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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―太一の腕の中は、暖かかった

 窓からキラキラと…あったかい色合いに染まった夕暮れの光が
差し込んでくる。
 太陽と、太一と…どちらからも今、自分は包み込まれているような
そんな気になって、ホっとしてしまった。
 それでつい、また涙腺が緩みそうになってしまって…克哉は
軽く嗚咽を漏らしていった。

「えっ…? 克哉さんどうしたの? …もしかして泣いてる? …何か
嫌な事でもあったの…?」

 克哉の微かな嗚咽すら、太一はすぐに気づいて案じて問いかけて来た。
 それだけでも嬉しかった。
 けれど心配させたくなかったから、素直に答えていった。

「ううん、違うよ。嫌な事とかがあったんじゃなくて…今のメロディを聴いて、
この夕陽を見ていたらさ…前にアメリカで家を飛び出してしまった
時の事を、何故か思い出しちゃって…つい…」

「…えっ…?」

 克哉の言葉を聞いて、太一は驚きの声を漏らしていく。
 それからすぐに…克哉を抱きしめたまま、軽く肩を竦めていった。

(本当に…俺、克哉さんには敵わないよな…。この人、曲を聴いただけで
俺がどんな場面を思い描きながら…この一曲を作ったのか、即座に
読み取っちゃうんだもんな…)

 太一がびっくりして、つい口を噤んでしまうと…克哉は少し不安を
感じたらしい。
 恋人の肩から、そっと顔を離して相手の目を覗き込んでいくと…
苦笑しながら、太一は答えていった。

「太一…どうしたの? もしかして…オレ、相当見当違いな事でも
言っちゃったかな…?」

「違うよ、まったく逆。…俺、どんな事をイメージしながらこの曲を作ったのか
まだ克哉さんに一言も話していないっていうのにさ…思いっきりドンピシャで
当てちゃうんだもん。この曲が…青空と夕暮れを眺めてさ…克哉さんの
事ばかり考えていたことを。以前に…克哉さんが家出をして、夕暮れの中で
お互いに…素直になってみっともない姿や言葉を晒した、あの日の事を
思い出しながら…作った事を…」

「…そ、うなの…? 何となく、そう感じただけだったんだけど…」

「けど、当てちゃうんだから本当に凄いよ。だから俺って本当に…克哉さんには
敵わないんだと思うよ。克哉さん程、俺の曲を判ってくれる人はいないし…
インスピレーションを掻き立ててくれる存在もないからね…」

 そういいながら、米神と生え際にキスを落とされて…克哉は一気に
真っ赤に染まっていく。

「そ、そんな事ない…よ。いつも、たまたま当たっているだけで…」

「それが90%以上の確率で、俺の意図しているものを読み取っていれば
たまたまなんては言わないよ…愛してる、克哉さん」

「っ…!」

 ふいに耳朶を軽く食まれて、鼓膜に直撃するような感じで耳元で囁かれた
ものだから…ゾワっとした感覚と一緒に強烈な羞恥も覚えて…耳まで赤く
染まっていった。

「…オレ、だって…愛している。けど…本当に、太一はいつだってストレート
過ぎて…今朝、だって…」

 だんだん、感じて来てしまって…声も途切れ途切れになる。
 付き合って三年にもなるのに…未だに太一に触れられると気持ちよくて
同時に恥ずかしくて。
 ボソボソと呟くような小声になってしまっても…密着しているのなら充分に
通用する。それが…恋人同士の特権でもある訳だが。

「…あぁ、あの言葉?『克哉さんが俺の事を欲しがってしょうがなくて…
感じまくっている姿は…こっちも見ているだけでイキそうになるぐらいに…
メチャクチャ可愛いよ』って奴…でしょ?」

「……っ!!!!!!」

 ただでさえ赤くなっていた上に、今朝の死にそうになる程恥ずかしくなった
例の一言を復唱されたものだから…もう、全身から火を吹き出しそうになるぐらい
赤くなりながら、克哉は声にならない叫び声を上げていった。
 そんな発言を、もう一回耳元で囁かれたものだから…こちらとしても
堪ったものではない。

「た、太一のバカー!! 何だって、いつもいつも…こっちが死にそうに
恥ずかしくなるような言葉ばっかり…耳元で囁くんだよっ!」

「ぐはっ!」

 もう恥ずかしさが頂点に達してしまったので…反射的に相手のみぞおちに
目掛けて鋭いパンチを浴びせてしまっていた。
 この場合、幾ら恋人の恥ずかしがる反応が可愛いからもっと見たかったと
言っても…流石に限度がある。
 太一にも非があるので、あまり同情は出来なかった。

「…うっ…克哉さん、良いパンチだったよ。一応…ボイストレーニングで
腹筋は鍛えてあるけど…今のは鳩尾に見事に決まったから…さすがに、
ちょっと、キた…かな…」

「もう、自業自得だろ…。こっちをあんまり…恥ずかしがらせるような
言葉ばっかり吐いて…意地悪、するなよ…」

 ちょっとだけ克哉が拗ねたような表情を浮かべると…太一は笑いながら
頷いていった。

「…ん、そうだね。昨日から今朝に掛けては…久しぶりに克哉さんに
触れられたものだから…ちょっと、意地悪しすぎたかもね…」

「ん…そうだね…」

 太一が、その事を認めると…ちょっとだけ克哉も溜飲を下げて…
綻んだ表情を見せていく。
 …克哉だって、太一に意地悪されるのが嫌いな訳じゃない。
 むしろ適度なら、恋愛のスパイスになると思っている所もある。
 けれど…その、克哉にとっては昨晩のエッチは…相当久しぶりであったのと
日々の業務に追われて心身ともに疲れていたからこそ…。

―意地悪されるよりも、甘く優しく接して欲しかったのだ…

 恥ずかしさが邪魔をして、それをなかなか言えなかったけれど…
太一が、それを判ってくれたなら良いかなって思った。

 もうじき、窓の向こうで太陽が沈んでいく。
 世界を見事な金色に染め上げる一時は…終焉を迎えようとしていた。
 二人は暫く…抱き合いながら、その完全に夕陽が落ちる様を
眺め続けていた。
 それは太陽と空が…ゆっくりと混ざり合い、作り上げていく…
とても見事な儚い芸術の時間でもあった。
 
 その瞬間、太一は…恋人を空のようだと思い。
 克哉は…彼の存在はやはり、自分にとって太陽そのものである事を
思い知っていった。

 空と太陽は…この地上においては、ワンセットの存在だ。
 決して単体になる事はない。
 そして…それらは時に様々な顔を見せていく。

 時に吹きすさぶ嵐となって見失ってしまう時もあれば。
 曇り空のようになってはっきりしない事もある。
 ポカポカと暖かくこちらを優しく照らし出してくれるかと思えば
 その熱さのあまりに、時にこちらの正気さえ奪っていく。

 人との関係も…常に変わり続けていく気象と良く似ているのかも
知れなかった。
 時に嵐や雷が訪れて、危機を感じたとしても…その相手を決して
離すまい! とお互いが決意すれば…必ず晴天の時は訪れる。
 きっとこれからも…沢山の出来事が訪れるだろう。
 かつてのように大きなすれ違いを経験することだって、この先に
あるかも知れない。それでも…。

―太陽と空が対となって存在するように…自分達も、そうやって
続いていけば良いと…克哉は密かに願った

 そう心の中で願った瞬間、完全に太陽が地に沈むとする間際…
太一が優しい顔をして、こちらを見つめている事に気づいていった。
 顔を上げて、二人の視線がゆっくりと交差していく。
 言葉はなかった。けど…それだけで酷く穏やかな気持ちになれて…
そうしたら、さっきまで感じていた意地とかちょっとした憤りなどは
とっくにどうでも良くなってしまっていた。
 だから少しだけ素直な気持ちになって…呟いていく。

「太一、大好きだよ…」

「ん、俺も…克哉さんが一番…大好きだよ」

 そう告げて、二人は顔を寄せていく。
 唇が静かに重なり合い…陶酔したくなるような幸福感が満ちていった。
 そのまま強く抱き合い、二人はただ…純粋に相手を求め合った。

 双方の胸を満たす想いはただ一つ。

―貴方を愛している―

 ただ、その純粋な気持ちだけだった―

 
 
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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