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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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変わらない筈なのに、何かが歪んでいる世界。
 一人の筈の彼らが、当たり前のように二人で生きている世界。
 片方は必ず、部屋の中にいなければならない。
 一人しか、外に出る事は出来ない。
 そういうルールの存在する世界で眼鏡と克哉は…?
 切ない要素を含んだ話になります。
 それを了承の上でお読みください。 

 還る場所へ   

 克哉が目覚めたのは、粗末なベッドの上だった。
 身体中がギシギシと痛む。
 覚醒するとすぐに、先程乱暴に貫かれた記憶が蘇り、
苦い思いが広がっていく。

(あいつは、どうしてオレを…こんな風に酷く扱うんだ…?)

 自分と全く同じ顔をして、銀縁眼鏡を掛けている男。
 長い金髪をなびかせている黒衣の謎めいた男。
 この部屋に来るのは…その二人だけだった。
 そして克哉をこんな風に、無理やり抱くのは自分と同じ顔をした
男だけだった。
 こんな暮らしが、いつから始まったのかさえ今の克哉にとっては
判らない。
 自分は何処から来て、どういう人生を送って来たのかさえも
曖昧だった。
 けれど鏡に映った自分を見る度に、毎回覚える違和感がある。

―自分は果して、こんな姿をしていただろうか?

 自分の記憶の中にある年と、肉体の年齢が一致していない気がした。
 まだ…自分は高校生ぐらいではなかったか?
 何故か、そんな風に思う事があった。
 十年ぐらい、年月を飛び越えてしまっているような気がして…
其れが余計に、克哉の不安を大きく煽っていく。

(還りたい…)

 何故か、胸の中に広がるのはその想いだった。
 克哉が還るべき場所は…何処かにある筈だった。
 けれどそれに繋がるヒントがどこにあるかは全く判らない。
 探しに行きたくても、部屋の外に出る事は叶わなかった。
 一人きりで残されて、無為に時間を過ごしている間…正直、
気が狂いそうになる。
 気持ちが不安だと、ベッドで寝ていても寒さを強烈に感じていく。
 布団にくるまっていても、そう感じるという事は…余程、先程のベランダでの
行為で身体が冷えてしまったのだろうか?

「…起きているか?」

 唐突に、部屋の扉の方から声が聞こえて来た。
 その声を聞くだけで心臓がバクバク言い始める。
 とっさに、その問いかけに返事が出来なかった。
 もし…こちらが起きているのに気づいたら、またあんな風に
乱暴に抱かれてしまうのだろうか…と言う恐怖があったから。
 克哉の中で、自分と同じ顔をした男性に対しては…そんな
印象しかなかった。

『どうして、お前は何も覚えていない! 何故!』

 その一言が、今も克哉の脳裏に突き刺さっている。
 そうだ…随分前に、この部屋で目覚めた時…一番最初に
目覚めて顔を合わせたのは彼だった。
 そういえば、最初はとても優しい顔をしていた気がする。
 目覚めたばかりの記憶で、それはとても曖昧なものだったけれど。
 けれどこちらが起きて、幾つかの問いかけに対して
首を横に振った途端に…その表情は大きく歪み始めて、そして…。

―この歪な関係が始まったのだった

 その事をふと思い出して、胸がギュっと縮むような気がした。
 タヌキ寝入りを決め込んで、相手からの問いかけには口を閉ざして
答えない事にした。
 さっきのセックスだけで、すでに身体は悲鳴を上げていたから。
 続けて、あんな風に酷く抱かれれば…暫く身体を起こす事すら
困難になる気がしたので、ともかく寝ている振りを続けていった。

 ガチャン…

 ドアの開く微かな音が聞こえて、相手が部屋に入ってくる気配を
感じていく。
 その間、ドクンドクンと緊張で鼓動が荒くなっているのが判った。

(早く、出ていってくれ…)

 そう克哉が祈っていくが、それも虚しく…相手は、ベッドの方まで
歩み寄って傍らに腰を掛けていった。
 こちらの顔を覗きこんでいるような気がして、余計に目を開ける事は
出来そうになかった。
 状況を確認しようと、薄目を開けていくが…それだけで妙に
ドキドキしてくる。
 そうしている間に、相手の方がそっとこちらに手を伸ばして来た。

「っ…!」

 一瞬、声を出しかけたがどうにか喉の奥に飲み込んでいく。
 そして…眼鏡は一言、こう呟いた。

「…この部屋は、間違いない筈なのに…どうして、お前は俺を…
覚えていないんだ…? 十年間、ずっと…探し続けて、いたのに…」

(えっ…?)

 その一言は、予想もしていないものだった。
 同時に猛烈な違和感を覚えていく。
 そうだ、初めて目覚めた日…自分は、彼に…『俺を覚えているか?』と
問いかけられたのだ。
 けれど、全く見覚えがなかったから首を横に振るしかなかった。
 其れが…彼の態度が豹変した理由ではなかったのか?

(これは一体、どういう事なんだ…?)

 克哉の胸の中に、猛烈な疑念が広がっていく。
 そして暫く…寝ている演技を続けていくと、相手の方も諦めて
向こうの部屋へと消えていった。
 そして、彼の呟いた一言は…後に、大きな波紋となり…予想もつかない
展開を、間もなく引き起こす結果となったのだった―
 


 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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