自分が足を向けることになった元々の理由は、それ以外に
コンタクト方法が存在しなかったからだ。
 だから…会いたいと願ったのなら、どんな場所でも克哉は赴かなければ
ならなかった。

「…次は、いつ…会えるのかな…」

 克哉は、ベッドの上で俯きながら…そう呟いていった。
 会いたい、とか…傍にいて欲しかったという想いは留まる事を知らない。
 自分自身でも持て余してしまうぐらいに、その感情は激しくて…けれど、これ以上の
約束をされていない以上…克哉は待つことしか出来ない。
 その事実を自覚した瞬間、歯痒くて仕方なかった。

「…出来れば、もう一回…早いうちに、会いたい…」

 そう切なる願いを込めて克哉は、ギュっと瞼を閉じていった。
 そうして…克哉は身仕度を整えて、一旦家に戻っていった。

―しかし、その日を境に…もう一人の自分の足取りは完全に途絶えてしまい、
一か月、相手からの音信はないままであった―


   
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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