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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】              

 佐伯克哉は、MGNの男性用のトイレの手洗い所の処で…
鏡に映る自分を眺めていきながら、切なく瞳を細めていった。
 今…鏡に映る自分は、紛れもなく…忌わしいもう一人の自分のものだった。
 一挙一足、言動…それらの全てを今…彼は生来持っているものではなく、
恐れを抱いているもう一人の自分のものに変えている。
 
―これから、この一世一代の舞台の佳境へと入っていくのだ…

 そう思うと彼は、身震いがした。
 御堂にこれからする事を見破られはしないか…その為には完全に
眼鏡を掛けた自分の方になり切るのが不可欠だった。

(…弱気になるな。今は…自信に充ち溢れて傲慢な方の…俺になり切るんだ)

 そうする事が、彼の望みを叶える為に必要だったから。
 だから自己暗示を掛けていくように…真っ直ぐ、鏡に映る自分の顔を
見つめていく。

「そう…オレは、やり遂げなければいけないんだ…」

 そういって鋭い表情を浮かべながら、昨晩の記憶を思い出していった。

 命の源である…大量の血が自分の身体から零れ落ちていく。
 目の前に血の海が広がっていく。
 その中心にこの身体が横たえられて…彼は虫の息になりながら…
心から、願っていった。
 
―やり直させて下さい

 彼が罪を犯した晩、一人の青年はそう祈った。

―このままじゃあまりに…可哀想過ぎます。救われなさ過ぎます…

 凄惨な現場に、青年の魂の叫びが木霊していく。
 けれど心の中でどれだけ思っても、決してその声が届くことはない。
 涙を流しながら…その手を汚してしまった存在を見つめる。

―こんな、の…理不尽だ…

 あいつに、あんな身勝手なことをされ続けて。
 この人が罪を犯してまで解放されたくなった気持ちが良く判る。
 誰だって、理不尽に自分の気持ちを抑え続けられてしまったら…
自分の意思を殺され続けてしまったら、その束縛から逃れる為には
死ぬもの狂いとなるだろう。
 同じことをされたら、自分だって…同じ罪を犯してしまったかも知れない。
 もう一人の自分が解き放たれた時…彼は、この人を凌辱した罪から逃れたくて
必死に目を逸らした。

―オレはこんな事、したくなかった! 望んでいなかった!

 その罪悪感から逃れたくて、彼は現実から結果的に逃げた。
 自らの殻の中に籠り、いつしか肉体の主導権は…眼鏡を掛けた自分の
ものと変わっていった。
 遠い意識で、何度もこの人が…踏み躙られている過程を知った。
 けれど、そんな事を平然とやってしまうもう一人の自分が怖かった。
 自分の中にこんな酷いことが出来る一面が潜んでいる事を決して認めたくなかった。
 
―けれど…血に汚れてしまっているこの人の姿を見た時、彼は心から悔いた

「ごめんなさい…」

 薄れゆく意識の中で、彼は…短い時間だけ、肉体の主導権を得て…
小さく謝罪の言葉を口にしていった。

―自分の罪から、目を逸らし続けて…ごめんなさい…

 その声は絶え絶えで、本当にか細いものだった。
 口元から血を滴らせながら、佐伯克哉はそれでも謝罪する。
 最後の瞬間はもう間近まで迫って来ていた。

―貴方を、殺人者にしてしまって…ごめん、なさい…

 自分とさえ出会わなければ…輝ける未来が約束されている人だった。
 けれどどれだけの労力を重ねて来た功績だろうと、「殺人」という咎を
犯してしまえば…瞬く間に夢幻のごとく、全ての栄光は消えていく。
 こっちが今さら、謝った処で…この人の罪は消えない。
 どうしたら…この人を救えるんだろう。オレ達と出会った事で変わってしまった
未来を…覆せるんだろう、と心から祈った。

―克哉はポロポロと泣きながら、悲痛な嗚咽を漏らしていく

「ど、うか…この、人を…」

 内側から見てて、十分に…もう一人の自分が犯した罪は知っている。
 この結果は因果応報。
 起こるべくして起こったこと。
 どんな出来事にも原因となる因子があり、それが積み重なることによって
大きな事件は起こっていく。
 人にはそれぞれ…別の意思があり、別の考えを持っている。
 誰かにその誇りを、矜持を…信念を踏み躙られたのなら、怒る権利はあるのだ。
 この人は…犯された挙句に、それを盾に脅迫されて…強引な肉体関係を
強いられて来た。
 だから…この人は、悪くない。確かに自分だって腹を立てていた。
 最初の頃は酷い対応をされて傷ついたし…何て冷たい人だって思ったけれど…。

―けど、それで人生が終わってしまうのは…きっと行き過ぎだ…

 どうして今、自分が表に出ているのかは判らない…
 けれど刺された瞬間から…例の眼鏡を掛けているにも関わらず…久しぶりに
彼は解放された。
 命の火が、もう消えようとしている。
 死にたくなかった…いや、もうせめて助からないのなら…この身体が動くならば
どうにかして…この人の身体に残る様々な痕跡を拭いとりたかった。

―助けて、下さい…

 彼はそれを、自分に対してではなく…倒れている青年に向かって告げた

―どうか、この人を…助けて下さい…

 自分を刺した人間に向かって、彼は心からそう祈っていく。
 それはあまりに切なく、悲痛な願い。
 散々逃げ続けて、もう一人の自分の所業から目を逸らしていた青年は
人生の最後にようやく…その罪を見据えていった。

―どうか、オレに贖う機会を与えて下さい…

 こんな自分を殺して、全てを失ってしまわないように…どうか、と願った
瞬間…視界に、黄金の豊かな髪が視界に入っていった。

―大丈夫、ですか…?

 歌うように男が…声を掛けてくる。
 そして次の瞬間…焼けつくようだった腹部の痛みが…いきなり
スっと軽くなっていった。

―そして彼は、謎起き男性に…寸前で救われた。
 その後に、彼とかわした契約とその詳細、そしてこちらが支払わなければ
ならない代価を思い出した時…ふと、苦しげに眉をひそめていった。

「…この先の事は、今は考えないでおこう…。今はともかく…演じるんだ…」

 そうして、眼鏡を押し上げる仕草をして…深呼吸をしていく。
 鏡の前には、自分の記憶にある通りの…自信に充ち溢れた傲慢な笑顔を
湛えた男が立っていた。

「…さて、行くか…」

 そして、掠れた低い声音で呟きながら…彼は踵を返していく。
 そうしてゆっくりした足取りで、御堂の私室へと歩いて向かっていったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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