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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―レストランで楽しい一時を過ごした後、あるホテルに克哉は連れて行かれた

 二人とも、食事時に一杯飲んだので…そのままでは車を運転して
帰れないから、前日に御堂がレストランの手配をした時に、一緒に
予約をしていたようだった。
 その場所に久しぶりに足を向けた時、克哉は正直驚いてしまった。
 どうしてこの日に…この場所を指定したのか、一瞬…相手の意図が読めなくて
不思議そうな顔をつい、浮かべてしまった。

 だが御堂はそんな彼の手を引いて、フロントに向かっていきチェックインの
手続きを済ませていく。
 その間、二人して無言のままだった。
 そして一緒にエレベーターに乗り込んで、予約した部屋の番号を見て…
一層瞠目してしまった。

―それは、克哉が最初に御堂に接待を要求された部屋だった

 克哉がその部屋番号を確認して、つい…動揺してしまうと…そんな彼の
手を強引に引いて…御堂は部屋の中に入っていった。

「来るんだ…克哉」

「あっ…」

 そして、ガチャと乱暴な音を立てながら共に部屋の中に入っていく。
 部屋の内装は…以前とほぼ変わらなかった。
 この部屋を、自分が忘れる訳がない。
 自分と御堂の肉体関係が始まった場所であり…今では甘く優しい恋人に
なった彼が、かつて冷酷な己の支配者として振舞っていた場所だった。
 
「…孝典、さん…どうして、ここに…?」

「…ここでの君との思い出を、良いものに上書きをしたいからだ…」

「えっ…?」

 思ってもみなかった返答を聞かされながら…部屋の奥へと進んでいく。
 そしてそのまま…大きな窓ガラスの前に二人で立っていった。
 御堂は、しっかりと覆われているカーテンを引いていく。

―その瞬間、眩いばかりの街の明かりが現れていった

 それは…まるで宝石箱をひっくり返したような光景。
 様々な色合いのネオンが、夜の闇の中で…まるで生きているかの
ようにキラキラと輝いている。
 この部屋には何度も来ていた。
 だが…このカーテンを開けて、こうやって夜景を眺めた事など…一度も
なかった気がした。
 ここで御堂と肉体関係を強要されていた頃は、こんな風に…外の風景を
楽しむ余裕など一カケラもなかったから…。

「…この部屋から見える夜景って…こんなに、綺麗なものだったんですね…」

「あぁ、そうだ。…きっと昔の君は見ている余裕などなかっただろうからな。
だが…私は、何度も…約束の時間が訪れる合間に、この光景を眺めながら…
君を待ち続けていた。…落ち着かない心を鎮める為にな…」

「…え? そうなんです、か…? あっ…」

 克哉が窓の外のネオンの瞬きに目を奪われている間に…御堂が背後から
そっとこちらの身体を抱きしめてくれていた。
 もう初春を過ぎた頃とは言え…夜になればまだ正直、かなり冷える。
 だから…フワリと包み込まれるように抱きしめられていくと…その温もりが
心地よく感じられて随分と安心出来た。

「…貴方が、そんな気持ちで…オレを待っててくれていたなんて…まったく
知りませんでした…」

「…意外か? そうだな…自分でも、そう思う。…あの時期、どうして…
君を抱けば抱くだけ、感じさせて啼かせれば啼かせるだけ…自分の心がこんなに
ざわめいて…収まりがつかなくなるのか、私自身にも判らなかったからな…」

「…そういえば、言っていましたよね…。オレが判らないと…何度も…」

「…あぁ、そうだ。あの時…君の行動が私には理解出来なかった。どうして…仲間の
為なんかに好きでもない男に、何度も何度も抱かれているのか…。どれだけ
痛めつけても、何をしても…私の元に来るのか…本当に判らなかった…」

 そう告げた、御堂の声は…少しだけ苦いものが滲んでいる気がした。
 そんな彼の手を…自分の正面に回されている愛しい人の手に…己の掌を
重ねて…そっと目を伏せていく。
 自分は、この人に惹かれているという事実に気づいたのは…いつだったの
だろうか。最初は嫌で仕方なかった行為が別の意味を孕み始めて…たった十日間
この人に会えないだけで切なくなっていた頃。
 …その当時の記憶が、ゆっくりと克哉の中にも蘇ってくる。

(あの時を思えば…今は、何て幸せなんだろう…オレは…)

 ここは、苦い思い出が伴う所だった。
 同時に…自分達の原点でもあった。
 幸せすぎて、忘れてしまいそうだった。
 この人に…片思いをして、この想いが実るなどこれっぽっちも考えられなかった頃の
記憶が…ゆっくりと克哉の中に蘇って来た。
 だが、克哉の中には…怒りも何もない。

 告白する時に、想いの全てを叩きつけている。泣きながら、懇願するように…
想いの全てを吐き出して、そして…御堂にぶつけている。
 それが今思えば…良かったのかも知れない。
 だから…今は、克哉は…この人の当時の仕打ちを許せる。
 そして…どうして御堂が、この特別な日に…自分をここに連れて来たのか…
何となく克哉はその意図を察し始めていた。

「…御堂さん。…オレは、貴方を…もう、恨んでいませんよ。それは…
この半年、オレと一緒に過ごして…良く判っているでしょう…?」

「あぁ…判っている…充分すぎる程、な…」

 そうして…御堂は克哉の顎を捉えてこちらの方を向かせていく。
 お互いの視線が真っ直ぐに交差していく。
 そして…真摯に向き合いながら、御堂は告げていった。

「…あの時は、すまなかった。克哉…」

 そしてきっと、この人の中でずっと胸につかえていたであろう一言が…
静かに紡がれていく。
 その一言を聞いて、克哉は…静かに、愛しい人を抱きしめていった。

「…良いんです。孝典さん…この半年間、一緒に過ごして…何となくですけど
貴方が…あの時の行動をどこかで悔いている事は…察して、いましたから…」

 柔らかく微笑みながら、克哉は…御堂のした行為の全てを…愛を持って
許していく。
 …恐らく、自分達が新しい出発を切るには…この過程が不可欠だったのだ。
 御堂は、自分に厳しい性格をしている。
 だから…最後に、ここに来る事で…あの当時を思い出して、その気持ちを
吐露する事が苦い気持ちの伴う過去を清算出来ると何となく感じていたのだろう。
 この場でなければ、なかなか向き合って言うことすら出来なかっただろう。
 克哉はそんな…愛しい人の気持ちを、察していった。
 だから…もう、これ以上は気にしなくて良いと…そう、伝えていくように…
ともかくその背中を優しく擦り続けていった。

「…ありがとう」

 そして、飽くことなく背中を擦り続けていたその時…御堂の静かな声が
そっと聞こえていった。
 お互いに少し身体を離して、顔を見詰め合っていくと…自然と柔らかい
笑みが零れ始めていく。

―お互いの指に、幸福の証が輝いているのが判った

 そっと手を重ねあい、指先を絡めあっていく。
 その状態のまま…顔を寄せて、静かに口付けあった

―この幸福をオレに与えてくれた貴方を…心から許して…愛していきます…

 心の中で、そう呟いていくと…克哉の気持ちが何となく伝わったのだろう。
 今まで見た事がない程、その表情は優しくて…余計に、克哉の中で愛しいと
いう気持ちが強まっていった。
 そして…お互いを抱きしめていく腕の力が徐々に強まっていく。

 たったそれだけの事で、再び身体が熱くなっていく。
 もう…過去の過ちも痛みも、今となってはこの人と寄り添う為に必要な過程だったと
今では割り切れるから。
 自分達の関係が始まったその場所で、全てを許して…水に流して、再び新たに
向き合っていく。

 貴方が愛してくれる。
 自分を選んでくれた。
 そしてその証を…自分に贈って、大切な一日になるように尽力してくれた。
 それだけで充分、だから貴方を許そう。
 そして一層…これからも愛していこう…そう思った。

「孝典さん…愛しています…」

「あぁ、私もだ…」

 そして確認しあうように愛の言葉を交わしあい、二人のシルエットが重なり合っていく。
 その熱さに、腕の強さに眩暈すらしてくる。
 何度身体を重ねあっても、まだ足りない。
 もっともっと…この人を感じ取りたい。
 その競りあがってくる欲求を感じ取りながら…克哉は、御堂の腕の中に再び全てを
委ねていった。

―そして、今夜も想いと身体を重ねていく

 だが、これからも二人の指には幸福の証は輝き続けるだろう
 死が二人を分かつ、その日を迎える日まで…ずっと―
 
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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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