鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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―遠方の出張先、今回の出向先の会社のビルの屋上で
眼鏡は一人、弁当を広げていた。
都内から飛行機で二時間前後。四国の外れにあるこの
小さな会社は…MGNが今度作る新商品に欠かせない原料を
提供してくれる会社だった。
小さな会社は…MGNが今度作る新商品に欠かせない原料を
提供してくれる会社だった。
キクチ・マーケーティングの営業八課の面々は…プロトファイバーの
営業を担当して大成功を収めた事がキッカケで…予定していた三ヶ月間が
終わってからも、MGNから何度も大きなプロジェクトに関して、協力を
要請されていた。
営業を担当して大成功を収めた事がキッカケで…予定していた三ヶ月間が
終わってからも、MGNから何度も大きなプロジェクトに関して、協力を
要請されていた。
今回の出張もそうだ。御堂が打ち立てている新商品は四種類の
ビタミンが豊富そうな果物や野菜を原材料に使用しているが、
特に彼が打ち出しているのは「水」の重要性であった。
ビタミンが豊富そうな果物や野菜を原材料に使用しているが、
特に彼が打ち出しているのは「水」の重要性であった。
昨今、健康や体調の改善を語る上で良質の水の存在は欠かせない。
プロトファイバーが美容と健康を打ち出し、若い女性に特に強く支持された事を
考慮して…次に御堂が意識をしたのはデトックス、ようするに毒出しだった。
その新商品を大量に生産し、市場に回すには…良質の天然水を提供してくれる
会社と幾つか契約を結ぶのが不可欠だった。
だが、もっとも提供量が見込めるこの会社は…特に社長が慎重な営業方針を
打ち立てていてMGNの人間では歯が立たなかった。
それで…難航する交渉ごとでも、過去に幾つも片付けて来たという実績を
御堂に買われて…今回、克哉は本多と二人でこの辺鄙な地に一泊二日で
出張する事と相成ったのであった。
「まったく…これしきの事でこちらを飛ばして交渉ごとをさせるとは…。
御堂も、あまり部下には恵まれていないな…」
そんな事を呟きながら青空の下で、眼鏡は弁当を広げていった。
時刻はすでに13時を若干越えているぐらいの時間帯だ。
本日は午前7時には家を出て…九時前には本多と共に飛行機に
乗ってこの出張先へ向かっていた。
そして十時半頃からは取引先と会談を始めて…二時間余りに渡る
乗ってこの出張先へ向かっていた。
そして十時半頃からは取引先と会談を始めて…二時間余りに渡る
新企画のプレゼンや、営業の結果…無事に契約を取り付けるのに成功していた。
早くも良い流れが生まれつつあったので…後は翌日いっぱいまでに必要な
資料や書類の作成を完成して、裏づけを取ればほぼ任務完了である。
眼鏡にとっても仕事がスムーズに流れて、自分の果たすべき事が達成された時は
大層気分が良い。
そして…本日に至っては彼の奥さんから、愛妻弁当まで
しっかりと手渡されていた。
しっかりと手渡されていた。
これを昼に食べるのを心待ちにしながら…本日はずっと、仕事を頑張って
こなしていたのだ。
そうやって柔らかく微笑みながら弁当の包みを解いていくと…その瞬間、
屋上の扉が盛大に開け放たれていった。
「克哉っ! どこにいるんだ…! せっかく四国に来ているんだから
一緒にカツオの叩きが旨い店にでも食いに行こうぜ!」
そして屋上に飛び込んでくると同時に、耳が痛くなる程の大声で
呼びかけてくるガタイの良い男が現れていく。
キクチ・マーケーティング営業八課内において…克哉に次いでの
エース格の存在である本多憲二だ。
…もう一人の自分と大学時代からずっと交流を重ねて、結構
親しいと言える間柄の友人であった。
…せっかくの待ち望んでいた瞬間を、これ以上ない程のバッドタイミングで
邪魔をされて…眼鏡の額に、青筋がピクピクと浮かんでいた。
「…本多、そういうものはせめて夕食時に食いに行くようにしてくれ。
それだったら一杯やりながら付き合ってやっても良いが…な。
今は却下だ。今日は一人でこの弁当を堪能したい。…という訳で
お前は一人で外食でもしてくれ」
「…お前なぁ。せっかく二人きりで出張来ているっていうのに…
何だってその、すっげぇ冷たい態度なんだよ。…お前、今年に
なってから俺に対してメチャクチャ冷たくなったよな。
前は誘えは飲みに行ったり夕食付き合ってくれたりしていたのに…
今じゃ全然付き合ってくれなくなったし。昼飯だって、時間帯が
重ならない限りは一人でさっさと食べちまっていてよ。
…俺はお前に惚れているって何度も言っているのに、何だって
いきなり…そんなにツレなくなっちまったんだよ…」
眼鏡の冷たい態度に…本多は思いっきり肩を落としていく。
だが、当の本人はまったく気にした様子がなかった。
そのまま箸箱から箸を取り出してまずはほうれん草の白和えを
一口、口に放り込んでいくと程好い甘みと塩味が口の中に
広がっていく。
「…さあな。…ただ単に曖昧な態度を止めただけだ。お前が幾ら
『オレ』を口説こうと、決して靡くことはないからな。それなら…期待を
持たせるような言動や行為は慎んだ方が賢明だと判断しただけの
事だ。それでも二人きりで誘われるのなければ付き合ってやって
いるだろう…?」
「…何で、そんなにはっきりと言い切るんだよ…。俺はお前を
全力で口説いて振り向かせてみせるって…ずっと前に言ったのを
忘れたのかよ…克哉…!」
本多が真剣な顔を浮かべながら詰め寄ってくる。
だが、眼鏡は思いっきり額に怒りマークを浮かべていた。
(…あぁ、良く知っているとも…。俺があいつに本気になる前の話で
不問にしてやっていたが…あいつに言い寄るわ、キスするわ…
触りまくるわ…まあ、最後まではヤっていないから辛うじて許す事が
出来たが、あいつにお前が過去に触れた事があるって事が…
今となっては、不愉快極まりないんだ…!)
だが、本多が本気になればなるだけ…眼鏡の怒りゲージは
MAX間近に近づいていく。
本多にとっては、眼鏡でも克哉の方でも…どちらもひっくるめて
『佐伯克哉』と認識している。
挙式をする前から…そうだった。克哉が眼鏡を掛けて今までとは
打って変わって強気な態度に出ても…「それもお前の一部だからな」
とあっさりと受け入れてしまっていた。
…普通なら、これだけ人格が変わっている人間を前にして…それでも
変わらぬ態度を貫いてくれる存在は在り難いものなのだろう。
だが、眼鏡にとっては違っていた。
もう一人の自分と、俺は…同じ身体を共有していても心は分裂して
それぞれ独立の人格を形成している。
そして…眼鏡は、今は…克哉に対して並ならぬ愛着を抱いてしまっている。
だからあいつに色目を使う奴は決して許せないし、言い寄る存在なんか
現れた日には…本気で策略の一つや二つを仕掛けて失脚させて
やる事ぐらい…朝飯前に彼はこなす事だろう。
それでも…辛うじて、粛清せずに本多と同僚として過ごしているのは…
もう一人の自分にとって、彼は「親友」であるからだ。
だからこそ…ギリギリの所で踏み止まっていてやったのだが…。
―自分を熱い眼差しで見つめてくる本多に本気で顔面に拳を叩きつけたい
衝動に駆られていった
眼鏡はまさに仁王もかくや…と言う雰囲気を纏いながら、本多を
全力で睨み付けていく。
その瞳は、免疫がない人間で見つめられたのなら即座に竦んで動けなく
なるぐらいに怜悧で冷たく、力が込められた眼差しだった。
だが本多は怯まない。そのおかげでバチバチバチ…と両者の攻防が
繰り広げられていった。
(俺に幾ら言い寄っても…絶対にお前には靡く事は在り得ない。そして…
お前がどれだけ『オレ』を想ったとしても…あいつを決して渡すつもり
なんかない。だから…お前の『佐伯克哉』への恋心はもう…持って
いるだけ、無駄なんだよ…本多…!)
全力の気迫を込めながら本多の想いを撥ね退けている眼鏡の姿は…
鬼気迫るものすら感じられた。
本多とて、最初は負けるものかと必死になって向かい合っていったが…
彼にとっては惚れた相手から、全力で拒絶オーラを放たれて…
こちらの想いを撥ね付けられているようなものである。
だが、精神的にかなり強い方である彼は…何分間も、その凍てつくような
眼差しに耐えていく。
だが…ついに、心が折れたらしい。少し…切なそうな表情を浮かべながら…
溜息を突き、ようやく本多は諦めたようだった。
「…その話は、もう二度とするな。俺は…すでにかけがえのない存在がいる。
そいつを…俺は大切にしたい。だから…お前の気持ちには応えられない。
だから…諦めろ、本多…」
…辛そうにしている本多の顔を見て、何故か胸が少し痛んだ。
だから冷酷に言い放つのではなく…ほんの少しだけ柔らかさを込めて
真実をその口から語っていった。
「そう、なのか…? いつの間に…お前に、そんな…存在が…」
その一言にかなりショックを覚えているようだった。
だが…いい加減、いつまでも曖昧なままでいたら自分も不快な思いを
しなければいけないし…本多だって、「あいつ」のことを吹っ切れない。
もう一人の自分は、確かに魅力的だった。克哉自身は自覚して
いなかったが…本多の他にも、若干御堂を惹き付けていたのだ。
そして…何より、最初は遊び半分で気まぐれにあいつを抱いていた
自分が、いつの間にかこれだけ本気になってしまったのだ。
だから…本多があいつを簡単に忘れられないのは理解出来た。
だが、もう眼鏡は譲るつもりなどないのだ。
ようやく意を決して…本多の前に弁当箱を掲げて見せていき、
静かな声で真実を告げていく。
「…この弁当を作ってくれたのは、俺の大事な人間だ。今日…
俺が出張だと言ったら、朝早くから起きて準備をしてくれた。
…すでに俺には、そういう存在がいる。だから…もう、諦めろ。
お前は良い奴だとは思うが…『親友』以上にはどうしても見れない」
「…そう、か…。それなら、お前がツレなくなっていても…仕方ないよな。
もう、お前に大切な人が出来ているのなら…無理、ないか…」
本多はかなり泣きそうな顔を浮かべながら…それでも、自分に
言い聞かせて感情が暴走しないように努めているみたいだった。
そのまま…二人の間に、沈黙が落ちていく。
今…自分が言ったことは本多から『もう一人の自分との恋を
成就させる』という儚い幻想を粉々に打ち砕かれたようなものだ。
だが、このステップを踏ませなければ…自分は克哉に、本多を
会わせてやれない。
叶う見込みがないのに、延々と希望だけ抱かせる方が残酷と
いう一面もあるのだ。だから…眼鏡は敢えて真っ直ぐに相手の
目をみながら語っていった。
「…あぁ、だから…諦めてくれ…俺には、もう…そいつ以外の人間は
見えなくなっているに等しいからな…」
そうして、もう一度…大切そうにその弁当を見せていく。
太陽の光が鮮やかに降り注ぐ、青空の屋上の中で…弁当箱の
中身がキラキラと輝いているよにさえ見えた。
大切な存在が、愛情を込めて作ってくれた愛妻弁当。
これが…自分を克哉が想ってくれている証のようなものだ。
それを誇らしげに見せていくと…本多は大きく肩を落として…
顔を伏せた状態のまま呟いていた。
「…判った。お前への気持ちは…すっぱりと諦めるよ。…お前に
特別な存在が出来たのならば…俺の出る幕なんてないし。
けど…それがお前の大切な人が作った弁当だっていうのなら…
卵焼きの一つも、譲ってくれないか? 」
ピッキン!
恐らく今までの人生の中で一番激しく血管が脈を刻んだのが
自分でも判った。
…これは克哉が生まれて初めて作ってくれた記念すべき弁当でも
あるのだ。これを本多にくれてやる事など言語道断に等しかった。
(本気で…この男、抹殺した方が良いかも知れないな…)
もしかしたら本能的に、この弁当が『克哉』の方が作ったのをこの男は
感じ取っているのかも知れない。
熱っぽい視線を弁当の中身に向けていきながら…再び、二人の
間に火花が散っていった。
この状況をどうやって取り繕って…こいつに弁当を食べるのを
諦めさせれば良いだろうと必死に考えていく。
―そうして、今度は…弁当を巡る二人の熱い攻防戦がゆっくりと…
幕を開けていこうとしていたのだった―
屋上の扉が盛大に開け放たれていった。
「克哉っ! どこにいるんだ…! せっかく四国に来ているんだから
一緒にカツオの叩きが旨い店にでも食いに行こうぜ!」
そして屋上に飛び込んでくると同時に、耳が痛くなる程の大声で
呼びかけてくるガタイの良い男が現れていく。
キクチ・マーケーティング営業八課内において…克哉に次いでの
エース格の存在である本多憲二だ。
…もう一人の自分と大学時代からずっと交流を重ねて、結構
親しいと言える間柄の友人であった。
…せっかくの待ち望んでいた瞬間を、これ以上ない程のバッドタイミングで
邪魔をされて…眼鏡の額に、青筋がピクピクと浮かんでいた。
「…本多、そういうものはせめて夕食時に食いに行くようにしてくれ。
それだったら一杯やりながら付き合ってやっても良いが…な。
今は却下だ。今日は一人でこの弁当を堪能したい。…という訳で
お前は一人で外食でもしてくれ」
「…お前なぁ。せっかく二人きりで出張来ているっていうのに…
何だってその、すっげぇ冷たい態度なんだよ。…お前、今年に
なってから俺に対してメチャクチャ冷たくなったよな。
前は誘えは飲みに行ったり夕食付き合ってくれたりしていたのに…
今じゃ全然付き合ってくれなくなったし。昼飯だって、時間帯が
重ならない限りは一人でさっさと食べちまっていてよ。
…俺はお前に惚れているって何度も言っているのに、何だって
いきなり…そんなにツレなくなっちまったんだよ…」
眼鏡の冷たい態度に…本多は思いっきり肩を落としていく。
だが、当の本人はまったく気にした様子がなかった。
そのまま箸箱から箸を取り出してまずはほうれん草の白和えを
一口、口に放り込んでいくと程好い甘みと塩味が口の中に
広がっていく。
「…さあな。…ただ単に曖昧な態度を止めただけだ。お前が幾ら
『オレ』を口説こうと、決して靡くことはないからな。それなら…期待を
持たせるような言動や行為は慎んだ方が賢明だと判断しただけの
事だ。それでも二人きりで誘われるのなければ付き合ってやって
いるだろう…?」
「…何で、そんなにはっきりと言い切るんだよ…。俺はお前を
全力で口説いて振り向かせてみせるって…ずっと前に言ったのを
忘れたのかよ…克哉…!」
本多が真剣な顔を浮かべながら詰め寄ってくる。
だが、眼鏡は思いっきり額に怒りマークを浮かべていた。
(…あぁ、良く知っているとも…。俺があいつに本気になる前の話で
不問にしてやっていたが…あいつに言い寄るわ、キスするわ…
触りまくるわ…まあ、最後まではヤっていないから辛うじて許す事が
出来たが、あいつにお前が過去に触れた事があるって事が…
今となっては、不愉快極まりないんだ…!)
だが、本多が本気になればなるだけ…眼鏡の怒りゲージは
MAX間近に近づいていく。
本多にとっては、眼鏡でも克哉の方でも…どちらもひっくるめて
『佐伯克哉』と認識している。
挙式をする前から…そうだった。克哉が眼鏡を掛けて今までとは
打って変わって強気な態度に出ても…「それもお前の一部だからな」
とあっさりと受け入れてしまっていた。
…普通なら、これだけ人格が変わっている人間を前にして…それでも
変わらぬ態度を貫いてくれる存在は在り難いものなのだろう。
だが、眼鏡にとっては違っていた。
もう一人の自分と、俺は…同じ身体を共有していても心は分裂して
それぞれ独立の人格を形成している。
そして…眼鏡は、今は…克哉に対して並ならぬ愛着を抱いてしまっている。
だからあいつに色目を使う奴は決して許せないし、言い寄る存在なんか
現れた日には…本気で策略の一つや二つを仕掛けて失脚させて
やる事ぐらい…朝飯前に彼はこなす事だろう。
それでも…辛うじて、粛清せずに本多と同僚として過ごしているのは…
もう一人の自分にとって、彼は「親友」であるからだ。
だからこそ…ギリギリの所で踏み止まっていてやったのだが…。
―自分を熱い眼差しで見つめてくる本多に本気で顔面に拳を叩きつけたい
衝動に駆られていった
眼鏡はまさに仁王もかくや…と言う雰囲気を纏いながら、本多を
全力で睨み付けていく。
その瞳は、免疫がない人間で見つめられたのなら即座に竦んで動けなく
なるぐらいに怜悧で冷たく、力が込められた眼差しだった。
だが本多は怯まない。そのおかげでバチバチバチ…と両者の攻防が
繰り広げられていった。
(俺に幾ら言い寄っても…絶対にお前には靡く事は在り得ない。そして…
お前がどれだけ『オレ』を想ったとしても…あいつを決して渡すつもり
なんかない。だから…お前の『佐伯克哉』への恋心はもう…持って
いるだけ、無駄なんだよ…本多…!)
全力の気迫を込めながら本多の想いを撥ね退けている眼鏡の姿は…
鬼気迫るものすら感じられた。
本多とて、最初は負けるものかと必死になって向かい合っていったが…
彼にとっては惚れた相手から、全力で拒絶オーラを放たれて…
こちらの想いを撥ね付けられているようなものである。
だが、精神的にかなり強い方である彼は…何分間も、その凍てつくような
眼差しに耐えていく。
だが…ついに、心が折れたらしい。少し…切なそうな表情を浮かべながら…
溜息を突き、ようやく本多は諦めたようだった。
「…その話は、もう二度とするな。俺は…すでにかけがえのない存在がいる。
そいつを…俺は大切にしたい。だから…お前の気持ちには応えられない。
だから…諦めろ、本多…」
…辛そうにしている本多の顔を見て、何故か胸が少し痛んだ。
だから冷酷に言い放つのではなく…ほんの少しだけ柔らかさを込めて
真実をその口から語っていった。
「そう、なのか…? いつの間に…お前に、そんな…存在が…」
その一言にかなりショックを覚えているようだった。
だが…いい加減、いつまでも曖昧なままでいたら自分も不快な思いを
しなければいけないし…本多だって、「あいつ」のことを吹っ切れない。
もう一人の自分は、確かに魅力的だった。克哉自身は自覚して
いなかったが…本多の他にも、若干御堂を惹き付けていたのだ。
そして…何より、最初は遊び半分で気まぐれにあいつを抱いていた
自分が、いつの間にかこれだけ本気になってしまったのだ。
だから…本多があいつを簡単に忘れられないのは理解出来た。
だが、もう眼鏡は譲るつもりなどないのだ。
ようやく意を決して…本多の前に弁当箱を掲げて見せていき、
静かな声で真実を告げていく。
「…この弁当を作ってくれたのは、俺の大事な人間だ。今日…
俺が出張だと言ったら、朝早くから起きて準備をしてくれた。
…すでに俺には、そういう存在がいる。だから…もう、諦めろ。
お前は良い奴だとは思うが…『親友』以上にはどうしても見れない」
「…そう、か…。それなら、お前がツレなくなっていても…仕方ないよな。
もう、お前に大切な人が出来ているのなら…無理、ないか…」
本多はかなり泣きそうな顔を浮かべながら…それでも、自分に
言い聞かせて感情が暴走しないように努めているみたいだった。
そのまま…二人の間に、沈黙が落ちていく。
今…自分が言ったことは本多から『もう一人の自分との恋を
成就させる』という儚い幻想を粉々に打ち砕かれたようなものだ。
だが、このステップを踏ませなければ…自分は克哉に、本多を
会わせてやれない。
叶う見込みがないのに、延々と希望だけ抱かせる方が残酷と
いう一面もあるのだ。だから…眼鏡は敢えて真っ直ぐに相手の
目をみながら語っていった。
「…あぁ、だから…諦めてくれ…俺には、もう…そいつ以外の人間は
見えなくなっているに等しいからな…」
そうして、もう一度…大切そうにその弁当を見せていく。
太陽の光が鮮やかに降り注ぐ、青空の屋上の中で…弁当箱の
中身がキラキラと輝いているよにさえ見えた。
大切な存在が、愛情を込めて作ってくれた愛妻弁当。
これが…自分を克哉が想ってくれている証のようなものだ。
それを誇らしげに見せていくと…本多は大きく肩を落として…
顔を伏せた状態のまま呟いていた。
「…判った。お前への気持ちは…すっぱりと諦めるよ。…お前に
特別な存在が出来たのならば…俺の出る幕なんてないし。
けど…それがお前の大切な人が作った弁当だっていうのなら…
卵焼きの一つも、譲ってくれないか? 」
ピッキン!
恐らく今までの人生の中で一番激しく血管が脈を刻んだのが
自分でも判った。
…これは克哉が生まれて初めて作ってくれた記念すべき弁当でも
あるのだ。これを本多にくれてやる事など言語道断に等しかった。
(本気で…この男、抹殺した方が良いかも知れないな…)
もしかしたら本能的に、この弁当が『克哉』の方が作ったのをこの男は
感じ取っているのかも知れない。
熱っぽい視線を弁当の中身に向けていきながら…再び、二人の
間に火花が散っていった。
この状況をどうやって取り繕って…こいつに弁当を食べるのを
諦めさせれば良いだろうと必死に考えていく。
―そうして、今度は…弁当を巡る二人の熱い攻防戦がゆっくりと…
幕を開けていこうとしていたのだった―
PR
こんにちは、今朝は…PCと回線の調子が悪くて
朝の時点ではまったく小説書けなかった香坂です。
やる気満々で5時ジャストに起きたのにあまりに調子が
悪すぎて、やっとネットに繋げたのは6時過ぎだったので
すっかりと不貞腐れて、夜に今日は書く事にしました。
色々と雑事溜めているので、それを片付けてから
執筆させて頂きます。
最近は修羅場な為に、掲載ペースがしっちゃか
めっちゃかです(汗)
けど現在連載中の克克新婚ネタ11までは本に収録する予定
なので遅くなりますが今日の分はちゃんと書きます!
そして本日、ようやく表紙が完成しておしげさんから
届きました!
キチンとしたインフォページは修羅場明けになって
しまうでしょうが…すっごい嬉しかったのでちょこっと
先行で掲載しますv
けど簡単な公開なので、とりあえず小さい画像の方で
こそこそ~とアップしておきます。
克克新婚本表紙
この絵が今朝、やっとの思いでダウンロードして見れた時、
心の底からおしげさんに表紙と挿絵を依頼して、引き受けて貰えて
良かった~! とすっごい嬉しかったです。
…おしげさん、凄い綺麗だよ。私がイメージで伝えた通りの表紙を
作成してくれてありがとう! という感じです。
二人して一杯一杯、余裕のない修羅場進行ですが頑張ってこの
修羅場の海を乗り越えたく存じます。
暫く不定期掲載になるかもですが、今が正念場なのでお許しあれ!
それでは一旦潜ります! ではではまた後で!
朝の時点ではまったく小説書けなかった香坂です。
やる気満々で5時ジャストに起きたのにあまりに調子が
悪すぎて、やっとネットに繋げたのは6時過ぎだったので
すっかりと不貞腐れて、夜に今日は書く事にしました。
色々と雑事溜めているので、それを片付けてから
執筆させて頂きます。
最近は修羅場な為に、掲載ペースがしっちゃか
めっちゃかです(汗)
けど現在連載中の克克新婚ネタ11までは本に収録する予定
なので遅くなりますが今日の分はちゃんと書きます!
そして本日、ようやく表紙が完成しておしげさんから
届きました!
キチンとしたインフォページは修羅場明けになって
しまうでしょうが…すっごい嬉しかったのでちょこっと
先行で掲載しますv
けど簡単な公開なので、とりあえず小さい画像の方で
こそこそ~とアップしておきます。
克克新婚本表紙
この絵が今朝、やっとの思いでダウンロードして見れた時、
心の底からおしげさんに表紙と挿絵を依頼して、引き受けて貰えて
良かった~! とすっごい嬉しかったです。
…おしげさん、凄い綺麗だよ。私がイメージで伝えた通りの表紙を
作成してくれてありがとう! という感じです。
二人して一杯一杯、余裕のない修羅場進行ですが頑張ってこの
修羅場の海を乗り越えたく存じます。
暫く不定期掲載になるかもですが、今が正念場なのでお許しあれ!
それでは一旦潜ります! ではではまた後で!
―結婚してから二ヵ月半が過ぎ去ろうとした頃。眼鏡はある日、
本多と一泊予定で…遠方に出張する事となった
結婚してから、夜に眼鏡が帰って来ないことなど…結婚してから
初めての経験で。
克哉は若干の不安を思いながら、いつもよりも早く起床して…
台所でお弁当を作成していた。
窓の外の天気は快晴。
すでに三月の中旬を迎えているおかげで…気温も随分と暖かいものへと
変わって、まだ早朝ながら…日向ぼっこすれは気持ち良さそうな感じだった。
だが、何となく克哉の気持ちは晴れない。
ちょっとだけ憂いげな表情を浮かべていきながら…克哉は、ほうれん草の
白和えを作成しようと豆腐を裏ごししていた。
やや目の粗いカゴの上に木綿豆腐を乗せていきながら…ゆっくりと
摩り下ろすようにして解していく。
ちょっと固まりが残っているような部分は…指先で握り潰して細かくしていき
全体的に滑らかな感じになっていくと…塩、砂糖、ゴマペーストの順で
調味料を全体に掛けて、混ぜ込んでいった。
それを塩茹でしたほうれん草と混ぜていけば…まずは一品が完成
していった。
(…結婚してから、あいつが帰って来ないことなんて…初めての
事だよな…)
そんな事を考えてしまうと、少しだけ寂しいとか思ってしまう自分がいた。
結婚前なんて、あいつがいない夜を過ごす事など当たり前だった。
出没するのはいつだって気まぐれで…こちらが会いたいと強く望んだって
携帯電話やメールなどのコンタクト方法がある訳ではない。
それに比べれば毎日のように顔を合わせて、夜になれば必ず帰って来て
くれるこの生活は…随分と幸せなものだった。
なのに、たった一日…今夜は出張で帰って来ないというだけでやや沈みがちに
なっている自分に…少々呆れてしまった。
「…何か贅沢になっているよな。あいつが一日帰って来ないだけで…
寂しいとかってさ…」
今は、まだ眼鏡は安らかな顔をして寝ている。
…というか、もう一人の寝ている時じゃなければ…お弁当なんて
作れる訳がないのだ。
一緒にいれば、顔を合わせれば…必ず眼鏡は克哉に対してちょっかいを
掛けてくる。
そういうのも適度なら、むしろスキンシップの一環として結構好きなのだが…
迂闊に朝早くなんてに起床すると、ただでさえ毎晩のように夜遅くまで抱かれて
いるというのに…朝からまたセックスをする羽目になるのだ。
克哉は自己防衛の為に出来るだけ相手が出社する時間近くまでベッドから
起き上がらないようにしていた。
そうしないと…日によっては、正午過ぎまでぐったりとして寝込んで
いなければならない程…朝から疲労してしまうからだ。
(あいつに抱かれるのは嫌じゃないし…いや、むしろ…好きな方だけど…
あんまりされると、その後に一日丸々寝込む羽目になる事になるし…・。
本当は奥さんらしいことを、もうちょっとやりたいけどね…)
しかし、何度か朝食を作ろうと試みて早起きをした日は…どの日も早朝から
激しく抱かれるという結果に終わってしまっていた。
だが…一日帰って来ない日ぐらい、お弁当を作りたい。
そう一念発起して…克哉は今朝、目覚ましの力を借りずに早い時間帯に
目覚めることに成功したのだ。
「…愛妻弁当だなんて、本当はオレの柄じゃないけれど…」
頬を赤く染めながら、克哉は今度は卵焼きの作成に取り掛かっていく。
卵を二個分くらいボウルに割っていくと…砂糖、みりんと酒を少々、つゆの素、
塩、胡椒、醤油、粉末のダシの素を少々ずつ振り入れて…菜箸で均等に
混ぜ込んで調味していった。
それを熱した後に濡れ布巾の上に乗せて、程好く冷ましていった
四角型の卵焼き用のフライパンの上に流し込んでいく。
最初は薄く焼いて行き、端っこの方にそれを寄せていくと…油を浸した
ティッシュで鍋の表面に油分を塗していって、そして同じ手順を繰り返して
徐々に巻き込んでいく。
ここら辺の手順は…学生時代に家庭科で教わったままだ。
一人暮らしをしている際、たまに気まぐれで作ることもあったが…
今、それを眼鏡に作ってやっているなんて少し不思議な気持ちだった。
卵焼き用のフライパンの中には、3~4分もすれば…美味しそうな色合いの
形の良い卵焼きが出来上がっていた。
それを皿の上に乗せて覚ましていくとざっと鍋に水を流して表面をキッチン
ペーパーで拭いていき、手入れをしていった。
「良し、卵焼きは上手くいった。後は…材料を冷まして、詰めていくだけだな…」
克哉は今の仕上がりに満足そうな表情を浮かべていくと…嬉しそうに
笑いながら団扇で仰いで、全ての材料を冷まし始めていく。
机の上に並んでいるのはご飯が詰めてある弁当箱。
それと…さっき仕上げたカニ型のウィンナーを炒めたものと、昨晩の
残りであるエビチリだった。
これに白和えしたほうれん草と…黄色い卵焼きを少量ずつ詰めて
いけば…彩が良い弁当に仕上がっていく筈だ。
冷ましている間に…ご飯の上にパラリとカツオ風味のフリカケを
掛けていって中心に梅干を一個、チョコンと乗せていく。
卵焼きは丁度良い大きさにカットしていき…若干冷めた頃を
見計らって四角く区切られた弁当箱のおかずスペースに詰めていく。
他の材料も同じ要領で詰めていくと…其処には克哉の愛情も
たっぷりと詰め込まれた弁当が完成していった。
「…柄にもなく弁当なんて作ってしまったけれど…あいつは、喜んで
くれるかな…?」
作り終わった後で、ちょっと照れくさくなって…軽く頬を染めながら呟いていくと
いきなり背後から抱きすくめられていった。
「あぁ…とっても嬉しいぞ? お前が…俺の為にわざわざ早起きしてまで…
愛妻弁当を作ってくれるだなんてな…?」
「お、俺…っ? い、いつからそこに…?」
克哉が動揺したように叫んでいくと、心底愉快そうな表情を浮かべながら
背後でククっと相手が喉を鳴らして笑う声が聞こえていった。
「今さっきだ…今朝は目覚めたら、お前の姿がベッドになかったんで…軽く
探していたんだがな。なかなか貴重な光景に遭遇出来たもんだ…」
「そ、そう…で、まだ…ちょっと作業残っているんだけど…離して貰えないかな…?」
抱きしめた早々、眼鏡の手は克哉の身体を妖しく蠢き始めていた。
上はシャツ一枚しか羽織っていないというのに…胸の突起をゆっくりと弄るように
しながら掌を這わされていく。
「…片付けなんて後で構わないだろう…特に今夜は、俺は出先で…お前を
可愛がってやれないからな…。今日の分は、ここで…」
「やらなくて良いってば! お願いだから朝からこっちを著しく消耗なんて
させないでくれ…!」
そう言いながら克哉は必死になってもがいていくが…相手の腕の力はかなり
強くて…一切外れる気配はない。
「…お前のこんな可愛い姿を、朝から見せつけられたら無理だ。諦めろ…」
「わっ…ちょ、ちょっと待って…あ、や…其処、を弄るなってば…はぁん…」
眼鏡の指先はダンダンと大胆さを増していって、両手で的確に胸の突起を
責め始めていった。
その状態で首筋や耳の穴周辺に唇と舌を這わされているのだから…溜まった
ものではなかった。
「…一晩、お前を抱けないんだ。今…ここでお前を食わせろ…」
「あぅ…んんっ…」
―耳元で、そんな事を…掠れた声音で囁くなんて反則だと思った。
そんな誘惑の言葉を言われながら、求められたら…それ以上、抗えなく
なってしまう。
だから克哉は観念して…そっと身体の力を抜いていく。
「…ん、判った…好きに、して良いよ…『俺』…」
そうして、克哉は自分から苦しい体制になりながらも振り向いて、相手の唇に
そっとキスを落としていくと…素直に身を委ねて眼鏡に…キッチンで抱かれていった。
立ったままのセックスは久しぶりで…少し苦しかったが、やっぱりもう一人の
自分に抱かれるのは気持ちよくて…。
そして全ての行為が終わって、眼鏡が出社する時間を迎える頃には…
ぐったりとなりながらも、克哉は頑張って「いってらっしゃい」のキスの日課を
こなして…昼過ぎまで、ベッドの上でぐったりとなる羽目になったのだった―
本多と一泊予定で…遠方に出張する事となった
結婚してから、夜に眼鏡が帰って来ないことなど…結婚してから
初めての経験で。
克哉は若干の不安を思いながら、いつもよりも早く起床して…
台所でお弁当を作成していた。
窓の外の天気は快晴。
すでに三月の中旬を迎えているおかげで…気温も随分と暖かいものへと
変わって、まだ早朝ながら…日向ぼっこすれは気持ち良さそうな感じだった。
だが、何となく克哉の気持ちは晴れない。
ちょっとだけ憂いげな表情を浮かべていきながら…克哉は、ほうれん草の
白和えを作成しようと豆腐を裏ごししていた。
やや目の粗いカゴの上に木綿豆腐を乗せていきながら…ゆっくりと
摩り下ろすようにして解していく。
ちょっと固まりが残っているような部分は…指先で握り潰して細かくしていき
全体的に滑らかな感じになっていくと…塩、砂糖、ゴマペーストの順で
調味料を全体に掛けて、混ぜ込んでいった。
それを塩茹でしたほうれん草と混ぜていけば…まずは一品が完成
していった。
(…結婚してから、あいつが帰って来ないことなんて…初めての
事だよな…)
そんな事を考えてしまうと、少しだけ寂しいとか思ってしまう自分がいた。
結婚前なんて、あいつがいない夜を過ごす事など当たり前だった。
出没するのはいつだって気まぐれで…こちらが会いたいと強く望んだって
携帯電話やメールなどのコンタクト方法がある訳ではない。
それに比べれば毎日のように顔を合わせて、夜になれば必ず帰って来て
くれるこの生活は…随分と幸せなものだった。
なのに、たった一日…今夜は出張で帰って来ないというだけでやや沈みがちに
なっている自分に…少々呆れてしまった。
「…何か贅沢になっているよな。あいつが一日帰って来ないだけで…
寂しいとかってさ…」
今は、まだ眼鏡は安らかな顔をして寝ている。
…というか、もう一人の寝ている時じゃなければ…お弁当なんて
作れる訳がないのだ。
一緒にいれば、顔を合わせれば…必ず眼鏡は克哉に対してちょっかいを
掛けてくる。
そういうのも適度なら、むしろスキンシップの一環として結構好きなのだが…
迂闊に朝早くなんてに起床すると、ただでさえ毎晩のように夜遅くまで抱かれて
いるというのに…朝からまたセックスをする羽目になるのだ。
克哉は自己防衛の為に出来るだけ相手が出社する時間近くまでベッドから
起き上がらないようにしていた。
そうしないと…日によっては、正午過ぎまでぐったりとして寝込んで
いなければならない程…朝から疲労してしまうからだ。
(あいつに抱かれるのは嫌じゃないし…いや、むしろ…好きな方だけど…
あんまりされると、その後に一日丸々寝込む羽目になる事になるし…・。
本当は奥さんらしいことを、もうちょっとやりたいけどね…)
しかし、何度か朝食を作ろうと試みて早起きをした日は…どの日も早朝から
激しく抱かれるという結果に終わってしまっていた。
だが…一日帰って来ない日ぐらい、お弁当を作りたい。
そう一念発起して…克哉は今朝、目覚ましの力を借りずに早い時間帯に
目覚めることに成功したのだ。
「…愛妻弁当だなんて、本当はオレの柄じゃないけれど…」
頬を赤く染めながら、克哉は今度は卵焼きの作成に取り掛かっていく。
卵を二個分くらいボウルに割っていくと…砂糖、みりんと酒を少々、つゆの素、
塩、胡椒、醤油、粉末のダシの素を少々ずつ振り入れて…菜箸で均等に
混ぜ込んで調味していった。
それを熱した後に濡れ布巾の上に乗せて、程好く冷ましていった
四角型の卵焼き用のフライパンの上に流し込んでいく。
最初は薄く焼いて行き、端っこの方にそれを寄せていくと…油を浸した
ティッシュで鍋の表面に油分を塗していって、そして同じ手順を繰り返して
徐々に巻き込んでいく。
ここら辺の手順は…学生時代に家庭科で教わったままだ。
一人暮らしをしている際、たまに気まぐれで作ることもあったが…
今、それを眼鏡に作ってやっているなんて少し不思議な気持ちだった。
卵焼き用のフライパンの中には、3~4分もすれば…美味しそうな色合いの
形の良い卵焼きが出来上がっていた。
それを皿の上に乗せて覚ましていくとざっと鍋に水を流して表面をキッチン
ペーパーで拭いていき、手入れをしていった。
「良し、卵焼きは上手くいった。後は…材料を冷まして、詰めていくだけだな…」
克哉は今の仕上がりに満足そうな表情を浮かべていくと…嬉しそうに
笑いながら団扇で仰いで、全ての材料を冷まし始めていく。
机の上に並んでいるのはご飯が詰めてある弁当箱。
それと…さっき仕上げたカニ型のウィンナーを炒めたものと、昨晩の
残りであるエビチリだった。
これに白和えしたほうれん草と…黄色い卵焼きを少量ずつ詰めて
いけば…彩が良い弁当に仕上がっていく筈だ。
冷ましている間に…ご飯の上にパラリとカツオ風味のフリカケを
掛けていって中心に梅干を一個、チョコンと乗せていく。
卵焼きは丁度良い大きさにカットしていき…若干冷めた頃を
見計らって四角く区切られた弁当箱のおかずスペースに詰めていく。
他の材料も同じ要領で詰めていくと…其処には克哉の愛情も
たっぷりと詰め込まれた弁当が完成していった。
「…柄にもなく弁当なんて作ってしまったけれど…あいつは、喜んで
くれるかな…?」
作り終わった後で、ちょっと照れくさくなって…軽く頬を染めながら呟いていくと
いきなり背後から抱きすくめられていった。
「あぁ…とっても嬉しいぞ? お前が…俺の為にわざわざ早起きしてまで…
愛妻弁当を作ってくれるだなんてな…?」
「お、俺…っ? い、いつからそこに…?」
克哉が動揺したように叫んでいくと、心底愉快そうな表情を浮かべながら
背後でククっと相手が喉を鳴らして笑う声が聞こえていった。
「今さっきだ…今朝は目覚めたら、お前の姿がベッドになかったんで…軽く
探していたんだがな。なかなか貴重な光景に遭遇出来たもんだ…」
「そ、そう…で、まだ…ちょっと作業残っているんだけど…離して貰えないかな…?」
抱きしめた早々、眼鏡の手は克哉の身体を妖しく蠢き始めていた。
上はシャツ一枚しか羽織っていないというのに…胸の突起をゆっくりと弄るように
しながら掌を這わされていく。
「…片付けなんて後で構わないだろう…特に今夜は、俺は出先で…お前を
可愛がってやれないからな…。今日の分は、ここで…」
「やらなくて良いってば! お願いだから朝からこっちを著しく消耗なんて
させないでくれ…!」
そう言いながら克哉は必死になってもがいていくが…相手の腕の力はかなり
強くて…一切外れる気配はない。
「…お前のこんな可愛い姿を、朝から見せつけられたら無理だ。諦めろ…」
「わっ…ちょ、ちょっと待って…あ、や…其処、を弄るなってば…はぁん…」
眼鏡の指先はダンダンと大胆さを増していって、両手で的確に胸の突起を
責め始めていった。
その状態で首筋や耳の穴周辺に唇と舌を這わされているのだから…溜まった
ものではなかった。
「…一晩、お前を抱けないんだ。今…ここでお前を食わせろ…」
「あぅ…んんっ…」
―耳元で、そんな事を…掠れた声音で囁くなんて反則だと思った。
そんな誘惑の言葉を言われながら、求められたら…それ以上、抗えなく
なってしまう。
だから克哉は観念して…そっと身体の力を抜いていく。
「…ん、判った…好きに、して良いよ…『俺』…」
そうして、克哉は自分から苦しい体制になりながらも振り向いて、相手の唇に
そっとキスを落としていくと…素直に身を委ねて眼鏡に…キッチンで抱かれていった。
立ったままのセックスは久しぶりで…少し苦しかったが、やっぱりもう一人の
自分に抱かれるのは気持ちよくて…。
そして全ての行為が終わって、眼鏡が出社する時間を迎える頃には…
ぐったりとなりながらも、克哉は頑張って「いってらっしゃい」のキスの日課を
こなして…昼過ぎまで、ベッドの上でぐったりとなる羽目になったのだった―
こんにちは、香坂です。
本日は平日にも関わらず休むとも夜に書きますとも一言も申さずに
過ごしてすみませんでした。
…いや、その本日ね。
新しい職場になってから朝6時40分には家を出ているんですよ。
で…今朝起きたら。
6時46分
…出なきゃいけない時間越えてるじゃん!!
って状況になりまして…まあ、うちから歩いて一分のバス停から
54分のバスに乗れば間に合うかなって状況だったので7分で家を
出て行く支度を整えて飛び出すような状況になっておりました。
PC立ち上げて、一言を言う暇存在していませんでした(汗)
とりあえず会社にはギリギリ間に合いましたけどねぇ(遠い目)
まあ…そんな訳で今夜は潔くお休みさせて頂きます。
代わりに翌朝は、結構気合入れて書かせて貰いますので。
新しい職場は、毎日ともかくメモをしまくって…少しでも早く
覚えられるように、動けるようにと努力しているのが認められているので
人間関係等は前の職場より格段は楽です。
身体の方も、肉体労働をやっていた頃に戻りつつありますしね。
それでは本日はお休みなさいませ(ペコリ)
本日は平日にも関わらず休むとも夜に書きますとも一言も申さずに
過ごしてすみませんでした。
…いや、その本日ね。
新しい職場になってから朝6時40分には家を出ているんですよ。
で…今朝起きたら。
6時46分
…出なきゃいけない時間越えてるじゃん!!
って状況になりまして…まあ、うちから歩いて一分のバス停から
54分のバスに乗れば間に合うかなって状況だったので7分で家を
出て行く支度を整えて飛び出すような状況になっておりました。
PC立ち上げて、一言を言う暇存在していませんでした(汗)
とりあえず会社にはギリギリ間に合いましたけどねぇ(遠い目)
まあ…そんな訳で今夜は潔くお休みさせて頂きます。
代わりに翌朝は、結構気合入れて書かせて貰いますので。
新しい職場は、毎日ともかくメモをしまくって…少しでも早く
覚えられるように、動けるようにと努力しているのが認められているので
人間関係等は前の職場より格段は楽です。
身体の方も、肉体労働をやっていた頃に戻りつつありますしね。
それでは本日はお休みなさいませ(ペコリ)
―レストランで楽しい一時を過ごした後、あるホテルに克哉は連れて行かれた
二人とも、食事時に一杯飲んだので…そのままでは車を運転して
帰れないから、前日に御堂がレストランの手配をした時に、一緒に
予約をしていたようだった。
その場所に久しぶりに足を向けた時、克哉は正直驚いてしまった。
どうしてこの日に…この場所を指定したのか、一瞬…相手の意図が読めなくて
不思議そうな顔をつい、浮かべてしまった。
だが御堂はそんな彼の手を引いて、フロントに向かっていきチェックインの
手続きを済ませていく。
その間、二人して無言のままだった。
そして一緒にエレベーターに乗り込んで、予約した部屋の番号を見て…
一層瞠目してしまった。
―それは、克哉が最初に御堂に接待を要求された部屋だった
克哉がその部屋番号を確認して、つい…動揺してしまうと…そんな彼の
手を強引に引いて…御堂は部屋の中に入っていった。
「来るんだ…克哉」
「あっ…」
そして、ガチャと乱暴な音を立てながら共に部屋の中に入っていく。
部屋の内装は…以前とほぼ変わらなかった。
この部屋を、自分が忘れる訳がない。
自分と御堂の肉体関係が始まった場所であり…今では甘く優しい恋人に
なった彼が、かつて冷酷な己の支配者として振舞っていた場所だった。
「…孝典、さん…どうして、ここに…?」
「…ここでの君との思い出を、良いものに上書きをしたいからだ…」
「えっ…?」
思ってもみなかった返答を聞かされながら…部屋の奥へと進んでいく。
そしてそのまま…大きな窓ガラスの前に二人で立っていった。
御堂は、しっかりと覆われているカーテンを引いていく。
―その瞬間、眩いばかりの街の明かりが現れていった
それは…まるで宝石箱をひっくり返したような光景。
様々な色合いのネオンが、夜の闇の中で…まるで生きているかの
ようにキラキラと輝いている。
この部屋には何度も来ていた。
だが…このカーテンを開けて、こうやって夜景を眺めた事など…一度も
なかった気がした。
ここで御堂と肉体関係を強要されていた頃は、こんな風に…外の風景を
楽しむ余裕など一カケラもなかったから…。
「…この部屋から見える夜景って…こんなに、綺麗なものだったんですね…」
「あぁ、そうだ。…きっと昔の君は見ている余裕などなかっただろうからな。
だが…私は、何度も…約束の時間が訪れる合間に、この光景を眺めながら…
君を待ち続けていた。…落ち着かない心を鎮める為にな…」
「…え? そうなんです、か…? あっ…」
克哉が窓の外のネオンの瞬きに目を奪われている間に…御堂が背後から
そっとこちらの身体を抱きしめてくれていた。
もう初春を過ぎた頃とは言え…夜になればまだ正直、かなり冷える。
だから…フワリと包み込まれるように抱きしめられていくと…その温もりが
心地よく感じられて随分と安心出来た。
「…貴方が、そんな気持ちで…オレを待っててくれていたなんて…まったく
知りませんでした…」
「…意外か? そうだな…自分でも、そう思う。…あの時期、どうして…
君を抱けば抱くだけ、感じさせて啼かせれば啼かせるだけ…自分の心がこんなに
ざわめいて…収まりがつかなくなるのか、私自身にも判らなかったからな…」
「…そういえば、言っていましたよね…。オレが判らないと…何度も…」
「…あぁ、そうだ。あの時…君の行動が私には理解出来なかった。どうして…仲間の
為なんかに好きでもない男に、何度も何度も抱かれているのか…。どれだけ
痛めつけても、何をしても…私の元に来るのか…本当に判らなかった…」
そう告げた、御堂の声は…少しだけ苦いものが滲んでいる気がした。
そんな彼の手を…自分の正面に回されている愛しい人の手に…己の掌を
重ねて…そっと目を伏せていく。
自分は、この人に惹かれているという事実に気づいたのは…いつだったの
だろうか。最初は嫌で仕方なかった行為が別の意味を孕み始めて…たった十日間
この人に会えないだけで切なくなっていた頃。
…その当時の記憶が、ゆっくりと克哉の中にも蘇ってくる。
(あの時を思えば…今は、何て幸せなんだろう…オレは…)
ここは、苦い思い出が伴う所だった。
同時に…自分達の原点でもあった。
幸せすぎて、忘れてしまいそうだった。
この人に…片思いをして、この想いが実るなどこれっぽっちも考えられなかった頃の
記憶が…ゆっくりと克哉の中に蘇って来た。
だが、克哉の中には…怒りも何もない。
告白する時に、想いの全てを叩きつけている。泣きながら、懇願するように…
想いの全てを吐き出して、そして…御堂にぶつけている。
それが今思えば…良かったのかも知れない。
だから…今は、克哉は…この人の当時の仕打ちを許せる。
そして…どうして御堂が、この特別な日に…自分をここに連れて来たのか…
何となく克哉はその意図を察し始めていた。
「…御堂さん。…オレは、貴方を…もう、恨んでいませんよ。それは…
この半年、オレと一緒に過ごして…良く判っているでしょう…?」
「あぁ…判っている…充分すぎる程、な…」
そうして…御堂は克哉の顎を捉えてこちらの方を向かせていく。
お互いの視線が真っ直ぐに交差していく。
そして…真摯に向き合いながら、御堂は告げていった。
「…あの時は、すまなかった。克哉…」
そしてきっと、この人の中でずっと胸につかえていたであろう一言が…
静かに紡がれていく。
その一言を聞いて、克哉は…静かに、愛しい人を抱きしめていった。
「…良いんです。孝典さん…この半年間、一緒に過ごして…何となくですけど
貴方が…あの時の行動をどこかで悔いている事は…察して、いましたから…」
柔らかく微笑みながら、克哉は…御堂のした行為の全てを…愛を持って
許していく。
…恐らく、自分達が新しい出発を切るには…この過程が不可欠だったのだ。
御堂は、自分に厳しい性格をしている。
だから…最後に、ここに来る事で…あの当時を思い出して、その気持ちを
吐露する事が苦い気持ちの伴う過去を清算出来ると何となく感じていたのだろう。
この場でなければ、なかなか向き合って言うことすら出来なかっただろう。
克哉はそんな…愛しい人の気持ちを、察していった。
だから…もう、これ以上は気にしなくて良いと…そう、伝えていくように…
ともかくその背中を優しく擦り続けていった。
「…ありがとう」
そして、飽くことなく背中を擦り続けていたその時…御堂の静かな声が
そっと聞こえていった。
お互いに少し身体を離して、顔を見詰め合っていくと…自然と柔らかい
笑みが零れ始めていく。
―お互いの指に、幸福の証が輝いているのが判った
そっと手を重ねあい、指先を絡めあっていく。
その状態のまま…顔を寄せて、静かに口付けあった
―この幸福をオレに与えてくれた貴方を…心から許して…愛していきます…
心の中で、そう呟いていくと…克哉の気持ちが何となく伝わったのだろう。
今まで見た事がない程、その表情は優しくて…余計に、克哉の中で愛しいと
いう気持ちが強まっていった。
そして…お互いを抱きしめていく腕の力が徐々に強まっていく。
たったそれだけの事で、再び身体が熱くなっていく。
もう…過去の過ちも痛みも、今となってはこの人と寄り添う為に必要な過程だったと
今では割り切れるから。
自分達の関係が始まったその場所で、全てを許して…水に流して、再び新たに
向き合っていく。
貴方が愛してくれる。
自分を選んでくれた。
そしてその証を…自分に贈って、大切な一日になるように尽力してくれた。
それだけで充分、だから貴方を許そう。
そして一層…これからも愛していこう…そう思った。
「孝典さん…愛しています…」
「あぁ、私もだ…」
そして確認しあうように愛の言葉を交わしあい、二人のシルエットが重なり合っていく。
その熱さに、腕の強さに眩暈すらしてくる。
何度身体を重ねあっても、まだ足りない。
もっともっと…この人を感じ取りたい。
その競りあがってくる欲求を感じ取りながら…克哉は、御堂の腕の中に再び全てを
委ねていった。
―そして、今夜も想いと身体を重ねていく
だが、これからも二人の指には幸福の証は輝き続けるだろう
死が二人を分かつ、その日を迎える日まで…ずっと―
二人とも、食事時に一杯飲んだので…そのままでは車を運転して
帰れないから、前日に御堂がレストランの手配をした時に、一緒に
予約をしていたようだった。
その場所に久しぶりに足を向けた時、克哉は正直驚いてしまった。
どうしてこの日に…この場所を指定したのか、一瞬…相手の意図が読めなくて
不思議そうな顔をつい、浮かべてしまった。
だが御堂はそんな彼の手を引いて、フロントに向かっていきチェックインの
手続きを済ませていく。
その間、二人して無言のままだった。
そして一緒にエレベーターに乗り込んで、予約した部屋の番号を見て…
一層瞠目してしまった。
―それは、克哉が最初に御堂に接待を要求された部屋だった
克哉がその部屋番号を確認して、つい…動揺してしまうと…そんな彼の
手を強引に引いて…御堂は部屋の中に入っていった。
「来るんだ…克哉」
「あっ…」
そして、ガチャと乱暴な音を立てながら共に部屋の中に入っていく。
部屋の内装は…以前とほぼ変わらなかった。
この部屋を、自分が忘れる訳がない。
自分と御堂の肉体関係が始まった場所であり…今では甘く優しい恋人に
なった彼が、かつて冷酷な己の支配者として振舞っていた場所だった。
「…孝典、さん…どうして、ここに…?」
「…ここでの君との思い出を、良いものに上書きをしたいからだ…」
「えっ…?」
思ってもみなかった返答を聞かされながら…部屋の奥へと進んでいく。
そしてそのまま…大きな窓ガラスの前に二人で立っていった。
御堂は、しっかりと覆われているカーテンを引いていく。
―その瞬間、眩いばかりの街の明かりが現れていった
それは…まるで宝石箱をひっくり返したような光景。
様々な色合いのネオンが、夜の闇の中で…まるで生きているかの
ようにキラキラと輝いている。
この部屋には何度も来ていた。
だが…このカーテンを開けて、こうやって夜景を眺めた事など…一度も
なかった気がした。
ここで御堂と肉体関係を強要されていた頃は、こんな風に…外の風景を
楽しむ余裕など一カケラもなかったから…。
「…この部屋から見える夜景って…こんなに、綺麗なものだったんですね…」
「あぁ、そうだ。…きっと昔の君は見ている余裕などなかっただろうからな。
だが…私は、何度も…約束の時間が訪れる合間に、この光景を眺めながら…
君を待ち続けていた。…落ち着かない心を鎮める為にな…」
「…え? そうなんです、か…? あっ…」
克哉が窓の外のネオンの瞬きに目を奪われている間に…御堂が背後から
そっとこちらの身体を抱きしめてくれていた。
もう初春を過ぎた頃とは言え…夜になればまだ正直、かなり冷える。
だから…フワリと包み込まれるように抱きしめられていくと…その温もりが
心地よく感じられて随分と安心出来た。
「…貴方が、そんな気持ちで…オレを待っててくれていたなんて…まったく
知りませんでした…」
「…意外か? そうだな…自分でも、そう思う。…あの時期、どうして…
君を抱けば抱くだけ、感じさせて啼かせれば啼かせるだけ…自分の心がこんなに
ざわめいて…収まりがつかなくなるのか、私自身にも判らなかったからな…」
「…そういえば、言っていましたよね…。オレが判らないと…何度も…」
「…あぁ、そうだ。あの時…君の行動が私には理解出来なかった。どうして…仲間の
為なんかに好きでもない男に、何度も何度も抱かれているのか…。どれだけ
痛めつけても、何をしても…私の元に来るのか…本当に判らなかった…」
そう告げた、御堂の声は…少しだけ苦いものが滲んでいる気がした。
そんな彼の手を…自分の正面に回されている愛しい人の手に…己の掌を
重ねて…そっと目を伏せていく。
自分は、この人に惹かれているという事実に気づいたのは…いつだったの
だろうか。最初は嫌で仕方なかった行為が別の意味を孕み始めて…たった十日間
この人に会えないだけで切なくなっていた頃。
…その当時の記憶が、ゆっくりと克哉の中にも蘇ってくる。
(あの時を思えば…今は、何て幸せなんだろう…オレは…)
ここは、苦い思い出が伴う所だった。
同時に…自分達の原点でもあった。
幸せすぎて、忘れてしまいそうだった。
この人に…片思いをして、この想いが実るなどこれっぽっちも考えられなかった頃の
記憶が…ゆっくりと克哉の中に蘇って来た。
だが、克哉の中には…怒りも何もない。
告白する時に、想いの全てを叩きつけている。泣きながら、懇願するように…
想いの全てを吐き出して、そして…御堂にぶつけている。
それが今思えば…良かったのかも知れない。
だから…今は、克哉は…この人の当時の仕打ちを許せる。
そして…どうして御堂が、この特別な日に…自分をここに連れて来たのか…
何となく克哉はその意図を察し始めていた。
「…御堂さん。…オレは、貴方を…もう、恨んでいませんよ。それは…
この半年、オレと一緒に過ごして…良く判っているでしょう…?」
「あぁ…判っている…充分すぎる程、な…」
そうして…御堂は克哉の顎を捉えてこちらの方を向かせていく。
お互いの視線が真っ直ぐに交差していく。
そして…真摯に向き合いながら、御堂は告げていった。
「…あの時は、すまなかった。克哉…」
そしてきっと、この人の中でずっと胸につかえていたであろう一言が…
静かに紡がれていく。
その一言を聞いて、克哉は…静かに、愛しい人を抱きしめていった。
「…良いんです。孝典さん…この半年間、一緒に過ごして…何となくですけど
貴方が…あの時の行動をどこかで悔いている事は…察して、いましたから…」
柔らかく微笑みながら、克哉は…御堂のした行為の全てを…愛を持って
許していく。
…恐らく、自分達が新しい出発を切るには…この過程が不可欠だったのだ。
御堂は、自分に厳しい性格をしている。
だから…最後に、ここに来る事で…あの当時を思い出して、その気持ちを
吐露する事が苦い気持ちの伴う過去を清算出来ると何となく感じていたのだろう。
この場でなければ、なかなか向き合って言うことすら出来なかっただろう。
克哉はそんな…愛しい人の気持ちを、察していった。
だから…もう、これ以上は気にしなくて良いと…そう、伝えていくように…
ともかくその背中を優しく擦り続けていった。
「…ありがとう」
そして、飽くことなく背中を擦り続けていたその時…御堂の静かな声が
そっと聞こえていった。
お互いに少し身体を離して、顔を見詰め合っていくと…自然と柔らかい
笑みが零れ始めていく。
―お互いの指に、幸福の証が輝いているのが判った
そっと手を重ねあい、指先を絡めあっていく。
その状態のまま…顔を寄せて、静かに口付けあった
―この幸福をオレに与えてくれた貴方を…心から許して…愛していきます…
心の中で、そう呟いていくと…克哉の気持ちが何となく伝わったのだろう。
今まで見た事がない程、その表情は優しくて…余計に、克哉の中で愛しいと
いう気持ちが強まっていった。
そして…お互いを抱きしめていく腕の力が徐々に強まっていく。
たったそれだけの事で、再び身体が熱くなっていく。
もう…過去の過ちも痛みも、今となってはこの人と寄り添う為に必要な過程だったと
今では割り切れるから。
自分達の関係が始まったその場所で、全てを許して…水に流して、再び新たに
向き合っていく。
貴方が愛してくれる。
自分を選んでくれた。
そしてその証を…自分に贈って、大切な一日になるように尽力してくれた。
それだけで充分、だから貴方を許そう。
そして一層…これからも愛していこう…そう思った。
「孝典さん…愛しています…」
「あぁ、私もだ…」
そして確認しあうように愛の言葉を交わしあい、二人のシルエットが重なり合っていく。
その熱さに、腕の強さに眩暈すらしてくる。
何度身体を重ねあっても、まだ足りない。
もっともっと…この人を感じ取りたい。
その競りあがってくる欲求を感じ取りながら…克哉は、御堂の腕の中に再び全てを
委ねていった。
―そして、今夜も想いと身体を重ねていく
だが、これからも二人の指には幸福の証は輝き続けるだろう
死が二人を分かつ、その日を迎える日まで…ずっと―
こんにちは~。とりあえずこの二日間で澤村原稿10P,
克克新婚ネタ12、そして香月水波さんが主催するアンソロジーの
原稿の編集その他をどうにかやりました。
…まだ、結構残っている物もあるけど気を抜かないで続ければとりあえずは
完成出来る所まで持っていけたかもです。
11月も本日で終わりです。
…んで、ふと気づいたら拍手のお礼画面とか半年近く放置してね?
と気づいたので…本日、30分くらい掛けてラクガキ程度ですが…
3枚更新しておきました。
(プラス、二枚ばかりサービス提供元が配布しているスキンもちょこっと
試しに入れて見ました)
絵茶に結構参加しているので…他人様と絡んでいる絵ならば
沢山ログあるんですが、私一人だけの絵って殆どないな~と
今更ながらに気づきました。
どれも、ちょっとした物ばかりなので大した事じゃないですが…
まあ、来て下さっている方へのサービスという事で。
まあ…半年も何の変化もないままよりもマシだろうと思ったので
ちょいやっておきましたわ…(汗)
SSは今は書き下ろす余裕ないですが、その内…鬼畜さま16分の1の
続きも一本ぐらいは年内に書きたいものです。
よし、気分転換は終わり。
そろそろ原稿に戻りますです。
それでは皆様、お休みなさいませ~(ペコリ)
克克新婚ネタ12、そして香月水波さんが主催するアンソロジーの
原稿の編集その他をどうにかやりました。
…まだ、結構残っている物もあるけど気を抜かないで続ければとりあえずは
完成出来る所まで持っていけたかもです。
11月も本日で終わりです。
…んで、ふと気づいたら拍手のお礼画面とか半年近く放置してね?
と気づいたので…本日、30分くらい掛けてラクガキ程度ですが…
3枚更新しておきました。
(プラス、二枚ばかりサービス提供元が配布しているスキンもちょこっと
試しに入れて見ました)
絵茶に結構参加しているので…他人様と絡んでいる絵ならば
沢山ログあるんですが、私一人だけの絵って殆どないな~と
今更ながらに気づきました。
どれも、ちょっとした物ばかりなので大した事じゃないですが…
まあ、来て下さっている方へのサービスという事で。
まあ…半年も何の変化もないままよりもマシだろうと思ったので
ちょいやっておきましたわ…(汗)
SSは今は書き下ろす余裕ないですが、その内…鬼畜さま16分の1の
続きも一本ぐらいは年内に書きたいものです。
よし、気分転換は終わり。
そろそろ原稿に戻りますです。
それでは皆様、お休みなさいませ~(ペコリ)
―撮影が終わった後、二人は御堂が以前から予約していたワインの品揃えが豊富な
本格的なイタリアン料理の店に入っていった。
店内の調度品の類はシンプルなデザインながら…照明一つを取っても
センスの良さが光る店だった。
木製のテーブルの上はピカピカに磨かれ、それと対になっている椅子の
座り心地も良かった。
まるで蝋燭の火を思わせるような白熱電灯の明かりが…店の内装を
グっと柔らかいものに変えて温もりのようなものを感じさせていく。
今年オープンしたばかりの店のおかげか、全体的に置かれている物も
ピカピカしていて綺麗な状態だった。
それでも…御堂と交際していなければ、克哉にとっては縁遠い店であった
事は確かだ。
二人は窓際の席に座っていくと…メニューを開きながら、暫く何を注文
しようか思案していった。
窓の外は完全に日が暮れてすっかりと薄暗くなっていた。
(何か今日は…凄く密度が濃いのに、時間があっという間に過ぎ去っていくよな…)
朝早くから起きて…朝食を用意して食べた後、御堂とセックスをしている最中に…
本多から電話が来てヒヤリとさせられたり、記念撮影をしたり。
記念撮影も…御堂が何度も、何度も拘ってやり直しをしたおかげで結構な
時間が経過してしまっていた。
そういう所は完璧主義者である御堂らしいとつくづく思った。
(…御堂さん、本当に拘りまくっていたからな…。これは私達にとって、一生の
宝物とする一枚になるから妥協したくないって…)
そう、真剣な顔をして…自分の耳元で囁いた御堂の姿を思い出して、つい克哉は
微笑ましい気持ちになってしまった。
何度もリテイクを出す御堂を見て…克哉は正直ハラハラしてて…そんなにやり直しを
要求しなくても…という気持ちになっていた。
だが、御堂にそう耳元で囁かれてからは…協力出来る限り、自分なりに最高の
笑顔を残せるように協力していった。
今はデジタルカメラが主流になっているので…出来上がりがすぐに確認出来るから
こそ…御堂もつい、拘って良い物を残したいと思ったのだろう。
撮影してくれた係の人間に迷惑を掛けてしまったが、その気持ちが…克哉には
凄く嬉しかったのだ。
テーブルの上には…上品なクリーム色の、隅に花の刺繍がされているテーブル
クロスが敷かれて…その中心には色とりどりの花が飾られたバスケットと…
小さな蜀台が置かれて…蝋燭の火が自分達を照らし出してくれている。
その炎に映し出された御堂の表情はいつもと若干違って見えて…少しドキドキ
してしまう。
(…今日一日で、御堂さんの色んな一面を見れた気がするな…)
そう思うと、自然に顔が綻んでしまっていた。
本当にこの人が大好きだから…また違った一面が垣間見える場面に
遭遇すると純粋に嬉しい。
今まで付き合ったことがあるどんな存在よりも…御堂のことを好きになっている。
そうでなければ…きっと、指輪を贈られてこんなに胸が高揚することもきっと…
なかっただろう。
そんな事をグルグルと考えながらメニューを眺めていたせいか…何を注文
するかまったく決められてなかった。
「克哉…そろそろ、何を注文するか…決まったか?」
「えっ…あ、はい…。すみません、ちょっと迷っていたもので…全然…。
こういう店に入るの、まだ…慣れていませんし…」
御堂から声を掛けられると、恐縮したよな様子で克哉がうなだれていく。
…何度か彼に連れられて、こういう雰囲気の店に入った経験はあるのに…
いまだに慣れない自分に少し歯痒くなっていった。
「…無理に慣れなくて良い。経験を積めば…自ずと自然に振舞えるように
なる筈だからな。…じゃあ、君の分の料理は私の方から注文しておこう。
それで…構わないな?」
「あ、はい…宜しくお願いします」
そういって克哉が頭を下げていくと…御堂は片手を上げて、静かに
ウェイターを呼んで行った。
「…前菜にはプロシュートと、こちらのサーモンのバルサミコ風マリネを。
プリモピアットには…白トリュフソースのタリアテッレを。
セコンドピアットには…牛フィレ肉薄切りステーキ ガルバルディーソースを。
そしてワインは、ヴェトネ州産のアルゼロ・カベルネ・フランを…」
…脇で聞いていて、一体何を注文されているのか克哉にはまったく判らなかった。
聞き慣れない単語ばかりが羅列されているので、はっきりいうと意味の判らない
呪文のようにさえ聞こえてくる。
しかし御堂の態度は堂々としていて、竦んでカチコチになっている自分とは
大きな違いだった。
(やっぱり…こういう所で、育ちや環境の違いって出ているよな…)
こういう時の御堂は頼もしく感じられて、それだけで胸がキュンと締め付けられて
いくようだった。
本当に…こんなに格好良い人と、良く両想いになれたと思う。
片思いしていた頃は…実ることなど絶対に在り得ないと思っていた。
けれど…今、こうして指輪を贈られ、記念撮影して…そして豪華なディナーを一緒に
過ごそうとしている。
…本当なら、幾ら御堂の方が高給だからと言って…全ての代金を御堂持ちなのは
申し訳なく感じてしまったけれど…幾ら克哉が払うと言っても「今夜は特別な日だから
私が払いたいんだ」とガンと跳ね付けて、聞き遂げてくれなかった。
「ご注文の方、かしこまりました…。まずは前菜と、ご所望のワインをお持ち致しますが…
グラスの数はどうなさいますか? お連れ様もご一緒に飲まれるようでしたら…
グラスを二つお持ち致しますが…」
「あぁ、宜しく頼む」
壮年のピシっとした雰囲気のウェイターがそう問いかけていくと御堂は
余裕たっぷりに微笑んでいきながら…一言、そう告げていった。
そうして…見事な身のこなしを見送っていきながら…克哉はほう、と
溜息を突いていく。
こんな自分が、本当に御堂に選ばれたなんて信じられない。
そんな迷いが瞳に浮かんだ時、まるでそれを察したかのように…御堂が
苦笑を浮かべていった。
「…克哉、どうしたんだ? …酷く悩んでいるような表情を浮かべているが…」
「あ、その…何でも、ないです…」
「…嘘だな」
克哉の言葉の真偽を一発で見抜いて即答していくと…こちらは口を
噤むしかなかった。
「…どうせまた、君の事だから…自分が私に本当に相応しい人間なのかどうかと
迷っているんじゃないのか…?」
「そ、それは…!」
図星を突かれて、克哉はあからさまに動揺していく。
だが…御堂はそんな彼を、少しだけ怒っているような眼差しで見つめていった。
「…まったく、君は…いつになったら自信を持ってくれるんだろうな。私は君を
認めている。だから…もう少し、胸を張って生きろ。確かにまだ…このような場に
慣れてなくて気後れするような事もあるだろう。だが…そんなのは場数をこなして
経験をしていけば自然と解消されていく事だ。
自分が体験していないような事なら、私の振る舞いを観察して…その中から
学んでいけば良いだけの話だ。…特に私と君は、7歳という年齢差もある。
その分だけ…私の方が経験を積んでいる事も多いだけだ。
だから…イチイチ、そんな瑣末な事で自分を卑下するな。…せっかくの私達の
記念日なのだからな…?」
「は、はい…!」
御堂の、認めているという発言が…凄く嬉しかった。
たった一言、されど…大切な存在から肯定されるというのは…人を強くさせ
自信を持たせるだけの力が込められているものだ。
その言葉を聞いて…スウっと克哉は、胸を張り始めた。
御堂の、今言った通りだった。
経験値がないのなら…これから、一緒に積んでいけば良いだけの話なのだ。
気後れして、怯えて…竦んでいたら、せっかくの学ぶ機会すら無駄にしてしまう。
それよりも…観察して、今後の糧にしていった方が確かに有益だった。
(やっぱり…御堂さんは、凄いな…。この人が認めてくれるだけで…オレは
こんなに、自分を確かなものに感じられるようになったんだから…)
例の眼鏡がなくても、自分が自分であるだけで…胸を張れるように変われたのは
御堂に愛されたからだ。
その事実が、克哉を強くさせ…自信を持たせてくれている。
今までの生涯の中で出会った誰よりも、想い…焦がれた存在。
その人と今、こうして…特別な日を迎えている事実を…改めて噛み締めていった。
「…少しは、自信が持てたか?」
「はい…ありがとうございます。孝典…さん…」
ニコリ、と微笑みながらお礼を告げていくと…先程のウェイターが恭しく
ワインの入ったバスケットと、ワイングラスを持って来た。
「…このワインは、先程までワインセラーの方で飲み頃まで冷やしてあります。
すぐに飲まれるようでしたら…まずはこの状態でお持ちするのが最良だと
判断しました。もう少し経ちましたら…適温に保つためのワインクーラーの
方をお持ち致します」
「あぁ、宜しく頼む。デキャンターの方の準備は…?」
「今から、準備致します。丁度飲み頃を迎えている銘柄ですから…
デキャンタして30分程お待ち頂ければ…一番良いと思います。
とりあえず…それとは別にアペリティフをお持ちして…前菜や
プリモピアット用に注文された料理をお楽しみ下さいませ」
「判った、ありがとう。それでは…アペリティフ用にオススメの物はあるか?」
「当店では…シェリー、スパークリング・ワイン、ヴァン・ドゥ・ナチュレ、
ベルモッドなどがオーソドックスな物として用意してあります。
それよりもやや口当たりの良いものを選ばれるのでしたら、キールや
ミモザ、スプリッツァーなど…他の物で割ったものなども御座いますが…」
「あぁ、それならスパークリング・ワインの方を頼もう。それは…そちらの
裁量に任せる」
「かしこまりました…もう少々、お待ち下さい」
そういって別の係の人間が、優雅な手つきで注文したワインのデキャンタを
始めていく。
デキャンタとは…ある程度の年月が経過したワインの澱を取り除き…ワインを
空気に触れさせることによって熟成を早めて…飲み頃にする為の行為だ。
熟練のソムリエが思わず目を奪われそうになるぐらいに手馴れた手つきで
ワインのコルクを開けて、デキャンタ用の底の部分が大きく平らな造りに
なっている容器に慎重に注いでいく。
その動作を見守っている内に…食前酒用に注文したスパークリング・ワインの
優美で細長いグラスが置かれていった。
透明なグラスに、綺麗な泡がうっすらと浮かんで…キャンドルの炎に照らし
出されている様はどこか綺麗だった。
「…克哉、乾杯しよう。…この特別な日を、君と共に過ごせることを…」
「えぇ…孝典、さん…」
そうして、二人はそれぞれのグラスを手に持って掲げて、乾杯していく。
―そして、多少の緊張をしながらも…克哉は御堂と共に美味しい料理の数々に
舌鼓を打って、実に楽しい一時を過ごしていったのだった―
本格的なイタリアン料理の店に入っていった。
店内の調度品の類はシンプルなデザインながら…照明一つを取っても
センスの良さが光る店だった。
木製のテーブルの上はピカピカに磨かれ、それと対になっている椅子の
座り心地も良かった。
まるで蝋燭の火を思わせるような白熱電灯の明かりが…店の内装を
グっと柔らかいものに変えて温もりのようなものを感じさせていく。
今年オープンしたばかりの店のおかげか、全体的に置かれている物も
ピカピカしていて綺麗な状態だった。
それでも…御堂と交際していなければ、克哉にとっては縁遠い店であった
事は確かだ。
二人は窓際の席に座っていくと…メニューを開きながら、暫く何を注文
しようか思案していった。
窓の外は完全に日が暮れてすっかりと薄暗くなっていた。
(何か今日は…凄く密度が濃いのに、時間があっという間に過ぎ去っていくよな…)
朝早くから起きて…朝食を用意して食べた後、御堂とセックスをしている最中に…
本多から電話が来てヒヤリとさせられたり、記念撮影をしたり。
記念撮影も…御堂が何度も、何度も拘ってやり直しをしたおかげで結構な
時間が経過してしまっていた。
そういう所は完璧主義者である御堂らしいとつくづく思った。
(…御堂さん、本当に拘りまくっていたからな…。これは私達にとって、一生の
宝物とする一枚になるから妥協したくないって…)
そう、真剣な顔をして…自分の耳元で囁いた御堂の姿を思い出して、つい克哉は
微笑ましい気持ちになってしまった。
何度もリテイクを出す御堂を見て…克哉は正直ハラハラしてて…そんなにやり直しを
要求しなくても…という気持ちになっていた。
だが、御堂にそう耳元で囁かれてからは…協力出来る限り、自分なりに最高の
笑顔を残せるように協力していった。
今はデジタルカメラが主流になっているので…出来上がりがすぐに確認出来るから
こそ…御堂もつい、拘って良い物を残したいと思ったのだろう。
撮影してくれた係の人間に迷惑を掛けてしまったが、その気持ちが…克哉には
凄く嬉しかったのだ。
テーブルの上には…上品なクリーム色の、隅に花の刺繍がされているテーブル
クロスが敷かれて…その中心には色とりどりの花が飾られたバスケットと…
小さな蜀台が置かれて…蝋燭の火が自分達を照らし出してくれている。
その炎に映し出された御堂の表情はいつもと若干違って見えて…少しドキドキ
してしまう。
(…今日一日で、御堂さんの色んな一面を見れた気がするな…)
そう思うと、自然に顔が綻んでしまっていた。
本当にこの人が大好きだから…また違った一面が垣間見える場面に
遭遇すると純粋に嬉しい。
今まで付き合ったことがあるどんな存在よりも…御堂のことを好きになっている。
そうでなければ…きっと、指輪を贈られてこんなに胸が高揚することもきっと…
なかっただろう。
そんな事をグルグルと考えながらメニューを眺めていたせいか…何を注文
するかまったく決められてなかった。
「克哉…そろそろ、何を注文するか…決まったか?」
「えっ…あ、はい…。すみません、ちょっと迷っていたもので…全然…。
こういう店に入るの、まだ…慣れていませんし…」
御堂から声を掛けられると、恐縮したよな様子で克哉がうなだれていく。
…何度か彼に連れられて、こういう雰囲気の店に入った経験はあるのに…
いまだに慣れない自分に少し歯痒くなっていった。
「…無理に慣れなくて良い。経験を積めば…自ずと自然に振舞えるように
なる筈だからな。…じゃあ、君の分の料理は私の方から注文しておこう。
それで…構わないな?」
「あ、はい…宜しくお願いします」
そういって克哉が頭を下げていくと…御堂は片手を上げて、静かに
ウェイターを呼んで行った。
「…前菜にはプロシュートと、こちらのサーモンのバルサミコ風マリネを。
プリモピアットには…白トリュフソースのタリアテッレを。
セコンドピアットには…牛フィレ肉薄切りステーキ ガルバルディーソースを。
そしてワインは、ヴェトネ州産のアルゼロ・カベルネ・フランを…」
…脇で聞いていて、一体何を注文されているのか克哉にはまったく判らなかった。
聞き慣れない単語ばかりが羅列されているので、はっきりいうと意味の判らない
呪文のようにさえ聞こえてくる。
しかし御堂の態度は堂々としていて、竦んでカチコチになっている自分とは
大きな違いだった。
(やっぱり…こういう所で、育ちや環境の違いって出ているよな…)
こういう時の御堂は頼もしく感じられて、それだけで胸がキュンと締め付けられて
いくようだった。
本当に…こんなに格好良い人と、良く両想いになれたと思う。
片思いしていた頃は…実ることなど絶対に在り得ないと思っていた。
けれど…今、こうして指輪を贈られ、記念撮影して…そして豪華なディナーを一緒に
過ごそうとしている。
…本当なら、幾ら御堂の方が高給だからと言って…全ての代金を御堂持ちなのは
申し訳なく感じてしまったけれど…幾ら克哉が払うと言っても「今夜は特別な日だから
私が払いたいんだ」とガンと跳ね付けて、聞き遂げてくれなかった。
「ご注文の方、かしこまりました…。まずは前菜と、ご所望のワインをお持ち致しますが…
グラスの数はどうなさいますか? お連れ様もご一緒に飲まれるようでしたら…
グラスを二つお持ち致しますが…」
「あぁ、宜しく頼む」
壮年のピシっとした雰囲気のウェイターがそう問いかけていくと御堂は
余裕たっぷりに微笑んでいきながら…一言、そう告げていった。
そうして…見事な身のこなしを見送っていきながら…克哉はほう、と
溜息を突いていく。
こんな自分が、本当に御堂に選ばれたなんて信じられない。
そんな迷いが瞳に浮かんだ時、まるでそれを察したかのように…御堂が
苦笑を浮かべていった。
「…克哉、どうしたんだ? …酷く悩んでいるような表情を浮かべているが…」
「あ、その…何でも、ないです…」
「…嘘だな」
克哉の言葉の真偽を一発で見抜いて即答していくと…こちらは口を
噤むしかなかった。
「…どうせまた、君の事だから…自分が私に本当に相応しい人間なのかどうかと
迷っているんじゃないのか…?」
「そ、それは…!」
図星を突かれて、克哉はあからさまに動揺していく。
だが…御堂はそんな彼を、少しだけ怒っているような眼差しで見つめていった。
「…まったく、君は…いつになったら自信を持ってくれるんだろうな。私は君を
認めている。だから…もう少し、胸を張って生きろ。確かにまだ…このような場に
慣れてなくて気後れするような事もあるだろう。だが…そんなのは場数をこなして
経験をしていけば自然と解消されていく事だ。
自分が体験していないような事なら、私の振る舞いを観察して…その中から
学んでいけば良いだけの話だ。…特に私と君は、7歳という年齢差もある。
その分だけ…私の方が経験を積んでいる事も多いだけだ。
だから…イチイチ、そんな瑣末な事で自分を卑下するな。…せっかくの私達の
記念日なのだからな…?」
「は、はい…!」
御堂の、認めているという発言が…凄く嬉しかった。
たった一言、されど…大切な存在から肯定されるというのは…人を強くさせ
自信を持たせるだけの力が込められているものだ。
その言葉を聞いて…スウっと克哉は、胸を張り始めた。
御堂の、今言った通りだった。
経験値がないのなら…これから、一緒に積んでいけば良いだけの話なのだ。
気後れして、怯えて…竦んでいたら、せっかくの学ぶ機会すら無駄にしてしまう。
それよりも…観察して、今後の糧にしていった方が確かに有益だった。
(やっぱり…御堂さんは、凄いな…。この人が認めてくれるだけで…オレは
こんなに、自分を確かなものに感じられるようになったんだから…)
例の眼鏡がなくても、自分が自分であるだけで…胸を張れるように変われたのは
御堂に愛されたからだ。
その事実が、克哉を強くさせ…自信を持たせてくれている。
今までの生涯の中で出会った誰よりも、想い…焦がれた存在。
その人と今、こうして…特別な日を迎えている事実を…改めて噛み締めていった。
「…少しは、自信が持てたか?」
「はい…ありがとうございます。孝典…さん…」
ニコリ、と微笑みながらお礼を告げていくと…先程のウェイターが恭しく
ワインの入ったバスケットと、ワイングラスを持って来た。
「…このワインは、先程までワインセラーの方で飲み頃まで冷やしてあります。
すぐに飲まれるようでしたら…まずはこの状態でお持ちするのが最良だと
判断しました。もう少し経ちましたら…適温に保つためのワインクーラーの
方をお持ち致します」
「あぁ、宜しく頼む。デキャンターの方の準備は…?」
「今から、準備致します。丁度飲み頃を迎えている銘柄ですから…
デキャンタして30分程お待ち頂ければ…一番良いと思います。
とりあえず…それとは別にアペリティフをお持ちして…前菜や
プリモピアット用に注文された料理をお楽しみ下さいませ」
「判った、ありがとう。それでは…アペリティフ用にオススメの物はあるか?」
「当店では…シェリー、スパークリング・ワイン、ヴァン・ドゥ・ナチュレ、
ベルモッドなどがオーソドックスな物として用意してあります。
それよりもやや口当たりの良いものを選ばれるのでしたら、キールや
ミモザ、スプリッツァーなど…他の物で割ったものなども御座いますが…」
「あぁ、それならスパークリング・ワインの方を頼もう。それは…そちらの
裁量に任せる」
「かしこまりました…もう少々、お待ち下さい」
そういって別の係の人間が、優雅な手つきで注文したワインのデキャンタを
始めていく。
デキャンタとは…ある程度の年月が経過したワインの澱を取り除き…ワインを
空気に触れさせることによって熟成を早めて…飲み頃にする為の行為だ。
熟練のソムリエが思わず目を奪われそうになるぐらいに手馴れた手つきで
ワインのコルクを開けて、デキャンタ用の底の部分が大きく平らな造りに
なっている容器に慎重に注いでいく。
その動作を見守っている内に…食前酒用に注文したスパークリング・ワインの
優美で細長いグラスが置かれていった。
透明なグラスに、綺麗な泡がうっすらと浮かんで…キャンドルの炎に照らし
出されている様はどこか綺麗だった。
「…克哉、乾杯しよう。…この特別な日を、君と共に過ごせることを…」
「えぇ…孝典、さん…」
そうして、二人はそれぞれのグラスを手に持って掲げて、乾杯していく。
―そして、多少の緊張をしながらも…克哉は御堂と共に美味しい料理の数々に
舌鼓を打って、実に楽しい一時を過ごしていったのだった―
※本日は澤村本のイメージが強烈に浮かんできた為にそちらに
専念しておりました。
2時間近く集中して書いたので…本日は日付変更までにもう一本は
出来そうにないので、今日書いた分の冒頭部分掲載で失礼します。
イメージは…御克ルート前提で、澤村が若干絡んでくるみたいな造りです。
現在雑誌に掲載されている情報を元に、原作に忠実をモットーに…
ノマと澤村と夢の中で絡ませる…という感じのお話になります。
新キャラの澤村さんは眼鏡と深く絡んでもノマとはあんまりな感じなので
個人的な萌え要素を詰め込んだものになると思います。
一言でいうなら、「俺の事を忘れて他の奴と一緒になって幸せになって
いるなんて許せない」みたいな雰囲気の話になります。
それで踏まえた上で興味ある方のみ、「つづきはこちら」をクリックして
お読みください。
まだ正式なタイトルはないので「澤村本 冒頭」としておきます。
では…。
専念しておりました。
2時間近く集中して書いたので…本日は日付変更までにもう一本は
出来そうにないので、今日書いた分の冒頭部分掲載で失礼します。
イメージは…御克ルート前提で、澤村が若干絡んでくるみたいな造りです。
現在雑誌に掲載されている情報を元に、原作に忠実をモットーに…
ノマと澤村と夢の中で絡ませる…という感じのお話になります。
新キャラの澤村さんは眼鏡と深く絡んでもノマとはあんまりな感じなので
個人的な萌え要素を詰め込んだものになると思います。
一言でいうなら、「俺の事を忘れて他の奴と一緒になって幸せになって
いるなんて許せない」みたいな雰囲気の話になります。
それで踏まえた上で興味ある方のみ、「つづきはこちら」をクリックして
お読みください。
まだ正式なタイトルはないので「澤村本 冒頭」としておきます。
では…。
―午後から御堂に連れていかれた場所は、大きくて立派なホテルだった。
お風呂から出て、午後の時間帯に差し掛かった辺りから…二人して御堂の
車に乗って、御堂が行きたいと望んだ場所に向かっていった。
其処に辿り着くまで、御堂の自宅から車で30分前後掛かった。
駅の周辺にそびえる、圧倒されるぐらいに大きな建物を前にして…克哉は
思いっきり立ち竦んでしまった。
どう見ても、これは結婚式とか大きな祭典の際に使用される会場やホールを
提供する系の場所だった。
今の二人は、その場に似つかわしい服装を身に纏っていた。
今回は御堂は…克哉に、自分が持っている中でも上等な部類のブランド物の
スーツを貸し出し、それを着させていた。
二人ともほぼ同体型であったからそのような事が出来た訳だが…高級なスーツが
醸す雰囲気が、二人を普段以上に今は輝かせていた。
整った風貌の男二人が、ピシっとノリの利いた高級なスーツに身を包んでいる
様子は…周りの人間の目を嫌でも惹いていった。
「あ、の…御堂、さん…ここは…」
「都内でも有数の斎場だが、それが? あぁ…一応ここは貸衣装のレンタルとかも
していてな。それで衣装を借りて記念撮影を出来るサービスも提供している」
「そ、そうなんですか。…で、ここにオレと来た理由は、やっぱり…?」
「…君と記念撮影をする為に決まっているだろう。あぁ…一応、ここの斎場の
オーナーとは交流があってな。それで…そのツテで当日だが、一応予約を
承って貰った」
何でもない事のようにサラリと言い放たれて、克哉は実に微妙な表情を
浮かべていった。
だが、克哉は…オーナーと交流があって…という一言を聞いて明らかに
困惑していた。
男同士で、こんな場所で記念撮影をするなど…絶対に変だと思われるに
決まっている。
しかし…御堂の方は堂々とした様子で、悪びれた様子もなかった。
「あ、の…御堂さんは大丈夫なんですか。その…男同士で普通、こういう
場所を訪れるって絶対に…不審がられますよ。それに…指輪をしながら、
何て…それは…」
「…君は心配性だな。…私が安易に、そんな疑われるような振る舞いをする
と思うのか? 別に男性同士で記念撮影をしたとおかしくはあるまい。
相手にとって記念すべきことがあって…そのお祝いにや、記念に共に
写真を撮るぐらい…あってもおかしくはない事だ。
それに指輪も…二つをじっくりと見比べなければ対となるデザインである
事を…そう簡単に見抜けないものを選んだつもりだ。
それに、二人とも既婚者同士なら…指輪をそれぞれつけていたとしても
全然おかしな話ではあるまい。怪しまれるような言動や態度をしなければ…
人はそこまで穿った見方をするまいよ…」
「た、確かにそうですね…でも…」
それでも克哉は不安だった。
…御堂は確かに、客観的に他の人間がどんな風に見るかを語ってくれた
けれど…実際に、自分達は恋人同士で…この指に輝く指輪を贈り贈られるような
そんな関係でもあるのだ。
御堂にとって、不利な条件になるような事ならば…出来るなら、したくない。
自分との事が明るみになって、この人の足を引っ張るような真似は避けたかった。
その不安が明らかに克哉の表情に浮かんでしまっている。
だが…御堂は、そんな恋人の肩にそっと手を乗せていき…顔を寄せていきながら
不安を覚えている克哉を元気づけるように、確かな声で言った。
「…君の不安は、何となくは察している。だが…私は指輪を贈って、こちらの気持ちを
確かに伝えている筈だ。それなのに…いつまでも君に不安を抱えていて欲しくはない。
…この記念撮影は、その為に組んだもののつもりだ。
どうか、もう少し堂々としていてくれ。君は…私が認め、選んだただ一人の存在
なのだからな…」
「御堂、さん…」
今の、御堂の一言に…克哉は勇気づけられていた。
この人に…こんなに優しい言葉を掛けて、心の中から何か暖かいものが
湧き上がって来て…とても、嬉しかった。
「…あの、ありがとうございます。…貴方に、そこまで…言って貰えるだなんて…
思っても、見ませんでしたから…」
「…気にする事はない。私は、率直に…思っている事を君に伝えただけだ」
そう、ぶっきら棒に言い放ったが、その表情は少し照れている事が伺えた。
それを見て…克哉は心から嬉しそうな笑みを浮かべていく。
(…御堂さんが、照れている。…この人でも、こんな表情を見せることが
あるんだな…)
その頬が軽く赤く染まっているのを見て、克哉はグっと…御堂を愛しく感じた。
そして…ごく自然に、笑みを浮かべていく。
「…御堂さん、行きましょう。余分なお時間を取らせてしまって…すみません。
貴方の気持ちは、良く判りましたから…」
「うむ。それで良い。行くぞ…克哉」
そうして、ゆっくりと連れ立ちながら…斎場の入り口へと向かっていく。
今は周りの人間の目も意識して、恋人同士としては振舞わず…あくまで
友人同士として、これから記念撮影に挑むだろう。
けど、この人の本心は充分に伝わっている。
指輪を贈ってくれた翌日の記念撮影。
それが意図するものは…自分達だけが理解していれば良い。
…その事を自覚して、克哉は…嬉しくて柔らかい表情を浮かべていく。
そんな彼を、御堂は優しくリードしていって…二人は、一枚の写真を…
記念に残していったのだった―
お風呂から出て、午後の時間帯に差し掛かった辺りから…二人して御堂の
車に乗って、御堂が行きたいと望んだ場所に向かっていった。
其処に辿り着くまで、御堂の自宅から車で30分前後掛かった。
駅の周辺にそびえる、圧倒されるぐらいに大きな建物を前にして…克哉は
思いっきり立ち竦んでしまった。
どう見ても、これは結婚式とか大きな祭典の際に使用される会場やホールを
提供する系の場所だった。
今の二人は、その場に似つかわしい服装を身に纏っていた。
今回は御堂は…克哉に、自分が持っている中でも上等な部類のブランド物の
スーツを貸し出し、それを着させていた。
二人ともほぼ同体型であったからそのような事が出来た訳だが…高級なスーツが
醸す雰囲気が、二人を普段以上に今は輝かせていた。
整った風貌の男二人が、ピシっとノリの利いた高級なスーツに身を包んでいる
様子は…周りの人間の目を嫌でも惹いていった。
「あ、の…御堂、さん…ここは…」
「都内でも有数の斎場だが、それが? あぁ…一応ここは貸衣装のレンタルとかも
していてな。それで衣装を借りて記念撮影を出来るサービスも提供している」
「そ、そうなんですか。…で、ここにオレと来た理由は、やっぱり…?」
「…君と記念撮影をする為に決まっているだろう。あぁ…一応、ここの斎場の
オーナーとは交流があってな。それで…そのツテで当日だが、一応予約を
承って貰った」
何でもない事のようにサラリと言い放たれて、克哉は実に微妙な表情を
浮かべていった。
だが、克哉は…オーナーと交流があって…という一言を聞いて明らかに
困惑していた。
男同士で、こんな場所で記念撮影をするなど…絶対に変だと思われるに
決まっている。
しかし…御堂の方は堂々とした様子で、悪びれた様子もなかった。
「あ、の…御堂さんは大丈夫なんですか。その…男同士で普通、こういう
場所を訪れるって絶対に…不審がられますよ。それに…指輪をしながら、
何て…それは…」
「…君は心配性だな。…私が安易に、そんな疑われるような振る舞いをする
と思うのか? 別に男性同士で記念撮影をしたとおかしくはあるまい。
相手にとって記念すべきことがあって…そのお祝いにや、記念に共に
写真を撮るぐらい…あってもおかしくはない事だ。
それに指輪も…二つをじっくりと見比べなければ対となるデザインである
事を…そう簡単に見抜けないものを選んだつもりだ。
それに、二人とも既婚者同士なら…指輪をそれぞれつけていたとしても
全然おかしな話ではあるまい。怪しまれるような言動や態度をしなければ…
人はそこまで穿った見方をするまいよ…」
「た、確かにそうですね…でも…」
それでも克哉は不安だった。
…御堂は確かに、客観的に他の人間がどんな風に見るかを語ってくれた
けれど…実際に、自分達は恋人同士で…この指に輝く指輪を贈り贈られるような
そんな関係でもあるのだ。
御堂にとって、不利な条件になるような事ならば…出来るなら、したくない。
自分との事が明るみになって、この人の足を引っ張るような真似は避けたかった。
その不安が明らかに克哉の表情に浮かんでしまっている。
だが…御堂は、そんな恋人の肩にそっと手を乗せていき…顔を寄せていきながら
不安を覚えている克哉を元気づけるように、確かな声で言った。
「…君の不安は、何となくは察している。だが…私は指輪を贈って、こちらの気持ちを
確かに伝えている筈だ。それなのに…いつまでも君に不安を抱えていて欲しくはない。
…この記念撮影は、その為に組んだもののつもりだ。
どうか、もう少し堂々としていてくれ。君は…私が認め、選んだただ一人の存在
なのだからな…」
「御堂、さん…」
今の、御堂の一言に…克哉は勇気づけられていた。
この人に…こんなに優しい言葉を掛けて、心の中から何か暖かいものが
湧き上がって来て…とても、嬉しかった。
「…あの、ありがとうございます。…貴方に、そこまで…言って貰えるだなんて…
思っても、見ませんでしたから…」
「…気にする事はない。私は、率直に…思っている事を君に伝えただけだ」
そう、ぶっきら棒に言い放ったが、その表情は少し照れている事が伺えた。
それを見て…克哉は心から嬉しそうな笑みを浮かべていく。
(…御堂さんが、照れている。…この人でも、こんな表情を見せることが
あるんだな…)
その頬が軽く赤く染まっているのを見て、克哉はグっと…御堂を愛しく感じた。
そして…ごく自然に、笑みを浮かべていく。
「…御堂さん、行きましょう。余分なお時間を取らせてしまって…すみません。
貴方の気持ちは、良く判りましたから…」
「うむ。それで良い。行くぞ…克哉」
そうして、ゆっくりと連れ立ちながら…斎場の入り口へと向かっていく。
今は周りの人間の目も意識して、恋人同士としては振舞わず…あくまで
友人同士として、これから記念撮影に挑むだろう。
けど、この人の本心は充分に伝わっている。
指輪を贈ってくれた翌日の記念撮影。
それが意図するものは…自分達だけが理解していれば良い。
…その事を自覚して、克哉は…嬉しくて柔らかい表情を浮かべていく。
そんな彼を、御堂は優しくリードしていって…二人は、一枚の写真を…
記念に残していったのだった―
こんにちは、香坂です。
とりあえず新しい職場、肉体的にはまだ身体がついていっていなくて
辛いですが、精神的には結構気楽に過ごしております。
昔取った杵柄が役に立っているので…結構早い段階で一通りは
動けていますので(まだ全般的に作業は遅いけど、足は引っ張って
いないレベル)
…ただ、はい…本日の朝はちょいとやらなければならない事例が
沢山あったのでその準備や、メール書くのに結構時間を取られて
しまったのでちょっと朝の内に、書き上げて家を出ていくのは
正直厳しい状況です。
…本日はアップ出来たら夜か、もしくはお休みさせて頂く
形で対応させて頂きます。
後、締め切りまで二週間ちょい…チョコチョコこうやって休ませて
貰う日も出てくると思います。
ご了承下さいませ(ペコリ)
とりあえず新しい職場、肉体的にはまだ身体がついていっていなくて
辛いですが、精神的には結構気楽に過ごしております。
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動けていますので(まだ全般的に作業は遅いけど、足は引っ張って
いないレベル)
…ただ、はい…本日の朝はちょいとやらなければならない事例が
沢山あったのでその準備や、メール書くのに結構時間を取られて
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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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