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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  ※この作品は現在、不定期連載中です。(週1~2回程度のペースで掲載)
 その為以前のを読み返しやすいようにトップにリンクを繋げておきます。

  バーニングクリスマス!(不定期連載)                  10 
                          11   12

―本多憲二は混乱していた

 さっき起こった事が現実なのか、頭の中でグルグルと渦巻きながら
就業時間を迎えようとしていた。
 本日は午後二時前後まで、営業であちこちを回っていた。
 だから例の大食い大会のミーティングが終わった後、退社をする
前ぐらいは今日の成果を打ち込んで纏めて、片桐に報告しなければ
ならなかった。
 しかし、あまりに仕事に手がつかない。

(何で…太一とかいう奴の他に、御堂さんまで…!)

 それが、不思議だった。
 そして本多の一番の謎だったのだ。
 今までそんな気配を、御堂から感じたことは殆どない。
 いや…プロトファイバーの営業の件が終わってからも、MGNはキクチと
繋がりを求めて来たが…この一年、直接関わって来たのは御堂と克哉の
二人で…本多は蚊帳の外だったから、気づいていなかっただけだった。
 あんな風に宣言しながら飛び込んでくるなど、自分が知っている御堂のイメージと
あまりにかけ離れ過ぎていて…本当にあれは本人だったのかと疑いたくなる。
 しかし…あの傲慢な物言いに、不遜で冷たい態度は紛れもなく本物だった。

(一年ぶりに会っても、イケすかない所は全然変わっていなかったよな…
あの人は…。てか、何で御堂さんまでお前は誘惑しているんだよ…。
克哉、お前が全然判らねぇよ…!)

 本多としては一年以上前から、克哉のことを意識して…願うことなら
恋人関係になりたい、とずっと思っていた。
 
 ―本多はオレの大切な親友だよ

 そう言い放たれても、その態度を貫かれても…一度自覚した恋心は決して
抑えられなかった。ずっと想い続けていた。
 なのに…ここに来て、恋のライバルはゾクゾクと増え続けていく。
 克哉に熱っぽい目を向けてくる女性社員は後を絶たず、ついでに太一や御堂まで
乗り込んできた。
 冷静でなど、いられる訳がなかった。

「うぉぉぉ!!」

 しまいには、混乱した頭をどうにか整理しようとうめき声を上げながら机に
頭部を擦り付けるような仕草までし始めていく。

「わわっ! 本多君どうしたんですか! 何か悩み事でも…!」

 その鬼気迫る様子を見て、片桐が慌てた様子で声を掛けてくる。

「…す、すみません! 幾ら悩んでも答えが出なかったので…つい、呻いて
しまいました…!」

 片桐があまりに血相変えてこちらに声を掛けてくるので…逆に申し訳
ない気分になって、こちらも急いで謝っていく。
 どうしよう、本気で仕事に手がつかない。しかもこのまま部屋の中で
頭を抱え続けていたら…周囲の人間にいらない心配を掛けたり、奇異な
眼差しを向けられることは必死だった。

(ちょっと外の空気を吸ってきた方が良いな…気分転換しないと、マジで
頭がおかしくなりそうだ…)

 そう判断し、本多は勢い良く立ち上がっていくが…勢い余り過ぎて、盛大に
椅子から転げ落ちていった。

「うおっ!」

 ドンガラガッシャン!

 まるでコントか、漫画の中のように本多の巨体が盛大に八課内の床の上に
滑って転がっていった。

「あぁ!! 本多君! 本当に大丈夫ですか! 頭は打っていないですか!
怪我はないですか! 報告は今日は良いですから…もう帰って良いですよ!
さっきから見ていても、全然仕事に手がついていないみたいですし!」

 片桐がまたもやアタフタとして本多の元に駆け寄り、労わりの言葉を掛けていった。
 …普段、優柔不断で少し頼りない人だなと感じることは多々あっても…
優しい人である事は紛れもない事実で。
 混乱していたり、傷ついている時に片桐がこうやって気遣ってくれると…
心に染み入った。

「うっ…すみません。今日は片桐さんの言葉に甘えます…! それじゃあ…!」

 片桐の言葉を聞いて、これ幸いとばかりに…その場から立ち上がって自分の
カバンを手に取っていくと…本多は部屋から出て行った。
 そうして本多は駆け足で…御堂と克哉が、打ち合わせをしている筈の
会議室へと急いで向かっていく。
 さっき起こった出来事を思い出して…本多はハラワタが煮えくり返りそうな
気持ちになっていった。

―彼のことを、私は一切譲るつもりはない。スタートラインにすら立っていない
君達には特にな…

 自信満々に、そう言い放っていった。
 意味深な表情を浮かべながら、そんな事を言い放った御堂に…太一も自分も
本気で怒りを覚えた。
 
―スタートラインにすら立っていない

 その一言が、無性に腹立たしく聞こえたからだ。
 一食触発の空気だった。ピリピリピリと…空気が殺気立っていたのが
確かに判った。
 何かキッカケがあれば、そのまま爆発していただろう。それだけ際どい雰囲気が
自分と太一と御堂の間には流れていた。
 だが、その前に…大食い大会の係の人間が自分達を探しに来て、飛び込んで来たので
特にそれ以上は何事も起こらなかった。
 一度、大会議室に戻って…それから、御堂が「聞きたいことがある」と言って
克哉を連れ出して二人きりになっていた事以外は…。

 ―だから本多は、気が狂いそうになりながら…この30分を過ごしていた。

 ここはキクチ社内で、今は就業時間中だ。
 御堂と二人きりになったからと言って…克哉がどうこうされているとは
思えなかった。
 けれど、あぁやって飛び込んできた御堂の剣幕を…ついさっき本多は目にした
ばかりで…だからこそ、嫌な予感は時間の経過と共に増してしまっていた。
 太一があの後、どこに行ったのかは判らない。
 けれど…恐らく、自分と同じ穏やかではない心境で過ごしていることは
明白だった。
 そうして本多は階段を勢い良く駆け下っていくと…御堂と克哉が消えていった
小さなミーティングルームの前へと向かっていった。
 間近まで近づいていくと…本多は、気配を悟られないように足音を忍ばせて
そっと聞き耳を立てていく。
 瞬間、信じられない音を聞いた。

―はぁ…ん

 それは、悩ましい声だった。
 一瞬、誰のものかと…耳を疑った。
 だが、この部屋の中にいるのは克哉と御堂に間違いないと…その事実を
思い出してからは、一気に頭に血が昇っていった。

(御堂の奴…まさか、就業時間中に克哉に手を出したのか…!)

 その事に思い至った瞬間、本気で殺意すら覚えた。
 フルフルと身を震わせながら…こめかみと大きな手の血管が脈動していく。
 本気で扉を蹴り破りたい衝動に駆られていった。
 だが、その瞬間…本多はとんでもないものを見た。
 いや、最早有り得ないものだった。

「なっ…!」

 そのミーティングルームの奥の廊下に、一人の人影があった。
 最初は我が目を疑った。
 しかし…それは、紛れもなく…。

「克哉…?」

 しかも其処に立っている彼は、眼鏡を掛けていた。
 久しぶりに雰囲気の変わっている克哉の方を目にしたので…本多は
唖然となった。

(えっ…? 何で克哉が外にいるんだ…? それなら、この部屋の中にいて
悩ましい声を挙げているのは一体…?)

 一層訳が判らなくなって混乱していると、廊下の奥にいた人影は…
携帯電話で、時間か何かでも確認しているようだった。
 そういった仕草の一つ一つが決まっていて格好良いと、つい思わず
見惚れていると…。

―そろそろだな

 と、離れていてもくっきりと…彼の一言が耳に飛び込んで来た。

「何が…そろそろ、何だ…?」

 本多が心底疑問そうに呟いた直後。

 ピカッ!

 と…周囲が眩く輝いていく。
 その突然の事態に、本多は頭が真っ白になった。

「な、なんだぁぁ~!!!」
 
 
 その瞬間、キクチ社内から程近い場所で…原因不明の閃光が走り抜けていった。

(な、何で克哉は…あんなに不敵な笑みを浮かべて…)

 そして本多は目撃してしまった。目を灼くような眩い光が走り抜けていく直前…
眼鏡を掛けた佐伯克哉が愉快そうに、口元を上げていったのを…。
 それにとても嫌な予感を覚えて、まさか…という想いが込み上げてくる。

―この閃光は、まさか克哉が…?

 本多はその考えに思い至った瞬間、混乱した。
 だが…眼鏡の克哉がこんな行動を取った意図が判らない。
 本多は、混乱の余り…呼吸が乱れ始めていった。

―バァァァァァンン!!

 そしてその瞬間、社内のスピーカーを通して…物凄い音量で、爆発音が
流れていった。
 とっさに鼓膜が破れてしまう! と思わせる程の轟音だった。
 大音のせいで、ビリビリビリと肌に振動が伝わってくる。
 音量の派手さの割に、閃光の時と同様に…衝撃、と言われるレベルの
揺れ等は感じられなかった。
 だが、原因不明の強烈な閃光と、爆音。
 それらは…ビル内にいた人間を混乱と恐怖に叩き落していった。

 誰もがこの突然の強烈な光に、穏やかではいられなくなったらしい。
 本多が叫び声を迸らせたのを皮切りに…アチコチの部屋から、人間が
飛び出して来てパニックになり始めていった。

「何だ、何が起こったんだ…!」

「今の光と音は何! 何なのよ! 核兵器とか、爆弾とか何かなの…!」

「落ち着いて! 落ち着いて下さい! 今から原因を究明しますので持ち場から
無闇に離れたり、パニックになったりしないで下さい!」

「落ち着いてなんかいられるかよ…! 本気で爆弾か何かを社内に仕掛けられた
んじゃないのか! 早く原因究明をしてくれよ!」
 
 ゾロゾロと廊下に沢山の人影が立ち並んでいく。
 皆、顔に激しい動揺の色を浮かべて穏やかな様子ではなかった。
 その中には御堂と克哉の姿もあって…ちょっとだけ一安心していく。
 しかし其処でまた疑問が生じた。
 ミーティングルームの中から出てきた克哉は…眼鏡を掛けていなかった。
 そして余計に、本多は混乱していった。

(今の克哉は一体…?)

 しかし幾ら彼が考えようとも答えなど出なかった。
 そうして…就業時間終了間際に発生した謎の閃光によってキクチ社内の人間と
 近隣の会社の人間は、混乱の渦に巻き込まれ、ちょっとした騒動が巻き起こって
しまったのだった―



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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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