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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
              7      10  11

 もう一人の自分にかつての罪を追及されて、それによって…御堂が
こちらを許してくれる発言をしてくれた時、克哉はようやく…長い間
自分の心の中で澱になっていたものを吐き出すことが出来た。

―御堂を愛しく思えば思うだけ、かつての己の振る舞いや考えが
重しとなって無意識の内に彼を苛んでいた。
 確かに再会した時、御堂はこちらを想ってくれていると
告げてくれた。
 だが、一緒に会社を設立するのを承諾して貰ってから…御堂の
誕生日を迎えるまでの八ヶ月、目まぐるしいぐらいに忙しくて
ずっと聞けないままだった。
 だからこそ、嬉しかった。
 そうしてその喜びを噛み締めていた時に…突然、魔法の鍵が
輝き始めて…二人は面食らっていた。

「…鍵が、脈動している…?」

「…本当にここは奇怪な処だな。この空間自体が在り得ないのに…
更にまた、こんな事が起こるなんてな…」

 御堂のかつて住んでいた部屋を思わせる部屋から、無数の扉が存在している
回廊に戻った瞬間…克哉が持っていた鍵が光を点滅させて、熱を
帯び始めたものだから…二人は心底驚いていた。
 映画や小説の世界ではクライマックスの場面では結構見られる
状況だが…現実に遭遇すると、どこまでここは在り得ないことが起こりまくる
場所なのだと心底ツッコミたかった。
 だが、鍵は…何かに呼応するように点滅を繰り返していて。
 その瞬間…御堂は小さく呟いていった。

「…そういえば、後一回…この鍵は使用出来た筈だよな。…克哉、
とりあえず試してみないか。使い切れば…もしかしたら、此処から
脱出出来るかも知れない…」

「…そういえば此処、出口になりそうな場所は何処にもありませんよね…」

「ああ、ずっと似たような光景が続くだけだ…。だが、私達がここに
訪れた以上…外部と繋がる場所、入り口や出口を担当する場所が…
必ずある筈だ。この現象は…それを示しているんじゃないのか?」

「…それなら、この鍵は一体何処で使えば良いんでしょうかね…?」

「…後一回分しか残されていないからな。私達が…ピンと来る
扉を選ぶしかないんじゃないか…? 二人で、これだ! と
思うものをな…」

「二人で、ですか…?」

「ああ、共同作業だ。私達は会社を興したにも関わらず普段の仕事内において…
それぞれの判断で動いていて、一緒に何かを決めたり…迷ったりした事は
思い返せば殆どなかった。なら…最後の一回を、二人でトコトン悩み抜いて
決めよう。それなら…出口を引き当てた時に、より喜びが湧く筈だ…」

 そう告げる御堂の表情は、凛として美しかった。
 もし出口に当たらなかったら、と悲観的な考えはせずに常に前を見据えた
発言をしていく。
 嗚呼、自分はこの姿に惹かれたのだ。
 本当に綺麗だと思った、手に入れたいと思った。
 そしてこの人に近づきたいと…あの時は無自覚だったが、きっと心の底では
強く想っていたのだろう。
 だからこそ一度は間違えた。
 だが…今、その人は自分の傍らに立ち、力強く導いてくれている。
 支えてくれている。
 その事実を改めて実感して、不覚にも泣きそうになってしまった。

「孝典…」

「わっ! 急に…何だ…!」

「…あんたが、俺を許してくれて…傍にいてくれて、本当に…良かった…」

「えっ…あっ…」

 強く抱きしめて、もう一度だけ口づけていく。
 脳内が蕩けてしまうぐらいに濃厚で甘いキスを暫く交わしていくと…
相手の身体にきつく絡めていた腕を解いていった。

「…行こう。あんたと一緒に早く…俺たちの会社に戻りたいからな…」

「…それなら、こんなキスをして無駄な時間をロスさせるな。また満足に
立てなくなったらどうするんだ…まったく…」

「…その時は幾らでも責任取りますよ。あんたを熱くさせた時は…
必ず、俺がね…」

「なっ…!」

 克哉の自信満々の一言に、御堂はとっさに頬を染めていく。
 その表情にうっかりとときめいてしまったのが恥ずかしくて…御堂は
憮然とした顔を浮かべていくが、耳まで珍しく赤くなっているのを見て
克哉は忍び笑いを漏らしていった。
 そして二人で必死に悩んで、検討して…選び抜いて、ようやく
お互いにこの扉が良いと決めていった。

「…克哉、この扉にしよう…」

「嗚呼、あんたと必死に決めた扉だ。必ず…繋がる筈だ…」

 お互いに目を見つめていきながら意思を確認していった。
 固唾を呑んで…鍵穴にキーを差し込んでいく。
 重い手ごたえを感じていきながら…暫くして、ギイと鈍い軋み音を
立てて扉が開かれていく。

―その瞬間、眩いばかりの光が満ち溢れていった

 一瞬にしてその光はあっという間に辺りを支配していき…二人は
光の洪水に巻き込まれていった。
 奇妙な浮遊感を覚えて…フワっと身体全体が水の中に浮かんで
いるような感覚がしていった。
 意識が遠くなり、猛烈な睡魔を覚えていく。
 だが、不安はなかった。
 これが出口である事を…二人は、何となく感じ取っていたから…!
 その瞬間、頭の中に…Mr.Rの声が鮮明に響いていった。

―よくここまで辿り着くことが出来ましたね…貴方と御堂孝典様との
絆は本物だったようで何よりです…お祝いの言葉を申し上げます…

 男の声は、いつものように胡散臭さを強烈に感じさせていた。
 だが、克哉は今は応えられない。
 一方的に相手の言葉を聞くのみだった。

―この空間は私からの贈り物です。貴方の心の中に秘められたいた過去の
罪を暴き出し、御堂様に判断を仰ぐ為にね…。いつまでも重いものを心に
抱えたまま生きるのは辛いでしょう…? どのような結果を招いても…
まずはその荷物を貴方に下ろして欲しかったから…。
 けど、御堂様から許されて…貴方はようやく楽になったでしょう…?
 人は時に、壊れることを覚悟しても向き合わなければ…真実を得ることは
出来ません。ぬるま湯に浸って安穏だけを追い求めている限り…人の
心は緩慢に腐り果てて、輝きを失ってしまう。
 …だからこそ痛みを伴っても、時に研磨してぶつかりあうことも…
必要なのですよ…。だからこそ、もう一人の貴方は自ら悪役を
買って出たのですから…

「っ…!」

 その一言だけは聞き捨て出来なくて、目を見開いていく。
 だが次第に男の声は遠くなり…そして、いつの間にか眩いばかりの
光と奇妙な浮遊感は消えていた。

―時に己と向き合う事も必要ですよ…佐伯克哉さん。さあ、ごきげんよう…

 いつものように唄うように男は告げて、そして…幕は開けていった。
 目覚めると、いつの間にかアクワイヤ・アソシエーションの床に自分達は
倒れていた。
 御堂もすぐ傍らに存在していたが、その寝顔に苦悶の色はなく…
ただ眠っているだけだと判って克哉は安堵していく。

「…全て夢、だったのか…?」

 克哉はそう呟いて、慌ててポケットに納めた鍵を確認していく。
 鍵は、辛うじて残っていた。
 だが目の前でまるで幻のように消えていき…。

―これからもどうか、御堂さんと幸せに…

 最後にもう一人の自分の声が聞こえて、幻のように消えていった。

「…ったく、余計な真似をしやがって…。だからお前はバカなんだ…」

 そう、もう一人の自分に悪態をつきながら…御堂をそっと見つめていく。
 それは魔法の鍵が齎した、自分達の心を試す試練だったのかも
知れない。
 その瞬間、克哉はようやく憑き物が取れたような穏やかな顔を
浮かべていった。
 そして…同時に御堂の目が見開いていく。

「…あ…」

 目が覚めた時に克哉のその顔を見ることが出来たことが…きっと
彼自身は知らないだろうが、御堂にとっては何よりの贈り物である事に
間違いなかったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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