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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※2010年度の九月、月見を題材にして思いついた
御堂と克哉のイチャイチャ話です。
 浴衣着て乱れるノマを書きたいっていうのが動機なので
それを承知の上でお読みください。

月夜の恋人      

 情事が終わってお互いの欲が満たされていくと…布団の上で
二人で寝そべりながら藍色の夜空に浮かぶ銀月を眺めていた。
 終わった後、軽く互いの身体を清拭してから…新しい浴衣に
袖を通した状態で、寄り添い合っていく。
 九月の下旬に差し掛かり、急激に気温が下がった事もあって…
こうしてお互いの体温を感じられると、酷く心地良かった。

「…やっと、こうして…ゆったりと月見が出来た気がするな…」

「ええ、そうですね。さっきは月をゆっくりと眺める間もなく…その、
お互いに求めあってしまいましたから…」

「…まあ、な。だが…こうして君と一緒に月を眺めていると…何ていうか
凄く穏やかな気持ちになれるな。…普段、仕事をしている時には絶対に
得られない感覚だな…」

「…どんな気持ちなんですか、孝典さん…?」

 克哉が瞳を細めていきながら問いかけていくと…御堂もまたフっと
瞳を眇めて恋人と軽く見つめ合っていく。
 そうして小さく溜めの時間を作ってから、ボソっと呟いていった。

「…酷く満ち足りて、優しい気持ちだな…。君と出会う前の私には…
最も縁遠かった感情だ…」

「えっ…」

 克哉が軽く瞠目していくと、フワっと御堂の唇が目元に落とされて…
軽く頬を染めていく。
 御堂の手が優しく、こちらの髪を…頬を撫ぜていく。
 大切なものに触れるかのように、確認するかのように…労わるかのように。
 それは確かに…出会ったばかりの御堂の事を思い出せば、縁遠く…
別人のようにさえ見える姿だった。

「…君と出会ったばかりの頃の私は成果を得る事ばかりを考えて…
他者の事を思い遣る事など決してなかった。自分にとって役に立つか、
それとも役に立たないかで人を判断していたし…害になるようならばっさりと
立ち切って寄せ付けないようにしていた部分もあった。だから…気持ちも
今思い返せば…随分、殺伐としていたように思う。…きっと、君と出会った
ばかりの頃の私だったら…ただ何をする訳でもなく、月見をする事が目的の
今夜のような誘いは一蹴して乗る事はなかっただろうな…」

「えぇ、そうですね…。以前の孝典さんのままだったら…オレも、貴方を
今夜のように月見に誘う事はなかったと思いますから…」

 二年余りの月日を得て、自分たちの関係は大きく変わった。
 そしてその間に御堂も大きく…様変わりをしていった。
 恋人関係になり、一緒に過ごすようになり…仕事だけでなく、日常もまた
一緒に過ごす時間が増えたからこそ…何気ない時間が、とても大切なのだと
判った今だからこそ…何もせず、ただ月を一緒に眺める。
 そんな時間すらとても愛おしいものに感じられるのだ。
 それは合理的で無駄な時間を厭い、極力排除していただろう頃の御堂には
とても意味を見いだせない時だっただろう。
 其れは克哉にも容易に想像が出来た。
 だが、今は…。

「…けれど、今の孝典さんはとても穏やかになったと思います。
貴方と過ごす何気ない時間がとても愛おしく感じられますし…オレにとっては
大切なものだから。こうして…貴方と月を眺める一時が、永遠であれば良いと。
そんな馬鹿な事さえ…ふと、考えてしまう自分がいます…」

「永遠か…。確かに、そんな事を私も願う事があるな。君がいつまでも…
私の傍にいてくれれば良いと。冷静に考えればありえない…幻想に近い
願いを、私も時に願う事はある…」

「…ふふ、一緒ですね孝典さん…。何だか、嬉しいです…」

 そうしてくすぐったい想いを抱いていきながら二人はそっと唇を
重ね合っていく。
 先程の情事の時は、乱れた姿を月に見られているようなそんな気分になって
凄く恥ずかしかったのに…今は、優しく包み込まれて見守られているような
そんな風に感じられていった。

「…貴方と、こうして一緒に月見が出来て…本当に良かった…」

「あぁ、私も同じ気持ちだ…克哉。これからもこうして…一緒に何気ない時間を
君と過ごしていけたら…と思っている…」

「はい…オレも、そう思っていますよ…孝典さん…」

 そうして愛しい人の腕に包み込まれて、克哉はそっと目を伏せていく。
 綺麗な月と、お互いの息遣いと鼓動がくっきりと感じ取る事が出来る静寂と…
微かに聞こえるススキが擦り合うささやかな音と、鈴虫の音色。
 秋の夜長を実感出来る一時の中…克哉はギュっと御堂の身体に抱きついていって
その贅沢な瞬間を味わっていく。

(…孝典さん…大好きです…。こうして貴方の腕の中に抱かれているだけで…
本当に眩暈すら覚えるぐらいに…オレは満たされて、幸せな気分になれる…)

 そうしてその幸福を噛みしめていきながら…克哉は御堂を眺めていく。
 月の淡い光に照らされて、優しく照らされている自分にとって愛しい人の…
優しい顔を。
 御堂がまた…克哉を抱いていた時に月光に照らされたその姿に
酷く心を煽られたように。
 克哉もまた…月下の恋人の、普段見られる姿に…愛しさがこみ上げてきて…
そっと囁いていく。

「…愛しています、孝典さん…。これからも、ずっと貴方の傍に…」

「あぁ、君が私の傍を離れる事など許さない。…克哉、ずっと私の傍から
離れるな…」

「…はい」

 殆ど命令にも近い、強い口調で…御堂から必要とされているのだと実感
出来る言葉を与えられて克哉は嬉しそうに微笑んでいく。
 そして祈りにも近い気持ちを込めて、そっと呟いていった。

―いつまでもこうして貴方の傍にいます…。貴方がオレを必要としてくれる限り…
ずっと…この手は離しません…

 それは誓いにも似た、真摯な克哉の想い。
 御堂はその言葉を聞いて…思わず見惚れるぐらいに綺麗な笑みを浮かべて…
愛しい恋人を、強く抱きしめて…腕の中に閉じ込めて独占していったのだった―


 
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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