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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】                    10


―佐伯克哉は、夢を見ていた

 心が砕ける瞬間に見た…信じたくない光景が、こうして死に限りなく
近い眠りに落ちている間、何度も何度も蘇っていく

(もう…止めて、くれ…)

 脳裏に、目を焼くぐらいに鮮烈な…巨大な黄色の二つの光が襲いかかる。
 その瞬間、何か重いものが跳ねられ…自分の目の前で宙に舞っていき―

―そして何もかもが、次の瞬間に終わっていた

 唐突に訪れた、ピリオド。
 あまりの事に茫然として、言葉も失っていた。
 切りつけられた腕が、焼けるように熱くて。
 自分の生命の証が…雨が降り注ぐ中、ずっと止まることなく…地面に
滴り落ちていった。

「嘘、だ…」

 認めたくなかった。これが終わりだなんて…。
 けれど…たった今、トラックに跳ね飛ばされてしまった存在からは
生きている兆候が感じられなかった。
 原型は留めている。その存在を見間違うことはない。
 けれど直感で自分は判ってしまったのだ。

―もう彼の生命は、永遠に失われてしまったことを…

 助かる見込みがほんの少しでもあるのならば…大急ぎで救急車でも何でも
手配して、死力を尽くしたことだろう。
 けれど些細な運命の悪戯は…たった一瞬で、目の前の人の命を奪って…
何の救いも残してくれなかった。
 この人が死んでしまった。
 そう自覚した瞬間に…胸の中に大きな空洞が空いてしまった。
 こうなって初めて、自分の心の中に…この人が大きく存在していた事を
強く自覚した。

―本当に…もう、手遅れなのか…?

 彼は覚束ない足取りで…道路に投げ出されたその身体の方へと向かっていく。
 遠く離れた位置にあった頃は、本当にほんの少しだが…期待があった。
 けれど間近に経って、それが愚かな希望だった事に気づかされる。
 其処には悲しいぐらいの現実があった。
 まるでシュレディンガーの猫だ。
 実際に死んでいるかを確認するまでは、生きているという可能性が残されていた。
 だが確認した以上、認めざるを得なかった。

「本当に…死んで、しまったんだな…あんた、は…」

 力なく、男は呟く。
 地面に血の海が広がっていく。
 外傷はチラっと見る限りでは其処まで派手ではなかった。
 けれど…これだけの血が流れる中で、その中心に倒れている存在が…
何の反応もなく、ただ倒れている。
 その事実が…死が一瞬で、彼の元に訪れてしまったことを示していた。
 男はそれを目の当たりにした時、心の中がグチャグチャになった。
 目から涙が溢れて来る。
 拭っても拭っても、溢れ続ける想い。
 何で…自分はこんなに、泣き続けているのか…最初は判らなかった。

 そして…彼から少し離れた位置に立って、壊れたように涙を流し続けて
いたら…気づいたら、彼の周りは多くの野次馬が集まっていた。

―見るな

 と憤りを感じた。
 けれどもう、ショックの余りに…まともに声も出なかった。
 身体も満足に動かせなかった。
 強烈な体験をすると、身体と頭が停止することがあるというのは事実だと…
嫌でもその瞬間、思い知った。
 その癖、涙線だけは活発になって…壊れたように雫を零し続けていた。
 何も出来ない。何もする気が起こらない。

―これが、自分がした事の結果だと打ちのめされていたからだ

 欲望の赴くままに、彼に色んな事をした。
 愉快だった、優越感に浸り続けていた。
 だから決して彼がどれだけ止めてくれと懇願しても聞き遂げることなく…
ずっと、優位に立って彼を嬲り続けた。
 その手を決して、緩めることなどなかった。
 だから恨みを買い…今夜、彼に刺されそうになった。
 けれど幸い…腕は深く裂かれてしまったが、その状態で必死になって
公園から外に向かい歩道を渡ったら…追いかけて来た彼が、跳ねられてしまった。
 頭に血が上っていたから、向こうにはきっと…自分と違って、周囲を見渡す
余裕などなかったのだろう。
 だから…このような事になってしまった。

―俺は、馬鹿だな…。あんたを失って、どうして…こんな真似をし続けていたのか…
自分の本心を、知ったよ…

 泣いている内に、それでやっと…彼は自分の本心に気づいてしまった。
 これから自分は、この人をどうにか自分の思い通りにしようと…監禁することを
考えていた。
 何もかもを奪って、自分の手を取るしかなくなれば…きっと、この強情な人も
屈伏するだろうと。
 其処までして…自分は彼を得ようとした。
 強くこの存在に執着している…異常なまでのその想いの根っこにある想いが
何なのか…こうなって、初めて彼は知った。

―俺は、あんたを…好きだったんだ…! だから…手に入れた、かったんだな…

 失って、初めて見えた。
 自分はこの人に憧れていたのだと、強く惹かれていたのだという事実に。
 けれど今さら見えても…もう、その存在は手の届かない遠くへと向かってしまった。
 死んだ命は、生き返らない。
 その直後であるのなら蘇生法を使えば…運が良ければ引き寄せられるが、
もうすでに事故が起こって十分以上が経過して…あの出血で、誰も手を施さなかったら
決して助かることはない。

―そんな状況では、決して奇跡など起こる訳がなかった

 人だかりがいつの間にか築かれて、覆い隠されてしまっている。
 お願いだから、プライドが高く美しかったその人の哀れな亡骸を…好奇心で
軽い気持ちで眺めたりしないでくれ。
 そう憤り、全てを追い払ってしまいたかった。
 なのに、もう…身体が、動かなかった。
 血が流れつづけて痛みは感じるのに、身体の全てがマヒしてしまっている。
 そう…心が、死んでしまったのだ。砕け散ってしまったのだ。

―本当は一番、愛していた存在を一瞬で失ってしまったショックで…今の克哉は
神経という神経が、マヒしてしまっていた

 それでも悔しくて、その心に充ちている悲しみを、嘆きをどうにかして
吐き出したくて…彼は一度だけ、慟哭と呼べるぐらいに激しい叫び声を挙げていった
 雨の降り注ぐ中、哀れなぐらいの姿を曝していく。
 けれどもう…誰に見られても、構わなかった。
 この時の彼は…それぐらい、自暴自棄になっていた―

 思い出したくない夢。
 けれどそれが幾度も幾度も、こうして眠っている最中でも訪れる。
 目を逸らしたくても、逃げたくても…心に刻まれてしまった罪は、後悔からは
人はなかなか逃げられない。

―もう、好きにしろ…

 あの人が生きていない世界で、自分は生きていたくない。
 光を失ってしまった後で、それでも…生の営みを続けることは最早苦痛だ。
 心がそれでも生きている限り、こんな夢が押し寄せてくるぐらいなら…いっそ
息の根が止まって、何も感じられなくなる方がずっとマシだと思った。

―本当に愛する存在がいなくなった世界に、何の未練も感じられなかったから

 だから彼は…死に近い眠りから、目覚められない。
 それは弱さかも知れない。
 けれど…今の彼には、この世に執着する理由を見失っていた
 深い闇の中でも、光を見出すには…希望が心の中になくてはならない。
 けれどその一番の理由を失った直後に、どうやって次を見つけ出せば良いのだろうか。

―今は何も考えたくない…

 それは逃避かも知れなかった。
 だが、時に…人にとって、そういう過程が必要になることもある。
 あまりに強いショックを受けた場合…一時的にその現実から遠ざかって距離を
置くことも有効だからだ

 ―心も体も、急速に冷えていくのが判る

 けれど、その度に…誰かの手が、強く握り締めてくるので…その奥に
あるモノまで、決して辿りつけない。

―死ぬなよ…! まだ、全ては終わっていないから…!

 そう訴える声を、うっとおしい想いで聞いていく。
 そうして…夢を見るような浅い眠りから、何もかもが閉ざされてしまっている
深い眠りへと再び彼は落ちていった―

 死に近い眠りは、時に人に救いを齎す。
 それは…今の彼には、必要なものであった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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