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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                 

 目の前に立っている、自分の姿に…死の影を濃厚に感じた。
 やせ細った骨ばった身体に、ランランと異様に輝いている眼差しに
何か不吉なものすら感じていく。

―これが、記憶を思い出した時の貴方が辿る姿ですよ…

 思い出せない事が不安で怖くて。
 早く記憶がよみがえって欲しいと願っている今の克哉にとっては
これはあまりに衝撃的な姿だった。
 だが、目の前の自分は一言だけ、言葉を発していった。

『太一…』

 その言葉を聞いた時、信じられない想いだった。
 瞬間、明るい髪をして笑っている自分の友人の顔を鮮明に
思い出していく。
 それはさっきまで、思い出せなかった…空白の時間の間に知り合った
人物だと即座に理解していく。
 だが克哉は知らない。其れが…太一の手を取って、そして…幾つかのすれ違いの
果てに…太一と、その祖父が悲劇的な結末を遂げるのを目の当たりにして
心を壊してしまった自分の姿である事を。
 けど、謎の男もその事実までは克哉に打ち明けなかった。
 …何故なら、これは『今の克哉』とは別の未来を歩んだ…別の人間の手を
取って様々な結末の内、最悪のものを歩んでしまった結果のものだからだ。

 「あっ…ああっ…」

 名前を聞いた瞬間、消えてしまった記憶のピースが一つ、埋まって
五十嵐太一という人物と過ごした時間を思い出していく。
 まだ、全てのピースは埋まっておらず…全貌は判らないままだったけれど
たった一つ、その名前を聞いただけで…確かに、蘇るものが在った。

―記憶というのは…何処かで繋がっております。たった一言…五十嵐様の
手を取って悲劇的な結末を辿った…御自分の放った言葉を、名前を聞いただけで
それだけ思い出す事があるように…『繋がり』を示すキーワードを聞けば
貴方は徐々に思い出すでしょう。今の貴方にとって五十嵐様は『友人』という
間柄であっても、それだけの衝撃があるでしょう…? 貴方の心を病ませるに
至った出来ごとは、もっと深い処まで関わった存在に纏わるものです…。
其れは今、思い出すべきものではありません…。
もう少し緩やかに、この世界で過ごして見て下さい…。いずれこの世界は
終わりを迎えます。その日が自然と訪れるまでは…この箱庭で、あの方と
二人でどうぞお過ごし下さい…

「ま、待って下さい…貴方は、一体…!」

 先程から声だけはこんなにも鮮明に聞こえているのに、肝心の声の主の
姿が全く見えない事に克哉は疑問を覚えていく。

「…教えて下さい! 貴方は誰なんですが! せめて姿ぐらい…見せて下さい…!
お願い、します…」

 まだ相手の声が頭の中に聞こえている内に、克哉は必死になって
訴えかけていく。
 相手の見えてくれた光景は、衝撃的だった。
 それだけで無理に記憶を思い出すべきじゃないと理解するには充分だった。
 けれど声だけで姿すら見せない相手の言葉を全て鵜呑みにするには不安で。
 だから必死になって克哉が叫んでいくと…哀れな末路をたどった自分の姿は
消えていき、代わりに漆黒のコートを身にまとった長い金髪の男が姿を現していく。

「あ、あああっ…!」

 ホログラムのように浮かび上がる…眼鏡を掛けた妖しい男の姿に、
また克哉の記憶は一つ、ピースが埋まっていく。
 その瞬間…目覚めてから自分と共に過ごしている人物が誰なのか、
ヒントを得て…更に目を見開いていった。

「オレは…オレは、一体…! 何が、起こっているんだよ…!」

 克哉の混乱は、一層深まって叫ばずにはいられなくなっていく。
 そんな彼を…黒衣の男は…Mr.Rは慈しみすらこもった眼差しで
見つめていった。
 泣きじゃくる子供を慰めるように、どこまでも柔らかく優しい声音で…
言い聞かせるように、告げてくる。

―今は何も考えずに、この優しい世界に身を委ねていれば良いのです…。
此処は、ある方の願いによって…貴方への愛によって紡がれた
ゆりかごのような世界…。だからその終焉の時まで…今は無理に考えずに
その優しさを目いっぱい享受して下さいませ…

「えっ…」

 それを聞いて、克哉は目を見開いていく。
 自分への愛で、紡がれたゆりかごのような世界…。
 其れは克哉を驚かすには充分で、そうして…目の前の男は幻のように
消えていった。
 初めから誰も其処に存在していなかったのかのように…痕跡すら
一切残さずに。
 そうして草むらで克哉は一人、立ちつくしていく。

―貴方への愛で…

 その言葉が脳裏にどうしても引っかかっていく。

「教えてくれよ…誰の愛で、此処は紡がれているのかを…せめて、
それだけでも…」

 其れを思い出せず、もどかしい想いを抱いていきながら…克哉は
自然と、涙を一粒、二粒と零して…暫くその場に立ちつくして
いったのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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