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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※3月23日より再開しました。現在の連載物のメインは
この話になります。
 克克で、歓楽街を舞台にしたお話です。
 良ければ読んでやって下さいませ。

  夜街遊戯(克克)                 5          10 
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―もう一人の自分に昨晩指定された部屋は、白で統一されていた。

 そして克哉は…落ち着かない様子で、先に入室して…ソファの上に
腰を掛けながら待って行った。
 すでに約束の時間は間近に迫っている。
 その間、心臓が口から飛び出してしまいそうなぐらいに緊張していた。

(…あいつが、もうじきやって来る時間だ…)

 部屋に掛けられている白い大きな時計の針はもうじき21時丁度を
指そうとしていた。
 もう一人の自分に今日の21時までには部屋に入って待っていろと指示を
受けたから…散々迷った末に、その言葉に従ったのだ。
 けれど…真っ白い上質なシーツに覆われたキングサイズのベッドが
奥の方に設置されているのを見て…どうしても意識せざる得ない。
 昨晩は夢中で、もう一人の自分の姿を追い求めてこの街に足を踏み入れた。
 だが…今夜は、ホテルの部屋を予約した上での逢瀬だ。

「…くそっ、どうしても…意識をしてしまうな…」

 昨晩の激しいセックスの記憶が、こちらの意識を羞恥で焼いていくようだ。
 待っている時間すら、一種の焦らしプレイに等しかった。

(来るなら…早く、来いよ…)

 遅れてはまずいと思って、克哉はすでに15分程前からこの部屋に
辿りついていた。
 だが…緊張しすぎていてこの部屋の内装を詳しく調べる余裕はなかった。
 克哉はこのホテルが多種多様なプレイに応じられる様々な設備が整っている
特殊な場所だと知らなかった。
 そして…色つきの部屋は、必ず何らかの特殊な要素が存在する。
 当然スタンダードな内装の部屋するが…色つきの部屋は一部屋ずつしか
存在しないので…早めに来るか、予約して確保しておくかしなければ
入れない事も多かった。

 カチカチカチカチ…

 規則正しく秒針が刻まれる音が、静かな室内に響いている。
 防音設備はばっちりらしく…外部からの音は殆ど侵入して来なかった。
 待っている間に、あまりに硬くなりすぎていて喉の渇きを覚えていく。

(冷たいものの一つでも…飲もうかな…)

 21時まで後一分。
 だがドアの方をチラっと見ても…相手が訪れる気配も、それが開かれる
様子もなかった。

「何だよ…人に時間指定をしておいて、自分は遅れて来るんじゃないか…」

 少しだけ唇を尖らせながら…克哉は備え付けの冷蔵庫から一本のスポーツ
ドリンクを取り出していく。
 …不本意だが、これから大汗を掻かされるような行為を十中八九されて
しまうのだから…水分補給は欠かせないだろう。
 そう判断して、その缶のプルトップに指を掛けて開けていくと…徐に
喉に流し込んでいく。
 乾いた喉に、冷たいスポーツドリンクが流し込まれていくのが軽く快感だった。
 一頻り流し終えると…克哉はようやく、周囲を見回す余裕が出て来た。

「あれ…?」

 その時にようやく…彼は、大きな姿映し用の鏡が室内や壁に幾つも設置
されている事に気づいていく。
 大きな全身を映す為のものだ。
 近くの壁と…大きなクローゼットの前に其れは存在していた。
 克哉はつい気になって…すぐ傍にあった壁に嵌め込まれている鏡の前に
立っていく。

「…どうして、こんな処に大きな鏡が…?」

 その事に疑問を覚えていきながら、克哉は目の前に立ってそれを覗き込んでいく。
 そして…鏡を覗いて、ぎょっとなった。

「えっ…?」

 鏡に映っていたのは…自分ではなく、もう一人の自分だった。
 顔の造作は一緒の筈なのに、眼鏡を掛けて…強気に微笑んでいる。
 その底意地の悪そうな表情に…軽く腹を立てていくが、けれど克哉は…
鏡の中の自分に釘付けになった。
 嗚呼、以前にもこんな事があったような気がする。
 朝に目覚めて鏡を覗けば…もう一人の自分の面影が浮かんでいって、それで…。

「…待たせたな」

 ふいに背後から、声が聞こえた。
 気づけば自分の背中に…温かい感触が感じられた。
 扉が開閉した気配はない。物音一つ…立たなかった。

「ど、うして…」

 克哉は完全に、虚を突かれた格好になる。
 もう一人の自分は…扉から現れると信じて疑わなかったから。
 なのに…これでは、まるで…鏡の中から現れて来たかのよう。
 いや…そんな出現方法だって、有り得ない訳ではないのだ。
 何故なら自分たちは…同一人物、なのだから。

「…お前がいる処なら、何処にでも現れられるさ…。俺達はいわば二人で
一つの存在…光と影と同じぐらい、何よりも近くに存在するのだからな…」

「あっ…やめ、ろよ…」

 いつの間にか鏡に落ちつけられる格好になって、耳の奥に熱い吐息を
注ぎ込まれていく。
 その感覚だけで肌が泡立って、ゾクリと何かが走り抜けていった。
 クチュリ…という淫靡な水音が脳裏に響き渡って、早くも犯されてしまった
ような奇妙な錯覚を覚えていく。

「やっ…だっ…。おかしく、なりそう…」

 耳の中に舌を差し入れられて何度も出し入れされれば…セックスの際に
接合部から響くような淫らな音に近いものが頭の中に響いていく。
 まだ背後から抱きすくめられているだけで…具体的なことは何もされて
いないのに…もう、身体が熱くなっていくのを感じてしまった。

「ククッ…反応が早いな。だが…このまま押し倒してしまったら…この部屋を
せっかく指定した意味がない。…どうせなら、此処ならではの趣向を凝らして…
今夜は愉しむ事にしようじゃないか…?」

「な、何をする…つもりなんだよ…あっ…」

 背後から抱きすくめられた格好で胸元を撫ぜ擦られて…生地の上から
胸の尖りを掠められていく。
 たったそれだけでも、電流のような快感が走っていくのが悔しかった。

「…この部屋には百種類以上の衣装が…あのクローゼットに用意されて
いるんだそうだ…。その中から、一つ…選べ…。それから存分にお前を
可愛がってやるよ…」

「えぇっ! そ、そ…それって、もしかして…」

 相手から何をする気が聞いて動転してしまい…とっさに口が回らなくなった。
 だが内容を吟味すればするだけ、たった一つの結論にしか至らなくなる。

(それって、コスプレじゃないのかっ…!?)

「あぁ、そうだ…俗に言うコスチュームプレイ…という奴だな。とりあえず…
お前に好きなものを選ばせてやるから…俺を愉しませられそうなものを必死に
なって選ぶんだな…」

 そう言い捨てて、さりげなくクローゼットの方へと誘導されていく。
 そして…ガラリと大きな音を立ててその扉が開かれていくと…克哉にとっては
眩暈がしてしまいそうなぐらいに多種多様な衣装が、其処にはズラリと
並べられていたのだった―

 


 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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