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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  本多がそのまま…謎の男に連れていかれたのは奥まった場所に
ひっそりと存在する一軒の店だった。
 店内に入った途端に、エスニック風の不思議な香りが鼻腔を突いて
いった。

 店内につくと同時に、自分の怪しい銭形のコスプレ衣装は問答無用で
店員に没収された。
 このような服装は…当店のお客様には相応しくないという理由でだ。
 …そのおかげでようやく、普通の格好に戻れた本多は…実に落ち着かない
様子で、店内全体を眺めていった。
 今までの彼の人生で、まったく縁がなかった雰囲気の店である事は
疑いなかった。 

「…この店は…?」

「…私が経営している店ですよ。ああ、そんなに警戒なさらなくても
良いですよ。私は貴方に危害を加える気など…まったくありませんから」

(良く言うぜ…)

 こちらの警戒心を解かせる為に微笑んでいるのだろうが、存在からして
胡散臭い男にそんな対応をされたって、こちらとて警戒心を解ける訳が
なかった。
 
―佐伯克哉さんの真実を知りたくはないですか?

 誘惑するような、歌うようなそんな口調でこの男に問いかけられた。
 本多は、ずっと知りたかった。
 ある日を境に少しずつ克哉が変わっていってしまったその理由を。
 御堂がそれに関わっているのか、否かを。
 それに正直言って…彼には判らなくなってしまったから。

 克哉を追い詰めたのは御堂だと思っていた。
 けれど今日の克哉の一挙一足や、態度はその予想を大きく裏切るもの
ばかりで。
 どう見ても、御堂に対して好感を抱いているとしか思えない
振る舞いに表情。
 どちらが本当で、何が思い違いだったのか…本多は今、迷ってしまって
いたのだ。
 だからこんな男の誘いに、あっさりと…乗ってしまったのだ。

(何が本当なんだよ…。 克哉、お前にとって御堂はどういう存在
だっていうんだよ…)

 心から心配しているからこそ、本多は…答えを欲していた。
 それが断片であったとしても、克哉の事を彼は知りたかったのだ。
 前を進むMr.Rの姿を疑わしそうに見つめていきながら…ゆっくりと店の奥へと
進んでいく男の背中を追っていく。
 そうしている内に…赤い天幕で覆われた、妖しく重厚な雰囲気を漂わせた
地下の一室へと辿り着いていった。
 不思議な香の香りが一層濃いものになっていって、そのまま噎せ返って
しまいそうなくらいだ。
 そうしている内に本多の疑念は更に深いものになって、怪訝そうに
問いかけていく。
 
「本当に…ここで、克哉についての事が、判るのか…?」

『えぇ、私はそういう事に関しては嘘を言いませんよ。ちゃんと本多様に
佐伯克哉さんの真実のカケラをお見せいたします。こちらを…どうぞ…」

 そして、部屋の中心には何故か大きなテレビが鎮座していた。
 今、流行の薄型の代物だ。
 恐らくこれだけで40~50万は軽くするだろう…大型のワイドサイズの
テレビ。何故、こんな物があるのか…一瞬、理解に苦しんでいくと…。

『今から、このTVに…貴方様の知らない佐伯克哉様のカケラが映し出されます。
 それをどのように受け止め、解釈されるかは…貴方様次第でございます…』

「TVに、克哉が…? どうして、そんな事が…?」

 唐突な展開に、本多は迷いまくっている。
 自分の知っている克哉の人物像からしても、積極的にテレビに映るような
真似をしたり、人に映るように請われても許可するようには思えなかった。
 当然、他人に撮影されて欲しいと言っても、断りそうな…大人しい性格の
男だ。どうして…こんな処に、克哉が映し出されるのか疑問に思っていくと…。

『当店のテレビは…少々、不思議な力がございまして。雨の日だけ…
覗き見たいと強く願うことによって、その人物の隠されて表に出ない部分を
ほんの少しだけ垣間見せるのです。
 …その方が隠し通しておきたい事。決して他者に漏らした事のない
秘め事…そういう物が、これから短い時間だけ…このディスプレイに
映る事でしょう…。さあ、佐伯様の事を知りたいと思うのなら…強くその面影を
脳裏に描いて、このテレビを覗き込んで下さい。
 そうされれば…数ヶ月前に、何故克哉さんがあれだけ憔悴しきっていたのか…
その事情を知る足がかりにはなると思われます…』

「隠されて表に出ない部分…?」

 そう言われて、ハっとなった。
 …自分は克哉の事、どれくらい知っていたのだろうかと。
 大学時代から七年以上、克哉とは付き合いがある。
 当然、大学三年の時に克哉が部活を辞めてから卒業までの期間は
たまにキャンバスで顔を合わす程度の間柄になっていたが、キクチに一緒に
勤めるようになった頃から、交流は復活して…それから、本多にとっては
一番身近な仕事仲間になった。
 年が一緒であり、部活も同じ処に所属していたという気安さから…八課の
仲間達の中でも一番、過ごしている時間が多い存在だ。
 だから知っていると思っていた。
 けれど、今…気づいた。いつだって、克哉は肝心な事は殆ど自分に話して
くれていなかった事に…。

(良く考えたら、あいつって判らない部分が多くないか…?)

 本当なら、こんな覗き見みたいなことは絶対にしてはいけない。
 普段の本多の価値観ならば、決してそんな不正行為を自分に許すような
真似はしなかっただろう。
 正義心が誰よりも強い彼ならば、他の日に遭遇したのならば…この誘惑に
負けてしまうことなどなかっただろう。
 だが、どんな人間にも弱る時はある。
 迷い、苦しんで…本来ならやってはいけない過ちを犯してしまう時は…
人の心には、脆弱で脆い一面も存在する以上、ありえてしまうのだ。

―本来なら、こんなの…見てはいけない。克哉が俺に隠していたことを
暴くような…そんな、卑怯な真似を本当にして良いのか…?

 本多は、テレビを前にして葛藤していた。
 そうしている間に…ザーザーと音を立てて、電源がつけられていく。

―見ちゃ、駄目だ…!

 心の中で良心が大合唱していく。
 負けるものか…と思って、目を逸らそうとしたが…。

「っ…!」

 一瞬だけ飛び込んできたとんでもない光景に、むしろ…視線は釘付けに
なってしまった。

(何だ今のは…!)

 映ったのは、赤い天幕の部屋で…さるぐつわをされた状態で、大股開きで
寝かされている克哉の姿だった。
 その上に誰かが覆い被さっている…その相手の顔までは判らない。
 だが、その顔は間違いなく…克哉、だった。

「…興味を、惹かれましたか…?」

 ねっとりとした妖しい声音で、黒衣の男が囁く。
 こちらは驚きの余り、声も出なくなっていた。

「………」

「…だんまりですか。嗚呼…また、次の断片が出て来ましたよ…?」

 そうして、今度は…誰かの傍で跪いている克哉の姿だった。
 その相手の顔は見えない。
 だが、克哉は裸で相手の足元に鎮座して…苦しそうな顔をして何かを
咥えている。

(何だよ…これ、マジかよ…!)

 最初は、何を咥えているのか認識出来なかった。
 だが、ネチャネチャといやらしい水音が同時に耳に飛び込んでくる。
 克哉の顔が苦しそうに歪められ、不自然な程に上気して…その顔は異様に
扇情的であった。
 自分の同僚が、男の性器を咥えて…それを口で愛している姿などを
見せられて、ショックを受けないでいられる訳がない。

「か、つや…?」

 とても、目の前の出来事が現実とは思えない。
 だが作り物と言い切るには…リアルティがありすぎた。
 ワイド画面にドアップで映っているその顔は、自分が長年傍にいて良く
知っている『佐伯克哉』そのもので。
 だからこそ、本多は驚愕に浸りながら…こんなのは嘘だ、と心の中では
叫んでいるのに…それから目を離せない。

―こんなのはまだ、序の口ですよ…。

 男がどこまでも愉しげに哂っていく。
 動揺し、驚愕している本多の姿が愉快で堪らないというように。

「…こんなの、俺は…見たくねえよ! 克哉は…俺の知っている、克哉は…!」

 混乱して、怒鳴り声を上げていく。
 だが…Mr.Rがそっと本多の肩に両手を置いて軽く押さえつけていくと、其処から
何か強い呪縛にかかってしまったかのように…身体が動かなくなる。

―本多様。ショータイムは、これからですよ…?

 そして、男は歌うように宣言すると同時に…一層、信じたくない場面が
その画面に映し出されていく。

「…っ!」

 そして本多は硬直していく。
 その画面に映された光景は余りに淫ら。
 目を逸らそうと思った。
 だが、食い入るように見てしまう。
 本多は克哉のそんな顔など、見た事なかったから。
 こんなに艶っぽくて男を誘うように頬を赤らめている…そんな表情を彼が
出来るだなんて、今までこれっぽっちも思っていなかったから。

 ―そして本多は罠に落ちていく。
  中庸な幸せに落ち着こうとしてる克哉の前に、大きな波紋を落とす為に

  そして彼は、驚くべき場面をこれから幾つも、テレビを通して見せられる事と
なったのだった―
 
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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