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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※この作品は現在、不定期連載中です。(週1~2回程度のペースで掲載)
 その為以前のを読み返しやすいようにトップにリンクを繋げておきます。

  バーニングクリスマス!(不定期連載)                   10 
                          11   12  13

その日の夕暮れ、克哉を想う二人の男は…それぞれ物思いに
耽っていた。
 Mr.Rはその様子を心から愉快そうに眺めていく。
 眼鏡を掛けていない方の佐伯克哉を巡って、4人の男が攻防を
繰り広げているその様は…男を非常に楽しませてくれていた。
 すでに日は傾き始めて周囲は赤く染まっている。
 世界の全てが深紅に染まる瞬間に、黒衣の男の存在はどこか
禍々しい雰囲気を称えながら…キクチ・マーケーティングの裏手に
一人、佇んでいた。
 物陰にひっそりと潜みながら…誰かを待ち続けていく。
 だが、最初にその入り口から飛び出して来たのは…彼の待ち人
ではなく、明るい髪色をした青年だった。

「…よし、脱出成功っと…これで、あのイケすかない男も…克哉さんと
これ以上、二人きりで部屋に潜んでいるのは難しくなった筈だよな…」

 そういって、青年は悪戯が成功した時のような…満足げな笑みを
浮かべていた。
 太一はザックの中に、何かを大切そうに抱えている。
 この中には太一の大学で使う教科書と…講義用と、作曲専用のノートの
他に…いざという時に使える様々な用途に使える七つ道具が納められていた。

「…あんなに、大きな音を立てればそれ処じゃない…筈だよな…」

 と言いつつ、太一は一瞬…不安そうな表情を浮かべていった。
 だが…確認したくても、戻る訳にはいかなかった。
 裏手の入り口からでも、社内中が大騒ぎになっていることだけは
充分に伝わって来ている。
 しかも…太一が立てた轟音の他にも、原因不明の閃光という要素が
加わったおかげで…爆弾を仕掛けられたのではないか? とパニックに
陥っている人間が多かったのだ。

 太一は、閃光の件には関わっていない。だが…轟音を立てた件に関しては
確実に犯人だった。
 そして…今、彼が手に持っているザックにはその証拠の品が二つ、収められている。
 あの爆音は、窮地の際に…追っ手をの注意を引き付ける為の護身道具の一つだ。
 派手な音はするが、それ以外の効果はない。
 しかしスピーカーなどを通して、最大音量で流せば…先程のような爆発音に
限りなく似たものを発することが出来るのだ。
 太一は、克哉と御堂が二人きりで部屋にこもったのを見送った時…長時間
そのままにしたら、あの男に出し抜かれると考え、このような行動に至ったのだ。

「やべ…心臓、バクバク…言ってる。…一応、克哉さんがいる会社だから把握する為に
ハッキングして、内部の構造については頭に入れておいたけれど…実際に歩いたり
色んな部屋に入ったのは初めてだったしな。…けど、ぶっつけ本番だったけど…
上手く行って良かった。…マジで放送室に先客とかいないでラッキーだったよ…」

 太一は胸を押さえながら、深呼吸を繰り返して…逸る気持ちを抑えるように努めていった。
 本当ならば、克哉達がいるフロアまで戻って…どうなっているかを確認したかった。
 だが…大騒ぎになってしまった以上、もうこの会社に留まることは危険だ。
 しかも元々、自分は部外者として本日…招かれている。
 何かあった場合、外部からの人間が一番疑われるものだ。
 そういう点からも、今日のところは一旦立ち去るのが賢明なのは…判っていた。
 だが、太一は相当に…この場に後ろ髪を引かれていた。

(…克哉さん、マジで…今、貴方が何を考えているのか判らない…。凄く良い人の
貴方と、凄く寂しそうな顔を浮かべている苦しそうな克哉さんの…どっちが本当の
姿なんだろうね…)

 そんな事をふと考えながら、キクチ・マーケティングのビルを切ない表情を浮かべながら
仰いで見上げていく。
 だがその未練を断ち切って、青年はその場を後にしていった。

―ふふ、かなり惑わされているみたいですね…五十嵐様も。甘い蜜を放つように
なった…あの方の半身の魅力に参ってしまっているようですね…

 物陰から太一が立ち去ったのを見届けていくと、Rはそのまま…愉快そうな
笑みを浮かべながら裏口の扉の前へと移動していく。
 …今、社内にはあまり人目に付きたくない立場の存在が、太一の他にもう一人
いる筈だった。
 長い金髪を風に靡かせながら…男はただ、夕暮れの中で待っていく。
 五分、十分…と過ぎていく度に、日は更に傾き始めて…ゆっくりと夜の帳が
下り始めていった。
 そして、完全に地平線に太陽の姿が消えようとする間際…その扉が静かに
開かれていった。

「こんばんは…我が主。貴方の狙った通りの結果になりましたでしょうか…?」

「お前か…ご苦労だった。さっきの閃光は役に立ったぞ…まあ、あの爆音
まで直後に鳴り響いたのは予想外だったがな…」

「えぇ、貴方様が私に指示を出したのとほぼ同じ頃…貴方の半身を想う
男性の一人が、別に動いた模様ですから…。ふふ、流石は貴方を魅了した
だけの事はありますね…。今の克哉さんはまるで、多くの人間を惹き付ける
魔力を持った花のような物です…。そこにいるだけで、知らない内に
人の心を煽り…欲望を灯してしまう。ウカウカしていたら…貴方にとって
望ましくない結果が訪れてしまうかも知れませんね…」

「…どういう意味だ。それに…何をそんなに愉快そうな顔をしている…。
見ているだけで不愉快になる、止めろ」

 憮然とした様子で眼鏡が言い放っていくと、更にMr.Rは面白そうに喉の奥で
笑っていった。
 それを見て更に彼の機嫌は悪くなったが…黒衣の男は特に気にした様子はなかった。

「…ふふ、貴方は本当に素直じゃないですね。…そこまで執着なさっているのならば
独占してしまえば良いのに…。誰の目にも触れないように、貴方以外の人間を
欲さないように…籠の鳥のように…」

「…そんな手段があるのなら、とっくの昔にやっている。だが…あいつが今は
本体を持っている以上、俺は常にこの世界に存在は出来ない。そんな身の上で
どうやってやれというんだ? 拉致監禁するのも不可能だろうに…」

「そうですね…物理的に今の貴方が、克哉さんを閉じ込め続けるのは
現時点では無理です…。しかし、その為の方法があると申したら…
どうなさいますか?」

 男の一言に、眼鏡はハっとなっていった。
 その顔を見て戦慄を覚えていく。
 夕暮れの頃は…昔から、逢魔ヶ刻と呼ばれていた。
 昼と夜の境…幻想と現の境、その二つの要素が交じり合ったこの時間帯には
『魔』と呼ばれる存在が現れると古来から言われて来た。
 今のMr.Rの存在は、まさにそれだった。
 怖いぐらいに綺麗な笑みを浮かべながら…眼鏡を意味深な表情で見つめてくる。

「…まさか」

「私はこういう事で…嘘は申し上げませんよ。我が主…ですが、それは…
貴方にとって、強烈なリスクを背負うこととなります。…失敗すれば
ただでは済みません…。下手をすれば貴方という存在そのものが
危うくなる程の手段です…。それでも、お聞きになりますか…?」

 そう言いながら囁く黒衣の男の姿は、人を堕落させる悪魔のようで
すらあった。
 瞠目しながらRを見据えていくと…どこまでも優艶な笑みを口元に称えながら
男は歌うように、言葉を続けていく。
 
―太陽が最後の光を鮮烈に放つ寸前、男の金色の髪が鮮やかに宙に舞った

 それはまるで、芝居が開幕していく光景のような奇妙な錯覚を覚えていく。

「…言ってみろ。興味がある」

 少し考えた後、眼鏡ははっきりとした口調で答えていくと…男はどこまでも
愉しそうな顔を浮かべていったのだった―
 



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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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