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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 忘却の彼方には18話から、これから構成上…一話一話が
長くなるので、アップするのにちょっと時間が掛かる場合が
あります。
 ちょっと18話、少し長くなるので朝までに書き切れなかったので
帰宅してから続き書きます。
 
 この話から、克哉がどうして記憶を失ってこの世界で
生きる事になったのかの根っこの部分が語られていきます。
 まあ、人によっては不快感や抵抗を覚える描写がこれから
続くかも知れませんが。
(特に本多×克哉のカップリングが好きな人にとっては)

 一応、このシリーズは記憶喪失による再生、をテーマにしています。
 書きたい話なので多少時間が掛かっても最後まで書きあげるつもりなので
気長に構えてやって下さいますようお願い致します(ペコリ)
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 とりあえず春コミ、全国に散っている友人達が
集まるのでその為に執事喫茶の予約戦線に参加する為に
3月3日と4日の夜は日付変更辺りでモソモソ起きて来て
頑張って予約しました。

 最近、仕事でヘロヘロの日が多く21時前には大抵力尽きているので
日付変更まで起きるには、仮眠取るしか方法がなく。
 …21時頃に寝て、23時半ぐらいに起きて。
 そっから1~2時間起きてからまた寝るという生活を二日やったら
すっかり朝の寝起きが最悪になりました。
 無事に友人と協力して、2手に分かれる事になったけど無事に
予約出来ました。

 昨晩、しっかり寝たら回復しました。
 6日の夜には、改めて何かしら投稿します。
 ではでは!
 先日、3DS買いました。
 ついでに、最初の一本にニンテンドックス&キャットを
買いました。
 買おうかな~と思っていた三国無双クロニクルとレイトン教授と
奇跡の仮面はすでに兄上が購入していたので、現時点での
私の選択肢、これしかなかったんですが。

 んで、子犬の方はシベリアンハスキーを今回チョイス。
 名前はリブ。
 父方の祖父の家に、私が高校生ぐらいの頃から飼われていた犬で
子犬の時期から知っている。
 去年、残念ながら天寿を迎えてしまったが…過去に兄弟同然に
育っていたチワワの方は、DS版で飼っていたのでこの子の
方を選びました。
 香坂の場合、ニンテンドックス買うのって過去に飼っていた犬を
ゲームの世界だけでも元気で動き回っていて欲しいっていう動機なので。
 …そういえば初期型DS買った時も、最初に買ったソフトがニンテンドックス
だったような…あれ?

 まあ、それはさておき。
 今作は猫も一緒に飼えるようになっているので、猫も一匹飼い始めました。
 半月ばかり前に亡くなった同じくうちで十数年飼っていたメス猫、
ミ―の名前を取って、出来るだけ特徴が似ている子を探しました。
 んで、これがその二匹の写真。
 今作はゲーム中に、いつでも子犬と子猫の写真を撮影して内臓されている
SDカードに保存出来るのです。



 これがリブたんの写真。




 こっちがミ―たんの写真です。
 今回の3DSは、3D機能をオンにすれば3D写真も撮影出来る仕様に
なっているんですが…残念ながら、それはゲーム機本体専用のプログラムらしく、
ブログとかで紹介する事は出来ないんですが、立体の写真とかもあります。
 これは二枚とも2Dでの撮影です。
 けど、前作に比べてふわふわもふもふした感じが出ていて、犬も猫も
とっても可愛いです。

 3DS本体には最初から2GのSDカードが同梱されているんですが…
何かニンテンドックスだけで放っておいたら1000枚ぐらい撮影しそうな
勢いでバシャバシャ撮影しております…。

 ええ、元々動物…特に犬猫は本当に好きなんですよ!
 子供の頃から祖父母の家では一緒に育って来たからチワワと
猫は凄い愛着持っているっていうか!
 …今から本当に親バカになりそうで凄い不安だ。
 こいつら、かわいすぎるよ…!(力説)

※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

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 この三ヶ月間、数えきれないぐらい彼と抱きあい口づけを
交わして来た。
 けれど…自分に恋人がいた事実を思い出した瞬間、甘かったものは
全てどこか苦みと痛みを伴うものに変わっていった。
 
(きっとこれが…罪の味、って奴なんだろうな…)

 今までどうやっても思い出す事が出来なかった記憶。
 其れが…相手に思いを告げた瞬間に、溢れて来て…克哉の胸を
圧迫していく。
 今にも泣きそうな目を浮かべている眼鏡を抱きしめながら…克哉は
その記憶によって耐えようのない痛みを覚えていく。

(…本当に、オレは…本多と恋人同士になっていたんだ…。思い出した
直後は認めたくなかったけれど…この記憶が、肯定している…)

 他の男を抱きしめながら、本当の恋人との幸せな記憶が蘇ってくる。
 目の前の相手の心を少しでも救いたいという想いと。
 かつて愛していた男をずっと裏切り続けていた事実の両方が
克哉を苛んでいった。
 克哉の方から口づけていった後、相手からは何の言葉もなかった。
 ただお互いの顔が見えないように…肩口に顔を埋め合いながら
抱きあうだけだった。
 
(…もしかして、震えているのか…?)

 いつだって、彼はポーカーフェイスだったように思う。
 シニカルな笑みを浮かべて…たまにこちらをからかうような発言をして
翻弄していて。
 自分と比べて、眼鏡はいつだって…自信に満ち溢れているように見えた。
 そんな相手が…小刻みに身体を震わせて、何かに耐えているような反応を
見せている事に、強烈な保護欲を覚えていった。
 きっと、こちらのこんな本心を口にしてしまえば…相手は反発して怒る事は
目に見えているので敢えて言わなかったが、克哉はこの時…どうしようもなく
彼を愛しいと覚え始めていた。
 守られているだけでなく、こちらからも彼を守りたいと…泣くのを必死で
堪えているような切ない顔を見た瞬間に感じてしまった。
 さっきまで取り乱して、泣き喚いていた自分がこんなことを思うのはきっと
滑稽な事なのだろう。
 けど…この世界に来て、初めて…克哉は彼を支えたいと。
 助けたいと痛烈に感じ始めていたのだった。

「…なあ、どうしてお前はそんなに震えているんだ…? オレなんかじゃ
頼りにならないって判っているけど、こうして傍にいる事は出来る…。
その理由を、話して貰えるかな…?」

「…断る。お前が記憶を思い出しただけでもやっかいなことになっているのに、
これ以上余計な事を知られたら…面倒なことになるからな。せめて数日は待て。
酷な現実を同じ日に一気に知る事はないだろう…」

「…判った…」

 相手の気持ちが少しでも軽くなるなら、せめて聞き役だけにでも
なりたいって思って尋ねた事だが…その返答だけで、彼がそんなに悩んでいるのは
自分に関係する事だと判ってしまった。
 ようするに…現時点では克哉に知られては困る事で苦しんでいるのなら、
こちらに出来る事は何もない。
 何も言わずに…ただ相手を抱き締める以上の事が出来ない事に無力感を
覚えていった。

「…だが、今だけで良い…暫く…こうして、いてくれ…」

「うん、判った…。それくらいなら幾らでも…付き合うよ…」

「そうか…」

 そうして、眼鏡は酷く疲れて憔悴しきった表情を浮かべていた。
 抱きあった体制のまま、克哉は彼の身体を支えるようにしてさりげなく
寝室の方まで向かっていく。
 今は、暖かいものに包まれていたかった。
 相手と一緒にこうして一緒にベッドに入って、性的な行為をしていなかった
事など…これが初めての経験で、その事実に少し恥ずかしくなったけれど…
この日、初めて克哉の方から彼を添い寝していった。
 傷ついた顔を浮かべて…そっと眼鏡が目を閉じていく。
 其れをどこか慈しむような顔を浮かべていきながら…見守っていく。
 そして彼が眠りに落ちていったのを見届けていくと…すぐに克哉の方も
強烈な眠気を覚えていった。

(…ショックなことが立て続けに起こったせいか…凄く疲れた…)

 そうして、克哉も意識を手放していく。
 …緩やかに、深海に落ちていくようなそんな感覚を覚えていきながら…
克哉は夢を見始めていった。

―今、取り戻したばかりの…現実にいた頃の自分の思い出に
纏わるものを…




 最近、色々あって気持ちも落ちこみがちでしたが…
先日、発売したばかりのニンテンドウ3DSを兄が購入したので
試しに少し遊ばせて貰ったら、久しぶりに気持ちがワクワクしました。
 何て言うか、ニンテンドウは本当に新しい事に挑戦しようとか、
遊び心を忘れていない会社だなって、3DSならではの新機能を
実際に触れた事で実感しました。

『これ、すっごい良い! 絶対自分の分も買おう!』

 こう感じたのは3Dならではの遊びを、不思議さを実感した時の事。
 数カ月ぐらい待てば多少は落ち着いてくるかな、と気長に構える
つもりでした。
 まあ、4月か5月ぐらいに買えれば良いかな~と。
 その為に先月、ダイエットした事で得た3万円を丸々残して備えていたら…
3月2日、ひょんなことから買えてしまいました。
 ちょっとヤボ用で午前中にヤマダ電気に顔を出したら運よく入荷したばかりの
タイミングに遭遇しまして。
 其れで元々、買える機会あったら買おうと決めていたので買いました。
 まあ、先月臨時収入が入ってなかったら実際に買うのは半年ぐらい先に
していたでしょうけどね…。

 んで…結局買う事にしたのは「ニンテンドックス+キャット」。
 チワワとシベリアンハスキーがいるパッケージのを選びました。
 前作ではアイフルのCMに出て一世を風靡した「クーちゃん」に良く似た感じの
クリーム色の毛並みをしたチワワを飼っておりました。
 けど今回は…何て言うか、チワワが微妙に前作よりも可愛くない!
 と不満持ってしまいまして…なら、父方の祖父の家で去年亡くなったシベリアンハスキーに
似た犬を飼ってしまえ! と思い…その子に「リブ」と命名して遊んでおります。

 …うん、見ているだけで心が和む。
 んで前作を知っていると、前は散歩したら現実の時間で30分空けないと
次行けなかったり、犬に体力つけばつくだけ一回の散歩時間が長くなって…と
いう不満点があったんですが、その辺が改良されていたり散歩のシステムとか
画面構成とか大きく変更されていて、ああ良くなっているな! と思った。 
 暫く3DSはこのソフトだけ遊んでいる事になるけれど。
 今回は3DS自体に歩数感知機能が搭載されておりまして…犬と一緒に
散歩するモードの内、歩数をカウントする方で遊びますと本体の蓋を閉じている時に
歩いた歩数に応じて、アイテムが貰えるというのも搭載されております。

これ、何気にダイエットとか身体を少し動かそうってモチベーションに
なると思います

 …という訳で思いがけず、犬の為にもう少し身体動かそうって気持ちに
なってきたのでチョコチョコ歩くようにしてダイエットも頑張りたいなと。
 今回はニンテンドックス+キャットについて主に語りましたけれど…
本当に3DS、色々凄いですよ。
 ちょっと語りたい事とかまだあるので、また書くと思います。
 ではでは!


※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

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 事実が判明してから、克哉は暫く涙を流しながら嗚咽を漏らし
続けていた。
 かつて、忠告を受けた時に見せつけられた哀れな自分の姿を
思い出していく。

(…あの人が、誰かがいつか忠告された言葉の通りだったんだ…。
思い出したら、あの憔悴しきった姿と同じ事になるって…。今なら、
その言葉の意味が、嫌になるぐらい理解出来るよ…!)

 自分が記憶を思い出す事は、パンドラの箱を開ける事に等しいと…
そんな例えをあの時、出された。
 事実を思い出した克哉は、その言葉が正にその通りである事を
思い知らされていた。
 眼鏡は、何も言わないで…泣きじゃくる克哉の肩に触れてくる。
 ほんの僅かに伝わる温もりが、克哉の心を少しだけ救っていく。

「…優しくなんて、しないでくれ…」

「………」

 今、優しくされたら…自分は、きっと彼に縋りついてしまう。
 自分が、本多と恋人同士だったという事実を知ってしまった今となっては…
彼の手を受け入れる事は、罪深いことなのだから。
 今までだったら、記憶を失っていたからという免罪符が存在していた。
 けれどその事実を思い出して尚…彼を受け入れる事は、本多を裏切る
事に等しい。
 しかし今の克哉は打ちのめされていて…多分、この世界に来て最も
彼の温もりを欲しているのも確かだった。
 相反する気持ちが、葛藤を生み出し…こちらは身体を硬くすることしか
出来ないでいる。

「…お前は、俺にこれ以上触れられるのは…嫌か…?」

「嫌じゃない…けど、今は…どうして、良いのか…判らない、んだ…」

 ハラハラと涙を零しながら、克哉は横に首を振って否定する。
 元々、眼鏡は感情表現が自分より遥かに乏しい…というか、ポーカーフェイスを
保っている事が多い。
 その表情から、心情を読み取るのは困難を極める部分がある。
 けれど…今、泣きはらした目で彼の顔をチラっと見ると…悲しそうな目を
浮かべているのに気づいた。

(どうして、そんなに切なそうな顔を浮かべているんだよ…。お前のそんな
顔を見てしまったら…オレ、は…)

 暫く動けないまま、相手の指先がこちらの髪を梳いていくのを
黙認していった。
 ゆっくりと、自分の中に彼に縋りつきたいという想いが湧きあがっていく。
 いつものように激しく抱かれて、何も考えられないぐらいに熱くなれば…
ほんの一時だけでもこの痛みを忘れられるだろうから。
 同時にそれを実行に移せば、記憶を取り戻した今となっては本多に対して
強烈な罪悪感を抱く事になるだろう。
 其れは絶望に染まった心が、一時の快楽を救いを…麻薬を求める心理に
近いのかも知れなかった。
 克哉は迷い続けていた。

「…お前、そんな顔をしているのは…卑怯だよ…」

 声を大きく震わせながら、克哉は…呟いた。
 その時、こちらの本心に気づいていく。
 彼のこんなに切ない顔を見るのは相当に久しぶりだった。
 この三カ月、自分達はこの二人だけしか存在しない世界でそれなりに
上手くやってきた。
 其れは本当に真綿に包まれたような暖かく優しい時間だった。
 その時間を自分に与えてくれた男が、またこんな悲しい顔を浮かべて
いるのを見て…どうして、見過ごすことが出来るだろう。

(ゴメン、本多…オレは…)

 一言だけ心の中で今、思い出したばかりの自分の恋人に対して謝った。
 彼に義理立てをするなら、きっとこの今…胸の中に存在している感情は
否定しなければいけない。
 其れが正しい道だって判っている。
 けれど…自分の前で悲しそうにこちらを見つめてくる相手を放っておくことは
出来なかった。
 許されない、と判っていても…今の克哉は、こちらから彼を抱きしめたいと
心から思った。
 自分の心を慰めて欲しいという気持ちよりも遥かに強く…相手の、心を
守りたいと。
 この手を拒絶する事で、彼を傷つけたくないという想いの方が…
どんな感情よりも勝ってしまった。

「…オレが、傍にいるよ…」

 泣きじゃくりながら、そう伝えていく。
 その言葉に…眼鏡の方が驚いていった。
 まさか今の克哉から、全く逆の言葉が飛び出してくるなんて
予想してもいなかったから。

「…この三ヶ月間、お前はずっとオレの傍にいてくれた。暖かくて優しい時間を
たっぷりと与えてくれた…。そんなお前が、そんな悲しそうな顔をしたら…
放っておくことなんて、オレには出来ないよ…。これが正しい事なのか
判らないけど、これが…今のオレの、気持ちなんだ…」

「…お前、本当に…バカだな…」

 克哉の方からギュっと相手を抱きしめながらそう訴えていく。
 眼鏡はその言葉を苦笑しながら聞いていき…そうして、暫くしてから
彼の方から克哉の身体を抱きしめ返して、唇に羽のように軽いキスを
一つ落としていったのだった― 
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

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―お前の事、好きだ…!

 そう言おうとした瞬間、克哉の脳内に何か電流のようなものが
走り抜けていった。 
 其れはこの世界に来てからずっと掛けられていた、記憶の扉を
解錠する為のキーワードになっていた事を克哉は知らない。
 独り言で言うのではなく、もう一人の自分に聞こえる形で告げる事が…
あれだけ焦がれていた克哉の記憶を取り戻す唯一の手段であった事を
彼は知らなかった。

「うっ…あああっ…!」

 耐え難いぐらいの頭痛を、味合わされて…克哉は木製の床の上に
悶え苦しんでいく。
 今までずっと閉じ込め続けていた記憶が、忘れていた事実が
何だったかを…克哉はその瞬間、思い知らされていった。
 克哉のその様子を、眼鏡は半ば茫然となりながら見守っていく。

(ついに、この日が来てしまったか…)

 予想以上に早く訪れてしまった事に、眼鏡はショックを覚えていた。
 克哉がこんなにも苦しんでいるのなら、手を差し伸べるのが筋だろうと
いうのは彼にも判っていた。
 けれど…覚悟はしていても、密かに恐れていた事態がついに来て
しまったせいで彼は硬直してしまっていた。
 だから…克哉が記憶を急激に取り戻して、苦しんでいる姿を
今は眺める以上の事が出来ずにいた。

―そして克哉は思い知る。記憶を取り戻したら、あの哀れな自分と同じような
結末を辿ると言われた言葉の意味を…

 真っ先に思い出したのは、二年にも渡る長い介護に疲れ果てた
自分の姿だった。
 恋人を刺されて、その日から意識不明状態になって長き昏睡状態に
陥ってしまった相手を待ち続けて…記憶を失って、此処に訪れる寸前の
克哉はすでに疲れきってしまっていた。

『お願いだから目覚めて、本多…お願いだよぉ…!』

 そう叫びながら、本多に縋りついている自分の姿を思い出していく。
 そしてあの日、倒れていたのは…冷たい雨の中に立っていた男と、
倒れていた男の正体も同時に思い出していく。
 松浦宏明、自分と本多と同じ大学のバレー部に所属していた…
かつてキャプテンを務めていた恋人にとって、信頼していた仲間の
一人だった。
 一体、どういった経緯でこんな事態が起こったのかまでの道筋は
今の克哉には思い出せない。
 そして詳細、どんな会話のやりとりがなされていたのかもまだ
はっきりとは判らない。
 だが、今までずっと不明なままだったパズルのピースが埋まっていくのを
感じて、克哉は叫んでしまった。

「嘘だ、こんなの…嘘、だ…! どうして、俺と本多が恋人同士に…?
それに何で、松浦が…本多を、殺し掛けたんだよ…!」

「…ついに、お前は…思い出して、しまったか…。その出来事を…」

「お前、もしかして…知っていたの…?」

「ああ、そうだ…。俺はある程度の事を大体把握した上で…お前と二人で
ずっとこの世界で過ごしていた。お前にとっては優しい、ぬるま湯のような
この場所でな…」

「やっぱり、そうだったんだね…」

 その言葉に憤りを覚えると同時に、妙に納得している自分が
存在していた。
 眼鏡の瞳の奥にあるどこか切ない輝きに克哉は察していた。
 自分に向けられた感情が愛情や好意だけではないことを
すでに薄々とは察していたのだ。
 けれど問いただしたら関係が大きく変わってしまいそうで…
だから見ない振りをしてやり過ごして部分があった。

「知ったから、どうするというんだ…? 全てを知った上でお前を抱き、
共に過ごしていた俺を憎むか…?」

「違う! 憎める訳がないじゃないか…! お前の事、こんなに…
好きになっているのに…!」

 気づけば克哉の両目から涙が浮かんでいた。
 割れるような頭の痛みと涙によって顔をぐしゃぐしゃにしていきながら、
克哉はどうにか気力を振り絞ってその場から上半身だけでも
起こしていく。

「…酷い顔だな…」

「うるさい、そんなに判っているよ…! けど、もう…見ない振りなんて、
オレは出来ない…! どうしようもなく、お前の事を想ってしまったんだ…!」

「なら、本多の件は一体どうするんだ…?」

「っ…!」

 眼鏡は的確に、克哉に取っての最大の泣き所を突いていった。
 たった今、思い出したばかりで混乱してて…この先、どうするかといった事を
考える余裕は彼にはなかった。
 どうすれば良い、と言われても…すぐに思考が切り替えられる訳ではない。
 だから声を大にして、彼は絶叫するしかなかった。

「そんなの…そんなのすぐに判る訳がない! 考えられる訳がないだろう!
オレの方が逆に聞きたいよ…! オレは、どうすれば良いんだよ!」

 克哉が記憶を取り戻す事によって、この世界に大きな綻びが生まれていく。
 彼がここ数年の出来ごとを忘却していたから、成立していたこの場所は…
永遠に決して存在する事が出来ない、元から儚い世界である宿命を
背負っていた。

―そして克哉は、泣きじゃくり続けていく…

 そんな克哉を、憐れみの眼差しで見つめていきながら…ようやく眼鏡は
躊躇いがちに、相手の方に指先を伸ばしていったのだった―
 とりあえず、24日の夜に5月のスーパーコミックシティの
参加申し込みしました。
 という訳で今年の五月はイベントに久しぶりに参加しますので
宜しくお願いしま~す。

 何て言うか、3月に出るか出まいかって先月考えていた時点では
色々と疲れていて、テンションも下がっていたので結局出ないという
結論に落ち着いてけれど…二月になって環境も少し落ち着いたし、
余裕出来たから、参加しようかなって。

 何か友人に、「コミケで落ちた時のお金をそのまま次の申し込みに
使用すると落ちやすくなるって言うで」と聞いたので、今回のコミケの
申し込みはずっと使い回していた7500円じゃなく、別の処から
引っ張って来たので…そのお金がそのまま残っていたし。
 
 とりあえず3月に参加するかどうか迷った要因の一つに、
先日亡くなったうちの猫が、自分が原稿やっている期間中とかに
死期を迎えてしまったら何か嫌だなって気持ちがあったので。
 …ああ、もうこの子は長くないな~と感じた時に、3年ぐらい前に
じいさんと約束した事をふと思い出して。

 じいさんはその猫を凄い可愛がってて。
 一度、猫が生死の境をさまよった時に…一晩、徹夜して付きっきりで
傍にいた事があったぐらい愛情を注いでいた子なのですよ。
 だから自分が末期ガンで倒れた時、「あいつを看取ってやれない。俺の方が
先に死んでしまうのが本当に心残りだ」とぼやいていたので、「んじゃ
私が代わりにミーを看取るよ」と約束したもんで。
 とりあえず約束は無事に果たしたし。
 徐々に可愛がっていた猫が弱っていく姿を見ていた時は、前向きな気持ちに
どうしてもなれんかったけど、精一杯の事をやって看取った訳ですし。

 ボチボチ、気持ち切り替えて前に進む事にしますわ。
 という訳で5月、参加しますので良ければどうぞ宜しくお願いしま~す!
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                      10 11 12 13

 松浦宏明は今日も、かつて自分が殺めそうになってしまった
大学時代の友人の元に、仕事帰りに立ち寄っていた。
 大きな過ちを犯してしまった日から二年以上がすでに経過している。
 あの日、感情のままに刺してしまった友人は辛うじて一命を取り留めたが…
それ以後、一度も目覚める事のない植物人間状態に陥ってしまった。

(…本当は俺に、顔を出す資格など…ないんだがな…)

 それでも、ある程度の年月が過ぎて…罪悪感で胸が潰れそうになった時、
本多の親族にも、佐伯克哉にも遭遇しないように配慮しながら眠ったままの
男の元に顔を出したのがキッカケだった。
 松浦の面会は、何も差し入れたりしない。
 自分の痕跡をこの部屋に極力残さないようにしたいからだ。
 ただ顔を出し、本多の部屋で十数分を共に過ごすだけの…そっけない面会を
すでに一年半、都合がつく日はほぼ毎日のように繰り返していた。
 どうして、彼の元に顔を出してしまったのだと思う。
 松浦の罪は、裁かれる事はなかった。
 被害者である本多はあの日から意識不明で沈黙を守り…そして、自分と同じように
毎日のように此処に通っていた男は、こちらを告訴しない事が本多の意思だからと
一度だけ顔を合わせてしまった時に吐き捨てるように言った。
 かつての友人に、面会を始めた頃…ばったりこの病院の入り口で顔を合わせて
しまった時、非常に険悪な雰囲気になってしまった。
 自分が二年前に犯してしまった過ちを思えば、そして佐伯克哉と、本多の関係を
考えれば憎悪されるのは仕方ないと思う。
 
(…だが、もう俺は二度と…佐伯と顔を合わせたくない…)

 それ以後、二度とこの病院で彼と顔を合わせる事がないように…多少、
聞き込みや病室前に張り込みをして調べて…佐伯克哉が顔を出すのは
18時から18時半に掛けての時間帯が殆どで、17時台の内に顔を出して
消えれば…ほぼ遭遇する事がないと判った。
 幸い、勤務しているデパートからこの病院は近いので…足繁くに
通うようになっていた。
 現在は三カ月以上、患者が一つの病院に留まる事は法の規制で滅多に
なくなったが…本多のように意識を失ったままであり、病院施設等に収容されて
いなければ…家族だけでは生命を維持する為の介護が困難な場合、
もしくはもうじき命が尽きようとしている患者は、その三カ月よりも延長が
認められる場合もある。
 本多が二年間、この病院から動く事なく…通える範囲内にいてくれることが、
今の松浦にとってはある種の救いのようにすら感じられた。

「…本多、お前はいつになったら目覚めるんだ…?」

 傍らにパイプ椅子を置いて、其処に腰を掛けながら…今日もかつて友人であり、
最も信頼をしていた男に声を掛けていく。
 その顔には、知らず笑みが浮かぶようになっていた。
 …二年前、彼を刺した時には胸の中にドス暗い憎しみが渦巻いていた。
 顔を見るだけでも憎くて、疎ましくて仕方なく…むしろ、松浦は彼を避けていたし、
言葉も聞きたくないという態度を貫いていたと思う。
 だが、彼をこの手で刺して殺し掛けてしまった日から…あれだけ胸の中を
焦がしていた憎しみの感情は、日々薄れ始めていった。
 人間の感情は、表に出さず溜め続けることで淀み…強さを増していく。
 衝動のままに彼を刺す事を実行に移した事が、長年積もっていた憎しみを
発散する事に繋がったのだろう。
 其れは決して、許されるものではない。
 本来なら、法の裁きを受ける事は免れない程の大罪だ。

―けれど、本多はこちらが裁かれる事を望まず…結果、松浦はどういう理由かは
判らないが、そのまま変わらず日常の中で生活をする事が可能だった

 だからこそ、罪悪感が…本多に対して、ただ憎いだけではない感情が
ゆっくりと蘇り、突き動かされるように彼の元にこうして毎日、顔を出すように
なったのだろう。

「…俺も佐伯も、後…どれくらい、お前の目覚めを待てば良いんだ…?
お前が起きてくれなきゃ、謝ることすら出来ない…。どれだけ謝罪した処で
許して貰える訳がないと思うが…それでも、俺は…お前に言いたい事が…
山ほど、あるんだ…」

 そして、静かな声でポツリポツリと語りかけていく。
 その頬や髪にそっと触れ、少しでもこちらの声が眠っている本多に届くように
祈りながら告げていく。
 だがその時、松浦は気づいていなかった。

―本多にそうやって語りかける自分の顔が…どこか優しさを感じさせるもので
ある事を…

 本多に対して胸に抱いていた感情。
 其れは憎しみだけでなかったのだと、その顔は如実に伝えている。
 自覚した処で、自分が犯した罪を考えれば決して報われる日は来ないだろうと
半ば諦めている感情。
 けれど…彼が目覚めてくれない限り、ぶつけられないし…きっと、彼が
全てを忘れてでもくれない限り、佐伯克哉の存在がいなくならない限りは…
成就する日など来ないだろう。
 そう判っていても、松浦の胸には一つの想いが存在し…せめて、伝える日だけでも
来ることを祈りながら…今日も本多を見舞っていく。

「…しかし最近、佐伯が来ていないみたいだが…どうしたんだろうな?」

 先程、看護婦たちが噂話をしていたのがたまたま耳に入ったのだが…ここ数日、
佐伯克哉は顔を出さなくなっているらしい。
 その事を彼女たちは不審がっていたのが何となく気になりながら…今日も、
松浦は本多の傍でささやかな時間を過ごしていったのだった―
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                      10 11 12

 
克哉が決意を固めているのと丁度同じ頃、眼鏡を掛けた方の
彼にも本多の声が聞こえていた。
 
ああ、それで良い。お前が、それで幸せに過ごしてくれるなら
 
 その言葉が、リビングソファで推理小説を読んでいる間に鮮明に響いた瞬間…
彼は硬直せざる、得なかった。
 
「…どうして、あいつの声が…? まだ、眠ったままの筈じゃなかったのか…?」
 
 眼鏡の口から、酷く震えた声が漏れていく。
 …二年前のあの日から、彼は昏睡状態のまま目覚めず過ごしている筈だ。
 生きながら、死んでいるのとほぼ等しい状態に陥った、かつて…克哉の親友であり、
そして恋人に昇格した男の事を思い出していく。
 
「…こんなに早く、それとも…あいつの決断するべき日が迫ってしまったというのか…?
本当に…あいつは、思い出して平気なのか…?」
 
 恐れと危惧を抱きながら、眼鏡は呟いていく。
 そう…記憶を、ここで二人で過ごしている経緯を全て忘れている克哉と違い…
彼の方はその事情の全てを知っている。
 知った上で、彼は…大きな決意をして、ここで共に過ごしている。
 克哉が決断する時、彼もまた代償にしなければならないものがある。
 …其れが迫っている事を薄々と感じて、身体が小刻みに震えていくのを感じていった。
 
(くそ…身体が震えてしまっている…。本当に情けないな…一度は俺も了承して
納得した事の筈だろう…!)
 
 これから克哉には、二つの選択肢からどちらからの道を選ばなくては
ならなくなる。
 …そして反対側の道を克哉が選択した場合、自分は…其処まで条件を
思い出した時、情けない事に身体の震えが止まらなかった。
 克哉が彼に想いを告げようと、これまでと関係を変えようとした瞬間に、
眼鏡の方はこれから大きな変化が起こる予兆を強烈に感じ取り始めていた。
 
「…本多、お前の方の覚悟は決まっているのか…。もし、俺が残れる道を
あいつが選んだ時は…お前、が…」
 
 同じように、この世界を成り立たせる為に大きな犠牲を払う事になるもう一人の
男に向かって、知らず眼鏡は問いかけてしまっていた。
 その問いかけに相手が答える事は決してないと判っていても。
 彼の声が、想いが偶然聞こえたとしても…こちらからの言葉に、まず返答はないと
判っていても、彼は口にせずにはいられなかった。
 
(いいや、これ以上考えていても仕方がない…。すでに俺と本多は、変わらない運命を
覆す為にそれぞれ、犠牲にするものを賭けた状態な訳だ。…あのまま、
狂いそうになっている
あいつを…内側から見せつけられていくよりも、
変化を、幸運になるかも
知れない可能性を生みだす事に同意したのは…
確か、なのだから…)
 
 そうして目を伏せて、深呼吸を繰り返している内に…少しずつ落ち着きを
取り戻していく。
 そう、今更ジタバタしたって何も変わる訳ではないのだ。
 …予想よりも早く、この世界が終焉を迎える日が訪れたとしても…それは
仕方ない事なのだから。
 ぬるま湯のように、暖かく優しい世界。
 其れは長く目覚めぬ恋人を待って、疲弊して冷え切ってしまった克哉の心を
癒すために紡がれたのだから。
 
(…これだけ早く決断する日が来たという事は…既に、俺は果たすべき役割を
勤め上げたという事なのか…?)
 
 もし、そうだというのなら多少は救いはあるのかも知れない。
 そう考えて自嘲的に笑っていくと…玄関の方から音が聞こえていった。
 此処は自分達二人しか存在しない世界。
 扉が開閉する音が聞こえるだけで、相手が帰ってきたという事が
即座に判ってしまう。
 そして耳を澄ませば、相手が廊下を少し速足で歩いてこのリビングに
使っている部屋に向かっている事が伝わってくる。
 
「ただいま、ねえ…ちょっと、話をしても構わないかな…?」
 
 そして頬を赤く上気させて、何かを決意しているような眼差しを浮かべた
克哉の姿が現れていく。
 
「…あ、ああ…」
 
 その瞳を見ただけで、眼鏡は何かを予感せざる得なかった。
 いや…ずっと、その輝きがすでに相手の双眸に宿っていた事を彼は察していた。
 けれど…敢えて、其れから目を逸らして気付かないようにしていた節があった。
 曖昧にする事で、こちらから想いを伝える言葉は一切言わない事で…辛うじて
均衡を保っていたその関係が、もうじき大きく変革を迎える事を悟っていく。
 
(…もう、これ以上はごまかす事は出来そうにないみたいだな…)
 
 克哉はゆっくりと、こちらに歩み寄ってくる。
 静かな表情を湛えていき、穏やかな笑みを浮かべていた。
 …拳を強く握り締めている事から、克哉もまた緊張をしているのだという事が
伝わってくる。
 ドクンドクン、と自分の鼓動が早鐘を打つのが脳内に響き渡っていくようだった。
 
「…オレ、お前の事が…好きなんだ。どうしようもなく…ずっと、言えないままで
いたけれど…。だから教えて欲しい…お前は一体、オレの事をどう思っているのかを…」
 
 真剣な眼差しを浮かべていきながら、克哉は問いかけてくる。
 その声は微かに震えて…大きな不安を抱きながら、こっちに尋ねて来ている事が
すぐに判ってしまう。
 
「…そうだな、俺は…」
 
 其処まで口にして、眼鏡は言葉を詰まらせていく。
 
(…本当に、口にしてしまっても良いのか…?)
 
 きっと、ここで相手の気持ちに応えれば…もしかしたら、道は確定するかも知れない。
 だが…その場合、本多は…と考えた途端、其れ以上の言葉を安易に口にする事が
出来なくなってしまった。
 この二年間、彼ら二人を内側で見続けている内に…自分はこんなにも甘くて
情けない人間になってしまったのかと呆れたくなってしまった。
 
「俺は…お前の事を…」
 
 そして、惑いながら続きの言葉を口にしていく。
 
―その瞬間、克哉は彼の目の前で唐突に…雷に打たれたかのような反応をして、
その場に崩れ落ちていったのだった―




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香坂
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趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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