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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※3月23日より再開しました。現在の連載物のメインは
この話になります。
 克克で、歓楽街を舞台にしたお話です。
 良ければ読んでやって下さいませ。

  夜街遊戯(克克)                 5          10 
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 必死の想いでもう一人の自分を追い求め、ここまで来たというのに…昨晩の
扱いと良い、今の状況と良い克哉にとっては耐えられるものではなかった。

(やっぱり、こいつにとって…オレはどうでも良い存在なのかな…?)

 そんな弱気な考えがつい、過ぎってしまう。
 自分だけがこいつを好きで、その気持ちを弄ばれているようなそんな状況に
しか思えなくて…克哉はつい、肩を大きく震わせていた。
 たった今、もう一人の自分が開いたクローゼットには百種類以上の多種多様な
衣裳が収められていた。
 
「…どうした? 早く選ばないのか?」

「…この中から、選べっていうのかよ…」

「そうだ…。どうせなら一度ぐらい…いつもと趣向を変えてヤルのも悪くは
ないだろう…? お前という貧弱な中身でも、外装を変えればまた気持ちも
大きく変わるだろうからな…。夜は短い、さっさと選ぶんだな…」

「そんな、事…言われたって…」

 相手はからかうような口調で、克哉から少し離れた位置ぐらいで腕を組んで
静かに待っていた。
 手持無沙汰になっているせいだろうか。克哉が暫く、クローゼットの前で
硬直していると…スーツのポケットから煙草とライターを取り出して手慣れた
動作で火を点け始めていく。

「…煙草二本分だけ、待っててやる。その間にお前が決められないというのなら
俺が直々に…お前に良く似合いそうな衣装を見繕ってやろう…」

「そ、そんな…! それって横暴じゃないのか!」

「うるさい。お前が優柔不断過ぎるのが悪い…。それでも寛大に煙草一本分じゃなくて
二本分も待ってやると言っているんだ。俺にチョイスされるのが不服だったら…
早く今夜の衣装ぐらい、決めることだな…」

「……判った」

 相手に対して非常に言い返したい気持ちは満々だったが、ここで言い争いに
余計な時間を費やしていたら…それこそ、眼鏡の方にどんな衣装を用意
されてしまうのか判らなかった。
 グっと唇を噛んで、文句を呑みこんで…衣装選びに意識を傾けていく。
 悔しい、という想いがジワジワと競り上がってくるが…ここで克哉が強固に
突っぱねれば、きっともう一人の自分はあっさりと今夜の逢瀬の時間を
断ち切ることだろう。
 それが判っているから、理不尽だと思っても克哉は拒めない。
 嗚呼、もうこんな気持ちなど自覚したくなかった。相手に一方的に、気まぐれに
犯されて翻弄されていただけの頃の方が…まだマシだったかも知れない。
 あんな身勝手な男を、どうして自分は…。

(何で、好きになっちゃったんだろ…。あいつはあんなに勝手で我儘で
オレの事を振り回してばかりなのに…)

 疑問に思って、イマイチ衣装選びに集中出来なくても…クローゼット内に
下げられている衣装を一枚一枚、見て確認していく。
 …成程、この部屋がコスチュームプレイをメインに扱っているというのは
納得だった。
 手前にあるのは男性もので統一されているらしく…パイロット、自衛官、警察官、
ウェイター、バーテンダー、警備員、駅員、学ラン、ブレザー、水兵服、医者、
科学者、貴族風な服など、多種多様な職業を想わせる衣装が並んでいた。
 奥の方になると…女性用のデザインの制服ゾーンへと切り替わっていた。
自分ぐらいの体系でも着れるぐらいに大きめに誂えられて吊り下げられている。
 メイド服、バニー服、婦警、ナース服、割烹着、花柄の浴衣、際どいデザインの
ボンテージに、レオタード、ウェデングドレスやクラシックなデザインのドレス
と言った…これを自分が着させられるとしたらその場で卒倒しそうな代物が
沢山並んでいた。

(どうしよう…一体どれを選んだら、マシなのかな…)

 奥の方はまさに克哉にとっては、禁忌に等しいゾーンだ。
 怖いものみたさ、というかうっかり見てしまったせいで…恐ろしい想像が
頭の中から抜けてくれない。
 バニーガールやメイド服なんて、時間切れでもう一人の自分に選ばれてしまったら
きっと神経という神経が、羞恥で焼き切れてしまうことは必至だった。
 しかし見れば見るだけ、迷いが生じてしまって選び切れない。
 克哉が一人で顔色を変えてアワアワとしている間に…眼鏡は平然と
した様子で言い放っていった。

「…一本、吸い終わったぞ。残り時間はあと…一本分だな…」

「ま、待って…今、選ぶから…」

 慌てながら、克哉は顔を真っ赤に染めていく。
 その様子を眺めて、眼鏡は喉の奥でククっと笑いを噛み殺していった。
 相手に翻弄されて、ペースを乱されているのが悔しい。
 けれど…これだけ沢山あると、本気で何を選べば良いのか判らなくなる。

(無難なのは、やっぱり手前の男性ものの制服ゾーンだけど…。この中から
選ぶとしたら、一体何を選べば…)

 克哉としては、奇をてらった衣装はあまり着たくない。
 けれどあまり無難過ぎて面白みのないものを選んでしまっても…眼鏡は
不機嫌になるような気がした。
 しかし女物の衣装を着ながら犯されるなんて、そんなの恥ずかしすぎるし
屈辱以外の何物でもない。

(オレにとっても許容範囲で…あいつがそれなりに満足してくれそうな
折り合いのつけられそうな衣装は…どれ、かな…?)

 相手が何を望んでいるのか、克哉にはこの時点ではまったく情報がない。
 だからこそ手探りで、暗中模索状態だった。
 とりあえず全部の衣装をざっと見ておこうとゴソゴソと奥の方に身体を潜り込ませて
いくとその瞬間、克哉はその場に凍りついた。

「うわっ!」

 その衣装のインパクトは、半端ではなかった。
 それはまるで…有名な白鳥の湖用のバレエ衣装だった。
 しかし一つだけとんでもない特徴があった。それは…股間の部分に大きな
白鳥の頭がにょき! と突き出ているのだ。
 その部分さえなければ首元や袖の部分にフワフワと真っ白な羽毛の飾りや
透明なビーズが沢山縫い付けられていて綺麗な衣装なのに、その飛び出した
部分が全てをぶち壊しにして、恐ろしい破壊力を齎していた。

「な、何でこんな衣装が…!」

 間違っても、こんな衣装を着て抱かれるのは真っ平御免だと思った。
 笑い話どころではない。まさに末代までの恥と成りかねない。
 しかしあまりに克哉がその衣装を見て、動揺しまくっているのに気づいて
もう一人の自分は面白そうに笑っていく。
 気分はまさに一人百面相。衣装を見ているだけで心拍数が跳ね上がったり、
真っ青になったりの繰り返しだ。

「…何か面白いものでもあったのか、『オレ』…? そろそろ刻限だぞ…?」

 もう一人の自分は、片手に灰皿を持ちながら…ゆっくりと先端に積もった
長い灰を落としていく。
 煙草はすでに、3分2程度の長さにまでなっているのを見て…克哉は
相当に焦りを感じていた。

「あっ…あっ…」

 もう、まともに思考回路が働いてくれなかった。

―どうしよう、どうしよう…どうしよう!

 頭の中でその言葉だけがリフレインしている。
 もう思考がまとまってくれない。
 あからさまに狼狽してしまって、取りつくろうことすら満足に出来なかった。

「後、十秒以内に決めろ…。もう、二本目も吸い終わる頃だ…」

「そ、そんな! 待ってくれよ!」

「…駄目だ。最初に言った通り…もうリミットだ。数えるぞ…10、9…」

「うわ~!!」

 克哉は泣きそうな顔を浮かべながら、叫び声をあげていった。
 そして克哉がそんなリアクションを取れば取るだけ、男は嗜虐心が
満たされているのか愉快そうな笑みを浮かべていた。
 克哉が慌てふためいている間に、眼鏡のカウントは進んでいく。
 そして残り、3、2、1となった時点で…覚悟を決めて一つの衣装を
手に取って掲げていった。

「こ、これが良い! 今夜はこれを着るから!」

 そうして、手前の方にあった衣装を一つ手に取ってもう一人の自分に
見せていった。
 相手はしばらく真顔で…衣装と克哉を交互に見やっていくと…。

「…ほう? 一見すると無難でつまらなそうだが…趣向を凝らせば
それなりに楽しめそうなものを選んだな…?」

「そ、そう…? それなら、良かった…けど…」

 相手が不穏な空気を纏っているのを見て…克哉は非常にぎこちない
笑みを浮かべていった。
 奥の方のものに比べれば無難、と言って差し支えのない衣装だ。
 だが…それがあからさまに相手を落胆させるものではなかったのに
克哉は安堵を覚えていく。

「だが、俺が存分に愉しめるかどうかは…お前の演技力に掛かって
いるな…。その衣装に合わせて、初々しさとかそういうのがキチンと
出せるかどうか…お前の腕の見せ所だな…」

「ちょっと待て、演技って…! 一体どうしろって言うんだよ…!」

「…それぐらい、少しは考えろ。とりあえずお前の衣装に合って
いそうな奴を俺も選ぶから、その間にさっさと着換えろ…。
モタモタしていたら、楽しむ時間などなくなるぞ…」

「た、楽しむって…」

 改めて自分の手に持っている衣装を見て、克哉はカーと赤くなる。
 26歳にもなる男が、こんなのを着ていたら恥ずかしい以外の何物
でもない。けど…一度は着てみても良いかな、という想いで選んだ
それを改めて見直していくと…やっぱり羞恥が溢れ出てくる。

(け、けど…あの奥にあったバレーリーナーの衣装を着せられて
しまう事を思えばこれぐらいは耐えられる筈だ…ファイト、オレ!)

 と、訳の判らない慰めを自分の中で思い浮かべながら克哉はようやく
決意して…部屋の隅に移動して、服を脱ぎ始めていく。

―ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…

 その間、緊張と不安と…良くわからない疼きみたいなのが身体の奥から
競り上がって来て鼓動と呼吸が忙しいものになっていく。
 それを振り払うように、克哉は勇気を振り絞って…自分が選んだ衣装に
袖を通していったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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