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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―午後から御堂に連れていかれた場所は、大きくて立派なホテルだった。

 お風呂から出て、午後の時間帯に差し掛かった辺りから…二人して御堂の
車に乗って、御堂が行きたいと望んだ場所に向かっていった。
 其処に辿り着くまで、御堂の自宅から車で30分前後掛かった。
 駅の周辺にそびえる、圧倒されるぐらいに大きな建物を前にして…克哉は
思いっきり立ち竦んでしまった。
 どう見ても、これは結婚式とか大きな祭典の際に使用される会場やホールを
提供する系の場所だった。

 今の二人は、その場に似つかわしい服装を身に纏っていた。
 今回は御堂は…克哉に、自分が持っている中でも上等な部類のブランド物の
スーツを貸し出し、それを着させていた。
 二人ともほぼ同体型であったからそのような事が出来た訳だが…高級なスーツが
醸す雰囲気が、二人を普段以上に今は輝かせていた。
 整った風貌の男二人が、ピシっとノリの利いた高級なスーツに身を包んでいる
様子は…周りの人間の目を嫌でも惹いていった。

「あ、の…御堂、さん…ここは…」

「都内でも有数の斎場だが、それが? あぁ…一応ここは貸衣装のレンタルとかも
していてな。それで衣装を借りて記念撮影を出来るサービスも提供している」

「そ、そうなんですか。…で、ここにオレと来た理由は、やっぱり…?」

「…君と記念撮影をする為に決まっているだろう。あぁ…一応、ここの斎場の
オーナーとは交流があってな。それで…そのツテで当日だが、一応予約を
承って貰った」

 何でもない事のようにサラリと言い放たれて、克哉は実に微妙な表情を
浮かべていった。
 だが、克哉は…オーナーと交流があって…という一言を聞いて明らかに
困惑していた。
 男同士で、こんな場所で記念撮影をするなど…絶対に変だと思われるに
決まっている。
 しかし…御堂の方は堂々とした様子で、悪びれた様子もなかった。

「あ、の…御堂さんは大丈夫なんですか。その…男同士で普通、こういう
場所を訪れるって絶対に…不審がられますよ。それに…指輪をしながら、
何て…それは…」

「…君は心配性だな。…私が安易に、そんな疑われるような振る舞いをする
と思うのか? 別に男性同士で記念撮影をしたとおかしくはあるまい。
 相手にとって記念すべきことがあって…そのお祝いにや、記念に共に
写真を撮るぐらい…あってもおかしくはない事だ。
 それに指輪も…二つをじっくりと見比べなければ対となるデザインである
事を…そう簡単に見抜けないものを選んだつもりだ。
 それに、二人とも既婚者同士なら…指輪をそれぞれつけていたとしても
全然おかしな話ではあるまい。怪しまれるような言動や態度をしなければ…
人はそこまで穿った見方をするまいよ…」

「た、確かにそうですね…でも…」

 それでも克哉は不安だった。
 …御堂は確かに、客観的に他の人間がどんな風に見るかを語ってくれた
けれど…実際に、自分達は恋人同士で…この指に輝く指輪を贈り贈られるような
そんな関係でもあるのだ。
 御堂にとって、不利な条件になるような事ならば…出来るなら、したくない。
 自分との事が明るみになって、この人の足を引っ張るような真似は避けたかった。
 その不安が明らかに克哉の表情に浮かんでしまっている。
 だが…御堂は、そんな恋人の肩にそっと手を乗せていき…顔を寄せていきながら
不安を覚えている克哉を元気づけるように、確かな声で言った。

「…君の不安は、何となくは察している。だが…私は指輪を贈って、こちらの気持ちを
確かに伝えている筈だ。それなのに…いつまでも君に不安を抱えていて欲しくはない。
…この記念撮影は、その為に組んだもののつもりだ。
 どうか、もう少し堂々としていてくれ。君は…私が認め、選んだただ一人の存在
なのだからな…」

「御堂、さん…」

 今の、御堂の一言に…克哉は勇気づけられていた。
 この人に…こんなに優しい言葉を掛けて、心の中から何か暖かいものが
湧き上がって来て…とても、嬉しかった。

「…あの、ありがとうございます。…貴方に、そこまで…言って貰えるだなんて…
思っても、見ませんでしたから…」

「…気にする事はない。私は、率直に…思っている事を君に伝えただけだ」

 そう、ぶっきら棒に言い放ったが、その表情は少し照れている事が伺えた。
 それを見て…克哉は心から嬉しそうな笑みを浮かべていく。

(…御堂さんが、照れている。…この人でも、こんな表情を見せることが
あるんだな…)

 その頬が軽く赤く染まっているのを見て、克哉はグっと…御堂を愛しく感じた。
 そして…ごく自然に、笑みを浮かべていく。

「…御堂さん、行きましょう。余分なお時間を取らせてしまって…すみません。
貴方の気持ちは、良く判りましたから…」

「うむ。それで良い。行くぞ…克哉」

 そうして、ゆっくりと連れ立ちながら…斎場の入り口へと向かっていく。
 今は周りの人間の目も意識して、恋人同士としては振舞わず…あくまで
友人同士として、これから記念撮影に挑むだろう。

 けど、この人の本心は充分に伝わっている。
 指輪を贈ってくれた翌日の記念撮影。
 それが意図するものは…自分達だけが理解していれば良い。
 …その事を自覚して、克哉は…嬉しくて柔らかい表情を浮かべていく。
 そんな彼を、御堂は優しくリードしていって…二人は、一枚の写真を…
記念に残していったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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