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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。
 当分、鬼畜眼鏡側はこの連載に専念しますので宜しくです。

 桜の回想  
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―母校の小学校の裏で、Mr.Rに強制的に例の銀縁眼鏡を掛けさせられて、
佐伯克哉は意識を奪われていった。
 そして暫くしてその場に立っていたのは…いつもの穏やかな雰囲気を
纏っている方の彼ではなく…鋭い眼差しを浮かべている、ここ二年ぐらいは
深い意識の底に潜んでいた方の人格が表に出てしまっていた。
 一年ぶりに見る、懐かしい姿にMr.Rは心底満足そうな笑みを浮かべて
彼に語りかけていった。
 
―お久しぶりですね、我が主…
 
 心から陶然となりながら、Mr.Rは眼鏡を掛けて表に出た
意識の方へ声を掛けていった。
 男のいう通り、一年ぶりぐらいに表に出たせいで…最初、これが
自分の身体という気がしなかった。
 
「お前、か…確かに、久しぶりだな…」
 
―私は貴方がこのまま完全に消えてしまうのではないかと…
気が気じゃありませんでした…
 
「…ふん、お前はまだ諦めていなかったのか? 俺はお前の望むような者に
なるつもりなど毛頭ない。いい加減、諦めろ…」
 
―いいえ、貴方という存在の意識がこうしてある限り…貴方が私の望む『王』と
して覚醒する可能性は決してゼロではありません。貴方の意識が…あちらの
克哉さんに完全に呑まれて消えてしまうまでは、私は簡単に諦めるつもりは
ありませんよ…
 
「チッ…好きにしろ…」
 
 そうして、眼鏡を掛けた佐伯克哉は15年ぶりに母校の土を踏んでいく。
 脳裏をよぎるのは、今となっては苦い思い出ばかりだ。
 小学校の高学年を迎えるまでは、自分の周りにはいつだって
多くの人間がいた。
 それが掌を返したように、孤立をするようになったのは小学校5年になった
辺りからだろうか。
 
(陰湿で、卑怯な奴らだったな…あいつら、全員…)
 
 この場にいるだけで溢れてくる、今の彼にとっては屈辱以外の
何物でもない過去。
 今の自分なら、当時与えられた痛みを…苦しみを、決して警察に
捕まるようなヘマはしないで相手に返すことが出来る。
 
(あの当時、この学校に俺と一緒に通っていたあのくだらない奴らは…
今でも大半は、この周辺に住んでいるのか…?)
 
 もう一人の自分のように、彼にはこの地に郷愁の念などまったく感じられない。 
 生きている限り、決して立ち寄りたくなかった忌まわしい場所だった。
 
「…まったく、あのバカが。どうして勝手にこんな場所に一人でやって
来ているんだ…」
 
 苦々しくそう吐き捨てていくと、彼は踏を返してその場を立ち去ろうとした。
 そんな眼鏡の背中に向かって、男が語り掛けてくる。
 
―おやおや、どこに行かれるのですか…? せっかくこうして貴方と私が
初めて出会った場所に…一緒にいるというのに…
 
「…そんなのは俺の勝手だろう。くだらないものを処分してくるだけだ…」
 
―くだらないもの…? あぁ、もう一人の貴方が見ようとしていた貴方の
昔のアルバムですか…?
 
「あぁ、コイツになってからの物までは処分する気はないが…俺が生きていた頃の
はもういらない。あの男に纏わる全てのものは…もう、俺は必要としない…」
 
―本当にそれで後悔しないのですか? その行為は…貴方の生きていた証を
消し去るのと同じ事ですよ…?
 
「…コイツに、あの屈辱的な体験を知られるぐらいなら…そんなものは、
俺はいらない…」
 
 静かに、だがはっきりとした意志を込めて眼鏡は言い切っていった。
 誰の理解も、情も必要としていない…そういったものを全てを
拒絶している態度だった。
 
―嗚呼、貴方は本当にどこまでも孤高の存在ですね。誰からも理解されず、
それを貴方自身も必要としていない。残念ですね…そういった点は確実に、
『王』となる資質を満たしているというのに…
 
「ふん、どれだけお前が望もうと…お前の手に俺が堕ちることはない。
残念だったな…」
 
―えぇ、貴方のような方に無理強いは逆効果ですから。なら私は気持ちが
変わられるまで気長に待ちますよ。私にとってはそれこそ…時間など
無限にあるに等しいですから…
 
「……勝手にしろ」
 
 そうして眼鏡を掛けた克哉は、黒衣の男から背を向けてその場を立ち去っていく。
 
―まずは、実家に戻ってアルバムを燃やそう…
 
 そうして、もう一人の克哉が彼を知ろうとしている事に繋がる物は
全て処分をしておこう。
 人間の記憶は一日に起こった事を意識している範囲では5~10%程度しか
残さないで大半のものは整理される。
 表層意識に残る記憶と、残らない記憶の判別方法の一つに
『今、自分にとって必要な情報かどうか否か』で無意識の内に選別している。
 大半の記憶はそうやって静かに沈んで、ひっそりと奥の方にしまわれていくが…
必要になった時には、その糸口を頼りに引き出される仕組みになっている。
 彼ら二人は、それぞれの領分で…自分が体験した事を記憶しているが、
同じ肉体を共有しているせいで…眼鏡がどれだけ拒んでも、その記憶を
思い出すのに必要なキッカケに触れれば…彼の方にも一部、記憶が流れてしまうのだ。
 眼鏡の方が内側で同じものを見れば、記憶の連鎖反応は発生する。
 その際に…実に不本意だが、同じものをもう一人の自分も見てしまうのだ。
 だから、それを拒否するにはすでに方法は一つしか残されていなかった。
 
―忌まわしい過去に繋がる全ての物を、自分が表に出ている内に消去してしまおう…
 
 消し去りたい過去。
 誰にも掻き回されたくも、触れられたくない記憶。
 それを自分に許可なく知ろうとする者がいるとしたら…例え『オレ』で
あっても容赦する気はなかった。
 自分の汚点を暴こうとする行為は決して許さない。
 それぐらいなら、そんなものは全て無くしてしまった方がよほどマシだった。
 
(俺の弱みを…暴かれたくないものを哀れみや同情で知ろうとするのは…
屈辱だ。それくらいなら、全てを消す…)
 
 幼かった頃、あの男…澤村紀次に繋がる全てを今度こそ変な未練など
一切残さずに消し去ろう。
 そう強い決意を込めて男は、忌々しい思い出ばかりが道溢れるこの地を
後にしようとしていった。
 彼の怒りに満ちた背中を見送っていきながら、黒衣の男は
満足そうに微笑んでいく。
 
―そう、それで宜しいのですよ…貴方こそ孤高である事が相応しい…。
貴方にとって思い出したくもない過去を暴こうとするものに正当な怒りを。
そうやって純粋に憤る貴方は本当に…美しいですよ、我が君を…
 
 だが、陶然と微笑む男に向かって…眼鏡は決して振り返らない。
 そのまま全てを振り切るように真っ直ぐに前を見据えて…彼は
その場を立ち去っていく。
 その背中からは誰からの理解を拒む、頑なな拒絶の色が
色濃く滲んでいたのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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