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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―優しいメロディが聞こえていた
   誰かが奏でている綺麗なバラード
  この曲どうかな? と照れ臭そうに青年が笑う
  自分はそれを…とても良いよ、と答えながら
  静かに耳を傾けている
  とても、幸せな夢だった―

 ―はっ…!

 明け方にその夢を見て、荒く息を吐きながら克哉の意識は覚醒していった。

「また、あの夢だ…」

 もう一人の自分と一緒に暮らすようになってから早くも二週間が経過していた。 
 今朝見た夢は、今週に入った辺りから明け方頃にチラリ…と見る事が多かった。

(何だろう…あの夢。とても大切なものだった気がするんだけど…)

 欠けてしまった記憶のカケラ。
 その中でも今のピースは、重要な役割を果たしている。
 克哉はそう確信していたが…おぼろげ過ぎて、はっきりと判らないのがもどかしかった。
 彼の顔が、思い出せない。

(何でオレは…思い出せないんだ? 断片的には色んな夢を見ているのに…)

 幾ら思考を巡らせても、今はそれを引き出す糸口が余りに少なすぎるのだろう。
 今朝もすっきりしない気持ちを抱えていきながら、ベッドから身を起こしていった。
 もう一人の自分から衝撃的な内容を告げられた日から丸二週間、今朝は15日目の
始めに当たっていた。

「幾ら尋ねても、あいつはまったく答えてくれないしな…。何でこんな状況に陥っているのか
知っているなら…教えてくれても、良いのに…」

 だが、彼は肝心な所はいつもはぐらかして真相にはまったく触れようともしない。
 こちらが詰め寄ると、のらりくらりとかわして…気づいたらセックスに持ち込まれてしまって
いるのが大体のパターンだ。
 その時の事を思い出してしまって、克哉はバっと赤くなっていく。
 幾度となく繰り返された生々しい情事の記憶が蘇って…とても平静ではいられなく
なってしまった。

(思いっきり朝から反応しているしな…)

 チラリ、と布団の下で盛り上がっている部分を眺めて…はあ、と溜息をついていく。
 自分とて健全な成人男子である。
 朝勃ちくらい健康なら当たり前にある生理現象である事は理解しているが…
ふと、あいつに抱かれた記憶が過ぎるとつい切なくなってしまう。
 ふいに…あいつに身体全体を弄られている時の情景が頭の中で再生されて、
あっという間に居たたまれなくなってしまった。

「くそ…何で、あいつは…こんなにオレを、抱くんだろ…?」

 苦々しげに呟きながら、鈍い身体をどうにか起こしていった。
 克哉の身体は、14日間の厳しいリハビリの末…かなり回復していた。
 すでに日常の動作なら全然問題なくなっていた。
 だが、未だに指先の感覚はどこか遠く…指先を動かしながら集中しなくてはならない
細かい作業まではまだ出来なかった。
 それでも初日は、食事介助をして貰わなければご飯も食べれなかったことを思えば
劇的な進歩であった。

「お腹空いたな…ご飯の用意、してあるかな…」

 時計の針をチラリ、と眺めるとまだ朝五時半だった。
 通例ならば、朝食の時間は7時くらいだ。
 意外ともう一人の自分は時間を守る性分らしく…毎朝の朝食の時間が大きく
変動するような事は一度もなかった。
 待っていれば…七時には確実に朝食にありつける。
 それは判っていたが、一度空腹を自覚していくと…強烈に何かを食べたい
欲求が生まれていった。

「キッチン内の冷蔵庫の中に…何かすぐつまめそうなものがあるかな…?」

 そんな事を考えながら、克哉は…ゆっくりとベッドから起き上がって台所の
方へと向かっていく。
 この二週間、こんなに朝早い時間帯に彼が目覚めたのは初めてだった。
 毎晩のように抱かれていたので…これくらいの時刻はいつも泥のように
眠っていたからだ。
 だが、今朝はたまたま…疲れているから、とあいつが気まぐれを起こしたから
昨晩は抱かれないで済んだと…それで早く起きれただけの話である。

「…一体、どこにいるんだろ…? 『俺』…もう食堂でご飯でも作っているのかな…?」

 そんな事を考えながら克哉は扉の方へ、よちよちした足取りで向かって…部屋の
外へと出ていった。
 真っ直ぐに食堂の方へと向かい…彼の姿を探していくが、どこにも彼の姿は
なかった。
 気になって他の部屋もざっと覗いていくが、その姿はやはり見えないままだ。

(どこに向かったんだろう…?)

 自分達が今、身を寄せている別荘はかなりの大きさを誇っていて…克哉自身も
まだ全ての部屋を確認出来ていなかった。
 身体も随分と動くようになった事だし…そろそろ、彼を探すがてら探索を始めても
良いかもしれない。
 そう考えて、克哉はこの別荘の探検を始めていった。

―そして探し始めてから15分後。
 彼は、地下室で思っても見なかった光景に出くわしたのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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