鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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こちらは10月10日に販売する新刊の秋紀編の
冒頭部分になります。
この話自体が以前にサイトで連載した「始まりの扉」の
その後という前提になっているので、其れを踏まえた上で
目を通してやって下さい。
…どっちの話もちょっと暗い感じで始まっておりますが、
一応買って後悔はさせないように仕上げる予定です。
では、良ければ買うか買わないかの参考にして
頂ければ幸いです。
読んでも良いという方だけつづきはこちらをクリックして
残り部分を表示して下さいませ~
『始まりの扉 その後 秋紀編』
―大学に進級してから半年が経過した頃…須原秋紀は以前に
眼鏡を掛けた方の克哉と出会ったバーに時々、足を向けるようになっていた
眼鏡を掛けた方の克哉と出会ったバーに時々、足を向けるようになっていた
高校生だった頃の自分がいても何も文句を言われる事がなかったように…
色んな人間の喧噪と思惑が渦巻いているバーのカウンター席のスツールに
腰を掛けていきながら秋紀は一人酒を楽しんでいた。
色んな人間の喧噪と思惑が渦巻いているバーのカウンター席のスツールに
腰を掛けていきながら秋紀は一人酒を楽しんでいた。
あまり広くない店内には十代から二十代ぐらいの奇抜なファッションをしている
男女が多くひしめいている。
男女が多くひしめいている。
そんな中で、秋紀は容姿こそは華やかで派手だが、赤い袖なしのパーカーに、
ジーンズというそんなに変わった格好をしている訳ではないので多少、周囲から
浮き上がっている印象はあった。
ジーンズというそんなに変わった格好をしている訳ではないので多少、周囲から
浮き上がっている印象はあった。
だが色素の薄い髪に、白磁の肌。それと澄んだグリーンの瞳に整った容貌まで
セットになっていたら嫌でも周囲の人間の目を惹く事は明白だった。
セットになっていたら嫌でも周囲の人間の目を惹く事は明白だった。
(うっとおしいな…。僕は一人でゆっくりと酒を楽しみたいんだから
物色するような目でこっちを見るなよ…)
物色するような目でこっちを見るなよ…)
秋紀が常に一人で飲んでいるという事もあるのだろう。
男女問わずに周囲の人間から視線という形でアプローチを掛けられて、
うっとおしそうな顔を浮かべていく。
うっとおしそうな顔を浮かべていく。
しかし相手に逆恨みされたり、絡まれたりしたら面倒なので一切構う事なく…
平然とした様子で秋紀は佇んでいた。
平然とした様子で秋紀は佇んでいた。
ここで眼鏡と出会ってから二年近くが経過しているせいだろう。
あの当時、自分の周りにいた人間たちはどういった理由かは判らないが
今はこの店から姿を消していた。
今はこの店から姿を消していた。
最近になってまた此処に顔を出すようになったが、今から一年以上前に
起こったあの一件以来、秋紀は彼らを見かけた事はなかった。
起こったあの一件以来、秋紀は彼らを見かけた事はなかった。
だが、普通に高校を出て大学に進級した今となっては…秋紀と彼らの
生きる世界には大きな隔たりが生じている。
生きる世界には大きな隔たりが生じている。
其れに最後に顔を合わせた時の下卑た顔は今でも忘れる事が出来ない。
彼らは間違いなく、あの時…こちらを欲望の対象にしか見ていなかった。
秋紀もすぐに其れが判ったからこそ彼らの前から逃げ出したのだし、
その判断に間違いはなかったと確信している。
その判断に間違いはなかったと確信している。
(あいつらがいなくて良かった…。いたら絶対に変な風に絡まれるのは
目に見えていたからね…)
目に見えていたからね…)
彼らが今はどうしているのか、秋紀はすでに興味がなかった。
高校二年生の頃は…今、思い返せばとにかく自分の家にいたくなくて、
夜の街で時間を無為に潰すような生き方をしていた。
夜の街で時間を無為に潰すような生き方をしていた。
(克哉さんと出会った頃には…僕の父さんと母さんは修復不可能な状態に
なっていたのは見ていればすぐに判ったからね…。僕はそんな家にいたくない
からこの辺で過ごしていただけだった…。そしてあいつらは、そんな僕の周りに
気づいたらいたような…そんな感じだったな…今、思い返せば…)
なっていたのは見ていればすぐに判ったからね…。僕はそんな家にいたくない
からこの辺で過ごしていただけだった…。そしてあいつらは、そんな僕の周りに
気づいたらいたような…そんな感じだったな…今、思い返せば…)
そして眼鏡を掛けた克哉に抱かれて、性体験をしたからこそ…秋紀は
気づいてしまった。
気づいてしまった。
周りにいた人間が、こちらに欲望を抱いていることを薄々と感じ取って
しまったから此処で克哉が再び来るのを待ち望んでいた頃、さりげなく彼らから
距離を置くように自分はなったのだろう。
しまったから此処で克哉が再び来るのを待ち望んでいた頃、さりげなく彼らから
距離を置くように自分はなったのだろう。
グラスの中のカルーアミルクを飲んでいきながら、秋紀は小さく自嘲的な
笑みを浮かべていった。
笑みを浮かべていった。
自分はきっと、克哉と出会わないままだったら高校も満足に卒業する事なく
自堕落に生きているだけだっただろう。
自堕落に生きているだけだっただろう。
両親の不仲の事に悩みながら、其れについて何の努力もする事なく
逃げることしかしていなかった。
逃げることしかしていなかった。
去年、克哉と決別した直後ぐらいに秋紀の両親はついに離婚を決断して…
多少のゴタゴタはあった。
多少のゴタゴタはあった。
母親に、そのまま自分と一緒に海外に移住しないかとも持ちかけられた。
だが、秋紀はその申し出を断り…父親に頭を下げて、日本に残って高校を
卒業して、大学に進級してサラリーマンを目指す道を選んでいった。
卒業して、大学に進級してサラリーマンを目指す道を選んでいった。
失恋こそしてしまったが、今でも秋紀にとってあの人はとても重要な位置を
占めている人だから。
占めている人だから。
出会わないままでいたらきっと…流されるままに母親と一緒にこの国を出て、
目標も何も見いだせないまま無駄に生きているだけだっただろうから。
目標も何も見いだせないまま無駄に生きているだけだっただろうから。
(あ~あ…未練がましいよね僕…。もう、此処に来たって克哉さんに会える訳
じゃないって判っているのに…。それでもこの店に顔を出し続けているなんてさ…)
じゃないって判っているのに…。それでもこの店に顔を出し続けているなんてさ…)
自分の恋に対しては、もう気持ちのけじめはついている。だが、それでも
一目だけでも逢いたいという気持ちが強くあるからこそ…秋紀は此処に
顔を出してしまっているのだろう。
一目だけでも逢いたいという気持ちが強くあるからこそ…秋紀は此処に
顔を出してしまっているのだろう。
もう実らない恋である事は判りきっている。
克哉が今、付き合っている人と別れない限りは自分のはほんの僅かな
可能性もない事はすでに答えが出ているのに。それでも、こんな真似を
するのを止める事が出来ない自分に呆れたくなった。
可能性もない事はすでに答えが出ているのに。それでも、こんな真似を
するのを止める事が出来ない自分に呆れたくなった。
「僕、一体何をしているんだろう…」
力なく、秋紀は呟いてグラスの中のカルーアミルクを一気に煽っていった。
一杯や二杯、カクテルを喉に流し込んだくらいじゃ酔えなかった。
自分の中から余計な考えを追い払う事は出来なかった。
(克哉、さん…もう一度だけで、良い…逢いたい、逢いたいよぅ…)
そして酒を飲んだ時だけ、胸の奥に潜んで隠されている本音が
そっと浮かび上がって来た。
そっと浮かび上がって来た。
克哉のマンションに最後に顔を出した時、あの人は引っ越し間際だった。
彼の自宅と、このバーだけが克哉と会えるかも知れない可能性が
存在する場所だった。
存在する場所だった。
顔を見るだけで良い。ただ挨拶するだけでも構わない。
克哉に逢いたい、という欲望が決別をしてから半年が経過するのに
それでも募っていくようで…秋紀は、未だに忘れる事が出来ない事に
苦しんでいた。
それでも募っていくようで…秋紀は、未だに忘れる事が出来ない事に
苦しんでいた。
―真剣な恋は、簡単には忘れる事は出来ない
克哉と顔を合わせたのは、恐らく秋紀の人生の中では一週間にも
満たない時間に過ぎない。
満たない時間に過ぎない。
その中で本当に満たされて過ごす事が出来たのはたったの二日間だけだ。
そして…自分の片思いだと判っていても、克哉と触れ合えた…傍で過ごす事が
出来た時間が存在するからこそ、秋紀はその思い出に囚われて、
身動きが取れなくなる。
出来た時間が存在するからこそ、秋紀はその思い出に囚われて、
身動きが取れなくなる。
「克哉、さん…」
僅かに瞳を潤ませながら…愛しい人の名前を呼ぶ。
もう成就は期待しないから、せめて…顔だけでも見たいと。少しでも
良いから言葉を交わしあって、今も幸せに過ごしているかだけ知りたい。
良いから言葉を交わしあって、今も幸せに過ごしているかだけ知りたい。
其れはあまりにささやかで小さな願いだった。
カウンターの前で俯いていきながら、他の人間に泣いている事を
悟られないようにしていく。
悟られないようにしていく。
だが…長年、多くの客たちに接して来た四十代くらいの渋い印象を
纏ったバーテンダーはすぐに秋紀の心中をさりげなく察したのだろう。
纏ったバーテンダーはすぐに秋紀の心中をさりげなく察したのだろう。
静かに傍に歩み寄ると、そっとこちらに声を掛けて来る。
「…次のご注文はありますか…?」
「…じゃあ、次はエンジェルキスを…」
「畏まりました…」
恭しく頭を下げて、そしてオーダーを受けたカクテルを作る準備を
流れるような動作で始めていく。
流れるような動作で始めていく。
夜の街には様々な人間の想いが交差して、渦巻いている。たった一杯の酒で、
そしてさりげない気遣いで少しだけ心が癒されて活力を取り戻せる事もあるのだ。
そしてさりげない気遣いで少しだけ心が癒されて活力を取り戻せる事もあるのだ。
酒は過ぎれば人を破滅させる毒になるが、適度に飲めばほんの少しだけ
胸の苦しみや悲しみを解す薬にもなる。
胸の苦しみや悲しみを解す薬にもなる。
克哉と出会ったバーに、最近こうやってまた通い始めるようになったのは…
その思い出を静かに噛みしめながら振り返るのと同時に、かつては騒がしい
だけと思っていた店の中に…こうしてさりげなくこちらの悲しみを察して、
労りを示してくれるバーテンダーがいた事に気づいたからかも知れなかった。
その思い出を静かに噛みしめながら振り返るのと同時に、かつては騒がしい
だけと思っていた店の中に…こうしてさりげなくこちらの悲しみを察して、
労りを示してくれるバーテンダーがいた事に気づいたからかも知れなかった。
(こうやって酒を飲んでいれば…少しだけでも、気は紛れるから…)
心の痛みを酒で完全に誤魔化す事は出来ない。
けれど少しだけ和らげる事が出来るなら、今の秋紀にはそれだけで充分だった。
切なく悲しく、そして愛しい思い出を振り返る事は人によってはただ過去を
懐かしんで、感傷に囚われているだけの無駄な時間と考える人もいるだろう。
懐かしんで、感傷に囚われているだけの無駄な時間と考える人もいるだろう。
しかし人間の心とは、簡単に割り切れるものではない。
秋紀はあの時、身を引くのが正しいと思ったから…自分の恋が実らなかった
からと言って大好きな人を恨んだり憎んだりするのが嫌だったから、精一杯
笑ってさよならを言った。
からと言って大好きな人を恨んだり憎んだりするのが嫌だったから、精一杯
笑ってさよならを言った。
其れは秋紀自身が選んだ事であり、その事に対して後悔はない。
けれどあの時、全く同じ強さで別の願いを抱いていたのだ。
其れが叶えられる事がないからこそ、秋紀は未だに完全に振り切る事が
出来ないでいた。
其れが叶えられる事がないからこそ、秋紀は未だに完全に振り切る事が
出来ないでいた。
もう一つの願いもまた、自分の中で克哉への想いを整理する為に必要な
プロセスなのだろう。
プロセスなのだろう。
だから秋紀は、こうして強くもう一度だけ逢いたいと願って涙を静かに零していく。
秘められた、もう一つの願い。其れは…眼鏡を掛けた佐伯克哉に
抱きしめられながら、思いっきり泣く事。
抱きしめられながら、思いっきり泣く事。
けれど頭の冷静な部分ではもうその願いが叶えられる事はないことを
薄々察していきながら、秋紀は二杯目のカクテルをグっと煽っていったのだった―
薄々察していきながら、秋紀は二杯目のカクテルをグっと煽っていったのだった―
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
鬼畜眼鏡にハマり込みました。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
当ブログサイトへのリンク方法
URL=http://yukio0201.blog.shinobi.jp/
リンクは同ジャンルの方はフリーです。気軽に切り貼りどうぞ。
…一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)
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