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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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変わらない筈なのに、何かが歪んでいる世界。
 一人の筈の彼らが、当たり前のように二人で生きている世界。
 片方は必ず、部屋の中にいなければならない。
 一人しか、外に出る事は出来ない。
 そういうルールの存在する世界で眼鏡と克哉は…?
 切ない要素を含んだ話になります。
 それを了承の上でお読みください。 

 還る場所へ   


―今の克哉は、言ってみれば知らない間に強制的に籠の鳥に
させられているようなものだった

 もうどれぐらい前の話だったのか、具体的な日数はすでに
思い出せなくなっている。
 外に一歩も出る事が出来なくて。
 問答無用に、気まぐれにやってくる自分と同じ顔をした男に
無理やり身体を貫かれる日々。
 だから…初めて相手と顔を合わせた時に言っていた発言を
吟味する余裕すら、今までなかった。

(十年前から、って一体どういう意味なんだよ…?)

 克哉には、相手の発言の意味が全く判らない。
 今より十年前と言えば…克哉は高校生ぐらいの頃の
話である。
 そんな昔に、彼と出会った記憶などこちらの方には
一切存在しなかった。
 寝た振りをしてやり過ごそうと思ったがさっきの発言が気になって
つい身体を起こしていってしまう。
 慌てて部屋の外に消えた相手の姿を追い駆けていくと…意を
決して、廊下で克哉は尋ねていった。

「…なあ、さっきの…発言は、どういう意味なんだ…?」

「…やはり、寝た振りをしていたのか。…どうもこうもない、言葉の通り…
俺は十年前から、この部屋とお前の事を知っている。…それにむしろ
知りたいんだが、どうしてお前はあの頃から一切何も変わっていない?
俺の方はこの十年で、年を取ったのに…お前は年を取った形跡すらない。
その理由を、俺は逆にお前に聞きたいんだが…?」

「…ちょっと待てよ。オレは…十年間もこの部屋に住んでいない。
せいぜい、お前と出会った頃…数か月程度だよ。幾らなんでも…
十年も、こんな部屋に閉じ込められてなんか…いない筈だ…」

 けれどその一言を発した瞬間、彼の顔が大きく歪むのを
見て…チクリと胸が大きく痛んでいった。
 相手の言葉には違和感しか覚えない。
 確かに目覚めた時点から、克哉の記憶はあやふやな状態だった。
 この部屋に来る以前の事は、殆ど覚えていないに等しかったからだ。

(…どうして、そんな顔をするんだよ…! 仕方ないだろ、オレの方には
全く覚えなんてないんだから…! 覚えていないものを、正直に覚えて
ないと言って…そんな悲しそうにされなきゃいけないんだよ…!)

 相手の瞳には、明らかに大きな落胆と悲しみの色が
宿っていて…途端に罪悪感が湧き上がっていく。
 それに胸が痛くなって、克哉はつい叫んでしまった。

「仕方ないだろ…! 数カ月前にこの部屋で目覚める以前の事を…
オレは、忘れてしまっていたんだから! 自分が何をやっていたのか…
どんな風に過ごして生きてきたのか、それすらも…覚えていないんだ!
十年も前の事なんて、判る訳がないだろ!」

「…なん、だと…? 何も、覚えていない…?」

 感情的になった克哉の発言に、相手は信じられない、というような
顔を浮かべていた。

「…うん、オレは…何も思い出せないんだ…。どうして、こんな風に
部屋から一歩も出れない状態になったのか。ここに来る事になった
経緯がどんなものだったのかも、全く判らないんだよ…」

「それは、本当…なのか…?」

「うん…」

 克哉が言葉を紡ぐ度に、本当の事を口にする度に…相手の瞳が
悲しそうになっていくのが、切なかった。
 けれど事実を言わないで誤魔化しても何にもならない事を
克哉も本能的に察していく。
 ギュっと唇を噛みしめて胸の痛みに耐えていくと…いきなり相手は
狂ったように笑い始めていった。
 其れは哄笑、とも言える自虐的なものを含んだ…痛々しい笑い方
でもあった。
 自分自身の愚かさを笑っているような、こっちの滑稽さを嘲笑って
いるような…そんな感じの、見ていて気持ちがモヤモヤしてくるような…
嫌な、笑いだった。

「ははははははっ…! そうか、そうだったのか…! この十年など
全く意味などなかったんだな…! お前をどれだけ探しても、会いたいと
思っていた気持ちなど…無駄な事だったんだな…!」

「探して、いた…? オレに、会いたいと思って…いた…?」

 その単語が、克哉の胸に大きな波紋を広げていく事になった。
 相手に、無理やり強姦されているだけだと思っていた。
 こちらの意思など、お構いなしに欲望だけを吐き出していく…そんな
セックスをされているだけだと今まで受け止めていた。
 けれど今の一言で、克哉の心境は大きく変わりつつあった。

(十年も、オレを…探して、いた…?)

 けれど克哉の方にはそんな記憶など一切存在しない。
 それに十年も経過していたら、こちらだって流石に年をとる。
 相手の年を取っていないんだ? という発言も意味不明で…
何がどうなっているのか、克哉はともかく混乱するしかなかった。
 こちらが困惑の表情を浮かべていくと、相手の目に徐々に凶暴な
光が宿っていく。
 それが何か…狂気めいたものを感じていって、克哉は無意識の
内に後ずさって…身を強張らせていく。

「ひっ…!」

「…どうした? 何でそんなに…怖そうな顔をしているんだ…?」

「…だって、お前の目が…怖い、から…?」

「ほう? 俺の目がか…? 当たり前だ…今、俺は怒っているんだからな…?」

「っ…!」

 淡々とした口調の中に、相手の怒りが如実に伝わってくる。
 とっさに克哉は踵を返して逃げようとしたが…強引に相手に腕を
捕まえられて、壁に強引に押し付けられていく。

「いたっ…!」

 そして、首筋に強く噛みつかれて歯型をくっきりと残されて
いってしまう。
 そうして竦んでいる間に…克哉は再び、壁際に追い詰められていく
格好になっていったのだった―

 
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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