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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】                

―ここならば、貴方の望む結果が得られるでしょう。

 先程、自分がどうすれば良い…と問いかけた時、男は悠然と
微笑みながら…そう告げていった。
 あの場所では、一応細工をしたが…多くの人間が関わってしまって
いる以上…難しいと、男は告げた。

―だから男は言った。自分が予想もしていなかったとんでもない発想を。

 その事に意を唱えようと思ったが…今の自分の身体もまた、その罪を心から悔いた
「俺」によって与えられているものだった。

―さあ、貴方はどうしますか? 追いかけますか…?

―当然です

 そして、悩むことなく…克哉は受け入れざるを得なかった。
 誰も救われない未来を二つ作るよりも…一つ、救われた未来を作った方が
良いとそう思ったから…。

―そのやりとりを朧げに思い出していきながら克哉は緊張した面持ちで、御堂の私室へと
足を踏み入れていった。

「失礼します…御堂部長」

 恭しく頭を下げていきながら、自分のディスクの上で両腕を組みながら
こちらを待ち構えている御堂の元へと向かっていく。
 そして…御堂の目の前に、報告書が収められているクリアファイルを
そっと目の前に差し出していった。

「…こちらが今月の結果報告書です。まずは目を通して頂けますか…?」

「うむ…」

 そうして暫く、その書類を真剣そうな顔を浮かべていきながら…御堂は
一つ一つ、字面を読み進めていった。
 二枚目の書類を見た途端、御堂の顔が一瞬…驚きの顔を浮かべていく。

「…驚いたな。まさかキクチの面々が…この短期間にここまでの結果を
出すとは…失礼だが、予想外だった…」

「…えぇ、そちらの営業活動の方は順調です。すでに最初の目標値は達成して…
現在の時点では、『貴方』が改めて引き上げようとした方の数字に
近い売り上げとなっているのは…其処に書かれている通りですよ…」

 きっと、もう一人の自分ならここで皮肉めいた事を言うだろうから…
わざと「貴方」という部分を強調して口にしていく。
 その瞬間、御堂の眉がピクリと揺れていく。
 それから…御堂はムスっと口を閉じて不機嫌そうになり…結果的に
沈黙が続いていく。
 いつもの克哉だったらそれだけの反応で怯むが…今はもう一人の自分に
なりきっているのだ。これぐらいで引く訳にはいかなかった。

(決して怪しまれてはいけない…どこで、綻びが出るか…判らないのだから…)

 全てのカラクリは、御堂に決して知られる訳に行かない。
 あの男が用意した舞台は…裏側の部分も、複雑に様々な秘密の糸が
絡まり合っている。
 決して、この人に知られる訳にはいかない秘密が…どこから破綻して
漏れていくのか判らないから。
 この人は何も知らないで良い。自分だけが…この重すぎる秘密を抱えて
いけば良いのだ。
 顔を見れば見るだけ、胸が痛む。結果的に…自分達は…。

―二人の御堂を、不幸にしたのだから…

 その事実がふと蘇った瞬間…演技の途中であるのに、克哉はどこか
辛そうな顔を浮かべてしまう。
 …沈黙しているせいで、逆に自分の心がうるさく騒ぎ始めていく。
 何かこの本筋の話に近い話題を言わなければ、と思うのに…思考を巡らせて
いくと余計なことばかりが頭の中でグルグル回り始めていった。

(…さっき気合を入れて、振り払うようにしたつもりなのに…やっぱり、
この人を見ると…胸の、痛みが…)

 チクチクチク…と胸が痛んで、堪らない。
 克哉は、裏側を…その仕組みの全てを知っている。
 それが…今、御堂と対峙している今となっては逆に恨めしくて仕方なかった。

―知らなければ、こんなに胸の痛みを覚えることなどなかったから…。

(言わなきゃ…ここで会話を途切れさせたら、怪しまれる…!)

「…おや、御堂部長。どうして…さっきから黙ったままなんですか? まだ
報告は始まったばかりですよ? どうして…貴方は不機嫌そうにして
いらっしゃるんですか…?」

「…君がわざわざ、こちらを不快にさせるような言い回しをするからだろう…」

「…さっきの俺の発言のどこに、貴方を不快にさせるような言葉があったのか
判り兼ねますね…。事実を言っただけでしょう…?」

 そうして、ククっと喉の奥で笑って…意地の悪い表情を浮かべて見せる。
 元々御堂は、自分たちが新商品であるプロトファイバーの営業を担当することを
快く思っていなかった。
 そんな彼にとっては、この数字を叩き出して…結果を出している時点で相当に
皮肉となっているのだ。
 それを承知の上で、決して疑われないように演技を続けていく。

「…君の戯言に付き合うつもりはない。自覚がないとは…本当に失礼な男だな。
口の聞き方というのを…一から、誰かに教わった方が良い。が…実際にこの
短期間で、これだけの数字を達成するとはな…。悔しいが、君たちの実力を
こちらが侮って見ていた…その事実だけは、認めよう…」

「えっ…?」

 なのに、こちらが皮肉めいた言い回しと態度を取っているにも関わらず…
御堂の口から、遠まわしにでもこちらを認める発言が零れたことに…克哉は
驚きを隠せなかった。
 とっさに信じられなくて、相手の机の上に手をついて…その顔を間近に
見つめてしまう。

「…何をそんなに驚いた顔を浮かべている…?」

「いや、だって…今…そちらが…」

 一瞬、演じることを疎かにして…もう一人の自分の声音ではなく、通常の自分に
近い声を出していってしまう。一瞬…御堂の眉が訝しげにピクンと動いたのを見て
克哉は顔色が変わったが、運よく言及されずに済んだ。

「…確かに君のように自意識過剰で、傲慢な男を認める言葉を褒めるのは癪だ。
だが私は…それだけの事をやっている人間を、自分の好き嫌いで何をやっても
認めないなどと考える程…幼稚でも、大人げない訳ではない。
 実際に…今までのドリンク業界内で、この短い期間でこれほどの数字を
叩き出した商品の数はそんなにないだろう…」

「はっ…はい! ありがとうございます!」

 予想外の言葉を言われてしまった事が嬉しくて、つい…演じることを一瞬忘れて、
素直な感謝の言葉が漏れてしまう。
 その瞬間…ハっとなって口元を押さえていったが…すでに遅かった。
 御堂は非常に難しい顔を浮かべていきながら…何か考え込んでいる。

(はっ…しまった! つい嬉しくて…素直にお礼を言って…)

 その瞬間、克哉の顔は一瞬で蒼白になった。
 いけない…もう一人の自分だったら、こんな事で感情を乱さない。
 なのに焦れば焦るだけ、克哉の意思に反して…モロに顔に出てしまっている。

「…何か、本日の君は非常に変に思えるんだが…気のせいか? もしかして昼間に
何か悪いものでも食べたのか…?」

「いやっ! 何でもないですよ…御堂さん。ほら、俺はこの通り…元気ですから!」

 そういって、両肩を大きく上げたり、力コブを作るように折り曲げたりして
元気だという事実をアピールしている。
 だが…御堂には疑わしげにジーと見つめられている有様だった。

(あぁ…御堂さんの視線が痛い…)

 食い入るように、御堂がこちらを見つめてくると…こっちの正体まで見透かされて
しまうんじゃないかとつい疑いたくなった。
 いや、御堂は自分たちが二つの心を持っている事など知りはしない。
 けれど…何か、普段の自分と違うという事実ぐらいはバレてしまうんじゃいかと
不安を覚えていく。
 心拍数が上昇して、ドクドクドク…と大きく音を立てているのがうるさいぐらいだった。

「…それなら良いのだが。それで…君の報告したい事は、以上だろうか…?」

「いえ…もう少し続きがあります。次にこちらのファイルを…」

 と言って、克哉がカバンからもう一つのクリアファイルを取り出そうとした瞬間…
大きく地面が揺れ始めた。

「地震かっ!」

「うわっ!」

 その瞬間、とっさに克哉は机の方に両手を突いていった。
 それと同時に、更に揺れが激しくなり…まともに立っていられなくなる。

「佐伯君っ!」

 とっさに、御堂が目の前の克哉の身体を反射的に受け止めて支えて
いくような格好になる。
 だがそんな行動を嘲笑うかのように、瞬間的に激震が襲い…克哉は
思いっきりバランスを崩してしまう。
 大きめに作られたディスクすら、180センチもある男が全体重を持って
圧し掛かればまともに立っていることすら出来ない状況だった。

「わわわわわっ!」

「うわぁ!!」

 二人の叫びが同時に響くと同時に、上質のカーペットの上に…グラリと
御堂のディスクが倒れ込み…。

―二人は眼を見開いて、驚く羽目になった

 現実が咄嗟に理解出来ない。
 何が起こったのか、信じたくなかった。
 しかし…今の地震のせいでバランスを崩して、御堂の方に倒れ込んで
しまったせいで…そんな克哉を支えたせいで…二人は机が倒れると同時に
大きく窓際の方に投げ出される格好になっていき…。

―歯が思いっきりぶつかりあいながら、キスしてしまっていた

「…………?」

「…………っ!!」

 御堂は、何が起こったのか把握したくなくて茫然となっている。
 代わりに克哉の方は、少し経って…現状を把握した途端に、慌てて御堂の
顔から、自分の顔を離していった。

(な、何で…こんな、事が起こっているんだよ~!!)

 よりにもよって、自分と御堂がキスするなんて…予想してもいなかっただけに
克哉の頭は正にパニック。支離滅裂状態になっていた。

「ご、ごめんなさい! 御堂さん! こんな形でそちらの唇を奪ってしまって…!」

 とっさに、克哉は必死になって謝った。
 だが御堂は…まだ現実を把握していないようだった。
 起こった事実を認めたくないという気持ちが強く働いているからだろう。
 いつもの…どんな時でも冷静さを崩さない彼にしては、珍しい反応だった。

「…今、何が起こったんだ…?」

「い、今のは事故です! 大地震のせいであぁなっただけですから気にしないで
下さい! 後、今の地震で会社がどうなっているか心配なので一旦失礼します!
じゃあ…!」

「ま、待ちたまえ!! まだ報告が終わっていないだろう!!」

 あからさまに慌てて、背を向ける克哉に向かって…御堂が叫んでいくが
一旦それを振り切るように脱兎の勢いで逃げていく。

(早く目の前から逃げないと…絶対に不審がられる!)

 今のキスで動揺してしまって、今の自分は…演技を全う出来ない。
 長く一緒にいればいるだけ、ボロを出してしまうのは明白だった。
 けれど…もうダメだ。一旦逃げて体制を整える以外に手がなかった。
 今は頭がグルグルして、まともに御堂の顔を見れない心境だった。
 一昔前のラブコメでもないのに、こんな展開になるなどまったく思っても
いなかっただけに克哉の精神的なダメージは相当なものになっていた。

「す、すみません! 今のオレが貴方の目の前にいても…醜態を晒すだけなので!
 それでは失礼します!!」

 そして振り向く様子を一切見せずに、バタンと大きくドアを閉めて克哉の姿は
完全に消えていく。

「…一体、今のは何だったんだ…?」

 そして残された御堂は茫然となるしか、なかった。
 今のは本当に…佐伯克哉だったのだろうか?
 自分の記憶にある、眼鏡を掛けた佐伯克哉というのは…憎たらしいぐらいに
自信に充ち溢れて、ちょっとのことでは動じることなどなかった筈だ。
 なのに…今の別人のような態度と反応は、一体何だというのだろうか…?

「本当にあれは…佐伯克哉、だったのか…?」

 御堂は目覚めてから、疑問符が浮かぶようなことばかりが続いていて…
本当に混乱していた。
 一体、自分の周りで何が起こっているのかまったく判らない。
 さらに謎が増えてしまって…御堂はその場に膝をついてがっくりと
項垂れてしまった。

「…これが悪い夢なら、早く醒めてくれ…」

 今朝見ていた夢が現実だったら、それはそれで悪夢だが…何だか今の佐伯克哉の
反応を見ていると、本当にパラレルワールドだが、別の世界に自分一人だけが
放り込まれたような…そんな気分にさえなってくる。

(漫画や映画の世界であるまいし…現実にそんな事はないだろうが…)

 そう思いながら、軽く部屋の中を見回していく。
 …部屋の中は酷い有様だった。
 机は派手に倒れて、その上に置かれていた書類やファイルケース、電話や筆記用具の
類が散乱してとんでもないことになっている。
 片付けて元通りにするのは、結構時間が掛かりそうな感じだった。

(とりあえず藤田でも呼んで…机を起こすのを手伝って貰おう。全てはそれからだ…)

 そうして、御堂は身体を起こして…社内の状況が今の地震でどうなったのかを
内線を通して確認していき、とりあえず各所の復旧作業と…その指示に暫く時間を
取られることになってしまったのだった―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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