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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※7月25日からの新連載です。
今回は「恋人関係」について掘り下げた内容になっております。
眼鏡が意地悪で、ノマは不安定で弱々しい場面も途中出てくる
可能性が大です。
 他のカップリング要素を含む場面も展開上出てくる場合があります。
 それを承知の上で目を通して下さるよう、お願い申し上げます。

 恋人の条件                       10 
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 克哉と知り合ってから一年余り。
 太一は今年、無事に四年生に進級して…来年の春には
順調に行けば卒業を迎えるだろう。
 その事によって、今年の春から…五十嵐組の方では大きな
動きが存在していた。
 現在のトップである寅一が後継者と定めた太一を何が何でも
裏社会に引き込もうとしている勢力と。
 太一の夢が音楽の世界で食っている事だと理解している…自分の
父親を中心とした勢力が激しく対立を深めていた。
 祖父の後継者になって貰いたいと切望をしている勢力は…言ってみれば
寅一の息が掛かっているという事とほぼ同義語である。
 太一が克哉の自宅の鍵をこっそりと作ったのは…その辺の五十嵐組の
後ろ暗い事情が深く絡んでいたのだ。

(こんな鍵、本当なら作るべきじゃないって判っているけれど…。克哉さんの
身に何か遭ってからじゃ遅いから…だから親父が忠告してくれた時に手配して
用意しておいた物なんだけどね…。緊急事態じゃないのに、俺…悪用
しようとしている…)

 呼び鈴を押しても暫く反応がないままだったので、太一は葛藤しながら
禁断の鍵を差し込んでいく。
 もしかしたら室内に克哉がいるかも知れない。
 寝ている最中だったら出てくれないのだとしたら…きっと見つかれば
咎められてしまう事は必死だった。
 其れでもどうしても克哉に会いたい、もしくはその気配だけでも今は感じ取りたい
欲望を抑える事が出来なかった。

(…もし外出中で…俺が中に踏み込んでいる時に克哉さんが帰宅したら、
言い訳効かないよな…)

 そんな考えも一瞬、脳裏をよぎっていった。
 なのに…理性など、瞬く間に消えていってしまう。
 すでに夜の22時を回っている。こんな時間に人の自宅に来訪するのも…
不法侵入をするのも常識的な行動じゃないというのは流石に判る。
 
「克哉さん…」

 けど、何となくこの扉の向こうに克哉がいるような気がしたから。
 せめて呼び鈴を押した時に克哉が出迎えてくれたなら…この嗅ぎを
使う事はなかっただろう。
 なのに奥にいるのに、出てくれないのなら…障害物である扉など邪魔でしかない。
 そんな物騒な考えと、突き動かされるような衝動に身を委ねて…そして太一は
ついに鍵を開けて、中に入っていってしまった。
 部屋の中は、真っ暗だった。
 藍色の深い闇が周囲を覆い尽くして、何処に何があるのかも満足に
確認出来なかった。
 初めて訪れる克哉の部屋は、彼の匂いで満たされているような気がした。
 電灯の位置すら、はっきり判らない。
 壁に手を這わせて電灯のスイッチを探そうと試みたが、なかなかそれらしき
手応えに遭遇するが出来ないままだった。

(電灯のスイッチって何処にあるんだ…?)

 どんな家屋でも、照明のスイッチが設置されている高さはほぼ一定である。
 太一は其れを意識した位置に手を這わせて探しているつもりだが…真っ暗な
せいでその感覚も若干の狂いが生じてしまっていた。
 事実、彼が最初に探った周辺に望んでいたスイッチは存在していたのに
気持ち、少し高い位置を探ってしまった為に気づかぬまま…太一は闇の中で
右往左往する羽目になっていた。
 暗い闇が、怖かった…明かりが一切存在しない闇には人はなかなか目が慣れる
事すら出来ない。
 ほんの僅かでも明かりがあれば、数分もすれば目が馴染んでくれるが…
克哉の部屋は現在、窓の類は分厚いカーテンで閉め切られてしまっているせいで
真の闇に近い状態が作り出されてしまっていた。
 まるで、部屋の中にいる存在を閉じ込めるかのように…誰にも触れされないと
暗に示されていたのを、太一が強引に破ってしまったかのように。

「克哉、さん…何処…?」

 ついに心細くなって、太一は短くそう呟いてしまった。
 電灯が見つからない以上、簡単に光を得るのはたった今通って来た扉を
開けて廊下の光を差し入れる事ぐらいだった。
 だが、現在の太一は不法侵入真っ最中の身の上だった。
 ほんの僅かでも隙間を開ければ、其処からは微かな光が差し込んで電灯を
探すのは容易になるだろう。
 しかし後ろぐらい思いをして入り込んでいる以上、其れを実際にやるには
酷く勇気がいる事だった。

(…少しだけでも、扉を開けて…電灯のスイッチを点けるべきか…?)

 そう迷った瞬間、頭に声が響き渡った。

―そんな必要はありませんよ…。貴方が会いたくて堪らない、佐伯克哉さんは…
此処にいらっしゃいますからね…

「っ…! 誰だ!」

 あまりにも鮮明に、誰かの声が聞こえた。
 何となく聞き覚えがあるような、ないような…歌うような口調で何者かが
太一の頭の中に響くように語りかけてくる。
 その事に弾かれたように驚いたが、周囲を探っても…自分以外の人間の気配は
近くからは感じられなかった。
 だが、いきなり…目の前に淡く青色に光る、道が現れていった。
 その奥に、太一が求めている者がいるのだと示してくれているかのように
青い光は淡く優しく、同時に妖しさを帯びていきながら奥の部屋に続いていった。

「はは…これ、一体…何だよ…。俺は夢でも見ているのか…?」

 太一は力なく呟いていった。
 あまりに非現実めいた光景だった。
 だが…扉を開けて外の光を取り入れた以上、他の人間に見つかって
不審がられる可能性がある事は否めない。
 この青い光は確かに妖しい事この上ないが…その危険を犯さずに奥に
進む為には確かに有効だった。
 だがその輝きが浮かび上がる中、目を凝らしても…先程の声の主らしき
人影は一切、感じられなかった。

「…全く、さっきの声…一体何だったんだよ…。すげー不気味…」

 もしかしたら何かの罠かも知れない。
 そう頭の隅では警鐘が鳴り響いていた。
 其れでも暫く迷った末に…太一はその青い光の道を頼りに奥の部屋へと
進んでいった。
 そして…淡い青の輝きに包まれて、闇の中に浮かび上がっている克哉の
姿が其処にあった。
 ベッドの上にぐったりと、裸のままで深く眠っているその姿に…太一は
知らず、唾を飲み込んでいった。
 あまりに無防備で、あどけない顔をして克哉は眠っていた。
 その顔を見て…太一の中の雄が、静かに刺激されていく。

「ヤバイ…凄い、綺麗だよ…克哉、さん…」

 其れはまるで…夜のアクアリウムに浮かび上がる水槽を眺めているような
気分だった。
 深い闇があるからこそ、光に淡く照らされている中身がとても美しく…
同時に明るい光の下とはまた違った魅力を浮かび上がらせていくのだ。
 淡い青い光に照らされている克哉は綺麗で、かつ…いつもにはない
艶めかしさのようなものすら感じられた。
 不法侵入をした上に、相手の寝込みを襲うなんて言ってみれば犯罪行為
以外の何物でもない。
 そう頭の中では判っているのに、太一は目の前の強烈な誘惑に抗う
事が出来なくなっていた。

「克哉さん、御免…俺…」

 そう一言だけ謝罪の言葉を漏らして、太一はベッドの方へと歩み寄っていく。
 安らかに眠っている克哉に一種の神秘的なものさえ感じていきながら…
直接、手に触れる事で相手を確認したい強烈な誘惑に逆らう事が出来ず、
彼は恭しく、愛しい存在に手を伸ばしていったのだった―



 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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