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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
 当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。

 桜の回想  
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故郷の町に久しぶりに足を向けて、少しでももう一人の自分の
事を理解したい…その為に中学に入学する以前のことを知りたいと
思い立ち、母校の敷地に15年ぶりに足を踏み入れた克哉を
待ち構えていたのは…謎多き人物であるMr.Rだった。
 
―まさか貴方が、ここに再び来るとはね…予想外でした…
 
 男はいつもと違って…妖しい笑顔ではなく、今日に限っては
どこか不快そうな表情でそう呟いていった。
 それにいつもと瞳も大きく異なっているような気がした。
 今…目の前に立っている男の瞳は冷酷で、感情が殆ど
ないように見受けられた。
 そのおかげで黙って対峙するだけで相当に消耗してしまう。
 だが、それでも克哉は怯むことなく…相手を真摯な瞳で
見つめながら、問いかけていった。
 
「…そんなに、オレが此処に来るのはいけない事だったんですか…?」
 
―えぇ、貴方がもう一人のご自分の存在を守りたいというのならば此処は
いわば…あの方にとっても鬼門。禁断の地に等しい場所です。
ですから…これ以上、余計なことはほじくり返さずこの場から
立ち去ってください…。これは警告です…
 
 いつになく厳しい口調で、男はそう伝えてくる。
 だが、克哉も簡単には引く訳にいかなかった。 
 こうしてこの男が現れたということは、ここに克哉が知りたい事の
糸口が確実にあるのだと教えてくれているようなものだ。
 
(Mr.Rがわざわざここに現れたという事は…逆にここが核心に近いことを
示しているんだ。やっぱり…中学以前の出来事を思い出す為に必要な
パーツは、ここに絶対にあるんだ…
 
 だが確信を深めた瞬間…割れるような頭の痛みを克哉は感じていった。
 
「うっ…ああっ…!」
 
 割れるような頭の痛みが急速に克哉に襲い掛かってくる。思わず
呻き声を上げながら、その場に膝をついていっった。
 
―ほら、見なさい。それはもう一人の貴方が…拒絶している証です。貴方に
これ以上、自分の傷を抉られるような真似を決して…あの方は望んでいないのですよ…
 
「…そ、んな事…言われたって、イヤだ…。ここで、引きたくなんて…ない…ん、だ…」
 
―強情な方ですね。そんな痛みが伴うぐらいにもう一人の貴方はこの地で
起こった出来事を…その体験を貴方だけではない。誰であろうとも…
知られたくないんですよ。その気持ちを貴方は理解出来ないのですか…?
 
「……あいつが、オレに過去を知られたくないと思っている事ぐらいは
…判っている…」
 
―なら引き返しなさい。誰にだって立ち入ってもらいたくない領域というのは
存在します。今の貴方の行為は…あの方の領分を侵す行為に他なりません。
貴方がこれ以上…意地を張るというのならば…私も黙っていませんよ…?
 
「何を、すると言うんですか…?」
 
 いつになく威圧的な口調と態度で、こちらを脅しかけてくるMr.Rを前にして、
克哉は背筋に冷たい汗が伝うのを感じていた。
 けれどこっちだって簡単に引く訳にはいかない。
 そう腹を決めて相手を睨みつけていると…不意に黒衣の男は懐から…
あの、銀縁眼鏡を取り出していった。
 その瞬間、克哉の瞳は見開かれていく。
 
「…っ! その、眼鏡は…!」
 
―はい、そうです。これはもう一人の貴方を…隠された本性を、私の大切な
あの方を解放する為のキーアイテムです。貴方が私の言葉に従わないと
いうのなら、不本意ですが…実力行使をするしかありませんね…
 
 その瞬間、男の酷薄な笑みを目の当たりにして…克哉はゾッとなった。
 コツコツ、と硬質な靴音を立てながらゆっくりと男は近寄ってくる。
 途端に、一つの情景が脳裏に浮かび上がってくる。
 
―桜の下で、15年前に佐伯克哉は間違いなくこの男に出会っている
 
 その記憶のパーツを、克哉は手に入れていく。
 だが、それは全てを思い出す為の鍵の一つを手に入れただけに過ぎなかった。
 克哉は全力で逃げようとした。
 だが、蛇に睨まれた蛙のようにすでに満足に身体を動かす事は出来なかった。
 今までも怪しい男だとは思っていた。
 だが、ここまでこの存在に対して本能的な恐怖を覚えたことがなかった。
 
(今のMr.R…本当に、怖い…!)
 
 両足がまるで地面に縫いつけられてしまったかのように
満足に動かない。
 この男の前から逃げたい、この場を立ち去りたいと強く願っても最早…
身体の自由が利かなくなっていた。
 そして男は克哉のすぐ目の前に立ち、思わず見惚れるぐらいに綺麗な笑みを
浮かべていき…そして。
 
―チェックメイトですね。これ以上、この地で貴方をのさばらせる訳には
いきませんから…
 
 そうして克哉の両耳に、冷たい眼鏡が掛けられていく。
 一年ぶりに意識が遠くなるような感覚を味わう。
 必死になって克哉は抗おうとしたが、それも無意味な努力に終わっていく。
 
(駄目だ、オレはまだ…全てを、手に入れてないのに…)
 
 そうして気力を振り絞って持ちこたえようとしていった。だがそれは無駄だと
嘲笑うように、脳裏に一つの声が響きわたっていく。
 
―無駄な足掻きは止める事だな…
 
(あいつの、「俺」の、声が…聞こえる…)
 
 ゆっくりと自分の内側から、もう一人の自分の意識がせり上がってくるのが判った。
 冷たく、傲慢な響きを伴った彼の声を…克哉は久しぶりに耳にした。
 だが、あの眼鏡を掛けられてしまった克哉には抵抗する術がない。
 自分は結局、この力には勝てないのだろうか…?
 
「悔、し…い…」
 
 恐らく、克哉が求めているものまで後一歩の所まで近づいていた筈なのだ。
 その寸前で押し止められて、克哉は心底口惜しかった。
 己の無力さに、泣きたくなった。
 唇を強く噛みしめて意識を引き留めようと試みていくがそれも徒労に終わっていく。
 そして頬に一筋の涙をそっと伝らせながら…克哉は意識をゆっくりと
手放していったのだった―
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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