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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  本日は連載、一回お休みです。(明日中に続きはちゃんと書きます)
 代わりに日頃お世話になっているむいさんの誕生日お祝いSSを
書かせて頂きます。
 どのCPの連載を書いていても、いつも感想をチョコチョコ寄越して下さって
有り難うございました。
 特に2~4月くらいは自信喪失が酷かったので非常に励みになったので
ささやかですが、その時のお礼です。
良ければ受け取ってやって下さい(ペコリ)

 …いや、本当は連載とお祝いSSを両方書ければ良いんだろうけど
ぶっちゃけそこまで現在余裕がありませんので(ル~ルル~)
 メガミドの『花』をテーマにしたちょっとほのぼのチックなお話です。
 最後に…むいさん、お誕生日おめでとう~!
 …一日遅れの掲載になってしまってすみません~(ペコペコ)

『紫陽花』

  六月の週末の夜の事だった。
 御堂孝典は山のように積んであった仕事をようやく片付け終えると…ほう、と
安堵の溜息を漏らしていった。
 休日の前日という事もあって、忙しくても皆…残業のせいで遅くなるのは
嫌みたいで、本日…オフィスに残っている人間はすでに彼一人だけになっていた。

(やっと終わったな…)

 本日は一日中、雨がシトシトと降っていた為にデスクワークを中心に
業務をこなしていたが、最近…上昇企業の一つとして数えられるようになってきた
アクワイヤ・アソシエーションはそれこそやるべきこと、こなしていかなければ
ならない仕事は山積みになっていた。
 
「まだ、雨が降っているな…」

 しみじみと呟きながら、椅子の上で大きく背伸びしていく。
 打ち込み作業等は午前中に片付けたので、午後からは一日…必要な書類に
目を通したり、確認作業をし続けていた。
 おかげで身体のアチコチが硬く、この後に約束さえなければそのまま…
スポーツジムの方にでも赴きたいくらいだった。
 腕時計を見て確していくと、すでに20時を軽く過ぎていた。
 御堂の雇い主兼恋人でもある佐伯克哉が…自分が担当していた仕事を片付けると
さっさとこのオフィスの上にある住居へ戻っていったのが19時になった直後の事だ。
 一時間程前に立ち去っていった恋人の事を思い出すと、ふう…と溜息を突きながら
机から立ち上がっていった。

「さて…そろそろ向かうか。モタモタしていると…佐伯は恐らくスネるだろうしな…」

 軽く微笑みながら、自分の恋人が上の階で待っていてくれている姿を想像していって
知らず御堂は微笑んでしまう。
 …そう、克哉は仕事をしている時は冷徹で自他ともに厳しくて有能な男の癖に
私人として自分と一緒に過ごしている時は、案外単純な事でスネたり…やたらと
御堂と一緒に過ごす時間が他の雑事によって削れてしまうのを嫌がる部分があった。
  
(まったく、あいつにも困ったものだな…)

 と考えつつも、つい笑ってしまう。
 自室で、こちらの事を考えながら克哉がどのように過ごしていたのか…想像を
巡らせると少しだけ楽しかった。

「さて、と…そろそろ行こう」

 そうして御堂は、自分のディスクの上を片付け始めていく。
 その様子はどこか、ウキウキして楽しげだった―

                               *

 エレベーターに乗り込んで、彼の住居があるフロアに降り立っていくと…合鍵を
使って中に入っていった。
 以前はインターフォンを押して克哉本人に開けて貰っていたが…彼がいつかに
「あんたと俺は他人じゃないんだから、自由に入っても構わないんだが?」という
発言を受けてから、自然とこうやって中に入るように代わっていった。
 実際、そうやって入るようになってから…克哉は克哉で、自分が来るまでの
時間をマイペースに過ごしながら待ってくれている事を知ったので、出来るだけ
自分が来る直前まで彼に自由に過ごして貰いたいので…御堂自身もこうやって
出入りする事に今では躊躇いがなかった。

 扉を潜って中に入っていくと…丁度良い室温と湿度に保たれた空気に
フワリ、と包み込まれていく。
 どうやら温度は弄らず、空調で除湿だけしているらしい。
 ジトジトした感じがあまりせず、サラリとした空気に包まれていくと何となく
心地良さでホッとしていった。
 廊下を歩いていくと、丁度バスルームの方から水音が聞こえてくる。

(シャワーを浴びていたのか…)

 それに気づいた時に、やっぱりインターフォンを押さなくて良かったと思えた。
 元々、自分も彼もシャワー党なので入浴時間は大体10~15分で終わってしまう。
 その短い時間を邪魔せずに済んで良かった…としみじみ思いながら御堂は
リビングの方へと向かっていった。
 其処で彼が上がってくるまで待っていよう。そう考えて向かっていくと…。

「はあっ…?」

 少しだけ意外な物を発見して、つい驚きの声が漏れてしまった。
 部屋の真ん中。ソファの前の大理石で作られた膝丈くらいのシンプルなデザインの
机の上に…花瓶が置かれていた。
 其処には目にも鮮やかな紫掛かった藍色の紫陽花の花が生けられていた。
 うっすらと露に濡れたそれは強い存在感を放っていて、思わず見惚れるくらいに
鮮烈な美しさを放っていた。
 別に部屋の真ん中に花があるくらい、普通なら驚くことではないのかも知れないが
佐伯克哉という人間はよく言えば合理的。悪く言えば無駄なものはすっぱりと切り捨てる
ような性格の持ち主だった。

 それはこの部屋の内装にも良く現れていて…すでにここに引っ越してから半年は
経過しているというのに相変わらずこの部屋の中は無駄な物は殆どなかった。
 無機質な内装、整然とした雰囲気を讃えた室内。
 まるでモデルルームのように綺麗に片付かれた室内に、花という暖かなものは
酷くその空間から浮き上がっているように感じられた。

「…佐伯の部屋の中に、花が飾られているなんて珍しいな…」

 オフィスには、部下の中に女性がいるおかげでアチコチに花が飾られているのだが
克哉の部屋に今まで、花の類が生けられていた事などまったくなかった。
 彼自身がそういう事に気を配るような性分でない事は…見ていれば充分過ぎるくらい
判るので本当にこれは意外だった。
 つい珍しくて…ジロジロと紫陽花の方を見てしまう。
 花と克哉、実にミスマッチな組み合わせだ。
 それなのに…知らない内に釘付けになってしまっていた。

(そういえば…最近、こうやって花なんて眺めている余裕なかったな…)

 二人で会社を興してからというもの、軌道に乗ってからは毎日が忙しくて、
同時に充実もしていたから…久しく花を眺めてゆっくりすることなどなかった
ように思う。
 今の会社もMGN時代も、受付や職場内に女性社員達が気を利かせてくれて
いるのか…目の端に花は常に存在していた。
 だが、それをじっくりと見ていた事など殆どなかったことに気づいていく。

(…綺麗な藍色だな…)

 ジイっと眺めていると、ふいに紫陽花がガサゴソ動いている。
 一瞬、ビクっとなってしまったが…いきなり藍色のガクと丸いノコギリのような
ギザギザの葉っぱの隙間から…一匹の小さなカタツムリが姿を現していった。

「カ、カタツムリ…っ?」

 一瞬、何でこんなのが…という思いもあったが、それは本当に小さな個体で…
可愛らしい印象があった。
 紫陽花の上を一生懸命這いずり回っている様はけなげというか、妙に
見ていて和む光景だ。

「妙に風情があるな…」

 これが大きな奴だったら、グロテスクに感じられたかも知れないが…子どもの
カタツムリなら軟体生物特有の触覚や、ヌメヌメした姿もあまり気にならない。
 机に肘をついて…何気なくその光景を眺めていくと、ふいに背後から
抱き締められていった。

「なっ…!」

 突然の事態に、一瞬身構えていくと首筋に柔らかい感触を覚えていった。
 自分にこんな真似をしでかす男はこの世に一人しか存在しない。
 御堂の恋人である、佐伯克哉の仕業であった。

「…孝典、すっかり紫陽花に魅入っていたみたいだな。背後が隙だらけ
だったぞ…?」

 シャワーから上がったばかりのせいか、克哉は上半身にYシャツを羽織った
だけのラフな格好をしていた。
 フワリ、と湯上りの良い香りが漂ってきて妙に意識をしてしまう。
 振り返ると、色素の薄い髪にはまだ雫が滴っていて…普段よりも彼を
艶っぽい印象にしていた。

「だ、だからって人の不意を突かなくっても良いだろうが…! まったく、君と
いう男はどこまで意地が悪いんだ…。驚いただろうが…!」

「そういうな…。ぼんやりと紫陽花と戯れていたあんたが可愛らしくてな。
つい悪戯したくなってしまった…」

 そんな事をサラリと言ってのける恋人を問答無用で睨みつけていく。
 御堂の気丈な態度に、克哉は満足げに微笑んでいきながら…頬にキスを
落としていった。

「ふん…」

 片目を伏せながら、それでも特に抵抗せずにそのキスだけは受けていく。
 そうしている間に優しく髪を梳かれてしまって、少々戸惑っていった。
 …少し癪だが、こうされているのはひどく心地良かったから―

「…何故、紫陽花なんて置いてあったんだ。君が花の類を…部屋の中に
飾っているのなど初めての事だったから少し驚いてしまった…」

「…俺にも良く判らない。ただ…あんたの分の夕食も作ろうとスーパーに
赴いた帰りに、この紫陽花が歩道に投げ捨てられていてな。
 何か小さなカタツムリが必死になってその上を這いずり回っている姿を
見ていたら、何故か放っておけない気分になって持って帰って来てしまった…」

「…克哉。お前もしかして…何か悪いものでも食べたのか? 何と言うか…
普通の人から見たら美談なのだが、君がそれをやると…正直言うと
イメージに合わな過ぎて、どう返答すれば良いのか判らなくなるんだが…」

「…悪かったな」

 明らかに克哉が憮然とした表情を浮かべていくと、少し悪かったかなという
気分になったのか…御堂がためらいがちに瞳を細めてくる。
 …そう、自分でも全然らしくない行動を取ってしまったと思う。
 だが、その光景に遭遇した時…もう一人の自分が「家に連れて帰ってあげようよ…」
とやたらとうるさかったのだ。
 普段は自分の中で眠っていて大人しくしているのだが…何かの拍子に向こうと
意識が繋がる時があるらしく、今日たまたまそれが起こっただけの話だ。

「悪くない…むしろ、逆に君にもそういう人間らしい暖かい心があったんだな、と
少々感心しただけだ…」

 そう言いながら、御堂が悪戯っぽく笑ってみせる。
 普段気難しい表情ばかりしている彼が、こんな顔を見せることなど滅多にない
レアな事であった。
 さっきの紫陽花を眺めていて隙だらけになっているのも…珍しい姿だった。

「ほう? そんなに俺は冷たい心の持ち主であるというのか…?」

「あぁ、かつてはな…。だが今は随分暖かくなったものだな…と思っているぞ?」

 そういって彼は楽しげに笑っていった。
 今日はいつになく、御堂の表情が豊かなように感じられた。
 その変化につい目を奪われていきながら…自分もカーペットの上に膝を突いていって
御堂の唇にそっとキスを落としていく。
 何度かついばんでいくように、唇を重ね続けていくと…首筋に御堂の腕が
絡まって互いに抱き合う体制になっていった。



「んっ…」

 こちらの腕の中で、御堂が甘い声を漏らしながら身を委ねていく。
 相手の無防備な姿に、つい顔が綻んでいくような想いがした。

「…孝典。このまま触れ合うのと…夕食と、どちらが先が良い…?」

 ほんの少しだけ唇を離していきながら、口元に吐息が感じられる距離で
そっと尋ねていく。

「…この体制では、聞くまでもないと思うがな…?」

 強気に微笑みながら、ペロリ…と相手の口元をそっと舐め上げていく。
 独特に甘い感覚に、軽い酩酊感すら覚えていった。

「そうだな…確かに、質問するまでもなかったな…」

 ククっと笑いながらさりげなくソファの上に誘導していって、その腰を
抱いていく。
 克哉の掌が気づけば、こちらの背中を優しく撫ぜ擦っていた。
 その快い感覚に、御堂はうっとりしそうになってしまった。 
 静かにソファの上に横たえられて、克哉に組み敷かれていく。
 
 今夜の彼の顔は、どこか柔らかかった。
 恐らくこちらの顔も、普段よりも綻んでいる事だろう。
 特に抵抗することもなく大人しく身を委ねていくと…そっと静かに
目元にキスを落としていった。

「…何か、今夜の君は凄く優しい…な…」

「そうだな。俺も少しだけ、そう思う…。普段なら愛しいあんたが目の前にいれば
苛めてどこまでも啼かせたいという欲求に駆られるが、今夜は何故か…凄く
優しくしたい気持ちになっている…」

 そんな自分に少し驚きながらも、もう一つ…御堂の唇にキスしていく。
 恋人らしい、甘ったるい戯れの時間だった。
 もしかしたら…それは、小さな花の効能なのかも知れなかった。
 花や自然は、人の心を和ませると良く言われる。
 慌しい日々を送っている中、小さな生き物や自然の美は…人の心を潤して
余裕を齎してくれるものだ。
 
「…珍しいな。そんなに優しい気持ちになっている君など、ついぞ…遭遇した事が
ないから、凄く見てみたいな…」

 促すように、相手の頬を御堂の方からも静かに撫ぜていく。
 重なる部位から相手の温みをしっかりと感じ取って…お互いにクスクス笑っていく。
 空腹感は確かにあったけれど、それよりも遥かに強い気持ちで…相手が欲しくて
堪らなくなっていた。

「あぁ、俺も珍しいと思う。今夜のあんたは…貴重なものが見られると思うぞ…」

「そうか…それは、楽しみだ…」

 そういって相手の重みがしっかりと身体の上に感じながら…深い口付けを
交し合った。
 何となく今夜は、室内の雰囲気もどこか柔らかくて穏やかなものだった。
 その空気に包み込まれていきながら、御堂はそっと克哉の腕に身を
委ねていく。

「克哉…」

 愛しげに、自分をこれから抱いていく恋人の名を囁きながら…しっかりと
その首に抱きついていく。
 視界には、フイに…鮮やかな藍の紫陽花の花が飛び込んできた。

(…こんなに穏やかな君を見る事が出来るなら、花を飾るというのも…
たまには悪くないかもな…)

 確かに苛められるように抱かれている時、自分は確かに深く感じているけれど
今日みたいに忙殺された日は…こうやって優しくされた方が嬉しいのだ。
 そんなのを克哉に求めても無駄だ、と当の昔に諦めていたからこそ…今夜は
凄く嬉しかった。
 だから少しだけ、こちらも素直になっていく。
 普段は男としての矜持が邪魔していて…なかなか口に出来ない言葉を…
そっと唇を食んでいってから、そっと呟いていった。

「…好き、だ…」

 そういいながら、ギュウっと強くしがみついていくと…相手の方からも
強く抱きすくめられていく。

「あぁ…俺、もだ…」

 そう、切り替えされてじんわりと幸福感が広がっていく。
 凄く幸せな気持ちだった。

 そしてその夜…御堂は胸の奥があったかくなるのを感じながら
克哉から与えられる感覚を、全身で享受していったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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