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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※先日、某所で御題を引いて書き上げた作品です。
 内容は「鬼が泣く」にちなんで=鬼畜が泣くというイメージで
仕上げてみました。 一先ずこれを投下させて頂きます。
 切ない話なのでご注意下さいませ(ペコリ)
 


 ―暗い部屋の中で、男は一人…跪いていた。
 
 目の前に横たわるのは、壊れた人形のようになっている一人の男。
 端正な顔立ち、均整の取れた肢体。
 かつては…傲慢に、輝くように多くの人間の上に立っていた一人の男は…
虚ろな表情のまま、今日も…ベッドの上に横たわっている。
 
 御堂孝典。
 かつて彼が憧れ、手に入れたいと心から焦がれた存在。けれど…
今は、長く続いた責め苦と陵辱の日々の果てに…心を壊してしまっていた。
  
 時刻は深夜。
 部屋の明かりは消されて、室内には静かな月明かりだけが差し込んでいる。
 煌々とした透明な光だけが一筋、静かに差し込んでくる中…うっすらと
シーツの上に横たわっている男の姿が浮かび上がっていく。
 
「…御堂」
 
 静かに、佐伯克哉は…その相手の名を呟いていく。
 だが、彼は答えない。
 
「…御堂」
 
 もう一度、静かに呼びかけていく。
 だが…御堂は、それでも反応しなかった。
 いや…彼が壊れてしまってからすでに十日以上が過ぎている。
 けれど、どれだけ克哉が呼びかけようとも…どんな仕打ちをしようとも、
彼は決して答える事はなかった。
 
(あんたは…本当に壊れてしまったのか?)
 
 激しい焦燥に駆られながら…無意識の内に胸を掻き毟るような仕草をしていく。
 …その顔には、深い苦悩が刻まれていた。
 
 横たわり、微動だにしないその人の肌は…透き通っているかのように白くなっていた。
 その頬を、慈しむように克哉は撫ぜていく。
 
「…もう、あんたがこうして…何も言わなくなって十日余り、か…」
 
 切ない表情を浮かべながら、克哉はしみじみと呟いていく。そっと…
ベッドサイドに腰をかけていって、その頬や髪に静かに触れていく。
 
 相手が壊れたと、追い詰めたと…あの時、どこかで判っていた。
 なのに…自分はその事実を認めなかった。
 御堂が、怯えて…「助けてくれ!」とうわ言のように繰り返していた日。
 あの傲慢で気高かった男が、ここまで墜ちたしまったその姿を見て…
薄々と己の過ちに気づいていた筈なのに、それでも目を逸らして…
一層、彼を追い詰める行為を行ってしまった。
 
―その日から、御堂の瞳はガラス玉のように無機質になり、
何も映さなくなってしまった。
 
 今の御堂を形容するなら「壊れた人形」
 そうとしか言いようのない状態だった。
 自らの意思で身体を動かすことも、言葉を紡ぐことも止めた御堂は…
本当に人形のようで。
 元々、風貌が整った男だから…特にそう感じられる。
 
「なあ…御堂。一言で良い…憎しみでも、俺を詰る言葉でも良い…。
どうか、前みたく…何か言ってくれないか…?」
 
 御堂の唇を、そっと指先で慈しむように辿りながら問いかけていく。
 だが…その瞳には何の感情もなく、鏡のように窓の向こうに浮かぶ
月を映していた。
 
「…なあ、答えてくれないか…?」
 
 その声には、哀切なものが混じり始めている。
 後どれぐらい…こうして、何も言わないこの人の傍で…独り言に近い言葉を
投げかけていくのだろうか?
 ゆっくりと、相手の顎や頬のラインを辿っていく。
 けれど…それでも、何の反応はなかった。
 
「…なあ、本当に…俺を罵る言葉で構わない…。あんたの声を、
聞かせて…くれ…!」
 
 気づけば、耐え切れないとばかりに…声を荒げて…相手の唇に
噛み付くように口付けを落としていた。
 激しく、相手の口腔を犯すように貪っていく。
 熱い舌先を侵入させ、荒々しく犯して…深く舌先を捉えていった。
 だが…相手は、何の反応も示さない。
 どれだけ強い刺激でも、快感でも…すでに感じる心が今の御堂には
ないのだと…その事実を、今夜も…思い知らされていく。
 
「ふっ…」
 
 唇を離した瞬間、二人の唇の間から銀糸の糸が伝って月明かりに
照らし出されていく。 
 だが…それでも、腕の中のこの人は何も言ってくれない。
 反応すら…すでにしてくれない。
 それで、やっと思い知る。
 …自分がしてしまった過ちの重さを。
 そして…本当の気持ちに、嫌でも気づかされていく。
 
「はっ…ははははっ…」
 
 乾いた笑いが、唇から零れていく。
 こんな現実を突きつけられて、やっと判るなんて…何て自分は
愚かな道化だったのだろうか。
 胸があまりに切なくて…苦しくて、息をする事すら辛いような…
そんな心境に陥っていく。
 悲しくて、辛くて…知らぬ間に、ツウっと一筋の涙が零れていった。
 
 かつて、鬼畜の限りを尽くした…まさに鬼のような男が、本心に気づいて…
真実の涙を零していく。
 一粒、二粒と…まるで真珠のように、キラキラと月明かりに照らされて…
御堂の頬に落ちていく。
 
「あぁ…そうか、俺は…あんたを、好き…だったんだ…」
 
 その事実に、ようやく気づいて…そっと目を伏せていく。
 そして…その身体を強く強く抱きしめて、その首筋に顔を埋めていく。
 
 慟哭と呼べるほどの悲しみを覚えながら…声を必死に殺して泣いていく。
 …それは鬼が心から哭いた夜。
 
 その中で己の想いにようやく気づいた男は…ただ、強く強く…御堂孝典と
いう存在を、強く抱きしめて…己の罪を悔いていく。
 
―どうか願わくば、この人が以前のように輝いて欲しいと
 
 強くそう願いながら…克哉は静かに、涙を零し続けていったのだった―
 
 
 
 
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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