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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
              7



 貪るように続けて御堂を認めて、二度目の行為を終えていくと…
二人はそのまま気だるい余韻に浸っていきながら、眠りについていった。
 深海を思わせる部屋の中で、ウォーターベッドの上に横たわって
眠っていると…本当に心地良い水の中に浸りながらまどろんでいるような
気分になった。
 水槽の向こうに広がるのは黒と藍色、そして新緑が折り重なった世界。
 しかし完全に深い眠りについている訳ではなく、浅い所で意識は留まり…
半分現実に意識を留めつつ夢の世界をさまよっているような奇妙な感覚だった。
 その時、克哉の脳裏に蘇ったのは御堂と出会ったばかりの頃だった。
 
―二年前、あんたと出会ったばかりの頃は誕生日なんて意識していなかったな…
 
 御堂との出会いは、二年前の秋の初めだった。
 その時の自分と御堂はこうやって誕生日を祝い合う間柄になど
到底なれそうになかった。
 むしろ険悪と言った方が良く…御堂は強引にプロトファイバーの
営業権を勝ち取った克哉を良く思っていなくて、順調に営業が行っている
最中に目標値をとんでもない数字に引き上げるという行動に出て来た。
 其処から、歪な関係が始まった。
 克哉が御堂を強引に犯し、その光景をビデオカメラに収めて脅迫する事で
心が伴わない肉体関係は暫く続けられていった。
 克哉はあの時期はともかく御堂を屈服させて自分の下に来させることしか
考えなかったし、御堂もまた必死に抗って…決して自尊心だけは
失わないと足掻いていた。
 決して屈しない御堂に焦れて、一度は長期間監禁までした。
 克哉のその行動によって御堂は十年掛けて築いた部長職を失うことになり、
一時は廃人になりかけた。
 ギリギリの所で克哉が己の過ちに気づいた事で…致命的な事態は避けられた。
 決別した後、御堂は自力で社会復帰を果たして…そして決別してから一年後、
再会して…こうして恋人という関係になれた。
 だが、克哉の中ではどこかですっきりしない感情が燻っていた。
 
―あんたは本当に…俺を、許してくれているのか…?
 
 アクワイヤ・アソシエーションを設立してから…御堂は仕事上でも
かけがえのないパートナーとなってくれている。
 同じ目標を抱きながら、会社の発展の為に努力している日々は心に
張りを与えてくれている。
 心の底から、この人と一緒に働けて良かったと思っている。
 だからこそ余計に…今の克哉の中では、かつてあんな行為をした自分が
この人の傍にいて果たして良いのだろうかという思いが…黒い染みのように
広がり続けて、苦しめ続けていた。
 寝返りを打って、自分の傍らに眠っている御堂の顔をそっと見つめていった。
 愛しい存在はこちらと違って…ぐっすりと眠りに就いているようだった。
 その無防備な姿を見れて…信頼されているのだと嬉しく思う反面、かつての
罪が鋭いトゲとなってチクチクと克哉を刺激してきた。
 
「孝典…あんたは本当に…俺を許してくれているのか…?」
 
 それは良く耳を澄まさなければ決して聞こえないぐらいの微かな声音だった。
 無意識の内に手を伸ばして…その頬を撫ぜていく。
 男性にしては…そして睡眠を削って連日働き尽くめになっている割には
手触りの良い肌だった。
 その瞬間…克哉の脳裏に、監禁していた頃の御堂の絶望に染まった顔と…
荒れた肌触りを思い出していった。
 
(あの頃のあんたは…本当に酷い有様だったな…。其処まで追い込んだのが…
俺だった訳だが、あの時の肌はこんな風に良い手触りではなかった…。
もっと荒れてて…乾いた感じがしていた…)
 
 人間の肌は、精神や栄養状態を表す一つの目安となる。
 これだけ多忙の状態でも今の御堂の肌の状態が良いのは…心に張りを
持って働いてくれている何よりの証だ。
 それに安堵を覚えていきながら…同時に、愛しいと思う気持ちが増せば
増すだけ…この人に以前してしまった過ちが本当に悔やまれて仕方なくて。
 こうして共にいられる事自体が一種の奇跡だと思った。
 相手の寝顔を見て嬉しいと思う反面…過去を思い出してしまった以上、
いたたまれない気がして…直視出来なくなる。
 頬をそっと撫ぜて唇を小さくついばんでいきながら…そっと身体を反転させて
起こしていくと…克哉は身繕いを整え始めていった。
 
「…眠れそうにないな…。少しこの辺りを歩いてみるか…。こんな奇妙な場所に
来ることも二度となさそうだしな…」
 
 それに一つ、克哉の中で気がかりになっている事があった。
 御堂が最初に開いた扉の事だった。
 愛し合っている最中は綺麗に頭の中から吹き飛んでいたが…何故、
御堂はあんな反応をしていたのかずっと心の底では引っかかり続けていた。
 だが…御堂の目がある状態では、間違っても勝手に開いて見る
訳にはいかなかった。
 しかし…こうして相手がぐっすりと眠っているのなら、こっそりと見に
行っても恐らく大丈夫だろう。
 
(何故…あの部屋の事が俺はこんなに気になるんだ…?)
 
 自分でも不思議だった。
 だが…どうして御堂があんな顔をしたのか知りたいという気持ちの
方が勝っていった。
 ベッドから立ち上がる寸前、御堂の方を振り向いていった。
 相手は連日の激務で疲れ果てているのだろう。
 こちらがゴソゴソやっても起きる気配を見せなかった。
 それが…克哉に小さく決意をさせる要因になっていく。
 
「…悪いな孝典。中を覗いて何があるのか確認したら…すぐにあんたの
元に戻ってくるから…」
 
 そう一言謝罪していきながら…克哉は部屋を出て、無数に並ぶ扉の中から…
御堂が最初に開いた扉を探し出していく。
 基本的に鍵を使用した扉以外はビクともしないので…幾つかドアノブを
回して確認している内にようやく…探し当てることに成功した。
 
「…恐らく、この扉だな。さて…この部屋に一体何があるんだ…?」
 
 緊張しつつ…克哉はゆっくりとドアを開いていく。
 部屋の中は薄暗く…チラっと見たぐらいでは何があるのかまったく
伺うことは出来ない。
 そうしてギイ…と軋み音を立てていきながら扉は開け放たれていき…
克哉はその奥に広がる光景を眺めて、目を見開き…そして息もとっさに
出来なくなるぐらいに驚愕を覚えていったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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