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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ―ちゃぷちゃぷ…

 克哉が身を揺する度に、浴槽の中のお湯が揺れて水音を立てていく。
 髪にはうっすらと雫を立てながら、頬を真っ赤に染めている克哉は扇情的な
表情を浮かべていた。
  行為が終わった後、午後から一緒に出かけたい所があると御堂が言ったので
とりあえず身体を綺麗にしようという流れになったのだが…克哉はずっと
落ち着かない気持ちだった。何故なら…。

「どうした…? この体制で一緒に湯船に浸かるのは抵抗あるか…?」

「あ、当たり前です…。貴方と、こんな風に肌を触れ合わせていたら…オレ…」

「…克哉、そんな事を言って私を煽るな…。あんまり、顔を赤くして恥ずかしがって
いる姿を見せてばかりいると…私はまた、君の前で…狼になってしまうぞ?」

「それは、その…この後に、出かける体力がなくなってしまうから…その、
我慢、して…下さい…」

 そう答えた克哉の声は、消え入りそうなぐらいにか細いものだった。
 付き合い始めて半年、御堂自身に望まれて…それ以前までに比べて、克哉は
自分の意思を彼にキチンと伝えるようには変わっていた。
 だが…湯船の中で、背後から御堂に抱きすくめられているような格好で入浴
している状態では、とても言いたい事など言えそうにない。
 湯の中で身を寄り添わせていると…ツルツルの肌がお互いに吸い付いて来るようで
普段とは違う独特の感触がある。
 それを極力意識しないようにしながら…克哉はそっと、自分の脇から身体の前方へと
回されている相手の手に、己の手をそっと重ねた。

(孝典さんは…意地悪だ。けど…この人が本当に…オレを想ってくれて、その証の
品を贈ってくれたのも…また、事実なんだよな…)

 自分と御堂の指には、確かに対となっているデザインのプラチナリングが
嵌められていた。
 この体制だと、御堂の身体の他に…その指に輝いている指輪もまた
意識してしまう。
 不思議な、感覚だった。
 たった小さな指輪一つ。それが存在しているだけで…今までどこか不安定に感じられた
自分達の関係が、酷く安定したものへ変化したような錯覚を覚えていく。
 それは…克哉の思い込みや幻想に過ぎないかも知れないけれど…御堂が、これを
自分に贈ってくれた。
 その事実が…確かな自信を、彼に齎してくれていたのも…事実だった。

(…凄く、幸せだな…オレ…)

 好きな人に、同じ気持ちを返して貰えて…こうして一緒に、今も傍にいる。
 それはどれだけ…幸せな事なのか、御堂との馴れ初めを思い出す度に嫌でも
実感していく。
 この人との関係は…ある意味、最悪の形で始まっていた。
 脅迫にも似た形で、強引に身体を繋げられて、嬲られて。
 一方的に抱かれて、翻弄されていた。だから克哉は…この人との関係は
セックスとビジネス以外はないと、絶望してずっと打ちひがれていた。
 けど、告白してようやく判った。この人とは…身体だけじゃなかったんだと。
 ちゃんと心も存在していたのだと…それを知った時、本当に嬉しくて仕方なくて。
 本当に幸せで…だから、その想いが実った証を…本当に幸せそうに克哉は
眺めていった。

「孝典さん…好き、です…」

 だから、その言葉は自然に零れ落ちていった。

「…あまり可愛い事を言うな。また…君が欲しくなる…」

「あっ…そん、な…」

 そう言いながら、御堂はギュウっと強く克哉の身体を抱きしめて…
首筋にキスを落としていく。
 どうしよう、それだけで…凄く感じてしまっている自分がいた。
 フルっと身を震わせていくと…ギュッと強く目を伏せながらその感覚に
耐えていった。

「…さっきだって、あんなに激しくされて…どうしようって思ったのに…
これ以上されたら、きっと…出掛ける体力なんて、なくなってしまうから…
困ります。だから…」

「あぁ、判っている。私とて…今日は君と私にとって特別な一日にしたい。
だから…いつものようにセックスだけで終わらせてしまうのは勿体無いと
思っているからな…」

「はい…」

 本当は御堂の肌と触れ合っているせいで、また欲しくなってしまっているのは
事実だけど…それよりも、この指輪のように…ずっと消えないでいるような
思い出も欲しいと思っていた。
 御堂がどんな場所に自分を連れて行ってくれるか、まだ判らない。
 けど…きっとこの人がこういってくれているんだから素敵な場所だと思う。
 嬉しそうに微笑みながら、そっと頷いていくと…御堂はこちらの顎をそっと
捉えて自分の方へと振り向かせていく。

「克哉…」

 そうして、甘く優しい声音で名前を呼ばれながら…静かに唇にキスを落とされた。
 その瞬間、とても幸せな気持ちが…じんわりと、暖かく広がっていった。
 
―触れ合うだけのキスが、こんなにも気持ち良くて…幸福感を感じられるのは
今の克哉にとって、この人だけなのだ…

 克哉は…その歓喜に身を委ねながら、酷く満ち足りた気持ちで…御堂との
バスタイムの時間を楽しんでいったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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