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―はぁ…ん
まどろみに落ちて、体中の皮膚が粟立つような感覚を覚えて、
悩ましいを出しながらゆっくりと克哉は意識を覚醒させていく。
うっすらと目を開いていくと、見慣れたシンプルな内装の寝室が
広がっている。
そして、意識を覚醒していくと…裸のまま、ベッドの柵の部分に
両手首を拘束された状態で、もう一人の自分に組み敷かれているという
異常なシチュエーションに出くわしていた。
「…やっと起きたか。…頭ははっきりとしているか、『オレ』…?」
「えっ…何だよ。こ、れ…?」
目覚める早々、とんでもない状況に陥っていて克哉は狼狽したような
表情を浮かべていく。
しかも起きたばかりで全然頭が働いていなくて、何故こんな状況に
陥ったのかまったく繋がらない。
「…お前が今夜は、夕食も風呂の支度も何もしないで…眠りこけて
いた事に対するお仕置きだな…。まあ、毎晩遅くまで抱いているから
日中に疲れて眠ってしまうのは仕方ないと割り切ってやるが…妻の
立場として、夫が帰って来るまで昼寝をしてしまうのはどうかと思うぞ…?」
眼鏡の口調は、どこか優しいが…口元に湛えている笑みがあまりに
怪しすぎた。
はっきりいうと、口調が優しい分だけ余計に怖いものを感じる。
それでようやく、克哉は思い出していく。
問答無用で挙式してこのマンションで一緒に暮らすようになってから
すでに二ヶ月余りが経過していた。
そして本日の日中は…そろそろ、家中の細かい部分の汚れが目立って
来た事に気づいて、はりきって大掃除をしたのだ。
真面目な性分の為か、一度こだわって掃除をし始めると夢中に
なってしまい朝十時から三時ぐらいまでぶっ続けで作業を続けて。
一区切りつけて終わった頃に…疲れてしまったので、ついリビングの
ソファで横になったら…。
「あっ…」
チラリ、と寝室の壁に掛けられている時計を眺めていくと…時刻は
すでに午後八時を回っていた。
眼鏡が帰宅する時刻は、19時…今から一時間近く前だ。
夜遅くまで激しく抱かれて、日中大掃除なんてしたら4~5時間ぐらい
爆睡してしまうのは仕方ないかも知れない。
けれど、あまり口に出して褒めてはくれないけれど…眼鏡はこちらが
暖かい夕食を毎日用意して待っている事を喜んでくれているのは確かだった。
「あ、あの…御免。今日はちょっと本腰を入れて大掃除をしていたら
夢中になっちゃって…その…」
「言い訳は良い。夕食も簡単なものを自力で作って満たしておいたからな…。
代わりに、今夜はお仕置きという名目をつけていつもと違った趣向で楽しませて
貰おうか…」
「えっ…何を、あっ…」
眼鏡が強気に微笑むと同時に深く唇を塞がれて、同時に胸の突起を
両手で執拗に弄られていった。
熱い舌先がこちらの口腔全体を撫でくり回すように蠢き、こちらの舌を
甘く激しく絡ませていく。
クチュ…グチュ。ピチャ…ヌチャ…
互いの唾液が混ざり合ういやらしい水音が頭の芯に響き渡りながら
早くも硬くしこり始めた突起を執拗に責められていく。
たったそれだけの刺激で…克哉の下肢は早くも反応し始めて…ゆっくりと
性器が勃ち上がり始める。
唇が離れると、ツウっと糸が伝い始める。
眼鏡が舌先でそれを切る仕草をしているのが、妙に艶かしく感じられた。
「くくっ…相変わらずイイ感度をしているな…。もうこんなに元気に、硬く
張り詰めているみたいじゃないか…」
「や、だ…バカ、言うなよ…」
相手は服をしっかりと着込んでいる状態で、自分だけが全裸で拘束されて
一方的に快楽を与えられているなんて、恥ずかしくて仕方がない。
なのに…幾らもがいて解こうと試みても、白い布での戒めからは
解放される事はなかった。
「あ、んっ…」
眼鏡の唇がゆっくりと降下してきて、胸の突起をそっと口に含んでいく。
コロコロと巧みに舌先で転がされていくとそれだけで気が狂いそうになる程の
快楽が走っていく。
その度に克哉のペニスは痛いぐらいに張り詰めて、先走りを滲ませていく。
「…随分と元気になっているじゃないか。もう先の方から…いやらしい汁が
溢れ始めているぞ…?」
「言う、なよ…はっ…あ…や、見るな…」
いきり立ったペニスは触れられる事なく、代わりに熱い眼差しを浴びせられる。
触れられていない筈なのに、それで一層興奮が高まって収集がつかない程の
甘い痺れが背筋を走り抜けていった。
「…これは、お仕置きだと言っただろう…? これぐらいで止めてやる程…
俺は甘くはないぞ…?」
(うわ~! もう一人の『俺』…心底楽しそうだ…!)
その瞬間の眼鏡の心底愉しそうな笑みを見て、克哉は心の中で叫んでいった。
胸全体に赤いキスマークをつけられながら、時折…尖りきった突起を歯でカリっと
甘噛みされて、耐えられないとばかりに克哉が腰をくねらせていく。
いつの間にか相手の身体が、こちらの足を割って覆い被さる体制に変えられた
おかげで…相手の腹部が、ペニスに当たって身動きする度に擦られていく。
それが余計にじれったくて、もどかしくて…もっと強い刺激を求めるように
克哉は何度も腰を捩じらせていった。
「やっ…そんな、焦らすような真似…しないで、くれよ…」
胸の突起と、ペニスへの刺激だけで…自分の蕾はいやらしく
収縮を繰り返して息づき始めている。
二ヶ月間、散々抱かれ続けて快楽を覚えこまされた身体は…相手に
少し触れられるだけで反応するぐらいに淫らなものへと変わっていた。
それなのに、こんな風に焦らすような行為を続けられるのは一種の
拷問に近かった。
(あぁ…だから、お仕置きなんだろうけど…)
半ば諦めながら、潤んだ瞳で克哉は眼鏡を見つめていく。
「そんな目をしても駄目だ…もっと、お前を焦らしてトコトンまで
おかしくさせてやる…」
「ひゃう…!」
キュっとペニスを握りこまれる程度の刺激だけで、もう気が狂いそうに
なっている。
早く相手の熱いのが欲しくて堪らない。
そう熱望しているにも関わらず、もっとも求めているものが与えられない状況を
打破すべく、上目遣いで相手を見つめて訴えていった。
それから、荒く忙しい呼吸を繰り返していきながら…懸命に相手の耳元に
唇を寄せて、殺し文句を囁いていった。
「やっ…これ、以上…焦らさない、で…! お前が、欲しくて…堪らない、
のに…意地悪、するなよぉ…!」
「っ…!」
その時、相手を煽るべく…克哉は懸命に、相手の耳穴に舌を差し入れて
クチュリ…と水音を立ててから、その耳朶を甘噛みしていった。
―お前が、一刻も早く…欲しいんだ…
確かに、夕食の準備も何もしないで昼寝して眠りこけた自分も悪かった
かも知れない。
だからこんな風に「お仕置き」という名目の意地悪をされてしまったというのは
克哉も充分に自覚していた。
だが、もう…そんなのどうでも良くなるぐらいに、身体が熱くなって堪らなく
なってしまっていた。
早く、この男の熱いモノが欲しくて身体の奥が疼いている。
だから余裕がない声で、克哉はただ…求める言葉を紡いでいった。
「くっ…お前、煽るのが上手くなったものだな…」
その一言で、眼鏡もまた…余裕なさそうな表情を浮かべていく。
まだまだ焦らして、相手を追い詰めるつもりだったのに…今の殺し文句を
囁かれたせいで…服の下で己の欲望が痛いぐらいに張り詰め始めていった。
余裕しゃくしゃくだった眼鏡の表情も、切羽詰ったものとなり…荒い呼吸を
繰り返しながら、ズボンのフロント部分を下ろして、熱い性器を露出させていく。
そのまま、トロリ…と先端部分にたっぷりとローションを落として滑りを
良くしていくと…相手の蕾に宛がい、一気に貫き始めていった。
「そん、なの…知らない…! オレはただ、本心を…言った、だけだよ…」
「だから、それが…俺を煽っているんだと、自覚しろ…バカが…」
熱っぽい眼差しで、顔を真っ赤に火照らせて淫蕩な表情を浮かべている
克哉を見つめていくと…噛み付くようなキスを落としていく。
その時、スルリ…と両手を戒めていた白い布を解いて、克哉の両腕を
解放していった。
「あぁっ…」
克哉はすかさず、相手の背中に腕を回してしがみついていく。
眼鏡のモノを深く受け入れながら…強くしがみつくことで、克哉は
満たされたような笑みを浮かべていった。
ただ、自分の中に存在しているというだけで満たされて、感じていく。
その表情を見て…苦笑めいた笑みを浮かべながら眼鏡は呟いていった。
「…まったく、これではこれ以上はお仕置きにならないな…」
「ん、凄く…気持ち良い…だけだね、これだと…」
甘い睦言を紡ぎながら、克哉の方から相手の方へと顔を寄せて
何度も啄ばむようなキスを繰り返していく。
それで機嫌が直ったのか…柔らかく微笑みながら、眼鏡はそっと
告げていった。
「…まあ、良い。今夜はこの程度で止めておいてやる…後は、ただ
俺だけを感じ続けろ…」
そう告げて、激しい抽送が開始されて…克哉は翻弄されていった。
そして、克哉が意識を失うまで眼鏡は夢中で彼を突き上げ、抱き続けて
いったのだった―
致しましたが、本人がまだ納得していない状態なので…
一旦下げさして貰います。
こうしたい! って鮮明なイメージがあるのに…納得いく
仕上がりになっていない。
本当にそんな感じです。
クライマックスの仕上がりは80~90点ぐらいの出来に
なればOKって基準を設けていますが、数時間前に上げた
バージョンだと70点行くか行かないかの出来なので…
やっぱりもう少し煮詰めて、やらせて頂きます。
17日分は休み、そして本日は夜に一旦気分を変える為に
克克か御克の新婚ネタでも行かせて貰いますね。
一応十時間ぶっ続けで寝たので、本日は体調の方も
良いのでそういう形にさせて貰います。
その上で…今晩、頑張って向き合って完成度を高めさせて
貰いますね。
それでは失礼致します(ペコリ)
3時間前後だけ一旦アップしたバージョンをこっちに掲載しておきます。
暇だったら正式版と見比べて下され。
大変お待たせしてしまってすみませんでした…(汗)
(書いてみて、こちらの方だと眼鏡と克哉のやり取りが全然
活きていない事が身に沁みました…)
興味ある方だけ、「つづきはこちら」をクリックして
読んでやって下さいませ(ペコリ)
克哉は、彼の目の前で赤黒い刃に腹部を突き刺されていた。
だが、それが深々と体内に刺さっているのは…眼鏡を突き飛ばした後に
克哉の方からこの子供を抱きしめようとしたからだ。
そうでなければ…正面を向き合う形で、刺される事はなかった。
「…大丈夫、だよ…」
そして、今にも消えてしまいそうな儚い声で克哉が呟いていく。
口元には…血が、零れている。
一気に顔が青ざめ、腹部からはゆっくりと…血が溢れ出して…樹海の
地面に静かに滴り落ちていく。
それでも、克哉は自ら手を伸ばして…一層深くその刃が自分の中に
収まるのを承知の上で…小さい自分に、手を伸ばして抱きしめていく。
「うっ…あっ…」
子供の自分が怯えたような声を漏らした。
だが、克哉は迷わない。
ギュウっと強く…その小さな身体を抱きしめていく。
「大丈夫だから…もう、怖がらなくても良いんだよ…小さな、『俺』…」
あやすように、慈しむように…克哉は、少年を抱きしめていく。
触れるたびに少年の肌を蝕んでいた黒い腫瘍が、彼の肌にも移って…
少年に触れている部位から、蝕まれ始めていく。
それでも決して、手を離したりはしなかった。
あまりの光景に…眼鏡はただ、言葉を失うしかない。
(何故、お前はそんな状態でそのガキを抱きしめている…っ! 早く
離さないと、お前までその不気味な奴に侵されるぞ…!)
眼鏡は、ついとっさに克哉の方を心配してしまっていた。
ようやく硬直が解けて、動けるようになると…その子供を引き剥がそうと
歩み寄ろうとしたが…。
「何をしている、早くそのガキを離せっ!」
「来ないで! ここでこの子を拒んだら…誰が受け入れるんだよ!」
克哉が、全力を込めて一喝していった。
その剣幕に、克哉の方が押されていく。
―苦しい、よぉ…
その瞬間、黒いのっぺらぼうのような異様な仮面をつけた…少年の自分の
声質が変わっていった。
泣きじゃくって、縋っているような…そんな感じで、自ら刃から手を離して
克哉の背中に腕を回していく。
「…良いんだよ、もう…その記憶を一人で抱えなくても。辛いなら…オレも
一緒に背負ってあげるから…ね」
―本当、に…? オレはもう…これを一人で抱えなくて、良いの…? 一人ぼっちの
記憶を…こんなに、辛くて苦しいものを…俺は一人で持っていなくて…良い、の…?
「うん、良いんだよ…。今まで、一人で本当に辛かったね…。だから、もう…
一人で背負わなくて…良いよ。今まで、大変、だったね…」
そうして、激痛が伴う中で辛うじて克哉は微笑んで…子供の自分をぎゅうっと
強く抱きしめていった。
その瞬間、少年の身体は光輝いていく。
淡い光を放ちながら…徐々に細かい粒子となって…そのまま、克哉の中に
取り込まれていった。
―ありがとう。俺、ずっと寂しかった。こんなに辛くて痛いものを背負わされた挙句に
こんな森の奥で一人で過ごしていたのが、悲しくて苦しくて仕方なかったから…。
だから、だから…
最後に、少年の泣き声が聞こえた。
自らの内側に取り込んだ、小さな自分に向かって克哉は語りかけていく。
「…判っているよ。今まで…お疲れ様だったね…小さな『俺』…」
そう、両手で胸を押さえるような格好になって…どこまでも優しい声音で
告げていく。
その瞬間、少年が幸せそうに笑った気配がして…そして、完全に跡形もなく
小さな子供の自分は消えていく。
全てが終わった途端、克哉の身体は…その場に崩れ落ちて、地面へと
倒れていった。
「危ない!」
とっさに駆け寄って、眼鏡は克哉の身体を支えていく。
それでどうにか、頭をぶつけるのだけは回避出来た。
克哉の息は荒く、見るからに瀕死の状態だった。
だが…眼鏡は、たった今…目の前で起こった事が理解出来なかった。
どうして、もう一人の自分はあんなガキを必死になって受け入れようとしたのか。
何故、自分にとってはあれだけ憎たらしく仕方なかったガキが、たったそれだけの
事であっさりと消えて…こいつの中に取り込まれたのか。
全てが眼鏡にとっては信じられないことばかりで、混乱しきっていた。
「…これで、全ての憂いは絶ったよ…」
「…何でお前は、こんな真似をした…?」
自分の腕の中にいる、瀕死の克哉に向かって静かに問いかけていく。
「…あの子が、ずっとこうされる事を心の奥底で望んでいるのを、感じて判って
いたから…。まったく、そういう所は本当にお前にそっくり、だよな…」
それでも…ここは現実ではない世界。
確かに弱ってはいたが…克哉は気持ちを強く持っていた。
まだ…もう一人の自分に対して伝えなければいけない事は、沢山あった。
だから荒い息を吐きながらも、その言葉が淀むことはなかった。
「…ずっと重いものを一人で背負って来たら、辛くて…当然だよな。だから…
あの子は、ううん…小学校の卒業式の日から…お前は、ずっと…孤立していた
事を…親友に裏切られた事で泣き続けて、いたんだよ…」
「お前、何を言っている…?」
何故、こんな状況で…そんな話が飛び出るのかが…眼鏡には全然
判らなかった。
だが、克哉は…必死に、片方の掌を…握り締めていく事で伝えていく。
「…憎しみを、晴らすには…あの子の存在を救うには…あの子が背負っている
痛みや苦しみを、オレ達のどちらかが受け入れてやるしか…なかったんだよ…。
受容して…あの子を拒まないでいてやる事で…あの子は、切り離されている
事実から解放される。そうしたから…消えた、んだ…だって…」
血まみれの手が、そっと眼鏡の頬に伸ばされる。
その掌は…とても、温かくて…。
「…お前はあの日からずっと、その痛みを苦しみを…誰かに聞いて貰いたかった。
受け入れて貰いたかった。けれど…プライドが邪魔をして、家族にも誰にも
吐き出す事は出来なかった。けれど…心の奥底では、そうずっと思っていた
んだからね…」
それは、誰にも悟られたくなかった少年時代の佐伯克哉の本当の願い。
孤立したくなんて、なかった。
親友に裏切られたくなかった。
一人ぼっちで…誰にも理解されないまま、遠くの中学校になんて行きたく
なんてなかった。
そんな本心を、口に出せずいえないまま…彼は眠り、抱え続けて…ずっと
ズクズクと胸が痛み続けていたなんて、そんな事は…。
「そんな、訳が…ない! お前は何をでたらめを…!」
「でたらめ、何かじゃないだろ…。認めろよ、自分の本心を…。自分の弱さも
罪を何もかもを…そうやってお前がみっともないから…と自分の中の認めたく
ない部分を否定し続けたら、その切り離された部分はどうすれば、良い…。
『自分』と大事な人間に否定される事ぐらい、辛くて悲しい事は…ないんだぜ…?」
―人の心の中には、色んなものが眠っている。
綺麗なものも、汚いものも混然となって一人の人間の心の中に
潜んで…同時に存在している。
これは即ち、彼が自分の中の認めたくない要素を切り離してしまったから
起こってしまった悲劇。
あの少年の克哉は、彼の見たくない本心そのものだった。
そして…孤独で変質して、あんな有様になってしまったのも全て…その
痛みを長い間、理解される事なく吐き出す事もなく抱え続けていたから…。
―誰かに受け入れられたい、理解されたい。
その願いが叶ったから、だから少年は…克哉の中に溶け込んでいった。
「…お願いだから、どうか…その事実を受け入れて欲しい。だって…そうだろ?
自分の中の弱さも、罪も受け入れられないそんな人間がどうして…人を愛して、
一緒に生きて、いくんだ…? 子供の自分すら…受け入れられない、そんな
奴が…本当の意味で、他人を受け入れられるの、かな…?」
「っ!」
それは彼にとっては耐え難いぐらいに、苦痛に満ちた一言。
けれどそれでも…克哉は、眼鏡の腕の中に納まって間近で顔を見据えて
いきながら告げていく。
―克哉に残された時間は後、僅かだった。
もうじき…この世界で、自分は形を保って存在出来なくなる。
少しずつ、自分の中から力とかそういったものがゆっくりと流れ落ちて
いくような感覚を覚えていた。
だからその前に、彼にはしなくてはいけない事があった。
もう一人の自分に全ての事実を認めさせて、その背中を押すと
いう最後の仕上げを…。
―それまで、どうにか持ってくれ…!
心の中で強く願いながら、克哉はもう一人の自分と最後の対峙の時を
迎えようとしていた―
―克哉は…ずっと、自分達にとって幸せになる道が存在するだろうか
もう一人の自分の内側から、考え続けていた。
彼が持っていた…ズバ抜けた観察眼と、客観性。
それは自分に自信が持てなかった頃には生かせなかった
能力だったが、追い詰められた事で…彼は限られた時間の中で
自らの内の世界を視る事で、どうにか一筋の希望を見出していた。
そして、誓っていた。
…このほんの僅かな可能性を守る為ならば…どんな事でもすると。
―たった一度だけ、御堂に抱かれた日の朝に静かに決意していた―
森の影から現れた小さな影に、二人はハっとなってそちらの
方へと一斉に視線を向けていった。
其処にいた少年の克哉は、異様な風体と成り果てていた。
それを目の当たりにして、彼らは驚愕するしかなかった。
「何だ、これは…!」
「っ…!」
眼鏡は、つい震えながら声を発し…克哉は驚きの余りにまともに
声が出なくなっていた。
子供の克哉は、真っ黒でつるりと…目、鼻、口の部分がまったくない
のっぺらぼうを連想させるような仮面をつけて、その場に立っていた。
少年の服装はブレザー…かつて小学校の卒業の日につけていた
ものに間違いなかった。
しかし…その隙間から覗いている首筋から、手首に掛けて…
まるで皮膚ガンに侵されているかのように赤黒い腫瘍のような
ものがびっしりと浮かんでいる。
(…そうか、あの子が…仮面をつけているのは…!)
恐らく、克哉の推測が正しければ…恐らく、あの黒い腫瘍は彼の
顔にまで及んでいる。
だから、きっとそんな顔を見られたくない…そして表情を読み取られたく
ないから、あんな異様な造りの仮面を纏っているのだろう。
―お前達だけ、どうして…! 無事なんだよ!
少年が声を発すると同時に、森全体が震えた。
ビリビリビリ、と静電気が走ったかのような刺激が全身に走っていく。
―僕だけが、こんなに苦しいものを背負わされて…ついに、こんな
姿にまでなったというのに…! どうして! どうしてっ! どうしてっ!
それは子供が駄々を捏ねているような、癇癪を起こして感情を
爆発させているような…そんな、光景だった。
肌が粟立つぐらい…激しい憎悪の波を少年から感じていく。
いや、事実…彼は全てが憎くて仕方なかった。
その強烈な負の感情が、心の世界…そう、彼が存在している
一帯を著しく歪めて、ここまでゾっとするような光景を生み出していた。
「…本当に、これが…俺の一部、なのか…?」
誰にだって心の中に、認めたくない…直視したくない醜い
部分が存在しているだろう。
その象徴を初めて、目に見える形で確認して…悔しいが眼鏡は動揺して
唇を震わしてしまっていた。
あの子を救わなければとか、克哉が言っていた時には…何であんなガキを
自分が救わなければいけないんだ…と内心では、強く思っていた。
だが、嫌でも納得した。
これは…あまりに、哀れな姿だったからだ…。
「そうだよ、小さな身体に…この世界を歪める程の『憎悪』という猛毒を
受け入れさせられたからこそ…あの子は、あんな姿になったんだよ…!」
拳を痛いぐらいに握り締めながら、悲しそうな眼差しを浮かべて克哉が
肯定していく。
「…早く、受け入れてあげてくれっ…! お前が受け入れない限り、自分の
後悔に満ちた過去を…消え去りたいと思った苦い記憶を拒絶し続けてる
限り、決してあの子は救われないから! どんなに醜くても、何でも…オレと
同じように、彼も…お前自身でもあるんだからっ!」
克哉は、険しい顔を浮かべながら…もう一人の自分を激励していく。
だが、眼鏡は身動き取れなかった。
展開が速すぎて、あまりに彼にとって衝撃的な内容が立て続けに起こり
続けて…おかしくなりそうだった。
せめて、もう少し…時間があれば、整理し…納得するだけの準備が出来る
余裕さえあれば、彼は受け入れられただろう。
しかし…ずっとこの世界に存在し、それを見据えていた克哉に対して…
眼鏡はこの一年、ここから離れ続けていた。
だから、彼は動けなかった。
―この俺が、動けないだと…っ?
恐怖のあまりに、強張って動けないなど…彼は決して認めたくなかった。
だが、冷や汗がジトリ…と服の下から滲み始めているのが判る。
動悸が早くなり、心が大きく波打ち続ける。
「早くっ! あの子を見失わない内に…!」
「判っている…! 判っている…!」
けど、眼鏡の心に反して…憎悪の塊である少年の自分と対峙して
彼の身体は動かなくなってしまった。
頭では理解しているし、判っている。
だが認めたくない気持ちの方がまだ強かった。圧倒されていた。
情けなかった、信じたくなかった。
その強烈な感情が、彼の心を満たしているにも関わらず…なおも
身体を動かせない現実に、本気で歯噛みしたくなった。
だが、無理もなかったのだ。
切り離さなければ正気を保てなかったくらい彼にとって苦痛が伴う
感情と記憶を、ある日いきなり突きつけられて…果たしてどれくらいの
人間がすんなりとそれを受け入れられるというのだろうか?
苦い経験を、過去を受け入れるには勇気と時間がいる。
その、時間の方が…今回の場合は、無情なくらい彼にとっては
足り無すぎたのだ―
「『俺』…! 早く、動いてっ!」
「判っているっ!」
ようやく、歯を食いしばって歩み寄る勇気を持った瞬間…少年は、
こちらの方にいきなり素早い動きで歩み寄っていった。
その手には黒光りする、何かが握られていて…。
「っ…!」
それが何か、認識した時にはすでに遅かった。
瞬く程の僅かな時間に、間合いを一気に詰められて…少年は
素早く眼鏡の懐に飛び込もうとしたその時―
「危ないっ! 『俺』…!」
とっさの判断で、克哉は…もう一人の自分を突き飛ばしていく。
そして…信じられない光景が、目の前で展開される。
「嘘、だろ…?」
辺りが一気に真っ白に光ったと…錯覚するぐらいの衝撃的な
出来事が起こっていく。
瞠目し、その場から足が縫い取られてしまったかのように…彼は
動けなくなっていった。
ふがいない自分を、この時ほど…呪った瞬間はなかった。
「返事をしろっ…『オレ』…!!!!」
眼鏡の悲痛な叫びは、黒い森全体に響き渡り…悲痛の感情を
伴って木霊していったのだった―
その大きな木は…まるで酸性雨や有害なスモッグに晒されて、枝も葉も無残な
有様になってしまった状態に良く似ていた。
樹皮は全てが逆立って向けていて、ボロボロだ。
何より…木の筈なのに、どす黒く変色している部分はまるで生きているようで
不気味に脈動を繰り返している。
所々に樹皮が捲れている部位から、重症のアトピー性皮膚炎の人間の
肌のような…カサブタだらけのガサガサの部分が覗いて、見ているだけで
ゾっとするような木だった。
「…間違いない。この木の周辺に、あの子がいる…」
「何だとっ!」
克哉が険しい表情を浮かべながら、そっと木に触れていった瞬間…
周辺の激震は一旦、止まっていった。
ようやく立ち上がる事が出来る状況になって…二人は土埃を
払いながらその場から起き上がっていく。
「…本当に、こんな不気味な木がある周辺にあのガキがいるのか…?」
「うん。だって…この歪んだ木が何よりの証だよ。…あの子の中にある
猛毒が…この森の木の生態を大きく歪めてしまっているからこうなって
いるんだからね…」
「…猛毒、だと?」
「…そうだよ。オレ達の心の中に巣食う『ガン』そのものと言っても良いかも
知れない。お前がかつて抱いた、自分を裏切った人間への憎しみとその
記憶と…御堂さんを陵辱して監禁していた…今のお前にとっては苦い
思い出である二つの生々しい記憶が…あの子の中に息づいてしまって
いるからね…。それを一人で背負い込んで、あの子は…冒されてしまっている」
「…おい、お前は一体何を言っているんだ…?」
眼鏡には、克哉の言っている事がイマイチ良く判らない。
いや…無意識の内に、理解する事を拒んでしまっていた。
「…判らない? お前からあの子が分裂した理由、それは…お前が無意識の
内にその記憶を抱くのを拒んでしまったからだよ。だから…あの子は一人で
それを背負う事になった。あの子の性格も言動も歪んでしまったのは
だからだよ…。苦しくて辛い、一番後悔している記憶があの子の中で
息づいて、何度も繰り返し繰り返し再生されている。
その影響を受けて…この近隣の樹木も、こんなに変質して
しまっている…そういう事、だよ…」
ここは、佐伯克哉という人間が生み出した世界。
この森も空も…彼らが生み出した、一つの象徴的な姿なのだ。
深い森は…その苦い記憶を他者に決して悟られる為の城塞そのものなのだ…。
「…この森も、お前とあの子が生み出したものだよ…。誰にも話さないで
オレ達は、後悔に満ちた過去を背負って生きてきた。誰にも弱みを
見せたくなかった…。そういう心が、この深い森を生み出している。
ここに覆い隠している物を、決して誰にも悟られない為にね…」
「この森が…あのガキと、俺の心の象徴だと…言うのか…?」
言われて愕然となりながら、眼鏡は…周囲を見渡していく。
こんな黒くて、暗い森が…自分の心の象徴と言われてかなりの
ショックを受けているようだった。
だが…克哉は、その続きの言葉を言いよどむ事はしなかった。
自分が突きつけている事実が、彼にとってショックを与えるものである事は
充分に判っている。
変化していく。…そして、その毒は心を緩やかに蝕んで、人の正気を
奪っていくんだよ…」
静かに目を伏せながら…克哉は答えていく。
残酷な事実を突きつけているという自覚はあった。
だが、彼がこの現状を認識しない限り…状況は決して、解決しない。
それが判っている克哉は…だから、相手にとっては辛くなると
判っても真実を告げていった。
精神病と言われる病気の大半は、無自覚の内に溜め込んだ怒りや
嘆きの感情が吹き出す形で現れる。
長い年月の内に積み重なれたその人間の叫びは、創作や他者に打ち明けずに
心の中に溜め込む事で…いつしか、その人間を歪めて変質させてしまうのだ。
それでも、年月を経る事で幾分か薄れる事もある。
その毒が自然と消えて…心が回復する事もあったが、吐き出さなければ
整理されないぐらいに深い傷は…こうやって心象世界すらも大きく歪めて
ここまでおどろおどろしいものへと変えていくのだ―
「…嘘、だ…」
「嘘、じゃない!」
信じられないと唇を震わせる眼鏡に向かって、克哉が一喝していく。
「…だから、言っているんだ…。あの子を、自分の中で悲鳴を上げたく
なるぐらいに辛い記憶を…お前自身が忌避して、遠ざけることによって…
あの子は痛みを背負わされたままで孤独に晒されるんだ。
その苦痛が…この世界に全てを侵したら…多分、お前もオレも…きっと
今のように冷静を保ってはいられない。それに影響を受けて…呑み込まれる
可能性がある。だから…まだ、手遅れにならない内に…あの子を
どうにかしなきゃ…いけないんだよ…」
そう、克哉が眼鏡に説明している間にも…おぞましい黒いものが
周辺の森を緩やかに変質させていく。
黒い毒が、森に静かに広がり続けていく。
この樹海が自分の心の現われだとしたら…それが、時間の経過と共に
こんな風に徐々に黒い毒が広がり続けている…それを実際に目の当たりに
して眼鏡は大きなショックを受けて、呆然としていた。
「…こんな話を、信じろというのか…?」
「…信じて貰わなきゃ、先には進めないよ。そして…放置していたら
何年後か十何年先の事になるか判らないけど…きっと、傍にいる人間すらも
傷つける事になる。…お前が御堂さんを愛して、ずっとこの先の未来も
共に歩んで行きたいと願うなら…この問題を解決しなきゃ、きっと…
お前が出ていても、オレが生きる事になっても…どちらが出ていても
佐伯克哉という存在は、あの人を傷つける存在に成り果ててしまうよ…」
それは、確信に満ちた口調だった。
…眼鏡に主導権を奪われたその日から、克哉はこの世界で
ひっそりと生き続けていた。
少しずつ蝕まれる世界で、徐々に広がって増殖していく黒い影を
見据えながら生きてきた。
それでも…御堂を偶然に駅の構内で見つけるまでは緩やかだった。
爆発的に増えたのは、再会してその想いを自覚してから。
そして、愛している事を思い知った時に…過去の自分が御堂に対して
犯してしまった幾つかの出来事を心底悔やんだ日からだった。
―そしてその苦痛を逃れる為に、自分の心の中に存在する残酷な
子供の部分を、無意識の内に彼は拒否をしてしまったのだ…
「………」
克哉の口から放たれた真実は、眼鏡から言葉を奪い沈黙させていく。
そんなもう一人の自分に向かって、克哉はゆっくりと歩み寄っていった。
知らぬ間に、身体も大きく震えていた。
青ざめて、険しい顔を浮かべている眼鏡に向かって…今度は、そっと
克哉の方から顔を向き合う形で抱きついていった。
「…今、オレが告げた事は…お前にとってショックな内容ばかりだったと
言うのは良く判るよ…。けれど、これ以上あの子を拒否したままでいちゃ…
誰も幸せになんて、なれないんだ…。今なら、まだ…どうにか出来る。
だからどうか…自分の闇と、向き合ってくれ…」
静かな穏やかな声で、あやすように…克哉は告げていく。
優しい手つきで、こちらの背中を何度も何度も…ポンポン、と軽く
叩いていった。
「…俺が向き合えば、本当に幸せに…なれるのか…?」
「なれるよ。だって…あの子が荒んでしまったのは辛い記憶を
背負わされた上に、お前に拒否されて…この深い森の中でずっと
一人ぼっちだったから…。
あの子は…お前がお前自身を拒否してしまった部分の象徴。
お前が認めたくない、みっともなくて辛くて後悔に満ちた過去の
結晶だよ…けれど、それを切り離している限り…お前の心もまた、
弱くなり続けるんだよ…」
克哉も、あの子供の自分も…どちらも、眼鏡の心の認めたくない
部分の象徴のような存在だ。
けれど、否定しようと何をしようと…元は一つのものを、無理に切り離して
分裂して存在させている限り、人の心は弱くなる。
色んな要素が混じって、それを承認する事で人の心は強くたくましく…
何事にも揺るがない強靭な心を持ちうるのだ。
自分の中に在る認めたくない部分、それを自らが拒否し続ける限り…
いつかは、その拒否している自分自身に裏切られ追い詰められる事に
なっていくのだ…。
「俺が弱いと、お前はそう言いたいのか…?」
「そうだよ。自分の認めたくない部分を拒否していたら弱くなって
当然だろ? 例えば数字に置き換えれば判りやすいだろうけど
全てひっくるめてお前が十の存在だとしたら、オレとあの子の部分を
拒否して4:3:3と比率してみろよ。
…本来10の存在である筈なのに、拒否をすることによって…お前は
4の存在となる。ようするに…氷に閉じこもってあの子を押さえつけようなんて
お前らしくない弱気な行動を取るのも、それで納得だろ?
お前があの子を受け入れれば7になるし…その上でオレの部分も統合
すれば10になる。だから…勇気を持って受け入れて欲しいんだ。
御堂さんが愛して、求めているのは…お前なんだからな…」
しっかりと抱きとめながら、克哉はもう一人の自分を励まし…
諭していく。
それがどういう事になるのか、彼自身とて判っているのだろう。
統合した先には、自分がどうなる事も判った上で…それでも、彼は
眼鏡を励まし続けた。
自分もまた、御堂を愛した。
選ばれたのは自分でなかった事を辛いと思う気持ちはある。
けれど克哉は…もう一人の自分も、内側から見て…御堂を守るために
己の身すら省みずに氷付けになる事を選んだことで好きになったのだ。
だから、それは自分と同じ姿かたちをした兄弟が出来たようなそんな気持ち
だったのかも知れない。
言われた言葉の重さに、眼鏡は…知らず全身を震わせていた。
そんなもう一人の自分に向かって、克哉は勇気付けるように告げていく。
―オレの事は気にしなくて良いよ。全てを納得ずくで…すでに受け入れる
覚悟は出来ているから…大丈夫、だよ
とても優しい声で、しっかりと告げてくる。
聞いているこちらの胸が引き絞られそうになったその時…大樹の
影から黒い仮面をつけた、子供の自分が…静かに姿を現したのだった―
何と言うか大盛況でしたよ。
何で開場の一時間前に辿り着いたら整理券NO175で
12時からの入場になっているんだろう…というぐらいに
沢山の人が来ていて、賑やかで楽しいイベントになって
おりました。
こちらの無料配布もイベントで手に取って下さった方、
どうもありがとうございました!
…いや、置いてくれるスペースがなかったら知人&飲み会に
参加している人達に粗品として配ろうと思って無料配布を30部
くらい持って行かせて貰ったんですが…A井さんの所で丁度
一種類ぐらいなら置けそうな空間があったので、また当日に
頼む形で置かせてもらって無事に捌けました。
そしてちゃっかり売り子って形でお邪魔しまくりました…。
…置いてくれてありがとうA井さん。本気で感謝しているわv
…何というかこんなゲリラ的を繰り返す奴で本気で
すみません―!
でも無料配布がどっさり余って他のイベントで配るなんて
真似にならなくて本気で良かった~!
イベントの最中にも、会えたら会いたいな~と思っていた
方々に声を掛けて貰えてホクホクでした~。
こちらが売り子やっている時に声掛けてくれたHさん、Yさん、Kさん
ありがと~!
Yさんは一度会いたいと思っていたので会えて光栄でした~!
結構、知的な雰囲気のお嬢さんだったので…おお! と純粋に
驚いてしまいましたわ…(ドキドキ)
Kさんはメール出して、少しでも励ませたのかな…とドキドキしていた
部分があったので声掛けて貰えて嬉しかったです。
在りし日の残像の~丁寧な感想も伝えてくれて感謝です!
Hさん、貴方は面白すぎました。あのテンションは話のネタに出来る
ぐらい物凄かったです。けど凄い愛感じちゃいました。
お互い近くに住んでいるし、今度Y浜でお茶でも一緒に飲みに行こうね~!
そしてAさん、こちらは12時からの入場でそちらの御本を買えなくて本気で
残念でしたが、いつか再録して下さい。
その日を心からお待ちしております…(ペコリ)
という感じでウキウキしつつ…イベント後にはK田さん主催の
克克飲み会に参加させて頂きました。
殆ど場所移動せずに、お隣のKさんとばかり二人で話を
しまくりました。
すみません、集団での会話(4人以上になると会話の流れに
マジで入れなくなる…)な奴なので、Kさんばっかと
話しまくってしまったよ。
途中でK本さんと三人体制になって、色々と熱く眼鏡と克哉の
解釈について語り合ったのはマジで楽しかったですよ。
帰り際に、前回の克克の会で構って頂いたお嬢さんに
「初回限定版無事買いましたよ~!」と報告を受けて、個人的に
凄く楽しい&嬉しかったですよ!
つか、前回会った時と貴方、印象変わりすぎていてマジで
びっくりしました。女の人って化粧とか服装、髪型でガラリと
印象変わるってマジだな~と貴方と再会して実感しましたわ…さん。
他の皆様も、色々と席を動いて各自実に楽しそうに、熱く
キチメガとか克克の事を語っていて凄い熱い場と化して
おりました。
本気でこのような場所を設けて下さったK田さんに大感謝ですv
…そして反対側のお隣にいたTさん、こちらが小鉢をひっくり
返してしまった時にご迷惑をお掛けしてすみませんでした。
その場にいた方々も、一斉にティッシュとか濡れティッシュを
渡してくれて感謝です。
うっかり手を滑らせてしまって失態かましてしまいましたね(苦笑)
けど飲み会で皆「ザクロサワー」に反応して、全部で20人中13人が
それを最初に注文して机の上にズラっと並んでいたのは壮観でした。
厨房の人、本気で驚いただろうな…何故ザクロサワーが
こんなに!? と絶対に思われたに違いない…。
その後は二次会で新宿までカラオケにレッツゴーして…
最初にお約束のキチメガの主題歌を選曲して、楽しく
歌いまくったり、話しまくったりスケブを描いたりしておりました。
あたいはそれで終電逃したのでオール組になったけどね!
二次会参加者が14人で、オール組が7人。
途中でYまさんが帰ったので朝まで残ったのが6人でしたが…
頭朦朧となりながらも、朝まで皆で歌を歌い続けたのはなかなか
忘れられない楽しい一時でした。ありがとう!
HさんとSさん、MさんCさんTさん…皆さん、歌上手くて凄いな~と
正直感服しました。
私、最後の方声が掠れて…「レッツゴー陰陽師!」とか
スーパーベルズの「MOTER MAN with京浜急行」とか、
ブリトラの「石焼イモ」とか見事なネタソングに走りまくって
すみませんでした…。でも、もうそういう曲に合う声しか出なく
なっておったんで…。
Mさん、貴方の可愛い声で色んな萌えソングを聞けて楽しかったです。
Sさん、サンホラの話とか色々出来て本気で嬉しかったです。
Cさん、天野月子さんの多数の曲を、綺麗な声で歌っているのを
ナマで聞けて凄い、と素直に思いました。
けどTさんが歌詞に「花御堂」と出る曲を歌った後に
HさんがTMRの「HOT LIMIT」のダイスケ的にも~の
部分がタカノリ的にもオールオッケ~! と部分的に変えられている
バージョンを歌って、「御堂孝典」の名前を完成させて終わったのは
綺麗だったと思いますv
ラストに持ってくる選曲としては良かったですよ~v とかこっそり
ここに感想残しておきます。
…そしてオールでのカラオケが終わって、家に帰宅したのが
朝の九時半でございました。
で…色々寝る準備して、布団入って一眠りしたら…すみません、
本日は一日が終わっておりました。
イベント前日に3~4時間しか寝てない状態で無料配布本の
作成をやったり、オールでカラオケやった反動が出まくりで
本日は…小説書けるコンディションじゃありません(ぶっちゃけ)
…という訳で当日関わった皆様へのラブコール&感謝を
綴った簡潔なレポで本日は終わらせて貰います。
最後に、12日から13日朝に掛けて…こちらを構って下さった
皆様に対して、最大の感謝を!
リセットの続きは14日の早朝に書かせて頂きますね。
それでは今夜はこれで失礼します!
本日はオンリーの日ですね!!
今回の置き土産は、克克新婚ネタ7 ミラープレイ編です。
克克が大丈夫!という方だけ続きを…をクリックして読んで
下さるようにお願い致します。
では、本日はオンリー当日です。
皆様、どうか楽しい一日を過ごして下さい。
行けない方は…置き土産を見て、少しでも楽しんで
頂けば幸いですv
と凄いテンション高くなっている筈なのに、昨日ちょっくら過去の
トラウマに被さる事が起こって、今日の夕方ぐらいになるまで
ヘコみまくっておりました。シクシクシク…。
しかしせっかくのオンリー!
こんな暗いテンションで晴れやかな日を迎えてなるものか! と
思ったんでもうオンリー前だよ! しかも給料日直前で金ねえよ!
しかも昨日で定期切れたので二万円飛んでいるよ! と財布事情が
すさまじいにも関わらず、僅かな金を惜しんで暗く一日を過ごすよか
多少散在しても明日を楽しく過ごせる方が良い! と潔く割り切って
本屋で五千円ばかり、盛大に本買って来ました!
BL漫画ばっかり!(待てぃ)
愛憎版のBL漫画を含めて、以前から気になっていた漫画や
ちょっと気になるタイトルを冠している作品とか7冊ばかり買って
貪るように読みまくっておりました。
んで、ともかく寝まくった。
食う寝る遊ぶ&読書を徹底したら嫌な事も頭の片隅に追いやられたので
ちょっと気力湧いて来た。
明日を楽しく過ごしたいし、お会いする方に笑顔で接したい!
つ~訳で、本日は夕方まで頭の切り替え&休養にともかく専念して
おりました。んで、現在ある程度回復しました。
明日は…持っていけたら、克克新婚ネタ7 ミラープレイ編をこっそりと
持参しようと思っています。
ま、ご縁があって会えた方とか…幸田さん主催の克克飲み会に参加する
予定なので…その参加するメンバーの方で欲しいと希望する奇特な方が
いたらこっそり渡そうかな、と。
一般に配布予定は…え~と…うん、委託頼めそうな間柄の人が
今回参加する中で1~2人しかいなくて…で、すでに自分の本だけで
机がいっぱいになりそうとか、他の方の本を委託する予定みたいなので
今回は自重しました。
人様に迷惑掛けてまで無料配布、配るのどうかな~と思うし…(汗)
代わりに明日、克克新婚ネタ7をオンリー参加出来ない方用に掲載
して出ていくのでご了承下さい(ペコリ)
…6は? という突っ込みが出そうですが…実は6は書き上がっている
んですが、どうも…進呈した方が今は自宅のPCを見れない環境下みたい
なので…その方が読んだ、と確認出来るまで未掲載です。
5も…30分しか時間取れない日に書いたので不完全だし、時間取れたら
加筆修正したい~!
DVD編は…途中まで書いて、残り30分しかない状態で着手したから
本人的にも不完全燃焼です。
時間取れたら近いうちに絶対リベンジしてやる~!
当面の予定はこんな感じ。
それではようやく気力戻ったし製本やってきます。
リセット25は諸事情で…今夜は書ける心境じゃなかったので
13日中にアップという形にさせて貰います。
今書いたら、多分…話の筋が歪んでしまいそうな気が
しますから…(苦笑)
落ち着いたら必ず書きます。
少々お待ち下さいませ(ペコリ)
気持ちはあるさ。
それで…お前と御堂さんの間に横恋慕して、割り込むような真似は
筋が通らないだろう…。そう思っているだけの話だよ…」
内側からお前をこの一年、見届けていた…。
そうしたら、お前の想いが緩やかに…流れ込んで
静かな声で、ようやく…もう一人の自分に対して言葉を紡いでいく。
「…そうか、それで…お前は、御堂を…」
眼鏡もやっと、合点がいった。
自分に肉体の所有権が移る前、克哉の方は御堂と接した事は殆ど
ない筈だった。
それは信じられない程少なく、片手で数えられる程しか接点がない。
なのに…どうして、彼が自分と同じように御堂を想うようになったのか…
一週間前に切り替わって…内側から克哉を見守るようになってから
ずっと抱き続けていた疑問だったのだ。
「そう…多分、お前を拒絶していた時よりも…オレ達を隔てる境界線が
今は曖昧になってしまっているんだと思う。だから…お前の中の強い
想いだけは静かにこちらに流れ続けて来た。
それで…オレはあの人を好きになってしまった。それが…お前の問いかけ
に対する、こちらからの回答だよ…」
「…お前は、本当にそれで良いのか…?」
相手の考えを聞いて、納得した。
けれど…それでも眼鏡は問いかける。
…恐らく、自分だったらこんなに素直に受け入れたりは出来ないからだ。
眼鏡は…今は本気で愛する人がいる。
だから何が何でも、消えたくないと思った。
彼は万能だった。何でもこなす事が出来た。
人の心を読み取って操作するのも、その気にさせてこちらに奉仕させる
のも簡単に出来る事だった。
だが、御堂だけはどれだけ手を尽くしても…追い詰めても、何をしても
手に入らない…何よりも焦がれたものだった。
一度は手放して、相手のその後の為に断腸の思いで諦めた想い。
それが奇跡的に叶って、両思いになったのだ。
そうなった以上…彼は誰と争おうと今は引く気などなかった。
例え…自分を敵に回す事になっても―
「…今のお前は、何が何でも生きたい…と強い想いを抱いている。
そしてオレには…それが良く判っているから。それに…あの人は
オレを抱いている時、背面から泣きながら抱いた。けれど…お前に
抱かれている時は、正面を向きながら本当に…嬉しそうに、笑って
いただろう。それが…何よりの答えだろ…?」
たった一度だけのセックスの記憶を思い出して、克哉の頬に…ツウっと
涙が伝っていった。
それは見ているだけで…心が引き絞られるような切ない顔。
透明な雫が宝石のように、キラキラと輝いて…静かに落ちる。
不覚にもその様子に…眼鏡は一瞬、眼を奪われていった。
もう、何も言い返せなかった…。
「…それでも、オレもあの人を愛している…。だから…あの人に
とって一番幸せになる事をしたい。それが…お前にこの身体を
譲る事なら、オレはいつだって自分の生など差し出すよ。
あの人が愛して止まないのは…お前の方、何だからなっ!」
初めて、克哉は声を荒げていく。
静かだった涙が、激情に揺さぶられて滂沱のものと変わっていく。
そして力強く言った。
「愛しているから…! あの人にオレは誰よりも幸せになって
貰いたいんだ! だから…その手をどうか…離さないでくれ『俺』…!」
ゆっくりと眼鏡の方に間合いを詰めながら、その両肩をしっかりと
掴んで、睨み付けるかのようにこちらの瞳を覗き込んでくる。
それは紛れも無い彼の本心、そして想い。
涙で濡れた双眸は…ハっと息を呑むぐらいに迫力があった。
やっと…もう一人の自分の事が判ったような、そんな気分になった。
「あぁ…判った…」
もう、それ以上…何を言ってやれると言うのだろうか…?
コイツの事を弱くて優柔不断で、どうしようもない奴だと思って
バカにしていた。
だから…同じ肉体を共有していながら…眼鏡の方から、克哉の想いは
決して見えなかったし、伝わってくる事もなかった。
…見下していたから、今まで見えなかったのだ。
ここまでの熱い思いを、強い願いを…だからこそ、もう一人の自分は…
自分が生み出したあの厚い氷すらも打ち砕いて、眼鏡を解放するに
至ったのだ。
―傷つきたくなくて、御堂を傷つけたくなくて築き上げたあの氷が
ある限り…決して御堂と自分が幸せになる事がないと彼は判っていたから…
「…お前は、どうしようもないバカだな…」
そう呟きながら、眼鏡はそっともう一人の自分を抱きしめていく。
…その表情はどこか、優しかった。
「そうだね、自分でもちょっと思うよ…」
「ちょっと、なのか…? それに「大」の字がついてもおかしくない
レベルのバカっぷりだと思うがな…?」
「おい…! それは幾らなんでも酷すぎるってば…!」
相手の肩に、顔を埋めるような体制で抱きしめたから…お互いに
顔を見ることは適わなかった。
けれど…何となく、触れ合っている感覚から充分に判った。
…ようやく、彼らはお互いを理解した。受け入れ始めた。
だから…こうやって触れ合っているのは、心地よかった。
「あったかい…不思議だね。心だけの世界でも…こうして、お前に
抱きしめられるとこんな風に体温を感じられるって…」
「そうだな。どこまで現実と同じような感覚があるんだろうな…
この世界は…」
小さな子供の自分が生み出した、全てを阻むような深い森の奥で…
二人はようやく、お互いを受け入れ始めていく。
眼鏡の手がそっと、あやすような手つきで…相手の背中を抱きしめていく。
自分がこんな仕草をするようになるなんて、と思ったが…重なり合っている
部分から、相手の感情が伝わる。
(あぁ、そうか…少しずつ、こいつの心が…俺の中に流れ込み始めて
いるのか…?)
かつて、御堂をいたぶっていた頃の自分はもっと冴え渡るような心を
持っていた。
それは澄みすぎていて、他者の痛みを理解出来ない絶対的な冷たさを
同時に孕んでいた。
あの氷は、それ以前までの自分の心の象徴だったのかも知れない。
冷たすぎて、恐らく自分はどんな人間の想いすらも受け入れなかった。
傍にいた人間の殆どを退けて、そして傷つけていった。
けれど…今は、ゆっくりと…氷が溶けていくようだった。
もう一人の自分はお人よしと言えるぐらいのバカで…暖かかった。
その温もりが…眼鏡の心を溶かして…ゆるやかに氷のようだったものを
どこか温かみのある水へと変えていく。
氷では、命を育むことは出来ない。
水だからこそ、この世の全てのものは生きる事が出来る。
冷たすぎる心は自分自身も、大切な人も傷つける。
それをようやく…この瞬間、眼鏡は理解していったのだ…。
―ここにとっくの昔に、自分の味方はいたのだ…
やっと、その事実を知る事が出来た。
暫く…そのまま二人で抱き合っていった。
…その顔はお互いに優しく、自然に笑い合っていくと…ふいに
激震が二人を襲っていった。
「何だっ…!」
「うわわっ!」
弾かれたように、二人は身体を離して…倒れそうになる肉体を、
その辺にある枝を掴んで支えていくと、更に揺れは酷くなっていった。
―お前達だけ…酷いよっ! オレにだけ…オレにだけ、こんな痛い
記憶を押し付けて…自分達だけ、苦痛から逃れて!
お前達が、憎い! 何も知らない顔をして…何も背負わないで…!
お前達何て…消えてしまえっ!!
それは鼓膜を破るのではないかと思えるぐらいの物凄い大きな
音量で樹海全体に広がっていった。
その嘆きに、憎悪に応えるように…木々の色が一気にどす黒く
代わり…一瞬にして深い緑を称えていた場所は黒い森へと
変わっていった。
「くっ…! 何だ、立って…いられない…!」
「這ってでも、良い…! どうにか…進んで、くれ…『俺』…!
多分、こんなにはっきりと声が聞こえる以上…あの子はきっと
そう遠くない所にいる筈だから…!」
「うわっ…くっ…判った。しかし…無様な、格好だな…」
二人とも、激震を繰り返す森の中で…地面に這うような
格好で進み続けていく。
揺れる枝や葉に、二人の衣服や肌は細かく傷つけられていく。
それでも…二人は、土で身体が汚れても…ゆっくりとにじり寄るように
先に進んでいった。
―どれくらいの時間、そうやって進み続けたのだろうか…?
ようやく視界が開けて、黒い森を抜けていく。
その眼前に広がるのは…おどろおどろしい雰囲気を纏っていて
醜悪な外見をした一本の大樹だった―
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
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24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。