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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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―克哉は…ずっと、自分達にとって幸せになる道が存在するだろうか
もう一人の自分の内側から、考え続けていた。
 彼が持っていた…ズバ抜けた観察眼と、客観性。
 それは自分に自信が持てなかった頃には生かせなかった
能力だったが、追い詰められた事で…彼は限られた時間の中で
自らの内の世界を視る事で、どうにか一筋の希望を見出していた。
 そして、誓っていた。
 …このほんの僅かな可能性を守る為ならば…どんな事でもすると。

 ―たった一度だけ、御堂に抱かれた日の朝に静かに決意していた―

 森の影から現れた小さな影に、二人はハっとなってそちらの
方へと一斉に視線を向けていった。
 其処にいた少年の克哉は、異様な風体と成り果てていた。
 それを目の当たりにして、彼らは驚愕するしかなかった。

「何だ、これは…!」

「っ…!」

 眼鏡は、つい震えながら声を発し…克哉は驚きの余りにまともに
声が出なくなっていた。
 子供の克哉は、真っ黒でつるりと…目、鼻、口の部分がまったくない
のっぺらぼうを連想させるような仮面をつけて、その場に立っていた。
 少年の服装はブレザー…かつて小学校の卒業の日につけていた
ものに間違いなかった。
 しかし…その隙間から覗いている首筋から、手首に掛けて…
まるで皮膚ガンに侵されているかのように赤黒い腫瘍のような
ものがびっしりと浮かんでいる。
 
(…そうか、あの子が…仮面をつけているのは…!)
 
 恐らく、克哉の推測が正しければ…恐らく、あの黒い腫瘍は彼の
顔にまで及んでいる。
 だから、きっとそんな顔を見られたくない…そして表情を読み取られたく
ないから、あんな異様な造りの仮面を纏っているのだろう。

―お前達だけ、どうして…! 無事なんだよ!

 少年が声を発すると同時に、森全体が震えた。
 ビリビリビリ、と静電気が走ったかのような刺激が全身に走っていく。

―僕だけが、こんなに苦しいものを背負わされて…ついに、こんな
姿にまでなったというのに…! どうして! どうしてっ! どうしてっ!

 それは子供が駄々を捏ねているような、癇癪を起こして感情を
爆発させているような…そんな、光景だった。
 肌が粟立つぐらい…激しい憎悪の波を少年から感じていく。
 いや、事実…彼は全てが憎くて仕方なかった。
 その強烈な負の感情が、心の世界…そう、彼が存在している
一帯を著しく歪めて、ここまでゾっとするような光景を生み出していた。
 
「…本当に、これが…俺の一部、なのか…?」

 誰にだって心の中に、認めたくない…直視したくない醜い
部分が存在しているだろう。
 その象徴を初めて、目に見える形で確認して…悔しいが眼鏡は動揺して
唇を震わしてしまっていた。
 あの子を救わなければとか、克哉が言っていた時には…何であんなガキを
自分が救わなければいけないんだ…と内心では、強く思っていた。
 だが、嫌でも納得した。
 これは…あまりに、哀れな姿だったからだ…。

「そうだよ、小さな身体に…この世界を歪める程の『憎悪』という猛毒を
受け入れさせられたからこそ…あの子は、あんな姿になったんだよ…!」

 拳を痛いぐらいに握り締めながら、悲しそうな眼差しを浮かべて克哉が
肯定していく。

「…早く、受け入れてあげてくれっ…! お前が受け入れない限り、自分の
後悔に満ちた過去を…消え去りたいと思った苦い記憶を拒絶し続けてる
限り、決してあの子は救われないから! どんなに醜くても、何でも…オレと
同じように、彼も…お前自身でもあるんだからっ!」

 克哉は、険しい顔を浮かべながら…もう一人の自分を激励していく。
 だが、眼鏡は身動き取れなかった。
 展開が速すぎて、あまりに彼にとって衝撃的な内容が立て続けに起こり
続けて…おかしくなりそうだった。
 せめて、もう少し…時間があれば、整理し…納得するだけの準備が出来る
余裕さえあれば、彼は受け入れられただろう。
 しかし…ずっとこの世界に存在し、それを見据えていた克哉に対して…
眼鏡はこの一年、ここから離れ続けていた。
 だから、彼は動けなかった。

―この俺が、動けないだと…っ?

 恐怖のあまりに、強張って動けないなど…彼は決して認めたくなかった。
 だが、冷や汗がジトリ…と服の下から滲み始めているのが判る。
 動悸が早くなり、心が大きく波打ち続ける。

「早くっ! あの子を見失わない内に…!」

「判っている…! 判っている…!」

 けど、眼鏡の心に反して…憎悪の塊である少年の自分と対峙して
彼の身体は動かなくなってしまった。
 頭では理解しているし、判っている。
 だが認めたくない気持ちの方がまだ強かった。圧倒されていた。
 情けなかった、信じたくなかった。
 その強烈な感情が、彼の心を満たしているにも関わらず…なおも
身体を動かせない現実に、本気で歯噛みしたくなった。

 だが、無理もなかったのだ。
 切り離さなければ正気を保てなかったくらい彼にとって苦痛が伴う
感情と記憶を、ある日いきなり突きつけられて…果たしてどれくらいの
人間がすんなりとそれを受け入れられるというのだろうか?
 苦い経験を、過去を受け入れるには勇気と時間がいる。
 その、時間の方が…今回の場合は、無情なくらい彼にとっては
足り無すぎたのだ―

「『俺』…! 早く、動いてっ!」

「判っているっ!」

 ようやく、歯を食いしばって歩み寄る勇気を持った瞬間…少年は、
こちらの方にいきなり素早い動きで歩み寄っていった。
 その手には黒光りする、何かが握られていて…。

「っ…!」

 それが何か、認識した時にはすでに遅かった。
 瞬く程の僅かな時間に、間合いを一気に詰められて…少年は
素早く眼鏡の懐に飛び込もうとしたその時―

「危ないっ! 『俺』…!」

 とっさの判断で、克哉は…もう一人の自分を突き飛ばしていく。
 そして…信じられない光景が、目の前で展開される。

「嘘、だろ…?」

 辺りが一気に真っ白に光ったと…錯覚するぐらいの衝撃的な
出来事が起こっていく。
 瞠目し、その場から足が縫い取られてしまったかのように…彼は
動けなくなっていった。
 ふがいない自分を、この時ほど…呪った瞬間はなかった。

「返事をしろっ…『オレ』…!!!!」

 眼鏡の悲痛な叫びは、黒い森全体に響き渡り…悲痛の感情を
伴って木霊していったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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