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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※4月4日分に掲載しようとしていた話、出来が納得いかなくて
ボツにしたので掲載が遅れましたすみません。
 克克で歓楽街を舞台にしたお話ですが、良ければ付き合ってやって
下さいませ。
 
 夜街遊戯(克克)                       10 11 12



 ―自宅に戻った頃には克哉は疲れ果てて、着替えもしないまま
勢いよくベッドの上に倒れ込んでいった。

 ようやく自分のフィールドに戻ってきた安堵感が、ドッと広がって
胸の中を満たしていく。 
 プライベートで初めて新宿二丁目に足を踏み入れただけでも相当に
緊張していたのに…怒涛のように色んな出来事が起こったせいで
克哉の頭はグチャグチャになっていた。

「…もう、何にも考えたくない…。あいつ、何を思って…こんな風に
オレを…振り回して、いるんだよ…」

 二回、立て続けに抱かれた身体は鉛のように重かった。
 それに久しぶりの行為のせいで…腰が本当に痛くて、一度こうやって
ベッドの上に倒れ込んでしまえば起き上がることすら億劫になってしまった。
 あんなに激しく抱かれて、グチャグチャにされたのなら…本当ならシャワーを
浴びた方が良いと判っているのに、今はその元気すら残っていなかった。

「疲、れた…。明日も、こっちは仕事があるって…いうのに…本気で
やりたい、放題やってくれちゃって…」

 苦笑しながら、呟いていく。
 もう何もかもがどうでも良くなってしまいかけていた。
 会いたくて、その一心で必死になってあの街まで足を向けたというのに…
あんな風にもう一人の自分に扱われて、克哉の心は少なからず傷ついていた。

(どうして…こんなに、胸が痛いんだろ…オレ…)

 ようやく会えて嬉しいという気持ちよりも、あんな風に扱われて…
こちらが節操無しみたいに言われたことが克哉の心に深く影を
緒としてしまっていた。
 ズクズクズク…と胸が疼いて、本当に切なかった。

「やっとの想いで見つけ出したんだから…少しぐらい…こっちに優しくして
くれたって…良いだろ…バカ…」

 そう拗ねた顔を浮かべながら呟いていくが、しかし…気持ちは晴れない。
 いや、むしろ…折れてしまう寸前のような状態になりかけていた。
 最後に渡されたホテルの名刺。
 其処に行くように指定されたが…行きたくない、という想いがジワリと
胸の中に広がっていく。
 
(また明日も…あんな風に、扱われるのかな…)

 と、考えた瞬間…ハっとなった。自分が身体だけ満たされるのでは
すでに物足りなくなっている事に…。
 好きだ、と自覚してしまった。だからもう少し優しい言葉とか…甘い期待を
自分は持ってしまっていた。
 だから…今までとまったく変わらない態度の眼鏡に、憤りのようなものを
感じてしまっていた。
 否、彼の方が変わった訳ではない。むしろ…変化したのは…。

「…随分と、受け止め方が変わってしまったよな…オレは…。前は突然、
あいつが目の前に現われて…一方的に抱かれるのに凄い抵抗があった癖にさ…」

 そう呟きながら、酷く遠い目を浮かべてベッドの上に何度も寝返りを
打って行った。
  あんな扱いを受けるぐらいなら…行きたくない、という否定的な気持ちが
ジワリと黒い染みのように…心に広がっていくのが判った。
 
「バカ、みたいだ…あいつが、好きとか愛しているとか…そんな甘い言葉を
オレに絶対に言ってくれる訳がないのに…さ…」

 そんな事を無意識のうちに求めてしまっていた自分が酷く滑稽に
思えてしまった。
 けれど…明かりが灯されていない暗い室内で…こうやって一人で
いると…どうしても自分の本心と向き合わざるを得なかった。
 真の闇は…太陽の下では隠されてしまう、隠された部分をゆっくりと
浮かび上がらせてしまう。
 身体の奥に…あいつの残滓と、匂いが濃厚に残っているのに…今夜は
いつもよりも、こうして一人で床に就くのが寂しく感じられてしまった。

「…もう、行きたくない…」

 一粒だけ、涙を瞳に浮かべていきながら…克哉は小さく呟いていく。
 その瞬間、幻聴が聞こえた。

―お前の想いというのは…それしきの程度の代物なのか…?

 挑発するような、もう一人の自分の強気な声が頭の中で響いていく。

―貴方様は、この遊戯を降りられて…本当に後悔なされませんか?

 しかもMr.Rの声まで、ご丁寧に響いていく。
 遊戯、と彼が口にしたから…余計に悔しく感じているのかも知れなかった。
 克哉は真剣に、彼を追い求めたというのに…その行為が、二人にとって
『遊戯』…遊びに過ぎないというのなら、全てが馬鹿らしいという想いが
猛毒のように心の中に広がっていく。
 あの二人の掌に踊らされて、振り回されているだけなら…自分は
滑稽な道化でしかない。
 それぐらいならいっそ…このまま…と思った瞬間、眠りに落ちかける直前…
鮮烈に、誰かの声が聞こえた。

―本気の恋なら、簡単に諦めない方が良いぜ…。目を逸らし続けて…
その相手を失ったら、マジで後悔するから…

 えっ…? と思った。どうしてそんな声が…脳裏に響いたのか訝しがって
いくと…一瞬だけ、さっきまで話していた青年の顔が浮かんでいく。
 青年は、穏やかに微笑んでいく。そして…短く、こう続けていった。

―お前さんが背中を押してくれたおかげで…俺は寸前で、大切な人間の
背中を見送らないで済んだからな…。だから、お前さんも頑張れよ…

 それはもしかしたら、同じ頃に…想い人に本気の気持ちをぶつけて
幸福を得た青年が…克哉に感謝したからこそ、届いた…祈りの気持ち
なのかも知れなかった。
 克哉は呆気に取られて…けれど、少ししてから小さく微笑んでいく。
 暗澹とした気持ちが、その励ましで晴れていくようだった。

―ユキさん、リョウって人と上手くいったのかな…

 笑顔で微笑んでくれている青年の顔を見ていると、自分が誰かの
役に立てたんだなって思って…少しだけ救われたような気持ちになった。
 それが…自己嫌悪とかモヤモヤした気持ちを持て余している状態の
時には…何よりの薬となった。

―ありがとうな

 小さく、ユキの幻影がこちらに告げていく。
 一期一会、本当に数時間しか接していない人だ。
 けれど幻でも何でも…その感謝の一言が、ほんの少しだけ温かいものを
克哉の心に灯してくれていた。
 人が人に救われるキッカケなんて、そんなものかも知れない。
 誰かを本気で案じたり、気遣ったり優しくしたり…そしてそれが少しでも
役に立ったのなら…感謝して貰えたなら、それは弱っている時には
何よりの薬となるのだ。
 幻でも、嬉しかった。そしてあの青年が想い人と上手く行ってくれていれば
良いと…そう考え始めた途端、ちょっとだけ気が楽になった。

「…俺も、貴方と…リョウさんみたいに、あいつと…上手く…行くかな…」

 そう呟いた瞬間、今度は…鮮明に、頭の中に…もう一人の
自分の声が響いていった。

―それなら、俺を本気にさせてみろ…

「えっ…?」

 克哉は驚きの声を上げて、大きく目を見開いていく。
 確かに、自分の頭の中に…あいつの声が響くのを感じていった。

「…『俺』…?」

 克哉はキュッと唇を噛み締めていきながら、自分の内側にいるかも
知れないもう一人の自分に問いかけていく。

―本気に、なってくれるの…?

―お前が、俺をその気にさせたならな…
 
 ただ、それだけ答えて…もう一人の自分の意識が再び遠ざかって
いくのを感じ取っていった。
 本当に短いやりとり。けれどそれだけでも…克哉の心中は随分と
マシになっていた。
 
「…諦めたら、それで…終わりか…」

 もしかしたら、今のユキの感謝の言葉も…もう一人の自分の声も
己が生み出した都合の良い幻に過ぎないかも知れなかった。
 けれど…良く色んな本やドラマの中にあるけれど、物事は諦めてしまったら
そこで終わりだ…という言葉が脳裏を過ぎっていった。

(もう少しだけ…頑張ってみよう…)

 ようやく、あいつを見つけ出してスタート地点に立ったばかりなんだから…
と言い聞かせながら、克哉は瞼を閉じていく。
 そうして深呼吸をしながら…克哉は眠りに落ちていく。

―その幻のおかげか、その夜の夢見は思ったよりも悪くないものだった―

 
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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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