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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 今回はオリキャラのラストエピソードです。
  散々悩みましたけど、これはこの物語に必要不可欠なピースと
判断して掲載に踏み切りました。
 番外にしようか、本筋に組み込むかムッチャ考えましたけどね。
 一話分(11P程度まで書いて)けど納得行かなくて書き直しをしたので
少し掲載遅くなりました。
 良ければ読んでやって下さいませ。書きたいテーマの半分が、この
エピソードの中にあります。次回からはW克哉中心でちゃんとお話が
進みますのでご了承下さい。

 夜街遊戯(克克)                           10 
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 12 13


 それでも読みたくないよ~という方もいるでしょうから、今回は
ワンクッション置いて掲載させて頂きました。
 読んでやっても良いよ~という方のみ、「つづきはこちら」をクリックして
目を通して下さいませ~。

―克哉が疲弊して、自宅に倒れ込むように戻り…就寝に突いたのと
ほぼ同じ頃、ユキとリョウは…馴染みの「HOT SHOT」というこの街の
ゲイが良く利用するホテルの一室で、荒い吐息を吐きながら折り重なる
ようにベッドの上に横たわっていた。
 此処はこの街の同性愛者が、良く利用しているホテルだ。

 様々な趣向を凝らした内装と、様々なプレイをしたいと望む顧客の要望を
叶える此処は…刺激を求める人間たちにとっては、最適の場所だった。
 多種多様のコスプレ衣装が用意されている部屋、巨大なウォーターベッドと
深海を思わせる内装を施された部屋、かなり濃厚なSMプレイを楽しめる部屋…
学校やオフィスを再現した部屋と言った客を飽きさせないような特殊な
シチュエーションでのプレイが楽しめる場所だった。

 しかし今夜は、プレイとか…そういう遊びの要素を一切交えたくなかった
ユキは…いつも使っているスタンダードな、手頃な値段の部屋が満杯に
なっているのを知ると…今まで高くて、一度も使ったことがないスウィートルーム
の部屋を取って、強引に相手を部屋に引き込んでいった。
 そして、有無を言わさず激情を叩きつけるかのように…ユキはリョウを
激しく何度も、抱き続けていった。

―はあ、はあっ…はぁ…はっ…

 自分の腕の下で、上質のシーツの上に身を沈めながら…リョウが荒い吐息を
零し続ける。
 汗まみれでぐっしょりで、身体中には…赤い痕が大量に刻まれている。

「…身体、大丈夫か…?」

 心配そうに、ユキは…相手の頬をそっと撫ぜながら、問いかけていく。

「…いつもなら、大丈夫…って返すけど、今夜は…全然、大丈夫じゃ、ないな…」

 それから暫くして、やっと呼吸の整った相手が言葉を返していく。
 さっきまで散々貫かれて、啼かされ続けた。そのせいで目元には涙が滲んで
しまっていた。

「…ユキの抱き方が、狼っていうか…激しくて容赦ないのはいつもの事だけど…
今夜ばかりは、マジで…腹上死するかと、思った…。お前、オレを殺す気…かよ…」

「…悪い、な。…ちょっと熱を込めてお前を抱きすぎた…」

 そうして、相手を労わるようにそっと腕枕をするような体制を取っていく。
 リョウの身体が冷えないように…上掛けをお互いの身体の上に掛けていくと…
相手がこちらの真意を推し量るように、そっと問いかけて来た。

「…ねえ、先週…オレを好きだっていったの…マジ、だったの…?」
 
「…うん。マジ…先週は、すぐに誤魔化してお前の負担にならないようにしたけど…
俺はもう、お前を他の奴に抱かせたくなんて…ない…。お前が…好きだ…」

 ユキの青い瞳が宝石のように輝きながら、真っ直ぐにリョウの瞳を
覗き込んでいく。

「…何か、やっとさ…好きって言ってくれたね…ユキって。どうでも良いこととか
意地悪なことはいっぱい言う癖に…肝心な処は言葉が足りないよな、お前って…」

 そういって、リョウは…儚く笑っていく。
 お互いに気だるさを覚えていきながら…そっと正面から向かい合う形で
抱き合っていく。まだ触れ合う鼓動は忙しく、荒いままだ。
 ドクドクドクドク…とうるさいぐらいに、相手の音が感じられてしまった。

「…オレさ、先週の時点でユキが…『お前を他の奴に抱かせたくない』って
言った時…どうして良いか、判らなかったんだよね。基本的にオレって面倒な
事が嫌いな性質だし。傷つくのも怖いから…遊びは結構したけど、マジな
恋愛ってした事ないからさ…」

「…知ってる。俺みたく…あんまり色んなものに引きずられたり雁字搦めに
なったりしないで…ドライに、軽く振る舞ってくれるのがお前の良い処だし…」

「へえ、そういう風に見てくれるんだ…サンキュ。それにさ、ユキって今まで
あの店の中で…オレ以外にも仲良くしていたり、楽しそうに話してホテルに
行っている奴が沢山いただろ? それで…何でオレなのかなって思って…」

 そう呟いたリョウの瞳は、どこか切なげだった。
 いつもは軽口ばかり叩いて、可愛くない態度ばかり取る気まぐれな猫を
思わせる青年が、脆い一面を覗かせていく。
 それが愛しくて、保護欲を妙に掻き立てられて…抱きしめる腕に力を
込めていきながら、そっと告げていった。

「…夏ぐらいに、お前が…俺の腕で泣いたの…覚えている? いつ…
フェードアウトされても、この街でおかしくないからって呟いて…お前に
何も言わないで、いなくなったりはしないよ…って約束した日の事…」

「…ん、覚えている。良く考えるとあの日のオレって…みっとも、なかったよな…。
ガラにもなく、怯えてしまってさ…」

 知り合って数ヶ月目。夏なのに少し肌寒い夜に…急に呼び出した日の
事だった。こちらも傷ついていて、我儘だと承知の上で突然呼び出した夜。
 その夜に…寂しそうな顔を、リョウが浮かべてくれたことが嬉しかったのを
良く覚えている。

「…ん、でも…あの日にリョウが…俺の腕の中で、俺がいなくなるのなんて
考えたくない…ってそう言ってくれたのが、凄く嬉しかったんだ。
結局マジな恋愛ってのに疲れて…ボロボロになって、俺はこの街に来たんだけど…
結局、愛のない一夜だけのセックスを繰り返していて、少し空虚になっていた
時期だったから。…必要とされたり、会いたいとお前が思ってくれているんだなって
気づいたら…凄く嬉しくて。だから…俺は気づいたら、お前の事が特別に
なってしまっていたんだ…」
 
 この街に足を向けるようになって半年。
 沢山の人間と言葉を交わして、一夜の温もりを求めて来た。
 けれど傷つけあわない距離にいる人間関係は、どこか希薄で。
 ある日、自分がいなくなっても…気にも留めないだろう。
 表面上は笑いながら他者と応対しながら、漠然とそう感じ続けていた。
 だからこそ…そんな他愛ない事が、本当に嬉しかったのかも知れない。

「そう、何だ…。一緒、だったんだね…」

 少しだけいつもの強気な態度が払拭されて…気弱そうにリョウが
呟いていく。今にも泣きそうなのに、無理して笑っているようなそんな顔だった。

「…オレもあの日から、ユキが特別だった。けれど…それでも、ユキが
他の人と何度も楽しそうに話しているの見ていたから…。だから、期待
するの止めてしまった。とりあえず…こうして、時々会えれば良いやってね…
それ以上は、望まないようにしていたよ…」

「…御免…」

 その顔を見て、胸が引き絞られる想いがした。
 数か月も前から…お互いに特別になっていた。その事実を改めて聞かされて
少し切なかった。
 そのまま、リョウの身体を抱きしめて…髪を優しく梳いていく。

―お前さんが気づかせてくれなかったら…俺はずっと、リョウを傷つけ
続けていたんだな…

 相手の脆さにようやく触れた瞬間、さっき…自分の本心を気づかせてくれた
青年の事をふと、思い出した。
 彼はこの街に来たのが初めてと言っていた。だから染まりきっていないで
純真な想いをこちらにぶつけて来た。

―けど、オレは…嫌、なんです。あいつが目の前にいるのに…他の誰かと
消えるのは、どうしても…見過ごしたくない、んです…

 その言葉を聞いた瞬間、自分も同じ想いをリョウに抱いていた事に嫌でも
気づかされてしまった。
 暗黙のルールから逸脱するのが怖くて、相手に想いを拒絶されることが
怖くて殺し続けていた本心。
 本気の恋が怖くて逃げていたというのもあった。けれど…あんな風に真っ直ぐと
誰かを想う姿が眩しく感じられて。
 だからその提案に乗って、自分はリョウを連れ出した。
 もうあの店に暫く顔を出せなくなってしまった事よりも、今夜…こうして相手と
共に過ごせたことの方が…ユキの中では大きくなっていく。

「…ユキを好きになり過ぎて、なのに…お前が突然、いなくなったらと思うと…
本気で、怖かったよ…」

「…俺も同じ、だよ。もう…誰にも、お前を取られたくないしその背中を見送りたくない…。
だから…俺に気持ちがある間だけで良い。良ければ…本気で付き合って欲しい…」

 先週見たく、冗談っぽい軽い口調ではなく…真摯な態度で想いを
告げていく。

「…うん、オレを離さないで…ユキ…」

「あぁ…お前の気持ちが、俺に向けられている限り…もう絶対に
離さないからな…。覚悟、してくれな…」

「うん…」

 うっすらとこちらの肩に顔を埋めていきながら、リョウは…強くこちらの
首元にしがみついて来た。
 喜びが、満ちていく。…随分と久しく忘れていた歓喜の心が、後から後から
溢れて来る。
 その歓びを思い出した瞬間、もう自分は…他の人間とは遊べなくなるな、と
しみじみと思った。
 けれど…それで本当に欲しい人間を手に入れる事が出来るなら惜しくない、と…
そう感じていきながら…今はただ、その想いを噛み締めていく。

 相手の温もりが愛しかった。
 何十回とすでに抱いていたけれど…今夜ほど、リョウを心から愛おしいと
感じた夜はなかっただろう。
 多分…それが、本気の恋と…戯れの恋との決定的な違いだ。

 どれだけ沢山の人間にモテても、身体を重ねても…たった一人の相手に
惚れられた時の喜びに勝るものは存在しないのだ。
 沢山の人間と、この街で知り合い…お互いに深く干渉し合わない『遊び』の
儚い一夜の恋を繰り返して来た。
 けれどそれは幻想に近く、一時…寂しく傷ついた心を宥めることが出来ても
心を満たすことは出来ないのだ。
 本気で信頼し合い、心を充足させるには…時に傷つくことも覚悟で相手に
踏み込む事も不可欠なのだ。
 そして…そうしたから、今夜…欲しくて堪らない相手を得ることが出来た。
 その喜びがさっきまで張り詰めていた心に安堵を齎していく。

「…何かこうして…ユキに抱き締められていると、安心する…。このまま…
眠っても、良いかな…」

「あぁ…傍にいる。ゆっくりと休むと良い…」

「ん、ありがとう…。これから、こんなオレだけど…宜しくね…」

 そうしてユキの腕の中でモゾモゾと動きながら、眠りやすい体制を
整え始めていった。
 その様子を暫く見守っていきながら…お互いに静かに目を瞑っていく。
 とても満たされた気持ちだった。

(…今夜、お前さんに会えて…本当に、良かった…)

 そうして小さく心の中で…先程会った青年に感謝していく。
 彼が…強く誰かを求めている姿を見て、自分の想いに気づけた。
 いわば…ユキにとって彼は自分の心を映す鏡のような存在だった。
 
―お前さんもどうか、想い人と上手く行ってくれますように…。またどこかで…
顔ぐらい合わせた時に、笑って報告し合えると良いな…

 感謝の気持ちを抱きながら、ゆっくりとまどろみの中に意識が
落ちていこうとしていた。
 この街に最初に来た頃の自分のように…何もない、空虚な状態ならば…
一夜の温もりを求めて、遊びの恋を繰り返すのも良いかも知れない。
 人間は綺麗事だけでは生きていけない。
 時に、そんな慰めを得なければ…辛くて、どうしようもない時期というのは
きっと誰にだってあるのだから。
 だが…すでに心の中に求めている存在がいるのなら、あの街の中にある
誘惑になど眼を逸らさないで…あの純粋な瞳を曇らせないで欲しいと思った。

―本気の恋をするのって辛いけどな…。けど、お前さんに会えたから…
俺はその喜びを思い出したんだ。どうか…お前さんにも、ハッピーエンドの
結末が訪れるように…祈っておくよ

 そう…眠る間際に、彼が強く祈ったことが…迷い掛けていた克哉の胸に
あたたかいものを届けてくれたのかも知れなかった。
 自分の腕の中で、愛しい存在が眠り続ける。
 それを大切そうに抱きしめていきながら…

―出来るなら、リョウ。ずっと…こうして…お前と…


 この想いがいつまで続くのか判らないけれど…一分一秒でも長く続いてくれる
事を願いながら彼は…静かに深い眠りの淵へと落ちていったのだった―

 

 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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