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もう一人の自分が本当に訪れただけでも驚いたというのに、こんな時間帯に
深く貫かれている状態の時に…新たな来訪者が来るなんて―。
「や、やめっ…こんな処、誰かに見られたら…」
眼鏡の腰の上で激しく身を捩って逃れようとするが…そんな事を許すほど
この男は寛容でも、慈悲深くもない。
案の定…克哉が逃れられないように己の腕の中にしっかり閉じ込めて…
甘く拘束していく。
「…雷でも光らん限りは、この部屋は真っ暗だからな。息を潜めていれば…
やり過ごせるかも、知れないぞ…?」
「…そ、んな…やっ!!…!」
ふいに胸の突起を爪先で引っかかれて、肩を揺らしていく。
そうしている内に…ドアをノックしていた主はドアノブを回して…室内に入ってくる。
扉の向こうから差し込む明かりが、長時間…闇の中にいたせいで、網膜を
軽く焼くようであった。
「克哉~! いるのか~!」
(ほ、本多…っ?)
自分の同僚が名を呼びながら入室してきて、克哉はぎょっとなった。
…そういえば、自分の次に起きて入力作業をするのは本多だった筈で。
資料を取りに行くと言ってそのまま…このような事態に気づけばなっていて。
すぐに戻るつもりだったからパソコンの原電や、オフィスの電気の明かりとかも
点けっぱなしの状態で…自分の姿がなければ、本多が探しに来たって少しも
おかしくない。
むしろ、自分がその立場だったなら確実に相手を探すだろう。
「…真っ暗だな。という事はここでもないって事か…仮眠室にも戻った形跡は
ないし…どっかで倒れてなければ良いんだがな…」
…心底、今…もう一人の自分が明かりを点けないでいてくれた事を感謝していた。
もし電灯がついていれば、確実にこの光景を本多に目撃されていただろう。
しかも相手はよりにもよって…自分自身だ。
同じ顔形をした人間が二人いて、しかもそいつに犯されているっていう異常な
シチュエーションをもし同僚に見られる羽目になっていたら…それだけで克哉は
死にたくなっていただろう…。
コツコツコツ…。
本多の足音が、こちらにゆっくりと近づいてくる。
「…電灯のスイッチって、どこにあったっけか…?」
どうやら本多は、電灯のスイッチを探しているらしい。
この資料室は…確か明かりは自分達が座っているデスクの辺りと、入り口から
少し奥に入った処の二箇所にあった筈だ。
資料探しの類は、普段は片桐部長や自分が担当している事が多いので…営業
メインの本多が疎いのは仕方ない。…が、そのおかげで助かったようなものだ。
(どうしよう…もし、明かりを点けられたら…こんな、姿を…本多、に…)
そんな想像をするだけで、身の奥が羞恥で焼き切れてしまいそうだ。
息を必死に潜めていると…ふいに眼鏡の指が突起に伸びてきて、尖りきった
其処を片手で捏ねくり回され…唇をやんわりと舐め上げられる。
「…っ、な、何を…」
「…声を出さないように、俺が塞いでいてやろう…」
お互いに、ごく小さい声で囁きあいながら…ふいに熱い舌先が克哉の口腔に
忍び込んでくる。
クチュリ、という淫靡な音が…脳裏に響き、それだけでおかしくなりそうだった。
眼鏡の手が執拗に、克哉の胸の突起と…硬く張り詰めた性器を弄り上げていく。
奥深い処まで相手のペニスを受け入れさせられたまま…第三者がいる状況で
こんな悪戯を施されている。
そんな異常な状態が、皮肉にも克哉の身体を今までよりも深い羞恥が苛み
深い快楽を呼び起こしていく。
「ふっ…んんっ…」
溢れそうになる甘い声は、眼鏡の唇によって吸い取られていく。
上も下も、この男に犯しつくされて…快楽によって支配されていた。
相手の手をしとどに蜜で濡らし…自分の意思に反して、男の手の中で自分の
性器が暴れまわっていた。
消えてはいけない理性が、粉々に砕かれそうだった。
(止めないと、いけない…のに…こんな、状況を…本多に見られたら…どう、
弁明すれば、良いんだ…?)
しかし、その瞬間…眼鏡に突起に爪を鋭く立てられて、ついに堪えきれずに
高い声で啼いていく。
「あぁっ!!」
ガッシャァァァァン!!!!!
克哉が声を漏らすと同時に、オフィスの方から盛大な破壊音が聞こえた。
それが彼の声を打ち消し、本多の耳に届かなくしていた。
「何だ何だっ!!」
本多は踵を返して、慌ててオフィスの方に消えていく。
それから暫くして…バタン、と大きな音を立てて扉が閉まる音が聞こえた。
(…助かった、のか…?)
安堵感が訪れて、一気に脱力しそうになる。
しかし…そんな安息は、克哉にはほんの一時しか訪れなかった。
『…余計な邪魔者は注意を反らして、排除しましたよ…我が主…』
「…そうか」
(えっ…?)
ふいに聞こえた歌うような話し方に聞き覚えがあった。
「それなら…そこで黙って見ていろ。…少しはお前の退屈しのぎになるだろう…」
『寛大な処置、感謝致します…では、ゆるりと…』
(ちょっ、と…待ってくれよ…何で、この人が…部屋の中に…? それに
見ていろって、何だよ…!)
「な、何で…こんなの、嫌だ! もう止めてくれ!!」
もう、相手の協力なんてどうでも良くなっていた。
ただ…この異常な状況から逃れたい一心で相手の身体の上でもがいて
身を捩っていく。
しかし眼鏡はそんな克哉の腰をしっかりと押さえ…強引なまでに熱い性器を
捻じ込み、激しい抽送を開始していく。
「もう嫌だって…? 本当にお前は嘘つきだな…こんなに俺のをきつく締め付けて
離そうともしない癖に…?」
「やっ…やだぁ! もう…ほ、ん、とうに…止めて、くれよぉ…! あぁ!!」
散々焦らされて追い上げられた身体は、ほんの僅かな時間…揺すり上げられた
だけでも深い快楽を覚えて、囚われていく。
今の克哉に出来る事など―せいぜい、相手の身体に必死に縋り付いてその感覚に
耐えていくしかない。
そんな彼の乱れた姿を…闇の中に浮かぶ、黒衣の人物が恍惚の表情を浮かべながら
じっと熱く見つめていたのだった―。
歌うように話すあの怪しい男は、そう言って自分にこの薬を渡した。
目の前のもう一人の自分の反応を見れば、その言葉があながち間違いでなかった事を
実感する。
克哉は瞳に怪しい色合いを宿し、荒く呼吸を乱している。
肩や腰が小刻みに震え、何かを必死になって堪えているようなその表情は…ひどく
扇情的だ。
「…なかなか艶っぽいじゃないか。そろそろ…ここに欲しくて堪らなくなっているんじゃないか?」
「あ…ぁ…っ!!」
少し乱暴に相手の中を指先で掻き回してやると…それだけで克哉が甘く啼く。
キュッと自分の指先をきつく締め付けてくる様子から見て…かなり目の前の相手は
欲情し、追い詰められている。
しかしそれでも、眼鏡は許すつもりはない。更に自分のモノを相手の顔に押し付けて
奉仕の続きを要求していく。
「ほら…口元が疎かになっているぞ。俺を悦くするんじゃなかったのか…」
「な、ら…その指を、止めろよ…! そんな処を弄られていたんじゃ…続き、なんて…
出来る訳が…ない、じゃない…か…」
泣きそうな声で訴えると、嗜虐心が満たされたのか…愉しそうな声で眼鏡は答える。
「…そんなのは俺の勝手…だろう…? それともお前の下手くそな口での愛撫の最中…
俺に手持ち無沙汰でいろ、というのか…?」
「下手、で悪かったな…。経験、ないんだから…仕方ない、だろ…!」
憮然としながら言うと、オズオズと眼鏡の性器に再び口に咥えていく。
熱いモノを根元まで飲み込んで…ぎこちないながらも舌先で先端を擦り上げて、チュウと
吸い上げながら…幹を上下に扱いていく。
すると元々熱く猛っていた性器は小刻みに痙攣を繰り返し、手の中で暴れていく。
まるで未知の生き物をあやしているみたいだった。
そのグロテスクさに顔を背けたくなったが…そんな事を許してくれる程、目の前の男は
甘い性分ではないだろう。
どうにか喉奥まで相手を飲み込んで、苦しそうに愛撫を続けていく。
「ひっ…!」
しかしその最中、ふいに眼鏡は克哉の性器をもう一方の手で握り込んでいく。
その刺激で、思いっきり腰が揺れて…また、口元を満足に動かせなくなる。
「んん、んっ…っ…」
薄っすらと涙を浮かべながら、それでも目の前の男を満足させようと…モゴモゴと
口を動かして、奉仕を続けていく。
その様はある意味、哀れで…同時に、眼鏡の…もっともう一人の自分を虐めて
啼かせたい、という欲求を強く刺激していく。
口腔の中に収めたモノが、ピクンと揺れて先走りが滲んでいく。
「飲めよ…」
頭を押さえつけながら、眼鏡が命じると…その苦味の混じった液体をどうにか
克哉は飲み込んでいく。
技巧ではなく、相手の顔に欲情してイキそうになっている。
苦しげで、嫌そうにしている癖に…内壁はこちらを求めてヒクつき…その顔はいやらしく
上気してまるでこちらを誘っているかのようだ。
眼鏡は…そのまま、泣きそうになっている相手の顔を見ながら…達していく。
「くっ…!」
「っ……!」
声にならない叫びを上げて、克哉はその熱を口内で受け止めていく。
熱い液体がマグマのように喉奥で飛沫いて、思わず口を離しそうになったが
眼鏡がそれを許さず…注ぎ終わるまでその頭を押さえ続けていた。
「…まあまあ、だったな。じゃあ…今度は、こちらで…俺を満たして貰うぞ…?」
「…! 待て、よ…まだ、苦しくて…」
指が怪しく蠢いて、克哉の前立腺を容赦なく刺激していく。
それだけで腰が高く上がり、男の与える感覚に抗えなくなっていた。
今、達したばかりの筈のモノが…克哉が啼き声を漏らす度に硬度を取り戻し
5分もすれば…元通りに硬く張り詰めていた。
その様子を見て…克哉は恐怖心と…未知なる疼きを覚える。
「何で…こんなに早く、復活…出来るんだよっ!」
「くくっ…お前の泣き顔が、イイからじゃないか…? ほら…俺の上に…乗れ。
ここでたっぷりと…搾ってもらうぞ…」
「…はっ…ぁ…判った…」
どの道、今の克哉に拒否権はない。
ようやく…相手から指を引き抜かれて、アヌスが自由になった。
資料室のデスクの上に腰を掛けている相手の首元に腕を回して、どうにか
その上に乗り上げていく。
自分の唾液でヌラヌラと照り光っている眼鏡のペニスを…己の蕾に宛がい
腰を沈めていこうとする。
「…俺を焦らす、な…。早く落としたらどうだ…? こんな風に…な…」
「ひっ! ひゃあっ…!」
いきなり腰を掴まれて、深々と根元まで貫かれて…克哉は大きな嬌声を
迸らせた。
克哉の首筋に強く吸い付いて色濃く痕を刻み込み…眼鏡は円を描くように
緩やかに腰を使い始める。
「だ、だめ…だっ! おかしく、なる…」
先程塗られたジェルの効能と、散々前立腺を刺激されたおかげで克哉の
肉体は熱を孕んで…すでに制御が効かなくなっている。
甘い声を何度も漏らし、悲鳴に近い高い声を何度も必死に抑えながら
眼鏡が与える感覚に耐えていく。
もう、抗う気力など微塵もなくなり掛けていたその時。
トントントン…。
窓の外で未だ嵐が吹き荒ぶ中。
資料室の扉をノックする音が幾度か、規則正しく…克哉の耳に届いたのだった―。
『脱げよ…』
ひどく甘ったるい声で、目の前の傲慢な男が命じていく。
その物言いに…強い羞恥を覚えながら、克哉は一枚…一枚、何かに操られるように
自分の衣類を脱ぎ始めた。
言われた通り…靴下まで脱ぎ去って全裸になると…リノリウムの床の冷たさが
ひどく堪える。
その癖…顔は燃えそうに熱くて、その激しい温度差にどうにかなりそうだった。
「こ、れで…良い、のか…?」
「くくっ…! 今夜は随分と従順だな。普段もこれくらい…素直に俺の言う事を聞いていれば
可愛げがあったんだがな…来い」
ふいに腕を引かれて、資料室の奥にあるデスクの方に連れて行かれる。
そこに眼鏡は腰を掛けて…スーツズボンのフロント部分を一気に引き下げていく。
「ひっ…!」
其処から、自分を何度も深々と貫いた凶器が現れて…克哉の顔は強張っていた。
「…そんなに恐がるな。お前は…何度も、これでイイ思いをしてきたんじゃないのか…?」
「そ、んな…事…」
顔を真っ赤にして、目を背けるが…この男は決してそんな振る舞いを長時間許すほど
優しい性質ではないだろう。
予想通り、強引に引き寄せられ…頭を掴まれて、強引に股間に顔を押し付けられる。
強烈な雄の匂いに…強い嫌悪と戸惑いを覚える。
同性の、しかも自分自身の性器を口で愛する羽目になるなんて…何の冗談かと
思いたくなる。
「…俺の協力とやらを仰ぎたいなら、お前に…選択権は、ないぞ…。いつまで俺を
焦らせるつもりだ…?」
「焦らしたり、何か…判った。これをすれば…本当に、協力してくれるんだな…?」
「…その後の対価も払えば、な。それなら…俺は約束を違えるような真似はしないさ…」
「…判った。その言葉…信じるよ…」
そうして意を決して、克哉は眼鏡のペニスを口に含み始めていく。
先端を口腔に収めただけで、その苦いようなしょっぱいような独特の味と匂いに…
大きく眉を顰めたくなった。
良く女性はこんなモノを口に含めるものだ、と心底思ったぐらいだ。
「んんっ…はっ…」
予想以上に質感があって、こうして口に収めているだけで苦しくなっていく。
それでも懸命に奉仕しようと…ぎこちなくだが、舌を使っていった。
自分なら…こうして先端の割れ目や、裏筋の部分を弄るのが好きな筈だった。
自慰をする時…自分が辿る手順や好みを思い出して、ためらいながらも…その通りに
していくと、相手の口からも荒い吐息が零れ始めていった。
「…ほう。今まで男のモノなど上では口にした事がない割には…案外、上手いじゃないか。
それとも…自分がやっている手順でも思い出しながら…やっているのか…?」
図星を突かれて、克哉の顔が耳まで真っ赤になっていく。
「そ、んなの…どうだって、良いだろ。お前が…やれって命じたんじゃない、か…」
先程、深く相手のモノを含んだ時、苦しかったせいで…生理的な涙を滲ませていきながら
克哉が文句を言えば…不敵に眼鏡は言い放った。
「あぁ…そうだ。もっと深く…俺を咥えろ。イカせて…くれるんだろ…?」
(イカせる…って事は、こいつのが口の中で…って事、だよな…)
その辺を考えた時、ふいに…今までの性交の記憶が脳裏に蘇ってきた。
自分の内部に熱い精液を注ぎ込まれる感覚が過ぎり、ふいに…自分の蕾が緩く収縮を
始めていた。
(なっ…!)
唐突な自分の身体の変化に、克哉は戸惑いを隠せない。
しかし眼鏡はそんな彼の変調を見逃さなかった。
スーツの胸ポケットから何やら怪しそうなラベルを貼られたジェルの小容器を取り出すと
それをたっぷりと手に取って…克哉の臀部に塗りつけ始めた。
「やっ…! 何だよ、これ…凄い、冷たっ…!」
「あぁ…あの俺の怪しい崇拝者から貰ってな。これを貴方の夜のお相手にでも使えば
それなりに楽しめるでしょう…とか言っていたからな。試させてもらおうか…」
「怪しい、男? …はぅ!!」
ジェルが伝い落ちて、蕾の部分に辿り着くと同時に…鉤状に曲げられた眼鏡の
人差し指が容赦なく入り込んでアヌスの縁の部分を容赦なく擦り上げていく。
「…お前に、俺を解放する眼鏡を渡した、胡散臭い男だ…」
(…Mr.R…しか、いないよな…そんなの…)
「…という訳で、どんな風に変化するのか…楽しみに見させてもらうか…」
「人で…人体、実験する、なっ…やぁ!!!」
敏感な部分を探り当てられると、すでに口で愛撫する事などする余裕がない。
ただこうして…男が与えてくる感覚に身をよじって、耐える以外になかった。
しかし容赦なく快楽を引きずり出されて克哉の身体は力を失い…そのまま、その場で
倒れてしまいそうになる。
「ほら…口が、疎かになっているぞ…俺を悦くしてくれるんじゃなかったのか…」
「判っている、って……っ!!」
そういって、口淫を再会しようとした矢先に…肉体に急激な変化が訪れていく。
それは例えているならば…身体の奥に火が強引に灯って、勢い良く燃え上がっていくかの
ような感じだった。
「やっ…な、何…これ…凄く、熱い…」
先程のジェルを塗られた部分が、まるで火を点けられたかのように…熱くなり、
燃えるように赤く染まっていった。
「…ほう、なかなかの効果があるみたいだな…アルコールと…少々の催淫効果があると
あの男が言っていたが…」
唐突に宿った情欲の火に、克哉が翻弄されていると…眼鏡は、心底愉しそうに
悠然と言ってのけ…更に奥深くへと指を克哉の中に押し入れたのだった―。
電灯さえ点けられていない真っ黒な企画室の中で…眩い雷光が走り抜けていく。
「っ!!」
雷鳴が鳴り響いた瞬間に、闇の中に鮮やかに浮かび上がる長身の男のシルエット。
何者かがいつの間にか…扉を開けて、入り口の方に佇んでいた。
(…あれは、やっぱり…もう一人の、俺か…? それとも本多が少し早く起きて俺を探しに
来てくれたのか…?)
コツ…コツ…コツ…コツ…。
固い床の上に、革靴の音が反響している。
一歩一歩、近づいて来る度に心臓がバクバクと荒い脈動を刻んでいた。
(…誰、なんだ…)
振り返る事も出来ずに、克哉はその場に硬直していた。
そうして…ふいに背中に暖かい温もりを感じた。
「…久しぶりだな。もう一人の…『俺』…」
「…やっぱり…お前、か…」
脇の下から腕を通されて、しっかりと背後から抱きすくめられていく。
その声を聞いて、確信する。
今…自分を腕の中に閉じ込めているのは…眼鏡を掛けて、人格が変わっている
もう一人の自分自身だという事を。
周りの視界が利かないからだろうか…相手の息遣いや、気配が前回よりも
はっきりと感じ取れて…それが余計に、克哉の緊張を作り出していた。
「…つれないな。俺以外に…誰が来ると考えていたんだ…?」
「………っ!」
ふいに背後の男に、耳の奥に舌を差し込まれて…悪寒にも似た感覚が強烈に
駆け抜けていく。
背後から前面に回された腕はいつしか…克哉の胸板周辺を辿り、こちらの
胸の尖りを探り始めている。
明らかに性的な色合いを帯びた手つきに…克哉はぎゅっと目を閉じるしかなかった。
「…はぁ…や、め…」
と、言いかけて…抵抗しようとしたが、とっさに頭を振る。
前回…同じように会社内で襲われた時は、突然の事態に頭がついていかなかった。
しかし…今回は違う。承知の上で…彼を呼んだ筈だ。
身体を差し出して、彼の望む『対価』を払えば…この傲慢な男に手伝って貰えると。
そうする事で…一緒に泊り込みをやっている本多や片桐部長の負担が減るのならば
構わないと…そう覚悟したのではなかったのか。
…そう逡巡して、抵抗の手を止めると…眼鏡の方は不思議そうな顔になった。
「…ほう? 今夜は抵抗、しないのか…? やっと自分の欲望に忠実になる気に
なったのか…?」
「…抵抗は、しないよ。その代わり…俺の身体を自由にする代わりに、今夜も
俺の今やっている仕事を…手伝って欲しい。その為の対価なら…支払うよ…」
その物言いに…眼鏡は一瞬瞠目し…すぐに面白そうに不敵に笑う。
「…ほう。イイ根性をしているな…俺を、お前ごときが利用しようとしているのか…?」
「利用、じゃない…協力を…求めて、いるだけだ…。悔しいけど、お前の能力は
確かに高いし…正直、今回はお前の手を借りないと期日までに間に合いそうにない。
…それに少しでも手を貸してもらえれば…本多や片桐部長の負担だって少しは減るし…」
「…ほう。それで己の身を差し出して…仲間とやらを助けようというのか。
…大した自己犠牲精神だな。…ヘドが出るくらいに…」
ふいに眼鏡が克哉の臀部の谷間に、スーツズボン越しに硬くなったモノを擦り付けていく。
その感覚にゾクン、と震えながら…男の手は克哉の首筋や胸元を執拗に撫ぜ上げ…
やや乱暴にこちらのシャツのボタンを外しに掛かっていた。
「ん、んんっ…ひゃ!」
露になった胸肌の突起にふいに爪を立てられて…鋭い声を克哉が漏らしていく。
その後に両手で押しつぶすように刺激されては堪らない。
あっという間に胸の粒は育ちきって…硬い弾力を伴いながら男の指を弾き返していった。
「…お願い、だ…お前の、協力が…欲しい、んだ…」
「…そこまで望まれれば…まあ、相手がお前だろうと…悪い気がしないがな。
しかし…それじゃあ…ただお前を犯すだけでは…対価が足りないな…」
「なっ…! そんな…じゃあ、何をすれば…良い、んだよ!」
克哉が慌てふためいて問いかければ、眼鏡の方はその様子を愉しそうに眺めていた。
…二人の間に、沈黙が落ちていく。
眼鏡の方に痛いぐらい…胸の突起を摘まれて、こねくり回されて…臀部に欲望を
擦りつけられた状態で…やや生殺しになりながら、克哉は相手の言葉を待っていった。
「…そうだな。俺に…たっぷりと奉仕をして貰おう。まずは…衣類は全て脱げ…
話は、それからだ…」
「…奉仕って、何を…すれば、イイんだ…?」
見当がつかない、そんな様子で克哉が問いかければ…傲慢な男は、悠然と
微笑みながら…耳元で囁きかけた。
「俺の性器を…お前の口で…存分に、愛せ。それが奉仕だ…それも今回の対価に
入れさせてもらおう…」
「なっ…!」
反論の声を漏らした瞬間、今度は…服の中に手を忍び入れられて問答無用で
硬く張り詰めた状態のペニスを握り込まれていく。
先端を軽く爪先で抉られて…その強烈な感覚に、克哉は抗う事が出来ずに
身を大きく震わせて堪えるしかなかった―。
今夜は季節はずれの台風が、都内を襲っていた。
一歩会社を出れば、其処は豪雨が激しく降り注いでいる事だろう。
こんな日に一人残って…仕事をしていると嫌でも不安になる。
佐伯克哉は今夜何度目になるか判らない、盛大な溜息を漏らしていた。
(仕方ないよな…俺が使っている路線が、今日は復旧は見込めない訳だし…)
ついでに言うと、同じ八課に所属している女の子達の使っている電車も
いつ止まるか判らない状況だった。
そんな日にMGNから送られた、大量の書類。
これを今日中に半分は入力して整理しなければ明日の正午に開かれる
会議に間に合わないだろう。
(…しかし、本当にこういう日は…MGNの方も考慮して欲しいよな。残業するしかない
量の打ち込みをこっちに回すよりも…会議の日程を数日ズラしてくれれば良いのに…)
しかし溜息を幾ら突いていても、現状が変わる訳ではない。
これだけ山積みになっている書類の打ち込みはキクチ内だろうが、MGN内だろうが
誰かがやり遂げなければ仕事は回っていかないのだ。
それに…台風の日に女性を会社に泊まり込みさせる訳にはいかない。
克哉はそう考えて、彼女たちを先に帰して…自分は泊り込みをする覚悟を決めた。
片桐、本多の二人もそれに付き合ってくれて…23時を回るまでは三人で必死に
打ち込み作業を続けていた。
結果…23時からは交代で打ち込み作業をしていこう…という結論になって、
トップバッターの克哉が今は一人で起きている形になった。
中間の時間帯に起きるのが、一番体力がある本多。
片桐は朝早くに起きるのは苦にならないから…との事だったので一番最後に起きて、
始業時間まで作業を続けて貰うという形にした。
(本当はもう少し早く打ち込んでいかないと…片桐さんと本多に負担が掛かってしまうんだよな…)
就業時間から六時間が経過した時点で…三人で必死にやって六割が完成した。
しかしこれから朝までの時間帯…一人しか起きない状態で三時間ずつ打ち込んでいくのだ。
それで残り四割を片付けるのはかなり厳しい状況だ。
始業時間までには打ち込みを追えて、会議開始までの時間は見直しに費やしたい処だった。
「…こんな時、あいつがいたらな…」
と、呟いて…はっとなる。
以前にもこんな事があった事を思い出し、ついでに顔も赤く染まっていく。
「な、何を考えているんだ…俺は。あんな奴に手伝って貰ったらどんな事になるか前回で
散々思い知ったっていうのに…!」
かつて…こんな風に山積みの仕事の処理に追われたいた時…何故か、
其処にあった果実を齧ったらもう一人の自分に遭遇したのだ。
その日…有能極まりないもう一人の自分のおかげで、確かに入力は間に合った。
…それに関しては感謝しているが、払わされた対価の形が問題だったのだ。
問答無用でオフィス机の上に押さえつけられて背後から無理やり犯される。
…無体過ぎる振る舞いをされた挙句、自分は途中から追い上げられて…結果、
大変な醜態を晒す羽目になったのだ。
「こ、今回は…本多とか、片桐さんだって仮眠室で寝ているんだぞ…。
あんな事態になったらシャレにならないし…忘れよう、うん…」
頭を振って、必死になって…忌まわしい記憶を隅に追いやろうとした。
「…と、これに関しては…裏づけ、というか資料を見て確認が必要だな。…資料室まで
行って取って来ないと…」
これから克哉が入力するページは…MGNから販売を任された商品の、過去の売り上げ
の数値と…現在任されている新商品のプロトファイバーとの数値を比較する為のグラフを
作成しなければならなかった。
こういう物を打ち込む場合、比較する過去の数字が正確でなければ意味をなさない。
「比較する商品はサンライズオレンジと…それより前の商品をもう一つって処だな。
探してすぐに見つかれば良いんだけど…」
机から立ち上がった瞬間、軽い眩暈と頭痛を覚えた。
7時間以上に及ぶデスクワークで身体が極限までガチガチに強張っていたのだ。
「いたた…肩と腰が鉛のように重くて、痛いや…。やっぱり日中だけじゃなく…これだけ遅くまで
パソコンの前にいると身体が悲鳴を上げるな…。まだ休めそうにないけど…」
そういって、一旦パソコンでデーター保存をした後に…ややぎこちない足取りで
克哉は資料室の方まで向かっていく。
廊下を歩いている最中…何度も雷が鳴り響いていた。
すでに秋も深まってきているのに…これだけ雷が鳴り響くというのも珍しかった。
ピカッ!! ゴロゴロゴロ…!!
どうやら、この付近で落ちたらしい。
光ってから音がなる間隔が酷く近く…轟音が社内を駆け抜けていく。
「わぁっ!!」
思わず驚いて声を挙げてしまう。
「早く…資料室に向かった方が良いな…もし雷が落ちて停電になったら、それ以上の
作業は望めない訳だし…」
そうして克哉は資料室へと急いでいった。
ドアを性急に開いて中に入っていくと、それと同時に…轟音が周辺に響き渡っていた。
ドッガーン!!!!
今度は間近で落ちたようだった。
その音に驚いて、足をもつれさせて克哉はすっ転んでいく。
「うわぁ!!」
勢い良くその身体は転倒し、リノリウムの床の上に身を躍らせていく。
幸いだったのは、シャツの生地の滑りが良かったせいか余計な摩擦が
生じなかった事だ。
打ち付けた部分は痛んだが、うっすらとした傷をいくつかと軽くあちこちを打ち付けて
アザになった程度で済んだのは僥倖だろう。
「いてて…あれ? これは…?」
転びながら資料室に飛び込んだせいで、室内は真っ暗で…目が慣れてない状態
でははっきりと物の輪郭が据えられない。
しかし克哉の転んだ周辺には一つの果実が転がっているようだった。
その甘酸っぱい芳香は、記憶がある。
(これはまさか…)
何度も経験した、不可思議な体験。
それらの引き金はいつも…この果実を齧ったことから始まっていた。
手を離さねば、と思った。
しかし同時にこれを口にすれば…あの日のように、もう一人の自分に会えるかもとも
考えていた。
(このままじゃ…間に合わないよな。俺一人がどう頑張っても…残り四割の内の
一割だって終わらせられるかどうかも怪しい…)
しかしその分量も、自分が三時間以上は掛かる分量を…きっちり一時間で
終わらせる事が出来ると言い張っていた彼ならば…どうだろうか。
終わらせる事は出来なくても、これから目覚めるであろう…本多や片桐の負担を
減らす事は出来る。そう考えた瞬間…克哉は覚悟を決めていた。
「出て来てくれ…もう一人の、俺…」
意を決して、赤く熟れた柘榴の実を一口…齧っていく。
その瞬間…室内に眩いばかりの閃光が走り抜けていった―。
10 | 2024/11 | 12 |
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当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。