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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 昨日掲載分の残雪(改)18話、ちょっと書き込みが足りなかったので
今朝はそれの加筆をさせて頂きました。
 この話自体は後、2~3話で完結します。
 一年前に中断した頃から辿れば、ずいぶんと長い期間引っ張って
しまいましたが…どうにか無事に終わりそうです。

 自分の中では太一×克哉版の『雪幻』に当たる話だったので
絶対に仕上げたかったのでとりあえずここまで来れて満足です。
 後、もうちょいだけ付き合ってやって下さいませ。

 もうひとつ、新しい連載用のシリーズが自分の中で浮かびましたので
完結したら着手しようとたくらんでおります。
 片桐さんの方の連載も、それからボチボチとやります。
 一応残雪は、今週中に終了させるのを目標に頑張ります。ではでは~!
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以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
                  10   
                 
11   12   13  14    15   16  17
 

  彼らの物語の観察者である太一の父は、ずっと謎であった場面を
見届ける事でガクっと崩れ落ちそうになった。
 だが、それでも…まだ、許される事なく…もう一つの場面を最後に
見せられていく。

―後、もう一つ…この場面を持って、二人の佐伯克哉さんと五十嵐太一さんの
道筋を追う旅は終わります…

 きっとそれが、男にとっては苦痛を与える場面である事を承知の上で…
Mr.Rは死にゆく者の心の世界で起こった出来事をそっと見せていった。
 男はそれを黙って受け入れていく。
 まるでそれが…息子の最愛の人間を、親としてのエゴで手に掛けて
しまった贖罪であるかのように…。
 そして、ゆっくりと命の灯が絶えようとしている…佐伯克哉の意識へと
再びシンクロしていった。

                      *
 
 ―死の瞬間を迎えたその時…彼の世界は、少しずつ暗闇に
閉ざされようとしていた

(俺は…このまま、死ぬのか…)

 身体の感覚は、当に全て失われてしまっていた。
 あれ程強烈に感じていた痛みも苦しみも、すでに肉体を失って
しまったからだろうか。もう彼は痛覚という形で感じる事もなかった。
 Mr.Rに手を差し伸べられた時に…己の命を存命させるよりも、もう一人の自分に
太一を会わせる事の方を優先して、その決断をした時から緩やかに深い地の底に
落ちてるような、水の中に浮かんでいるような奇妙な感覚を覚えていた。
 どうして最後の最後に、そんな気まぐれを起こしたのか自分自身でも
理解出来ないまま…たた、男は何もない空間に自分の意識が浮遊
しているのを感じていた。
 あの世、というものがある事を眼鏡は信じていなかった。
 死ねば人間は其処で終わりだ、と思っている。
 だからこそ死後の世界に期待など持っていないし…それにきっと自分が
行く事になるのは地獄の方だと判り切っていたからだ。

(あいつと太一は…少しでも話せたのか…?)

 Mr.Rに最後の願いを告げた瞬間、眼鏡の意識ともう一人の克哉の意識の
力関係は逆転して…彼の方の意識が今度は内側に取りこまれる事になった。
 そのせいで、外では何が起こったのか良く判らなかった。
 黒衣の男の力を持ってしても…与えられる時間はごく僅かだとも
最初から言われていた。
 だが、それでも…もう一人の自分がずっと後生大事に持っていたあの石を
太一に渡すぐらいは出来たのだと信じたかった。

―うん、渡せたよ…『俺』…

「っ…!」

 だが、眼鏡がそう考えた瞬間…はっきりともう一人の自分の声が
聞こえていった。
 思わず驚愕の顔を浮かべていくと…ゆっくりと白い光と共に暗闇の中へと
克哉の意識が舞い降りて来た。
 暗闇に閉ざされていた瞬間に淡く優しい光が満ちていく。
 そんな中で…克哉は穏やかに微笑んで、眼鏡の意識と対峙していった。

「…どうして、お前が…ここに…」

「…オレとお前は一蓮托生だから…。もうじき、死ぬのなら…最後に、お前とも
少しは話しておきたい…と思っちゃダメかな…」

「…どうしてそんな事を考えた? 俺はお前と太一の関係をグチャグチャに
したようなものだぞ…?」

「けど、最後にこうして話す機会を…オレの想いを叶えるチャンスを
与えてくれたのも確かだろう…? ありがとう…これで悔いはなくなったよ…」

 あまりに克哉が穏やかに笑うので、眼鏡の胸の中が大きくざわめき
始めていく。
 心の世界でこうして向かい合いながら会話をするのは、どれくらいぶりの
話なのだろうか。
 同じ身体を共有していながら…意思の疎通をする事がなかった二人は…
人生の終わりの間際、精神世界にて対峙していく。

「…お前は、俺が憎くないのか…? お前から肉体の主導権を奪ったのは
間違いなく俺なんだぞ…?」

「ううん…元々の発端は、オレが…あの一件から目を逸らす為に逃避するのを
望んだからだし。オレの弱さが招いた事だから…。お前とオレは同じ人間
なんだから、お前が間違いを犯したら…オレの罪でもあるのだと。
其処から逃げようとしたのが…そもそものオレの過ちだったんだよ。
それで主導権を奪われたのなら…自業自得。オレ自身が責任を
取る事を放棄したから…こうなってしまったんだから…」

「ああ、確かにそうだが…だが…」

「…それでも、お前はあの石を捨てないでくれた。そして…オレの意識を
消そうとしなかった。そして…あの石を渡す機会まで与えてくれた。
オレにとってはもうそれだけで充分…感謝しているから。
だから人生の最後に、罪の意識を抱えて…一人さびしく消えていこうと
しないでよ…『俺』…」

「っ…! お前、は…」

 そうして克哉は、眼鏡を掛けた方の意識を抱きかかえていった。
 その瞬間に、相手が胸に抱え続けていた孤独や痛みがものすごい勢いで
克哉の中に伝わってくる。
 そんな彼の心を癒すように、克哉は強い力で相手を抱きしめていく。

―もうじきオレ達は消えてしまうんだ…。なら人生の最後に恨みや憎しみを
抱くのは止めたいんだ…。自分自身を憎んでも…空しいだけだから。
お前と、オレは…同じ人間なんだし。やっとその事を…最後になって
受け入れられたよ…

 そうして克哉はどこまでも達観したような笑みを浮かべていった。
 その言葉に…思わず泣きそうになる。
 だが、図星だった。
 眼鏡は…最後に自分が救われる事など、一切期待していなかった。
 誰にも泣かれる事なく、孤独な死を迎える事になっても…それは因果応報、
自分がした事に対しての当然の報いだと思っていたから。
 だから今、差し伸べられている救いの手が信じられなかった。
 感覚も何もかもが失われつつある中、克哉の温かさだけはしっかりと
感じられて、眼鏡は…がっくりと項垂れていった。
 
「お前は…馬鹿だ。どうして…俺を、許そうとする…」

「誰かを恨んで最後を迎えたくないんだ…。せめて、この優しい気持ちを…最後に
太一と話して、取り戻したこの温かい気持ちをしっかりと抱きながら…
オレは、死にたいから…。それに今になって、お前がどれだけの痛みを
抱えて傍にいたのか…理解、出来るから。だから…もう、自分を責めないで欲しい。
オレは、最後に…お前に感謝を伝えた上で、息絶えたいから…」

「ちっ…どこまで、お人よしなんだ…お前は…!」

「…お前だって、充分お人好しだよ。だって…オレと太一を会わせる機会を
作る為に、自分が助かる可能性をつぶしてしまったんだから…」

 そう憎まれ口を叩いていくが、克哉は意地っ張りなもう一人の自分を強く
抱きしめていった。
 今なら理解出来る。
 どれだけ言葉に出さなくても、眼鏡もまた…太一を想っていたのだと。
 最後に願った事が、自分の命を助ける事よりも…太一と克哉を会わせる事を
優先したのがその証だ。
 行動に、人の想いは確かに現れるから。 
 それが今になって理解出来たからこそ、克哉は全ての怒りも憎しみも
流して…許す形で、終焉を迎える事を願ったのだ。
 だから克哉はそんな自分を抱きしめる。
 孤独なまま、お互いに死の瞬間を迎えない為に…。

(やっとオレ…お前という存在を受け入れる事が出来るな…。お前を、
オレの一部でもあるお前を否定していたから…こうなってしまった気が
するから…。本当に最後になってしまったけれど…どうにか、お前の
事を受け入れる事が出来て…本当に良かった…)

 自分たちは一人ではない。
 だから、一緒に天に召されよう。
 穏やかな心を持ったまま…終わりを迎えよう。
 
 そうして克哉は赦しの笑みを浮かべていきながら強く強く…
もう一人の自分を抱きしめていく。

―チッ…仕方ないな。付き合ってやろう…

―うん、ありがとう…『俺』…

 そうして相手がそんな憎まれ口を叩いたのを聞いたのを最後に…
 二人の意識は共に闇の中へと落ちていく。
 そして本当に終焉の時を迎えたその時、初めて二人の意識が強く
重なりあった。
 最後に、二人は祈っていった。

―『どうか、太一…幸せにな…』

 眼鏡はようやく…己が赦された事によって素直に、心の奥底で
愛していた存在のこれから先の幸福を祈る事が出来た。
 そんな彼を、まるで天使か何かのように慈愛に満ちた眼差しで
克哉が見つめていく。

―やっと、素直になれたね…『俺』…

―ああ、そうだな…

 そうして白い光に包まれていきながら…二人は眠るように目を閉じていった。
 自分たちの存在が、希薄になるのを感じていく。
 それを彼らは抗う事なく受け入れて…死の瞬間を迎えていった。
 その時、二人の心は驚くぐらいに…安らかなものだった―

 プチオンリーでは当サークルに足を向けて下さった方、
本当にありがとうございました!
 一言ですが、ここに感謝の言葉を残させて頂きます。
 さて、23日からになりますがまた連載の方をボチボチと
再開させて頂きます。

 一言でいうなら、イベント非常に楽しかったです。
 当日、こちらを構って下さった方々も本当にありがとう!
 ではでは!

 とりあえず明日発行の新刊二種類の印刷まで
現時点で終わりました! これで確実に出ます!
 明日鬼畜眼鏡スペースで発行するのは御克の
「愛の言葉」(最終的にタイトルはこれに変えました)
もう一種類が王レベの友人の処に置かせて貰う
「花便り」になります。
 良ければお手に取って見てやって下さい。

 明日販売予定の本は以下の取りです

 オフ本
 
 INNOCENT Blue 克克新婚本1(おまけ本有)  1000円
 LUNA SOLEIL  克克新婚本2           1000円
 幻花繚乱 御克ルート前提の澤村本(シリアス)   500円
 胡蝶の夢  克克泣き系シリアス            500円
 
 コピー本

 聖痕  眼鏡×御堂 シリアス&18禁        300円
 SIREN -呼び声― 克克 切ない&シリアス  300円

 それ以前のコピー本に関しては在庫がなくなりましたので
ありません。ご了承下さいませ。

 とりあえず本日はこの連絡だけで失礼します。
 朝四半時から作業して、出発時間が今日の12時40分…そして
印刷が終わったのが12時ちょい過ぎだったのでちょい、今日は
一本連載を書いていく余裕がありません。

 明日か、明後日以降にまた連載の続きを掲載させて頂きます。
 春コミに顔出して下さる方、もし立ち寄る事がありましたらどうぞ
宜しくお願いいたしますね。
 ではでは~!!

以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
                  10   
                 
11   12   13  14    15   16

―克哉はこの瞬間を、ずっと夢見ていた

 もう一人の自分に肉体の主導権を奪われてからはずっと、心の奥底で
眠り続けていた。
 眼鏡の意識を通じて微かに伝えられる否定の言葉と、自分だけを強く
求められる事に対して心を痛め続けていたせいで会う事は叶わなかったけれど
ようやく会いたくて堪らなかった、話したくて仕方なかった太一と対峙する事が
出来て克哉の瞳はうっすらと潤んでいた。

(けど、ここで泣き崩れている時間はないんだ…。オレに最後に与えられた
時間は少ない…。けれどこれは最後にあいつが与えてくれた機会なんだ。
これだけは、どうしても太一に…)

 そうして太一に強い力で抱きしめられている間、克哉は一方の腕で相手の
身体に抱きついていって、もう片方の手で白いコートのポケットを確認
するように探っていった。
 その中には小さいが、しっかりと堅い手触りがするのを感じられて
克哉は安堵の息を漏らしていった。

「…克哉、さん…やっと、会えた…」

「うん…オレもずっと、太一とこうして話したかった…。もう一度だけでも良いから…」

「…はは、両想いだね俺達。だから強くん念じていたから叶ったんだね…。
克哉さんの身体、暖かいね…」

「うん、そうだね…太一の身体も凄く温かいよ…」

 太一の手が、克哉を確認するように優しく頬を撫ぜていった。
 それだけの事に涙が出そうになるくらいに切なくなる。
 この瞬間をどれくらい待ちわびた事だろう。
 どれだけ会いたくて、焦がれる夜を過ごした事だろう。
 お互いの胸の中に万感の想いが広がり、喜びが満ちていく。

「はは、こうして抱きしめているだけで…俺、すっごい幸せだ…。克哉さんに
会える事って、こんなにも嬉しい事だったんだ…」

 太一の胸の中には、もう一人の克哉の意識に阻まれてこちらの克哉に
会うことが出来なかった期間の辛い想いがジワリ、と滲んでいるようだった。
 だが暗闇が長ければ長い程、時が満ちて機会が巡ってくれば望みが
叶えられた時の望みもまた大きなものとなるのだ。
 白い雪がフワフワと舞い散る中、二人はただ…抱き合っていく。 
 たったそれだけの事が心に染みいるぐらいに幸福で、涙が出そうだった。
 どれくらい克哉は太一の事を好きだったのか。
 太一はどれだけ、克哉を愛していたのか…お互いに噛みしめていた。

(こうして抱きしめらているだけで…涙が出そうになる…)

 もうじき、自分という存在は消えてしまう。
 だからこそ最後の瞬間まで…大好きな人とこうして会えて抱擁しあうことが出来た
この時を忘れないように強く念じていく。
 太一の匂いと体温、こうして頬や背中を擦られている感触…それらを自分の
魂に刻みつけるように。

「ねえ、オレ…ずっと太一に渡したいものがあったんだ…」

「えっ…何? 克哉さん…俺に贈り物をしてくれるの…?」

「…うん、太一が以前に…オレがプロトファイバーの営業が上手く行かなくて
凄く悩んでいた時に…サンストーンを贈ってくれただろ? お守りだって
言ってくれて…。それが嬉しかったから…お返しがしたくて、こっそりと
コレを買っていたんだ…。太一がオレにしてくれたように、機会があったら
渡そうと思っていたから…」

「えっ…マジ? 克哉さんが俺の為に何か買ってくれていた訳?
うっわ、すげぇ嬉しい…! 何々、是非渡してよ! 克哉さんの気持ちが
込められている品なら、何でも嬉しいよ!」

 その事実を明かした瞬間、太陽のように太一が笑う。
 この笑顔が本当に好きだった。
 見ているだけで心が満ちて、幸せな気持ちなれた。
 白い雪が降って空が曇天の雲に覆われている状況でも…其処だけ陽光が
輝いているようにすら感じられた。

「うん…なら、これを受け取って欲しい…。安月給のオレには、こんな小さな物を
買うのが精いっぱいだったけど…」

 そうしてさっきポケットを探って確認していた品を取り出していく。
 それはキラキラと輝く雪の結晶のようだった。
 目を焼くのではないかと思うぐらいに鮮烈に光っている、見事なカッティングが
刻まれているその石を見て太一は言葉を失っていく。

「克哉さん…これって、まさか…」

「うん…安物だけど、本物のダイヤモンド…。オレの給料なんてたかが知れているから
こんなに小さな物しか買えなかったけれど…クオリティもカラーもそれなりにある
結構良い品だよ…」

 雪が舞い散る中、そうして取り出された石は本当に雪の結晶が形に
なったもののように思えた。

「克哉さん、それって奮発しすぎだよ…。ダイヤなんて贈られたら…
俺が贈ったサンストーンとマジで釣り合わないから。こんなに高い品を
用意されてもちょっと申し訳ない気分になっちゃうだけだからさ…」

「ん、けど…オレはどうしても太一にこれを贈りたかったんだ…。
太一がサンストーンに想いを込めてくれたように…オレも同じくらいの
願いを込めておきたかったから…」

「…このダイヤが、克哉さんの想いなの…? ダイヤの石言葉って
一体なんだっけ…?」

 元々そんなに石言葉の類に詳しくない太一はピンと来ないらしくしきりに
首をかしげている。
 だが克哉は微かに首を横に振って、否定していく。

「…オレが贈りたいのは石言葉じゃなくて、ダイヤモンドという石
そのものの在り方についてだよ…。宝石全般についてと言い換えて
良いものかも知れないけれど…」

「ダイヤや、宝石の在り方…?」

「うん…太一にお返しがしたくて、同じくらいに気持ちが込められている物を
贈りたくてあれから少し宝石について勉強したんだよ。宝石ってさ、原石の
ままじゃ輝けなくて…見つけ出して研磨して、綺麗にカッティングとか
してあげないと綺麗に輝かないんだって。特にダイヤモンドは…地球上で
一番硬いから、ダイヤでしかカット出来なくて…こんな風に綺麗に輝く為には
ダイヤ同士が傷つけあわないと…いけないんだってさ…」

「…何かそういう言い方をされると、凄い壮絶に聞こえるね…。輝くって
事はさ…」

「うん、太一は夢を必死に追いかけているだろ…? その過程で絶対に傷ついたり
打ちのめされたりそういう事もあると思うんだ…。けれど、傷つけば傷つくだけ…
こんな風に研磨されて、輝ける筈だよ。だから…いつか夢が叶って、太一自身が
キラキラとこのダイヤモンドのように輝ける存在になってほしい…大成して欲しいと
いう願いを込めて…オレは、この石を贈るよ…」

「克哉、さん…俺、マジで…嬉しい。其処まで俺の事を考えて…くれていたんだ…」

 太一は泣きそうになる。
 そうして…克哉から小さなダイヤモンドを受け取っていく。
 これは太一にとって一生の宝物だった。
 克哉にとっても、自分の精いっぱいの想いを込めた品だった。
 最後にこれだけはどうしても太一に手渡ししたかった、その事だけを想って
克哉はもう一人の自分の意識に主導権を奪われてからも生き続けていた。
 けれど…これで何も思い残すことはない。
 そう思った瞬間、ふいに…自分の身体が霞んでいくのを感じていった。

―最後の時は、刻々と迫って来ているのを感じていた…

 自分は、もう消えるのだと。
 奇跡の時間は…もう終わり間際を迎えているのだと実感して、克哉は
太一の眼を真っすぐ見つめていった。
 突然、身体が薄く透けるようになった克哉の変化に太一は怪訝そうな
顔を浮かべていく。

「克哉、さん…?」

「太一…もう、オレには時間が残されてないみたい…。なら、最後に一度だけ
キスしたい。しっかりとその瞬間を…心に刻めるように…」

「…っ! 何を言っているんだよ! まだ克哉さんは俺と一緒にいてくれるんだろ!
やっとこうして会う事が出来たのに…いなくなるなんて、そんなの嫌だよ…!」

「ゴメン、もう…無理、なんだ…。今の俺は幽霊とか、生霊とかそういうのに近いから…。
これ以上は太一の傍に、いられない…みたい…」

「克哉さんっ…!」

 そんな会話をしている間に、克哉の身体はどんどん透明になっていく。
 無駄な事を話している時間はないと…その時に悟り、太一はグイと克哉を
引き寄せて唇を重ねていく。
 たった一度だけの愛しい人との口づけは、ただ唇を重ねているだけでも
二人の心を幸福で満たしていった。
 しっかりとこの時を心に刻みつけるように静かに目を伏せていく。
 白い雪がフワフワと舞い降りる中、銀世界の中でこうしてキスをしている様は
幻想的で、何かのワンシーンのようだった。

(ありがとう…)

 心の中で、克哉はそう太一に伝えていく。
 そして長い口づけが終わって、顔を離した瞬間に克哉はとびっきりの
笑顔を向けていく。
 儚くも美しい、幸福で満ちた表情を最後に残し…克哉は雪の中、
ゆっくりと大気に溶けるように姿を消していく。
 
「克哉、さん…」

 太一は、泣いていた。
 そうして…愛しい人が雪の中に消えていく様を眺めていく。
 その間…克哉は言葉もなく微笑み続け、最後に一言だけ想いを込めて
こう残していった。

―最後にありがとう太一…大好きだよ…

 そうして、佐伯克哉は永遠に…太一の前から消えていった。
 まるで夢か幻の中の出来事であったかのように…その場に足跡ひとつ残さず、
克哉という存在はその場から消えうせた。

「また、会えるよね…。もう一回ぐらい…俺が精いっぱい生きて、三途の川を
渡る事になった時ぐらい、は…。それに幽霊じゃなくて、生霊だったなら…
どっかで生きている筈だよね…。どちらでも良いから、もう一回ぐらい…
絶対に、会おうね…克哉さん…」

 そうして太一はその場に膝をついて号泣していく。
 愛しさで胸が詰まりそうになりながら、強く強く手の中に贈られた物を
握りしめていく。
 そう、佐伯克哉という存在が消えてしまってもそこに想いは残る。
 その白く輝く石…克哉からの気持ちはまるで…永遠に光り続ける
雪の結晶のように、キラキラと太一の手の中に残り続けていたのだった。

―まるでこの雪の日の、唯一消えないで存在し続ける結晶のように…




 

 とりあえず残雪、次回の話は18日中にアップするのは
無理そうなので今夜は一度寝て、19日の朝にアップするように
努力してみます。
  
 残雪の17と18がこの話のクライマックスになるのと…
春コミの準備でバタバタしているのが重なっているのでちょっと
予定より掲載が遅れる事が多々あると思います。
 それでも今月中にはこの話を完結させる予定ですので
もう少し付き合ってやって下さいませ~。

 それではおやすみなさいませ~。
 皆様、どうかよい夢を…。

以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
                  10   
                 
11   12   13  14    15

―自分が確実に相手を殺したのと同じ日に、太一が佐伯克哉と
再会していた事実に男は驚愕した

 その衝撃のせいで、意識は一時的に弾き飛ばされて…強制的に
赤い天幕で覆われた部屋へと引き戻されていく。

「これ、は…! 一体、何なんだ…! 何で、こんな、事が…!」

 男は、この出来事が起こった日に間違いなく佐伯克哉を車で
跳ね飛ばして殺した。
 雪の日にスリップしたように見せかけて。
 車一台を駄目にするぐらいのスピードを掛けて、跳ね飛ばした。
 そして…虫の息だった相手を、自分が愛用している針を使用して
完全に息の根を止めた。
 間違いない筈だった、それは自分を含めてあの日手を貸してくれた
五十嵐組の全員が確認している事だった。

『…答えは簡単ですよ。佐伯克哉さんは…いや、眼鏡を掛けた方の
克哉さんはご自分の心を、もう一人の克哉さんに与えた。
それで力を取り戻した心を…一時的に私の力で、太一さんにも
見えるぐらいに存在をはっきりさせていった。俗にいう幽霊という
奴ですよ。聞いてしまえば単純でしょう…?』

「幽霊、だと…そんなのが存在する訳が…」

『いいえ、存在しますよ。厳密に言えば思念体のようなものですね…。
こちらの眼鏡をかけていない克哉さんが最後に太一さんとどうしても
伝えたいと、渡したいと思っていたからこそ…こうして、僅かな時間だけでも
あの人は実体を持って存在出来た。
 時間にすればそれは30分にも満たない事。ですが…本当の想いが
其処に在れば…一人の人間を救うには充分ですから…』

 ソファに深く腰を掛けたままの太一の父親の髪をそっと撫ぜながら…
いつものように歌うように言葉を紡いでいく。
 だがその顔には苦いものが滲んでいるようにも、穏やかに淡々と
微笑んでいるようにも見える曖昧な顔を浮かべていた。

「…こんな、事が…本当に…」

『起こったからこそ、太一さんはお守りの中に大切にしまっている品を
この日、受け取る事が出来たんです…。あの中に入っているものが
太一さんを再生させ、再び立ちあがらせた。
 五十嵐組の貴方の厄介な養父と真っ向から対峙して…堅気の道を
歩みながら夢を追いかける事を選択した今の太一さんの基盤は…この日に
作られた訳です…』

「…太一は、其処まで想っていたというのか…佐伯、克哉を…」

『ええ、両方の克哉さんもまた…太一さんを愛しておりました…』

「っ…!」

 その一言に、男の肩は大きく震えていった。
 驚きの余り、目が見開かれていった。

「あいつも…眼鏡を掛けた方も太一を想っていたというのかっ…!」

『その通りですよ…。そしてこの状況は、眼鏡を掛けた方の克哉さんが
最後に願ったから起きたんですよ…。貴方は良心に押しつぶされるのが嫌で
無意識に聞くことを拒否した…あの人の最後の願いは、「太一に最後に…
少しでも良いからもう一人の『オレ』に会わせてやってくれ…」でした。
そういう不器用な愛もまた…世の中には存在するんですよ…』

 それは、佐伯克哉を葬り去ってしまった太一の父からすれば…良心の
疼きを覚えずにはいられない事実だった。
 憎いだけの男だったなら、心なんて一切痛まなかった。
 だが、あいつの方も…太一に酷い事ばかりを強いていた男も言葉に
出さなくても、奴もまた息子を想っていたというのなら…自分がした事は…。
 事実を知れば知るだけ、耐えがたい苦痛を与えていた。

(いや、太一にとってそれだけ大事だった存在を俺は自分の独断で
殺してしまったんだ…。これくらいの胸の痛みぐらいは受けるのが筋だな…)

 どれだけ後悔しても、時は戻すことが出来ない。
 起こってしまった事をなかった事にもなかった事にも出来ない。
 真実の裏側を知る、というのは特に加害者にとっては耐え難い痛みを伴う。
 しかし…それでも、男は見届けるのを選択した。
 息子と、憎い筈の男との間に起こった事実を…。

『…眼鏡を掛けた太一さんは最初はご自分の気持ちを否定していました。
もう一人の自分の影響に過ぎない、俺には関係ないと思っていた。
けれど…太一さんと過ごしている内に、土壌に水が染み込むように少しずつ
想うようになっていたんですよ。けれど…太一さんが求めているのはあくまで
もう一人の自分で、自分は邪魔者としか扱われていない現実があの人の
心を頑なにして、決してその事実を認めようとなさいませんでした…。
けれど、太一さんへの想いを…そしてもう一人の自分の気持ちを良く知って
いたからこそ…あの品を、肌身離さず持ち歩いて守っていたんですよ…』

「そう、だったのか…」

 その頃には太一の父親の表情は精彩を欠いて…やつれたものに変わっていた。
 力なく項垂れ、事実を重く噛みしめていく。
 
(お前が、憎いだけの男なら良かったのに…)

 表に出さないで秘められていた想い。
 そして土壇場で、太一の為に…自分が助かる道よりも、ほんの僅かな時間でも
太一ともう一人の自分に会えるように願ったその姿に知らず涙が浮かんでいた。
 これまでの経緯を辿って見ていたが…とても表面的にはあの男が太一を
愛しているようには決して見えなかった。

「不器用な、愛か…本当に、その通りだな…」

 けれど人生の最後で相手の事を優先して思い遣る事は決して
簡単な事ではない。
 それでも彼は、自分の人生の終わりに…其れを行ったのだ。

『貴方がしてしまった事は…過去はもう変えられません。克哉さんの命は
永遠に失われて、その身体もまた貴方が処分をしてしまった。
そうなったら私の力を持ってしてもよみがえらせるのは不可能ですから…。
ですから、せめて…最後まで見届けて下さい。お二人の…いや、この三人が
辿ったその物語の結末を…』

 その言葉はまるで子守唄のように柔らかく、優しいものだった。
 そうして…太一の父の目元に白い手袋で覆われた指先がゆっくりと
宛がわれて、瞼を閉じさせられていった。
 瞬間に、急速な眠りが訪れていった。

―さあ、続きをご覧になって下さい…

 意識が朦朧(もうろう)としてくる中…太一の父の意識は再び深い闇の
中へと突き落とされていく。
 そして…物語の最後の幕はゆっくりと開かれていったのだった―



 こんにちは、とりあえず本日は休みだったので一日、
イベント準備に費やしておりました。
 進行状況に余裕なかったので、16日と17日の
二日間は原稿の方を優先していました。
 やっと少し進行に余裕出てきたので…17日分は
これから書いてきます。
 日付を少し超えるか、超えないかの頃にはアップ
出来るように頑張ります。

 とりあえずイベントのスペース番号だけ。
 春コミ、東ホール1 コー04a   三日月水晶になります。
 当日の新刊は初めての無料配布じゃない御克本になります。
 
 付き合って三年目を迎えて、ちょっとマンネリになってきたカップルが
刺激を求めてメモを使ったプレイをするという。
 甘ったるくて御堂さんが意地悪で二人がラブラブなそんな本です。
 良ければ手にとってやって下さい。
 今回はコピーになるので宜しくです。

 それではまた後でお会いしましょう~!
 

以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
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―その日は都内にフワフワといた柔らかい雪が舞い散っていた
 
 東京という土地柄で、ボタ雪ではないものが降ることは極めて珍しかったが
この日は滅多にない例外が起こっていた。
 五十嵐太一は白い雪が静かに降り積もる中、必死な様子で佐伯克哉の
姿を探していった。

「ちくしょう…あいつは一体、どこに行ったんだよ…。親父や五十嵐組の
人間にも協力を仰いだっていうのに全く連絡がないままだし。俺一人じゃあ…
見つける事なんて、出来っこないよな…」

 白い息を吐いていきながら、太一はそれでも近所を彷徨い歩いていた。
 雪が降っているせいで電車の各線が運転見合わせになっていたり遅れての
発車になっていたから、自分の住んでいるアパートの周辺を捜すのが一番
可能性が高いと思って二時間余りくまなく探索したが、成果は全く
出ないままだった。
 つい先程まで一方的な行為によって痛めつけられていた身体が軋んで
悲鳴を上げていたけれど…それを押して、太一は探し続けた。

―今日、会えないままだったら…二度とあいつにも、克哉さんにも会えない…

 そんな強烈な予感が、彼の中であったから。
 だから今日は足掻くだけ足掻かなければならない、と本能で悟っていた。
 
「どこに、行ったんだよ…! あいつ…そんなに遠くには行っていない筈なのに…」

 太一は、知らない。
 先程自分が掛けた電話が、佐伯克哉の命を奪ったトリガーにも等しかった事を。
 自分の父に眼鏡が出て行った事を告げて、探すように協力を要請した事が…
密かに進められていた計画を実行に移すキッカケになった事を。
 この時点で、すでに佐伯克哉はここから一駅離れた小さな公園の近くで
父と五十嵐組の手に掛かってこの世の人間でなくなっている事など全く
予想する事なく、太一はそれでももう一度会えると信じて探し続けていた。

「あいつ、でも良い…。このまま、中途半端に終わるよりも…もう一度で良いから
探したいんだ…!」

 そして太一は、歩き回った末に小さな公園に辿り着いていった。
 ジャングルジムと、ブランコ。シーソーに何種類かの動物のモニュメント、
それと片隅に公衆便所と、天井が覆われた作りのベンチが設置されて
いる規模の公園だった。
 その頃には雪は2センチ余り周囲に積り始めて、静かに白く覆い始めていた。
 身を切られそうな寒さの中、無駄だと判っても彼は克哉の姿を追い求め
続けていた。
 
「…あれ? ここの周辺だけ…何で雪が無くなっているんだ…?」

 そして公園の外れ、ふと太一はその道路の一角だけ雪がごっそりと
無くなっている事に気づいて違和感を覚えていく。
 この日、彼は知らぬ間に導かれていた。
 黒衣の男…Mr.Rの見えざる手に…意識する事なく、太一は自然と
「克哉が命を落とした場所」へと招かれていたのだ。
 その周辺の雪が無くなっているのは、克哉の遺体と共に飛び散った血を
隠す為のものだった。
 その事に違和感を覚えていきながら太一は…ついに一時間程前まで
亡骸があった場所へと辿りついていった。
 
―その瞬間、眩い光が周囲を包み込んでいった

 それは目を焼くぐらいに鮮烈な輝きだった。
 思わず瞼を閉じて、その光をやり過ごしていくと…太一は、信じられないものを見た。

「嘘、だろ…?」

 たった今まで、何もなかった。
 人の気配すら感じられなかった。
 なのに其処に一人の人物が立っていた。

「夢、じゃないよな…これ、現実なのかよ…?」

 その顔を見て、太一は声が震えた。
 涙腺が緩んでしまいそうだった。
 否、そう思った時にはすでに自分は泣いてしまっていたのかも知れない。
 それぐらいの衝撃と喜びを彼はこの瞬間…覚えていた。
 身体が震えて、様々な想いがこみ上げてくる。
 ずっとこの日を待ち望んでいた。
 もう一度会える日を夢見て…それだけが彼の支えだった。
 なのに実際にその瞬間を迎えると…これが夢か幻ではないかと疑う気持ちが
強くて、実感出来なかった。

「夢じゃないよ…。今、確かにオレは…太一の傍にいるよ…」

 目の前の人物は見慣れたスーツ姿に、純白の白い長いフワフワの材質の
コートをまとって目の前に立っていた。
 それが今のこの人には凄く似合っていて目を奪われていた。
 儚い綺麗な微笑み、ずっと見たくて…会いたくて仕方なかった人。

「克哉、さん…!」

 太一は叫びながら相手の方に駆け出していき、愛しくて会いたくて
堪らなかったもう一人の佐伯克哉を、自分の腕の中に強い力で
抱き込んでいったのだった―

 昨日、今日と音沙汰ないままですみません。
 いや、本当に昨日は疲労がピークに達していてちょっと
体調崩しておりました。
 とりあえず本日、休養したらある程度は回復しましたけど。

 そんなこんなで、春コミの新刊の状況がいっぱいっぱいなので
ちょっと今日は近況のみで失礼します。
 月曜日の朝にまた改めて続きを掲載しますので少々
お待ち下さい。

 とせちがらい報告はそれくらいにしておいてっと。
 本日はスプレー御本家で先月やっていたバレンタインデーの
企画に、ズルっこして申し訳ないですが…鬼畜眼鏡キャラ全員に
チョコを贈っていたんですよ。
 そうしたら今日、各人からそれぞれお礼メールが来ていて幸せな
気持ちになれました。ポワ~ン。

 疲れてヘロヘロになっている時に、これは本当にうれしかったです
 これにエネルギーを貰って、連載と原稿を出来る範囲で頑張ります!
 今、仕事の方で極限まで体力を使い果たしている状況なので…思うように
出来ない日とかあってすみません。
 やれる範囲で、これからもぼちぼちつづけていきます! ではでは!

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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