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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に     

 同性に触られて、こんな風に感じてしまうなんて…という想いも
あったが、相手の指先は巧みで…胸の突起を弄られている内に
下肢に欲望が灯っていくのが判る。
 其処を膝で擦り上げられてしまったらもう駄目だ。
 性的な刺激に率直な男の肉体は、克哉の意思に反してあっという間に
反応を示してしまっていた。

「やっ…触ら、ないでくれ…よ…。こんな、の…」

「何を今更嫌がっているんだ…? 散々男に抱かれて、その味を
知っている身体をしている癖に…」

「えっ、何だって…?」

 その一言にぎょっとなった。
 あまりに聞き捨てならない発言だったからだ。

(散々男に抱かれてって…オレにはそんな記憶は全くないぞ…?
一体、思い出せない間に何があったっていうんだ…?)

 その一言で、空白の期間に対しての疑念が一気に膨れ上がっていく。
 同時にやはり目の前の男性は自分の事をある程度知っているのだと
いう確信も強めていった。

「やっぱり、貴方はオレの事を知っているんですね…! それなら
教えて下さい。こんな真似をして、誤魔化さないで下さい…! 一体、
オレに何が起こっているのか、ちゃんと教えて…ふっ…!」

「うるさい口だ…少し、黙っていろ…」

「はっ…ぅ…」

 こちらが質問を浴びせかけていくと同時に再び唇を強引に塞がれて
いってしまう。
 熱い舌先が、こちらの口腔を強引に犯して貪っていく。
 それと同時に股間を刺激され続けたらもう駄目だ。
 満足に立っている事すら出来なくなり…壁際に追いやられていくと
其処に背を預ける事でギリギリ立っているような有様だった。
 困惑している間に、相手の手によって衣服は乱暴に剥かれていき…
克哉の方は全裸になっていった。
 外気は冷たくも暖かくもない感じだったが、やはり衣服を奪われると
肌寒さを一瞬だけ感じていった。
 だが興奮しているせいか、全身が火照っているせいですぐに
それも感じなくなっていく。
 相手の男の指先がこちらの勃起したペニスに絡んでいくのを見て…
克哉はその身体を押し戻すようにして微々たる抵抗を試みていく。
 しかし先端の最も敏感な部分をくじかれるように刺激されていけば…
其れも儚い抵抗に過ぎなくなっていった。

「はっ…んんっ…!」

「やはりお前は淫乱だな…。記憶を失っていても…こうやって愛撫をされれば
率直に身体は反応して、実にイイ反応を見せていくしな…」

「やっ…言うな、言わないで…くれ…!」

 必死になって頭を振って否定いくが、耳元で掠れた声で囁かれた
その言葉に更に身体の芯に熱が灯っていくのを感じていった。
 たったそれだけの事に、頭がおかしくなるぐらいに欲情を煽られて
しまっている自分がいた。
 こんななし崩し的に抱かれるのに抵抗していながら、身体は率直に
反応を示してしまっている。
 頭がおかしくなりそうなぐらい混乱していると…ふいに冷や水を浴びせられる
ような一言が発せられていった。

「特に今のお前は、慰めを必要としているだろうからな…。今は余計な
疑問を忘れて、俺が与える感覚に酔いしれていると良い…」

「っ!」

 その一言を聞いた瞬間、弾かれたように克哉は顔を上げていった。
 しかし反論しろうとしたその瞬間…相手の真摯な眼差しとぶつかって
言葉を失うしかなかった。

(この目…何て言うか、凄く真剣な気がする。何を想っているのかまでは
全く判らないけれど…)

 まだ顔を合わせて少しの時間しか経っていない。
 しかもすぐにこんな風にこちらに迫って来て、抱こうとしているなんて
ロクな行動をしていないにも関わらず…その瞳を見ていると、自分に対して
こうしている事すら何か深い理由があるのではないかと伺えてしまった。
 だから克哉は言葉を失っていくと…いきなり身体を反転させられていき
壁に手をついて…腰を相手に突き出していくような格好を無理やり
取らされていった。
 この体制では臀部と、秘所を相手に晒す格好になってしまう。
 カっと赤くなりながら抵抗を覚えた次の瞬間…グイっとアヌスに
熱く猛ったペニスが宛がわれていくのを感じて息が詰まっていった。

「やっ…やだ…! こんな、いきなり…!」

「うるさい、これから天国に連れてって言ってやるから…暫く大人しく
俺に身を委ねろ…ほら…」

「やっ…あああっ!」

「力を出来るだけ抜いていろ…その方が悦くなる…」

「やっ…だっ…ああっ!」

 そんな事を言われても、こんな風にいきなり男に犯されている現状を
あっさり受け止められる筈もない。
 だからどうしても身体は強張ってしまっていたが…相手の指が再び、
こちらの性器に絡んで扱き始めていくと嫌でも腰に力が入らなくなった。
 そうして相手の刻むリズムに否応なしに翻弄される結果になった。

(一体、どうなっているんだ…。訳が判らない…! もう、何もまともに
考えられなくなっていく…!)

 疑問は沢山あるのに、相手から与えられる強烈な快楽のせいでもう
まともに考える事は叶わなくなってしまった。
 そうして激しい律動に揺さぶられて、頭が徐々に真っ白になっていく。
 もう抵抗するのも途中からバカバカしくなり…克哉の方からも夢中で
腰を振っていく。
 その方が、早くこの時間が終わると思ったからだった。

「ん、ああああっ…! はぁ…!」

 そうして一際大きく叫んでいきながら、克哉は絶頂に達していく。
 そして身体の奥に相手の熱が注がれていくのを感じて…ブルリ、と
肩を震わせていきながら、大きく肩で息をして…呼吸を整えていったのだった―


  
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 とりあえず最近。
 職場の人間関係があまりに酷過ぎるのでいざってなったら
転職出来るように貯金を頑張る事にした。
 しかしその矢先、母にクーザというサーカスに一緒に行かないか、と
誘いを掛けられた。
 値段見てみると…。

 SS席 12000円 S席9000円 A席6500円

 うわっ、たっかいと思ったけれど席の配列を見て納得。
 SS席はサーカスのリングの見やすい位置に設置されている。
安い席は最もリングから遠く見づらい格好になっている。
 母はどうせ見に行くなら良い席で見たいと言ったので承諾した場合、
12000円の出費になる。

 う~ん、う~んと一晩考え。
 かなりガンガン、母親に早く確保してとせっつかれた結果、私の方で
手続きをする事になり結局4月初めの公演のチケットを二人分購入。
 何だかんだ言いつつも、承諾した理由は二つ。
 一つは去年、同じように日本に公演に来ていた「コルティオ」に行きたいと
思っていながら行きそびれてしまった事。
 もう一つは母の膝の調子が、本当にヤバイので後2~3年もしたら
遠出をするのは厳しくなるんじゃないかなって思ったから。
 実際、一月初めに沖縄に両親は旅行に行っていたけれど、バスツアーで
行ったらやたら歩く時間が多くて、そのせいで暫く膝の調子が悪くなったと
いう話を先日聞いたばかりだからだ。

 とりあえず現時点ではまだ多少歩けるし、今年の内に行っておいた
方が良いだろうと何となく感じたので承諾。
 ま…最大の理由は、香坂は結構サーカスとか大道芸の類が
好きな方なのである。

 つー訳で先の話ですが4月にクーザに行って来ます。
 高い金を払った以上、目いっぱい楽しむことにします。
 ただ、当分はまた節約生活続行ですね…。

 ま、しんどい毎日を送っているからこそたまに息抜きも必要だな、
と考えますわ。がお~。

※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に  

―先程、夢から目覚める直前…一瞬だけ過ぎった鮮明な場面があった。

『良い気味だ佐伯ぃ! あははははははっ!』

 狂ったような声を挙げながら、誰かが笑っている。
 もう一人目覚める直前に誰かの雄叫びを聞いたような気がしたが…
あれが誰か知っている人間のものなのか、それとも自分自身が発していた
ものなのか判らなかった。
 誰かが倒れている光景もまた一瞬だけ夢から醒めた時に脳裏をよぎっていった。
 これが一体、何に繋がっているかの情報すら今の克哉には存在しない。

(どうして、最近のことが殆ど思い出せなくなっているんだろう…。それに、
さっきの夢とこの人は一体何なんだろう…。妙に見覚えがある顔を
しているんだけど…)

 鏡がないせいで、目の前に立っている人物と自分が全く同じ顔をしている事に
克哉は気づかないままだった。
 難しい顔を浮かべていきながら、どう声を掛ければ良いのか逡巡していた。
 真っ白くて清浄さすら感じられる室内で、二人は暫しお互いの顔を
見つめあっていく。
 今の克哉には、この場所が何処なのかを全く判らず、それを判断する為の
情報すら一切ない。
 このままただ黙っていても状況は何も変わらない。
 だから克哉は暫しの睨み合いの末…意を決して相手に質問を投げかけていった。

「あの…すみません。貴方はここが何処なのか…知っていますか?」

「………………ああ、一応な…」

「な、なら教えて下さい! ここは一体何なんですか! それに貴方は
一体誰なんですか…!」

 相手が知っているらしいというリアクションをしただけで克哉の感情は
大きく高ぶっていった。

「…なるほど、あいつの言っていた通り…ちゃんとここの本来の目的は
機能しているみたいだな…」

「へっ…?」

「お前は深く考えなくて良い。独り言だ…」

 そういってバッサリと相手に断ち切られて、質問しようとしたのを強く
止められていってしまった。
 けれど何か情報を得たくて仕方ない克哉は其処で会話を止められて
しまったら堪ったものではない。

(冗談じゃない…こんな処で会話を止められてなるものか…!)

 そういって、相手の襟元をグっと掴んで顔を引き寄せていきながら
食い下がっていく。

「こんな…何も判らない状況で、何も考えないでいろっていうのは無理ですから…!
何か知っているなら教えて下さい! 此処は何処何ですか! それに貴方は
一体誰なんですか…!」

「…本当に、俺が誰なのかもお前は判らないのか…?」

「えっ…はい、そうです…その通り、です…」

 一瞬、相手が凄く悲しそうな顔を浮かべたので克哉は言い淀んで
しまった。だが思い出せないのに、変に取り繕っても何の意味もない事を
薄々察したので正直に答えていった。

「…成程、あいつのやる事は徹底しているな…」

「だから、あいつって誰なんですか…!」

「うるさい口だ…少し黙れ…」

「えっ…?」

 唐突に相手の顔が寄せられて、唇を塞がれていく。
 その行動に、克哉は目を見開いて全身を硬直させていった。
 何が起こったのかとっさに把握出来なくて…相手の舌先がこちらの
口腔に滑り込んで来ても、なすがままの状態になってしまった。

「ふっ…ぅ…」

 突然の事態に、相手の行為も拒むことも忘れて…熱い舌先を
絡められて吸い上げられてしまう。
 その途端に、全身から言いようのない感覚が走り抜けていった。
 腰に力が入らなくなってよろける身体を、壁際に追い詰められていく事で
支えられていく。

「やっ…あっ…」

 困惑している最中に、相手の手がワイシャツのボタンを外し始めて
胸の突起を両手で弄り始める。
 その指先は熱くて、与えられる感覚に目まいすら覚えていった。
 唇を強引に塞がれていきながら胸の突起を弄られる行為はそれだけで
こちらの情欲を激しく刺激していく。
 心が伴っていなくても、男の性欲は感じる部位を刺激されれば
容赦なく反応を示してしまう。

「ほう…? もうすっかり硬くなっているじゃないか…?」

「や、膝で…擦らないで、ふぁ…」

 そうして少し膝を曲げてよろけてしまっている身体を壁に押し付けられる格好に
なりながら自分の股間を膝で擦り上げられていく。
 もうすでにすっかり其処が硬く張りつめてしまっている事を自覚して
火が点いたように耳を真っ赤に染め上げていったのだった―


 


 

※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

―ある日、目覚めた時には見知らぬ部屋で…記憶を失った
状態だった

 自分の名前が佐伯克哉である事は覚えている。
 キクチ・コーポレーションに数年勤務して…あまり仕事の出来ない
パッとした平凡な人間。
 大学時代はバレーボールをやっていたが、イマイチ部の空気に馴染む事が
出来ず途中で退部。
 誰も傷つけないように、ひっそりと生き続けていた。
 大まかな自分の経歴、体験した出来事は覚えている筈なのに…ごく
最近起こっていた事というか、そういうものが一切欠落していた。

「あれ…何でだろう? 何も思い出せないん…だけど…」

 白が基調の、シンプルな内装の部屋の中で克哉は心底困惑したような
声を漏らしていく。
 一体どれくらい前からの事が思い出せなくなっているのか判らないと
いう違和感。
 どうしてこの部屋にいて目覚めているのか、その過程すら思い出せず
克哉はただ困惑していた。

「ええっと…うん、一時的に記憶が混乱しているだけだよな。えっと…
ここは何処、かな…?」

 少しでも情報を得たくて身体を起こし、窓の外を眺めていく。
 その途端、克哉は言葉を失っていた。

「うわっ…何だこれ! どうして空がこんな色に…?」

 窓の外に広がっている光景は、大きな草原が広がっていた。
 だが問題はそれではなかった。
 本来抜けるような青い空が広がっているべき空間には、様々な
オーロラのような不安定な色を讃えていたのだ。
 確かに夕暮れ時ならば空はそういった多数の色を讃えて美しい様相を
見せる事はある。
 だが今は恐らく朝か昼の時間帯の筈だ。
 それなのに…空がこんな色をしているのは明らかに異常過ぎた。

「一体ここは何処なんだ…!」

 初めて、その疑問を痛烈に感じて違和感を覚えていく。
 白い部屋、閉ざされた空間。
 そして大草原らしき場所に存在しているこの小屋。
 どうして自分がこんな処にいるのか、過程を全く思い出せない事に
強烈に疑問を覚えた次の瞬間…部屋の奥の扉がいきなり開いていった。

「ああ、やっと目覚めたのか…待ちわびたぞ」

「えっ…?」

 その男を見た時、何故な見覚えがあった。
 けれどそれが誰なのか…克哉には判らなかった。
 眼鏡を掛けた冷たい眼差しを浮かべた男。
 見覚えは確かにある顔なのに、それが誰なのか判らずに克哉は首を
傾げるしかなかった。

「あの…貴方は、誰ですか…?」

 克哉は困惑した表情のまま…自分と全く同じ顔の造作をした
男に向かって、そんな間の抜けた質問をしていったのだった―
 結構時間掛かってしまいましたけど、いつかのメリー
クリスマス、無事に終わりました(ホッ)
 とりあえず現在、次の連載の構想期間中です。
 昨日の時点で話の輪郭は見え掛けているのでもう1~2日だけ
開始まで時間頂きます。

 もう少々だけお待ち下さいませ~。
この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス                    
                    10   11  

 御堂が自分のガーヴから、このクリスマスの夜に相応しい一本を
選び出している十数分の間、克哉の脳裏には自分達が最初に過ごした
聖夜の出来事が走馬灯のように勢い良く再生されていった。
 様々な色合いを放つ光ファイバー製のクリスマスツリーは一時、
克哉を幻想の世界へと誘っていたようだった。
 ボウっと記憶の中に意識が没頭し、長い夢を見ていたような
気分になっていく。
 そんな彼の背後から、愛しい人がそっと声を掛けていった。

「克哉、随分と待たせてしまったな…」

「え、ああ…大丈夫です。オレも…貴方がどんなワインを選んでくれるのか
楽しみに待っていましたから…」

 御堂の方を振り返って、小さく微笑みながら克哉がそう告げていくと
相手もまた穏やかな笑みを返してくれていった。

「…しかし、随分と長くボウっとしていたようだな…。何を思っていたんだ…?」

「えぇ、ちょっとこのクリスマスツリーを買った二年前の…オレ達が最初に
過ごしたクリスマスの事を思い出していたんです。今、振り返ると懐かしい
ですよね…」

「ああ、もうあれから二年が経つのか…。何て言うか、充実した時間というのは
過ぎ去るのもあっという間だな…」

「えぇ、確かにそうですよね…オレにとっても、貴方と恋人同士になって
からのこの二年間は瞬く間に過ぎてしまったように感じられます…」

 そうして、あの頃とは比べ物にならないぐらい優しい笑みを浮かべて
御堂は微笑んでくれる。
 お互いに気を遣いあっていて二人きりになると息が詰まるようだった
頃とは嘘のように…今の自分達は二人でいる事に馴染んでいた。
 暖かな空気が満ちていく。
 去年も、今年もこの夜は御堂の自宅で…今では克哉の家でもある
この場所でささやかに過ごしていた。
 あの夜景が綺麗なホテルのスィートルームで過ごしたのはあの一度だけの
事だったけれど…一度だけの特別な出来事だからこそ、これだけの年月が
過ぎてもキラキラと宝石のようにその思い出は輝いていた。
 御堂がそっとワインの瓶を傍らに置いて、机の前に座っている克哉の
背後からそっと覆い被さるように抱きしめてくる。
 その回された腕に己の手をそっと重ねていきながら…克哉はそっと
目を閉じてその暖かさを享受していった。

 本来、外国のキリスト教圏でのクリスマスは日本のように盛大なパーティーを
して大騒ぎをする日ではなく、教会でミサに行って聖歌を歌って祈ったり、
ごく親しい人達と自宅でささやかに祝うのが習わしらしい。
 だから次の年のクリスマスからは、あまり贅沢な事はせず御堂の自宅で
二人きりで過ごすようになった訳だが…だからこそ、克哉はその幸せを
噛みしめて、ジワリと胸が満たされていくようだった。

(この人と…大好きな孝典さんと、こうやって特別な夜を二人で
過ごす事が出来る…良く考えてみるとそれが何よりも素敵な
贈りものだよな…)

 クリスマスにプレゼントを贈り合うような真似はしていない。
 二人で普段より少しだけ豪勢な料理を食べ、ちょっと高級なワインのコルクを
開けて飲み合う程度だが…それも、あの傷つけあうような関係から始まった事から
思えば信じられないぐらいの幸せだった。
 
「孝典さん…これからも、こうやって…毎年、二人でクリスマスを過ごして
いけると良いですよね…」

「ああ、そうだな…」

 御堂の方に顔を振り向かせていきながら…克哉はそっと祈るように
呟いていく。
 そしてうっすらと瞳を潤ませながら…愛しい人を見遣っていく。

「…そんな目で私を見るな。今からそんな眼差しで見つめられてしまったら
食事やワインを楽しむ前に、君を食べたくなってしまいそうだ…」

「なっ…そ、そんな…!」

 自分がどんな目で御堂を見ているかなんて、自分自身では判りっこない。
 どうすれば良いのか判らなくて耳まで真っ赤にしながら慌てていくと
御堂は喉の奥でククっと笑いを噛み殺していった。
 そうしている間に御堂のこちらを抱き締める腕の力はもっと強くなり…
とっさに息が詰まっていく。
 ふと彼の方を振り返っていくと…真摯な眼差しをしてこちらを見つめてくる
御堂の視線とぶつかっていった。

「克哉…」

「はい…」

 多分、こういう雰囲気になったらもう余計な言葉などいらない。
 静かに目を伏せて、与えられる口づけを受け入れていく。
 ただキスをしているだけで、ジインと痺れるような感覚が全身に走り抜けて
いくようだった。

―これからも、この人の傍でこうしてずっと一緒に過ごしていきたい…

 克哉は、キスを交わしている間…心の中で強く強く、祈り続けていった。
 そして…脳裏に、一瞬だけ最初のクリスマスの夜の記憶の断片が
過ぎっていく。
 この人を愛している限り、こうして毎年聖夜を共に過ごしている限り…
その思い出はいつまでも克哉の中で輝き続けるだろう。
 愛しい人と積み重ねた記憶は、いつまでもいつまでも特別な意味を持って
光を放っていく。

―いつかのメリークリスマス…最初のクリスマスの夜の記憶を心から
愛しいと思いながら、今夜もまた思い出を重ねていく

 克哉の方からも御堂を強く抱きしめていきながら…この夜、こうして
二人で過ごせる事を心から感謝して、そしてこれからも共に歩んでいける事を
強く願っていったのだった―


 現在連載中のお話のログ

この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス                       10

 目の前に広がるのは白と深い蒼のイルミネーションに飾られた
大きなクリスマスツリーと、目にも鮮やかな夜景だった。
 ホテルの一室、大きく取られた窓の向こうには光の洪水とも
言える光景が広がっていて…言葉を失っていった。
 まるで地上に、数多の色合いの宝石が散りばめられて輝いている
ように見えて…克哉は感嘆の声を漏らしていった。

「凄い…綺麗、です…」

「そうか、君が気に入ったなら良かった…ここは私のとっておきの
場所だからな…」

「そう、何ですか…?」

「ああ、このホテルのスィートルームは今ぐらいの時期にはとても綺麗な
イルミネーションが見えるからな…。もし、今年のクリスマスを一緒に過ごせるなら
此処が良いと思っていたから手配しておいた…。二カ月前、からな…」

「えっ…?」

 部屋の内装を見るだけでも、一泊するだけで相当な値段がする事が
判る豪奢で上品な内装をしていた。
 ヒラ社員である克哉には全く縁のない室内。
 確かにこのクラスの内装が施されている広い間取りのスィートルームを
この時期に確保するとなったら、相当前から用意していなければならない
事は克哉もすぐに察していた。
 その言葉に、克哉は驚いていく。
 だが御堂は実に照れくさそうに口元を覆っていた。

「…御堂さん、今…何て言いました…? 二か月前って…まだ、オレ達は
恋人同士になっていない頃じゃあ…」

「ああ、そうだ。このホテルの予約は大体二か月前から受け付けている訳だが
その頃には…私は、クリスマスぐらい君と一緒に…このイルミネーションが綺麗な
この部屋で一緒に過ごしたいと…そう考え始めていたという事だ…」

「そ、それって…」

 その言葉に含まれている意図を察した途端、克哉は涙ぐみそうに
なってしまった。
 恐らく二か月前と言ったら、自分もまた御堂との関係の在り方に大きな
疑問を覚え始めていた頃だった。
 身体を重ねているが…御堂がどう想っているか、その気持ちが判らなくて
見えなくて…葛藤を重ねていたのを良く覚えている。

(二か月前から…御堂さんがそんな風に、想ってくれていたなんて…凄く嬉しくて…
眩暈がしてしまいそうだ…)

 たったそれだけの事でも、嬉しくて。
 あの長い迷路を彷徨っていたような時期の中でも…御堂の気持ちは
確かにこちらに注がれていたのだと自覚した途端、涙腺が緩んでいってしまった。

「どうしよう…凄く、嬉しいです…」

 嬉しくて嬉しくて、克哉は透明な涙を浮かべて幾つも零していく。
 けれどその顔は、確かに笑みが刻まれていた。
 自分の意思と関係なく涙は零れるけれど…其れは、あまりに幸福だったから…
その気持ちが溢れてくるから流れるものだった。

「…君のそういう顔は初めて見たな…。もう君の涙を見るのはゴメンだと
思っていたが…そういう顔をしながら、泣かれるのは悪くない気分だ…」

「…いや、見ないで下さい…。こんな涙でグシャグシャの顔なんて…」

 あまりに御堂が優しい眼差しを浮かべながらこちらを見つめてくるから
気恥しくなって顔をそむけていってしまう。
 そうやってささやかに抵抗してこちらから逃げようとする克哉を押しとどめるように
御堂の手がそっと頬に添えられて…彼を見るように向きを直されていった。
 愛しい人と目が合った瞬間、息が詰まるようだった。

「…クリスマスに、こんなサプライズが待っているなんて思っていませんでした…」

「いいや、忘れるな克哉。今夜はクリスマスイブだ…。クリスマスの前夜に過ぎない。
明日の当日には、君と私が買ったあのクリスマスツリーが飾ってある私の部屋で
二人きりでパーティーをするんだ…。それが私なりの、君とのクリスマスプランなのだが…
気に入ってくれたか…?」

「と、当然です…。貴方にそう言って貰えただけで…オレ、幸せで…堪らなく
なってしまいますから…」

 御堂の行動に、こちらへの想いが確かに存在しているのを感じ取って
克哉はギュっとその身体に抱きついていった。
 強く強く愛しくて、嬉しくてこちらから腕に力を込めて抱きついていく。
 そのまま深く唇が重ねられて、舌先を強引に捻じ込まれて…荒々しい口づけを
交わし合っていく。
 今夜も、御堂に激しく愛されたいという欲求が胸の奥に湧き上がっていった。
 この人は自分の事を思ってくれている。
 それが恋人関係になったばかりの克哉にとっては何より嬉しいプレゼントであり、
最大の贈り物でもあった。

「ああ、君のそういう嬉しそうな顔は…可愛いものだな…。その顔を今夜
見れただけでも…今夜は充分だな…」

「そんな、可愛いだなんて…からかわないで下さい…それに、見ないで…」

 克哉は顔をそむけようとしたが、それを許されず強引にベッドの方まで
誘導してシーツの上に組み敷かれていった。
 そうして部屋の照明を消されて、ベッドサイドの淡い光だけで照らされる
格好になっていく。
 その途端に窓の向こうに輝くイルミネーションが、一層こちらに迫ってくる
ような錯覚を覚えていった。
 御堂の体温が、息遣いが…何かもが愛しく感じる。

「御堂、さん…ありがとう、ございます…」

「ああ、君が喜んでくれたなら…良かった…」

「あっ…」

 その瞬間、御堂が蕩けるような優しい顔を浮かべて…克哉は
言葉を失っていった。
 幸せの余り、胸が詰まってしまいそうだった。

―そして二人だけの熱い夜が訪れ、そうして…彼らの最初に迎えた
クリスマスの夜は幸福な思い出だけで満たされていったのだった―



 



この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス                      

 そうして克哉は胸を高鳴らせ続けていると…十数分後、車はようやく
止まりエンジン音も聞こえなくなった。

(目的地に着いたんだな…一体ここはどこなんだろう…?)

 期待と不安が、競り上がって嫌にドキドキしていた。
 ギアを動かす音、キ―を回転させて抜く音、運転席の方からシートベルトを
外す音、こちら側のドアのロックを外す音、そしてドアが開いて御堂が車の外に
出る音が鮮明に耳に入って来る。
 視界を奪われているせいか、普段よりも異様に音をはっきりと感じて
意識する事になっていた。
 そして…御堂は助手席側のドアの前に立ち、外から開いてこちらに
手を差し伸べ始めていった。

「佐伯君…ここからは私がエスコートをする。この手を取ってついて
来て欲しい…」

「は、はい…判りました…」

 声がした方に向かって克哉は手を差し出していく。
 見えないせいか、最初はその手は空を切るだけだった。
 しかしすぐに御堂の手が握り返されて…ドキっとすると同時に強烈な安堵も
覚え始めていったのだった。

(見えないせいか…今は、御堂さんの手が凄く頼りに思えてくる…)

 御堂の手の温もりが、克哉を安堵させる。
 この人がしっかりと手を引いて自分を導いてくれるのだと…そう信じる事が
出来るような気がした。
 そうしてこちらもシートベルトを外して、手を引かれながら慎重に車の
外に出ていった。 
 見せないせいか、足元すら覚束ない気分になる。
 地面の感触からして…コンクリートの舗装された床を歩いているの
だけは判った。

(ここは一体…何処何だろう…?)

 目隠しされている状態が恨めしい。
 けれど目的地に到着したにも関わらず、御堂がこちらの視界を奪ったままで
いる事は恐らく意味があるのだろう。
 そうして手を引かれながら一歩一歩、ゆっくりと歩き始めていく。

「佐伯君…足元には気をつけるんだ…」

「はい、気をつけますね…」

 此処は何処ですか、という言葉を必死に抑え込みながら克哉は御堂と
手を繋いで歩き始めていく。
 こうしていると普段、視界というのはどれだけ重要な役割を果たしてくれて
いるのかをしみじみ実感していった。
 こうして導いてくれている御堂は今、どんな顔をしているのかすら
今の克哉には判らない。
 それがどうしようもない高揚感を生んでいき、さっきから本当にこのまま
心臓は破れてしまうのではないかと思った。
 目隠しされているせいで、克哉は瞼の裏に万華鏡のように様々な
模様が浮かび始めて形を変え続けていく。
 そのせいで、異世界に迷い込んだような錯覚すら覚えていった。

「…足元に不安はあるだろうが、ゆっくり歩けば大丈夫だ。この辺りの道は
舗装されているからな…。私を信じて、ついて来てくれ…」

「はい、信じます。今の貴方が…オレに害を与えるような事をする事は
ないでしょうから…」

「ああ、そうだ。もう私は…無用に君を傷つけるような真似はするつもりはない…」

「ええ、判っています…」

 そう、自分達は恋人同士になったのだ。
 つい先月までのように…お互いを傷つけあい、相手がどう思っているのかを
知らないままの間柄ではない。
 両者とも同じ気持ちであった事を今では知り…同性同士であるにも関わらず
一緒にいる事を選択したのだから。
 だから…克哉は御堂を信じていく。
 そして一歩一歩歩いていき、そうして…どうやらエレベーターに乗せられていった。
 扉が緩やかにしまっていく気配を感じる。
 そしてエレベーター特有の、フワっとした浮遊感と微かな機械音が耳に
届いていった。

(これは間違いなくエレベーターに乗せられているってことだよな…。という事は
此処はホテルか、展望台なのかな…?)

 エレベーターに乗っている時間は案外長かった。
 その事実から、高い階に向かって移動している事実が浮かび上がっていく。
 そうして無事に目的のフロアについていくとまた御堂にしっかりと手を引かれながら
暫く歩く事になった。
 そしてようやく御堂は立ち止まり、こうこちらに告げていった。

「着いたぞ…。さあ、目隠しを外すぞ…」

「は、はい…」

 期待と緊張が入り混じりながら、克哉はその言葉に頷いていく。
 御堂の両手がこちらの後頭部の方に回され、身近に相手の息遣いを感じながら
目隠しは外されていった。
 布が取られていったからと言って、すぐに視界が回復する訳ではない。
 少しの間だけそのまま目を瞑り続けて…深呼吸を一つしていってから
ようやく瞼を開いていった。

「うわぁ…!」

 そして、克哉は感嘆の声を漏らしながら…目の前に広がる光景に
釘づけになっていったのだった―

 一応、自分なりに考えて対応はしました。
 …後はそれを受け取った相手がどう答えを出すか次第なので
気長に構えるとします。
 とりあえずどんな答えが出ようとも、それを受け入れるつもりなんで
ボチボチ連載再開します。

 お待たせしてしまってすみませんでした(ペコリ)
 とりあえず現在、個人的にデカい失敗をやってしまい
それの対応に追われて、自分の中でいっぱいいっぱいです。
 …全力でそれの対応に当たっているので、ここ数日は連載の方まで
頭回っておりません。
 後もう少しだけ時間が掛かりそうなので一言だけここに記しておきます。

 ある程度のケリがついたら、改めて再開致します。
 今はこの件を優先させて頂きます!! では!
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香坂
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小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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