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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
            

『おや、泣いていらっしゃるのですか…?』

 太一が夢の中に…かつては存在した日常の中に救いを求めている
場面を立て続けに見せられて、男は知らず泣いていた。
 瞼を開けば、其処は妖しくエキゾチックな香りが漂う赤い天幕で
覆われた部屋。
 息子が、どれだけ気弱な方の佐伯克哉を想っていたのかを知って…
五十嵐太一の父親である、喫茶店のマスターは胸が潰れそうだった。
 同時にどれだけ太一が五十嵐組を継ぐことを嫌がっていたかも…
アーティストの道に進みたがっていたかも、息子の視点に立って事例を
追っていく度にはっきりと理解していく。

―同時に、一度サラリーマンの道を選んだことへの違和感も増していく

 その男が感じている疑問を、Mr.Rも感じ取っているのだろう。
 愉快そうに微笑みながら、問いかけてきた。

『…おやおや、随分とすっきりしない顔をなさっておられますね…。ここまでの
太一さんと克哉さんの愛の軌跡を見て…どうして最終的にご子息があのような
決断をされたのか、まだ見えて来ていないようですね…』

「ああ、そうだ。…太一が求めている方はもう会えなくなってしまった筈だ。
しかも眼鏡を掛けている方とは激しく憎みあっている。それで…どうして、
理解をしようと…あいつが会社勤めを数年と区切っているとは言え始めたのか
俺にはまったく判らねぇ…」

 男はついに、妙な意地を張るのを止めて…率直に感じているままの事を
口にするように変わっていった。
 一体どのような原理かはまでは不明だが、確かにこの男の力によって…
知りたかった真実の断片の幾つかを得る事は出来たのだから。
 黒張りの豪奢なソファに深々と腰を掛けていきながら男は溜息をつく。

『えぇ、現時点ではそうでしょうね…。だから私は貴方にそっと手を差し伸べて
知りたかったものをこうして教えて差し上げている訳です。さあ…そろそろ
次の演目が始まりますよ。今夜の貴方は当店にとってはゲスト。
私が知っていることを…そして語りたいと思っていた佐伯克哉さんと、五十嵐太一さん。
その二人の泥沼のように救いがなく、そしてキラキラと輝く結晶のように尊く
儚い愛の唯一の観客でもあります。…どうぞ、時間の許す限り私に今夜は
お付き合い下さい。演目も…そろそろ佳境に入って参ります…。
さあ、ごゆっくりと堪能あれ…!』

 Rはまるで舞台の上で大勢の観客に向かって語りかけているかのような
大仰な身振りと大声で、そう高らかに告げていく。
 その声を聞きながら太一の父は…再び脳髄が蕩けていくような猛烈な
睡魔の中に呑み込まれていく。

―俺は、お前を理解したいんだぜ…太一…

 自分にとって、大切な子供の一人だから。
 だから息子の事を知りたいし、理解したい。
 父はそうして…再び夢の中に意識を沈めていく。

―そして、ついに太一の過去を追う物語はゆっくりと佳境に
入っていったのだった―

                    *

 人の夢、と書いて儚いという字は構成されている。
 目覚めればあっという間に自分の手のひらからすり抜けてしまうもの。
 それが…夢であり、過去でもあった。

「あっ…」

 自分のアパートの部屋、ベッドの上で太一は唐突に覚醒していく。
 幸せな夢に浸っている間だけでも救われた気持ちになれていたのに…
意識が浮上して現実に戻っていくと、一気に落ち込んでいった。

「…情けないよな。夢に縋ったって…何も生み出しはしないのに…」

 かつての自分なら絶対にしなかっただろう。
 しかし…希望を持ちながら、それが決して叶えられない生活は…
太一の心を急速に蝕んでいった。
 
「克哉さん…」

 壊れたスピーカーのように、あの人の名前を呟いていく。

「克哉さん…」

 そして頭の中で何度も何度も、リフレインさせていった。
 夢で久しぶりに見たあの人の面影を、そして儚い笑顔を鮮明に思い出して
太一は知らず…涙を零していた。

―会いたい…

 心の中の正直な想い。
 今でも、愛している。
 会いたくて会いたくて、本気で気が狂いそうだ。
 
―たった一度でも良い…。もう一回だけでも、貴方に会いたい…!

 夢を見たことで、心の奥底に存在する自分の強烈な願いに嫌でも気づかされていく。
 そしてずっと疑問に想っていた…どうして眼鏡を掛けた方の、嫌悪している克哉と
半分同棲みたいな感じで一緒に暮らしているのか、その理由に嫌でも気づいて
しまっていた。

―だから俺は、あいつと暮らしているんだ…! 俺があの人を求めていれば…
あいつの奥底にいる克哉さんが、たった一度だけでも出て来てくれると
願っているから…!

 だから愛していなくても、身体を重ねている。
 自分を抱く事で、少しでもあいつの奥に存在しているかも知れない己が
求めている方の克哉を揺さぶることが出来るなら、それで良いと思ったから。
 触れ合うことで少しでも、『存在している筈の克哉』に自分の事を伝える事が
出来るならば…虚しいと判っている行為にも、多少は意味があったから。

―たった一度だけの邂逅

 それが…愛してもいない男と生活している意味でもあり、そして…
何よりの願いでもあった。
 だが、太一は気づいていなかった。
 どれだけの時間を重ねていても…身体を繋げていても、今の克哉を…
眼鏡を掛けている方の人格を拒んでいることがどのような結果を
齎すのかを…。

「克哉さん、一度だけでも良いから…俺の前に出て来てよ。…会いたい。
会いたい、会いたい…貴方に、触れたい。感じたい…そして一度だけで
良いから…貴方を、抱きたいんだ…」

 たった今、幸せな夢を見たからこそ…太一は思いつくままに己の本当の
欲望を、望みをとりとめなく口にしていく。

「…俺が求めているのは、貴方だけだから…だから、出て来てよ…克哉さん…」

 本当に壊れてしまったかのように、何度も何度も求める言葉を…呪詛のように
繰り返していく。
 それは太一の中であの人が消えてしまった日から繰り返し頭の中に
響き続けている…未練であり、本心。

「あんな奴なんて、いらないから…。俺は、貴方だけに会いたいんだ…!」

 太一は、気づいていなかった。
 眼鏡を掛けた方も、掛けていない方も表面的にはどれだけ性格に違いが
あっても…根っこの部分では、繋がっている事に。
 片方を拒絶すれば、傷つければ…もう片方をも傷つけることになる事に。
 だから、知らなかった。

―アパートの前に立っていた眼鏡を掛けた克哉。その相手に…今の呟きを
聞かせれば聞かせるだけ、心の奥底に存在している克哉をも傷つけて…
その精神を瀕死にさせていたことに…。

 太一が否定をすればするだけ、眼鏡の克哉も…奥底に存在する克哉の
両方を傷つけていく。
 かすかな太一の本心をドアの向こうで聞いていきながら…眼鏡を掛けた
克哉は…立ち尽くしている事に、ベッドの上の青年は気づかない。

―そして、今…一瞬だけ、求めている方の克哉が意識に上がったことにも
彼は知らないままだった…

 太一は繰り返す。
 片方をズタズタに傷つける言葉を。
 そして、片方だけを求め続ける。
 それが…どれだけ佐伯克哉という人間を分裂させて、追い詰めていたのか
その罪に気づくことがないまま…彼ら『三人』の物語は佳境に静かに
入っていったのだった―


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 27日は帰宅してからすぐにバタンキューしていたので
今日は仕上げるぞ~! と密かに決意していたら…う~んと
本日の津波勧告のせいで、急に父方の祖父の家に避難することになり
色々と予定崩れ捲くりました(汗)

 とりあえずこれから、メンテナンスが始まる午前一時までの間に
一本仕上げるつもりでやります。
 午前1~7時まではアップ作業出来ないし、大体七時過ぎになっても
直後にアクセス出来ることは少ないので…今夜中に仕上げますわ。
 
 後、最近の近況。
 友人に執事喫茶に付き合ってもらって色々と話したらデュラララ!!に
ちょっと興味を持ちました。
 原作を購入して、1~7巻まで読破。
 さて漫画版にも手を出そうかな~とチェックしたら…。

 漫画版担当している人が、高校の後輩でした

 …と知って、ちょっとびっくりしました。
 といっても卒業してから一度だけ文化祭で顔を合わしたことがある程度で
確か交わした会話が…。

 貴方の絵がめっさ好きなので、展示してある絵を是非コピーさせて下さい!

 と力いっぱい頼み込んでラブコールを送り捲くったことぐらいです。
 一応、うちの高校の漫画部では部員が好きなように描いて良い用の画用紙を
用意しておいて…それで皆で書き溜めておいた絵を文化祭の日に一斉に展示して、
一枚50円でコピーして持っていくことが可能…って商売していたから、それで
その日初対面の後輩の絵を三枚ばかり取らせて貰ったんですが。
 色使いとか本当に好みで、一目惚れして…どうしてもコピーでも良いから
手元に欲しいって心底思ったからの行動でしたけどね…(ふっ)
(私がいた前後の世代での話です。現在はどうかは不明なのであしからず)

 …興味持ったジャンルの漫画化をやっている人が、自分の知っている人だと
思うととちょっと嬉しい。
 ちゃんと漫画家になれたんだな~と。

 ほんの少しでも接点あった人が、こうやって努力を実らせて…プロに
なっていたり、成功しているのを見るのは個人的に凄く嬉しかったり。
 という訳で近い内に漫画版も買います。

 こっそりひっそりと、一ファンとして喜び…楽しむ予定っす。
 

 以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
          

―ふとしたキッカケでサンストーンの事を思い出したおかげで、
再び眠りに落ちた時…太一の脳裏にはもう一つの克哉との
思い出が浮かんでいった。
 ベッドの上で未だに一方的な行為で激しく軋んでいる身体を
眠ることで休めている。
 夢というのは…肉体が眠り、脳が一時的に覚醒している…現実との
境目に浮かび上がるもの。
 本来なら、あやふやな夢に縋っても何も生み出さない。

(けど…俺が会いたくて仕方ない克哉さんは、もう夢の中にしか…
存在してくれないから…)

 だから太一は、心が折れそうになると…克哉との思い出を
出来るだけ思い出そうとしている。
 自分に対して加減がなく、冷たい男との生活は太一の心を大きく
荒ませていたから。
 そうすれば…自分が恐れた、『黒』の感情に呑み込まれてしまうような
気がしたから。

(…俺は忘れたくないんだ。貴方と過ごした日々を…。そして、白の…
堅気の世界の温もりや、暖かさを…)

 人を殺したり貶めたり、平然と利用するような世界に浸りたくはない。
 己の想いを歌に乗せて、日の当たる場所で生きたい。
 その気持ちがこんなに強くなったのは果たして…いつの頃だっただろうか。
 ふと思案した瞬間、太一はもう一つのキッカケを思い出していく。

「ああ、そうか…克哉さんと会ったから、だ…」

 そして、何気なく部屋の片隅に置かれていたギターを見つめていく。
 ミージシャンになりたいと、世界に認められるようなアーティストになりたいと
必死になってバンドで歌っていた事もあった。
 だが、この一年…太一は歌えなくなっていた。
 あれだけ逃れたかった祖父の事も、今ではどうでも良くなっている。

(忘れちゃ、駄目だろ…)

 無意識の内に、そう自分の中で突っ込んでいく。
 夢を忘れたら、何の為に東京まで出て来たのか判らなくなる。

(克哉さん…克哉さん、克哉…さん!!)

 無意識の内に思い出に、縋った。
 自分の夢を見失わない為に、あの人を求めた。
 その心が…太一にもう一つの出来事を思い出させていく。
 
 ―そして夢の中で、もう会えなくなった人との思い出に再び浸っていく

 その時…懐かしさの余りに、太一は…無意識の内に静かな
涙を浮かべていった。
 夢の中だけでも…あの人に、会いたかったから…
 一緒に、笑いあっていたかったから…

                  *

 ―あの人と一緒にいると、無邪気で優しい自分のままでいられた

 正に、白い世界に。血、暴力、殺人、そういう事柄から無縁で
いられるような…そんな気がした。
 遠くからずっと見ていたあの人は…優しくて、穏やかで。
 この人の傍でなら、自分もきっと同じように振舞っていられるんじゃないかと…
そんな風に感じていた。

 大学に進学してから三年目。
 その秋頃に、太一は喫茶店を訪ねて来た克哉と正式に知り合った。
 以前から遠目で、出勤中の克哉を見守っていた。
 いかんせん、パンを口に咥えながら全力疾走という漫画の中では良く見かけるが
現実には滅多に遭遇しない事を体現しているような人だった。
 最初はびっくりしたけどおかしくて、そんな自分の気持ちが優しくなっている
ことに太一は気づいた。
 遠くから克哉を眺めていて、どんな人だろうって考える度に…幸せで
満ち足りた気持ちになって。
 ただ、見ているだけでもあの人は太一に温かいものを齎してくれていた。
 だから…知り合えた当初はとても幸せだった。

 ―けれど、長く一緒にいればいるだけ…次第に、克哉と一緒にいても
黒い自分の欲望は、鎌首をもたげるようになってしまった―

 それは、太一が初めて克哉をバンドのライブに招待した翌週の
平日の夜の出来事だった。
 曲作りに詰まってコンビニにフラリと立ち寄ったら…遅めの夕食用の
弁当を購入しようと先に来店していた克哉とばったり遭遇して、結局もう少し
一緒にいたいと我侭を言って…自分のアパートに克哉を招いたのだ。
 克哉をアパートに招いたのは、ギターを教えた時以来のことだった。
 コンビニで買ったスナック類と、弁当、おにぎりを摘みつつ…雑談を
していたら、仕事で疲れていた克哉は、さっきまでは頑張って睡魔と
戦いながら太一と会話を続けていたが、たった今…それに負けて
重く瞼を閉ざしてしまっていた。

 その頃の克哉は、プロトファイバーの当初の目標を引き上げられて…
会う度に、どこか辛そうだった。
 けれど太一は…克哉ならそれでも出来ると思っていたし、良い方向に
進んで欲しくて必死になってさっきも励ましていた。
 それで安心したのだろう。目の前の克哉は…とても穏やかな顔を浮かべていた。

「…あ~あ…克哉さんってば、相当に疲れているみたいだな…せっかく俺と
会えたっていうのに…こ~んな無防備な寝顔を晒しているんだもんな~」

 克哉の瞼がしっかりと下ろされてしまってから2分ぐらいした後、
どこかのメーカーの新商品の「ドロリ濃厚!カボチャシェイク」なるものを
喉に流し込みながらぼやいていった。
 太一としてはまだまだ克哉と話したりないので…思いっきり肩を大きく掴んで
揺さぶって起こしたい衝動に駆られたが…疲れているのも、態度と言葉の端々から
感じ取っていたので、このまま寝かしておいてやりたい…という感情と戦っていた。
 まずは気持ちを落ち着ける為に、味見に購入した品をグビグビと飲んで…
冷静な批評を下していく。

「…ん~やっぱり、このメーカーの新商品ってピントがどっかズレてしまって
いるというか…まずくないんだけど、何か微妙な感じだな。
 カボチャの風味が濃厚で甘くて…何ていうかカボチャの煮物に牛乳を
混ぜて、それをシェイク状にしたってそんな感じだなぁ。一度飲めば
もう充分だな…。ほんっと、ここって伝説に残るようなイマイチ商品
ばかりをリリースする所だよな。ここのを一度は試す俺も充分な
チャレンジャーだけど…」

 そういって、全てを一応飲み干すと机の上に缶を一旦置いて、太一はその場から
立ち上がっていった。
 そんな事をやっている間に、余裕で五分は過ぎた。
 さっき、克哉の寝顔を見た瞬間…動揺してしまったが…それもどうにか収まって
太一は冷静な判断をし始めていった。
 …とりあえず克哉をベッドの側面に背を凭れさせながらの格好で一晩寝かす
訳にはいかなかった。
今日は平日で、克哉はさっき…明日も仕事と確かに言っていたからだ。
 本当ならベッドの上に克哉を上げて、寝かしつけてやりたかったけれど…太一の
体格は克哉のものより若干小柄だ。
 起きている状態ならともかく、すっかりと眠っている克哉をベッドまで
上げるのは相当に苦戦することは間違いなかった。

「…まったく、克哉さんってば…。こんな無防備な姿を俺の前に晒しちゃってさ…。
本当、警戒心なさすぎ…」

 そうやって、一旦…太一は克哉の目の前に屈んで、身体を密着させるような
体制になって相手の脇に両腕を回していった。
 
「ほら…克哉さん、とりあえずベッドで寝てよ! 今の時期は夜は冷えるし…
床でなんか寝たら、身体を痛めてしまうからさ…」

「ん…ぅ…」

 そう言いながら克哉がうっすらと目を開いて、とりあえず半分寝ぼけながらも
ベッドに上がる為に…太一の動作を自ら手伝ってくれた。
 その寝ぼけてトロンとなった瞳に、一瞬鼓動が高鳴っていく。
 抱き上げる際、密着していたので…服越しとはいえ克哉の体温と肌の
感触を意識しない訳にはいかなかった。

(克哉さんの寝息と、鼓動だ…)

 それを自覚した瞬間、何故か鼓動が早まっていった。
 だが今は…太一はそれを意識しないように努めていった。
 それだけでも随分と楽になり、結構あっさり…克哉の身体はベッドシーツの
上に沈んでいった。
 自分のベッドの上で、クークーと安らかな寝顔を晒している克哉を見て…
太一は呆れ半分に微笑んでいった。

「克哉さん…まったく、こんな無防備な姿を俺の前で晒して…克哉さんみたいな
良い人はきっと、俺がどんな風な目で…貴方を見ているか、きっと想像したり
しないんだろうな…」

 そう呟きながら、瞬間…克哉のうなじが猛烈に魅惑的に見えた。
 その整った唇に、己の唇を重ねたらどんな感触がするのだろうか…という
黒い欲望が湧き上がっていく。

―止めろよ。そんな目で…克哉さんを、見るなよ…!

 自分の中に眠る、黒い自分が…ゆっくりと目の前で安らかに眠る
克哉を目の前にして…目覚めていくのが判った。
 それを自覚した途端、心臓がバクバクと言い始めていく。

―例えば、その唇に舌を捻じ込んで、グチャグチャと音が立つぐらいに
激しいキスを交わしたら

 きっと、脳髄が蕩けるぐらいに気持ちよくなるだろう…そんな夢想に、
太一は…目の前で眠る克哉を見て、浸り始めていく。

―克哉さんが俺の手で感じたら、どんな痴態を見せてくれるんだろう…。
感じさせたら、凄く可愛い筈だよね…。俺に懇願して、涙を浮かべながら
必死になって縋ってくる姿なんて見たら、きっと堪らないだろうな…

 黒い自分がそんな事を言い始めた瞬間、太一の頭の中で…克哉は
衣類の一枚、一枚を剥がされて…淫らな表情を浮かべ始めていった。
 相手の弱い所を攻め立てて、トロトロになるまで…感じさせたら
どれだけ艶かしい姿になるのだろうか…。
 そんな妄想が、堰を切ったように溢れ始めていった。

(止めろよ…そんな事を、考えるなよ…! 克哉さんは俺の大切な友人だ…!)

―本当にかよ? お前は…こいつを好きで好きで仕方なくて、それで…
壊してしまいたいと思っているんじゃないのか…?

 黒い自分が、ねっとりとした口調で…こちらに問いかけてくる。
 あの人を刺してしまった日から存在していると自覚した…黒くて
冷たくて、酷いことを平気で考える自分が怖かった。
 そうしている間に…自分の脳裏で、克哉は更に乱れ始める。
 硬く張り詰めたペニスを弄ってあげると、淫蕩な眼差しを浮かべて
こちらに懇願するような表情を浮かべている。
 自分の手の中で、克哉の性器が大量の蜜を零してヒクヒクと
震えている。そんなリアルな感覚までも一瞬、思い浮かんでしまって
太一は性的な興奮と、そんな事を考えている自分に戦慄する…
相反する想いを抱いてしまっていた。

(そんな事をだから考えるなよ…!俺と克哉さんは、そんなんじゃ…!)

 心の中で叫んだ瞬間、自分の目の前で…克哉がベッドの上で艶かしく
首筋を仰け反らしていった。
 伏せた睫の影は長く…元々整った顔立ちの克哉に、艶めいた印象を
与えていく。

―正直になれよ。お前は…こいつを抱きたくて、仕方ないんだろ…?
 グチャグチャにして、啼かせて自分の事だけしか考えられないように
したい…支配して、屈服させてやりたいって…そんな歪んだ欲望を
感じているんだろ…?

 もう一人の黒い自分が、時折悪魔のように感じられた。
 そんな事を自分が考えているなんて、自覚したくなかった。
 自分はこの人に優しくしたい、そう思っている筈なのに…相手が自分の
脳裏で黒い笑みを浮かべて、言葉を続ける度に…そんな思いが
まるで儚い蜃気楼のようにすら覚えてしまう。
 ズクン、と下肢が熱を帯び始める。
 それは雄として…目の前の存在を貪りたいという即物的な欲望。
 太一は、そんな自分を…認めたくなかった。
 克哉は大切な人の筈なのに、雪のように白くて純粋なこの人に対して
欲望の眼差しで見てしまっている自分を、自覚なんてしたくなかった。

「違う…違う!」

 太一は必死に頭を振って、そんな思考回路を否定していく。
 彼が拒めば拒むだけ、もう一人の「黒」い自分は…歪んだ笑みを
浮かべていった。

―認めろよ。自分の正直な気持ちを…

「嫌だぁ!」

 自分の夢は、アーティストで、日の当たる場所で生きることの筈なのに
この自分の中に巣食う悪魔が否定すればするだけ、日増しに大きくなって
どうしようもなくなっていく。
 己の中のどす黒いシミ。それに侵食なんてされたくないのに…克哉と
過ごしている間だけは、そんな想いなど今まで感じないで過ぎたのに…
その聖域のような気持ちすら、今晩…否定された気がして、太一は
とても苦しかった。

 暫くその後、太一はハア、ハア…と乱れた呼吸を繰り返しながら
克哉の目の前で葛藤し続けた。
 貪りたい想いと、友人としての克哉を大切にしたい感情がせめぎ合って
太一の中でぶつかっていた。
 そしてその晩…悩んだ末に太一が出した結論は、自分がこの部屋から
出て行って克哉を守るというものだった。

「克哉、さん…ゴメン。きっとこんな俺が貴方の傍にいたら…きっと
貴方をどうにかしてしまう…。傍にいられなくて、ゴメン…」

 眠っている友人を置いて、部屋を出るのは少し苦かったが…今、自分は
この人に対して欲望を抱いているのを自覚してしまった。
 だからもう、今夜はここにいてはいけない気がしてしまった。
 太一にとって、この時…克哉は聖域だったから。
 彼の笑顔は優しくてあったかくて、自分の心をいつだって明るく照らして
浄化してくれていた。
 そんな克哉を、自分の欲望の赴くままに手を出して…この関係が
変わってしまうことを恐れて。
 だから逃げてしまったけれど…。

―今思えば、この時に触れておけば良かったな…。少しでも克哉さんの
感触を、知っておきたかった…

 少しだけ後悔の念が、静かに浮かび上がる。
 それに…過去は、変えられるものではない。
 愛しげに太一は…夢の中でしか最早会えない人を見つめていく。

「克哉…さん…」

 大切なものを扱うように、愛しげにその名前を呼んでいく。
 …けれど自分を正に留めたくて、克哉の頬にそっと指を這わせて…
一瞬だけ触れる儚いキスをした。

―どうか貴方が今晩、安らかに眠ってくれますように…

 そう素直に祈りながら、太一は自分の部屋から立ち去ろうとした。
 だが…安らかな寝顔をもっと見ていたくて…少し離れた位置で、克哉を
見守っていく。

(…起きるまでで良い…。その間だけでも良いから…俺の傍にいてよ…)

 距離を保つことで、この人を穢さないように配慮していく。
 そしてその夜…克哉がうたた寝から起きる30分程度の短い時間…
太一は、確実に幸せだった。

―そしてその事を思い出し…太一は、眠りながら…静かに一筋の
涙を流して…失った過去を愛おしく感じていったのだった―

 

 以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
        

―ああ、貴方はどうやら…太一さんの贈った石がどうなったのか
気になって仕方ないみたいですしね。ふふ…良い感じにご子息と
気持ちが重なって来たみたいですね。
 こういう余興も悪くはないでしょう…? どれだけ話しを聞いたとしても
こんな風に他者の体験を自分のもののように感じることは基本的には
人には不可能です。
 別の人生を体験している気分になって、ワクワクしているんじゃないんですか…? 
えっ、自分はそんなに不謹慎じゃないと? 失礼しました。
 ですがあの石は太一さんの想いが強く込められている品。
 確かに気がかりになるのは判ります…。
 なら、その答えを貴方に断片的にお見せしましょう…。
 次からは克哉さんの視点となります。
 貴方にとっては気持ちの良いものではないのは判りますが真実というのは
両方の立場や考えを知った上でなければなかなか見えてくるものじゃありません。
 では、次なる場面をお見せしましょう…。
 太一さんの贈った石の、その行く末を…貴方に…

―そして再び視界が真っ白に染まり、別の場面が始まろうとしていた

 男はこの奇妙な体験に確かに、指摘された通りに一種の興奮を覚えていた。
 自分の知らなかった出来事を知ることで、ただ憎いだけだった克哉の存在が
別のものへと変わっていくようだったから。
 自分の息子が、かつての人の良さそうな彼に対してはあんな風に幸せそうに
接しているのを知ってしまったから。
 だから謎多き男に導かれるままに…男は真実を辿っていく。

―そしてゆっくりと、太一が救われる日に至るまでの道筋を辿っていった―

                        *

 眼鏡を掛けた方の克哉は多くの人間が行き交う雑踏を、当てもなく
歩き続けていた。
 目的地などなく、ただ気の赴くままに池袋の街を歩いていた。
 この駅で降りたことに何の意味もない。
 単なる気まぐれであり…深い意味もなかった。
 都会の人間が行き交う光景は、無機質な波のようなものだ。
 人間が個別の心を持った存在ではなく、ただの集合体のようにすら
感じられる瞬間がある。

(どうして…俺は今でも、こんな物を手放せないでいる…?)

 太一が、太陽の石の存在を思い出したのとほぼ同時刻。
 男は…自分が愛用しているスーツの中に偲び続けていたオレンジ色の
石の事を忌々しく感じ始めていた。
 この石はもう一人の自分が、とても大切に思っていた品だった。
 太一に『お守り』だと渡されて以来、肌身離さずに持ち歩いていた。
 だから必然的に、男が持ち歩く形になってしまった。

(あいつが持っていた品など…俺には何の関係もない筈だ。こんなちっぽけな
石…その気になればいつだって捨てられる。なのに…どうして捨てられない?)

 克哉は雑踏の中で立ち止まると、ふと胸ポケットの中を手で探って…
その明るい色合いの石を取り出していく。
 まるで太一の髪の色のような鉱石だった。

「…そして、俺はどうして…虚しいと思いながら、あいつと一緒にいる…?」

 太一の事を考えると、どうしてこんなに空虚なものを覚えるのだろう。
 幸せだと思ったことも、満たされたことも無い。
 自分達の間にあるのは、屈服や服従…そんな類の言葉しかない。
 もう一人の自分の事ばかり求めている存在と一緒に暮らして、何の意味が
あるのだろうか?
 何故、こちらの事を否定する男を自分は定期的に抱いているのか。
 その奥に潜んでいる感情を、意図的に…眼鏡は見ないようにしていた。

「ちっ…」

 小さく舌打ちをして、男は身を翻す。
 もう戻ることなど出来ない。
 もう一人の自分の意識は奥深くに眠ってしまっていて…どれだけ呼びかけようとも
応えることはない。
 自分の意識が蓋となり、太一の求める存在を閉じ込めてしまっている。
 それが…いつから自分にとって重石になり始めたのだろう。

(あいつの事を考えても何の救いもないのに…どうして、こんな想いが…
俺の中に存在する? これは…もう一人の『オレ』の感情の残滓が
作用しているのか…?)

 知りたくも、気づきたくもない真実。
 今でもその石を捨てられない意味。

 薄々とは気づいている。
 けれど、敢えて目を背けている。
 恐らく、消えてしまった自分の影響。

―男もまた、どこかで太一を想っている

 だが、その真実から目を逸らす為に紫煙をくゆらせながら…男は
当てもなく雑踏の中を歩き続けていく。
 真実から、目を背けるように…。
以前に書いた残雪を、改めて構成し直して再アップ
したお話。太一×克哉の悲恋です。
 1話と2話は以前にアップしたものの焼き直しですが…
3話目以降からは一からの書き直しになります。
 書き掛けで止まっている話の方は(不定期連載)の方に
あります。

 残雪(改) 
      


 太一と克哉の優しい思い出の場面が終わると同時に、シンクロしていた
男の意識も一旦途切れて、現実へと引き戻されていった。
 深い深海から、一気に地上に戻されたかのように苦しくて…男は
息をゼイゼイとさせながら、必死に喘いでいた。

―おや、どうしましたか…? 随分と冷や汗を掻いていらっしゃるようですが…?

 男が恭しく、こちらを心配するような素振りを見せていく。
 だが、男は相変わらず無言を決め込んだまま…ただ、Mr.Rを
睨みつけていくだけだった。

「………」

―まったく先程から貴方はずっとだんまりですね。確かに私を警戒するのは
仕方ないことだと思いますが…私は貴方が知りたくて仕方ない事の答えや、
太一さんと克哉さんのその経緯を、好意で教えて差し上げているのに…
いつまでも疑われたり、警戒されてばかりで…感謝の言葉一つもないままなら
虚しいですから、ここでその道筋を追うのを中断したってこっちは構わないん
ですよ…? 

 流石にこの段階になっても、未だに満足に言葉を発さない相手に、
黒衣の男も苛立ちを覚えたらしい。
 口調は穏やかながら…それは遠回しな警告であり、脅しでもあった。
 赤い天幕で覆われ、エキゾチックな香りで満たされた妖しい空間だった。
 ここが本当に現実の場所なのか、疑う気持ちも未だにあった。
 だが…確かにどんな仕組みや力なのかは判らないが、男はずっと…
あれ程一時はどん底に堕ちて荒れていた太一が、立ち直ったのか
その答えを追い求めていたのだ。
 だから…もう、ここは折れるしかないと観念し…やっと男は口を
開き始めていった。

「…それは困るな。俺の息子が…あの克哉って男とどんなことがあって、
そして…復活したのかずっと答えを求めていた。それを中断されたら
堪ったモンじゃないな…」

―やっと言葉を発して下さいましたね…。なら、このまま続行という
形で宜しいですか…?

「嗚呼、ここまで見ちまったら途中で止められたら不完全燃焼に
なっちまう…。最後まで、見せてくれ…お願いする」

―ええ、そういって頂けたのならば…私も貴方のお願いを無下に
断る理由はありません。夜は長いです…その間に、あの二人の間に
起こった出来事を貴方にお見せしましょう…。貴方が知りたかった答えは
その中に確実に存在していますから…

 ようやく男が言葉を発して、会話が成り立つようになった事で…
Mr.Rの機嫌も治っていった。
 この男性をクラブRに今夜招いたのは、完全にRの気まぐれだった。
 気が向いたから、このような真似をしただけの事だった。
 何故なら、今の男は退屈だったから。
 自分を満たして刺激的な時を与えてくれた佐伯克哉は…不完全な
形でしか存在しない。
 今現在の彼は、つまらなくなってしまって男にとっては興味を
そそるものではなくなってしまったから…。

(…あの時の私は、間違えてしまったんですよね…。余計な因子を
取り去れば、あの方は完全になると。私の望む者になってくれると
思っていた。だが…あの日、弱い方の克哉さんが消えたことによって
あの方は…いえ、過去を振り返っても仕方ないですね。もう…私の
望みは満たされることはない。
 ならば…せめて過去を振り返り、そのピースを繋ぎ合わせることで
私のこの退屈を紛らわせる事としましょうか…)

 男は様々な想いを交差させていきながら、そっと太一の父親で
ある男性の方に手を伸ばして…その目元を、白い手袋で覆われた
指先で伏せていった。
 そうされた瞬間に父親の意識は遠退いていき、再びRが紡ぎ直した
二人の過去へと堕ちていく。

―さあ、序幕は終わりました…。嗚呼、克哉さんにあの太陽の石を贈る
場面を最初に選んで見せたのは…その出来事が、太一さんを再び
蘇らせる大きな布石となっているからです。
 むしろ其れがなくては、あの二人の物語は…悲しくも美しい悲恋は
成立しないのですから…。
 どうか、その事を頭の片隅に入れていきながら…これからの展開を
眺めていってくださいね…

 愉快そうに笑いながら、Rはそう告げて…男の意識を再び闇の中へと
落としていく。
 そして…太一の過去を追う物語の二幕がゆっくりと開かれていった―

                     *

 夢から目覚めると、心だけは暖かかった。
 克哉との幸せな一幕を久しぶりに見れたから。
 けれど…自分が会いたくて仕方ない方の克哉は、もう存在していないと
いう事実を思い出すと太一ばベッドの中で大きく塞いでいった。

「…嗚呼、そういえば…そんな出来事もあったよな…」

 克哉に贈った太陽の石、サンストーン。
 自分の髪の色に良く似た色合いの石。
 あの日の克哉は本当に可愛くて、その満面の笑顔を思い出すだけで
こちらの心は満たされていくようだった。

「…あの石、克哉さんはどうしたんだろ…? 肌身離さず持っていて
くれたとしたら…今はあいつの方が持っているって事で! うわっ…
何か俺と克哉さんの大切な思い出が穢されるみたいで嫌だな。
…克哉さんの部屋か何かに、置かれたままなのかな…?」

 あんな夢を見たから、つい…あの日贈った石が何処にあるのか
凄く気になってしまった。

(けど…あの性格悪そうな奴が、こっちが聞いたってまともに
答えてくれる訳ないよな…)

 太一は深い溜息を突きながら、しみじみと考えていく。
 思い出してしまった以上…あの日渡した石が今は何処にあるのか
どうしても知りたかった。
 聞いても無駄と知りながらも…ふと、太一は一度だけでも尋ねて
みようかなと考えていく。

(無駄だって判っていても…やるだけやってみるか…。あの石に、俺は
克哉さんへの愛情をいっぱい込めたんだからな…)

 白い方の克哉の為に、当時彼が担当していた営業が上手く行くようにと
精一杯の気持ちを込めたお守りのつもりだった。
 その想いを思い出してしまったからこそ…太一は、どうしても知りたいと
いう感情を抑えることが出来なくなってしまった。

「…一応、あいつに聞いてみよう…」

 そう、決心して…太一はベッドの上から身体を起こして、乱れた服装を
整え始めていった。
 だが、この時点では彼は気づいていなかった。

―その石の事を眼鏡を掛けた克哉に聞くことによって大きな激震が
起こることなど、この時点の太一には知る由もなかったのだった―



 とりあえず21日夜、締め切りギリギリでしたが
『キチメガプチ』に参加エントリーしました。
 基本的に締め切り間際にならないと動かない奴ですが、
イベントに参加するんですし、開催まで一ヶ月を切りましたので
ボチボチ原稿の方も進めていきます。

 今回の予定は、鬼畜眼鏡の方が20~40P程度の
短編一つ。(カップリングはまだ未定)
 王レベの友人の処に委託させてもらう予定の
無料配布一種類(6~12P)程度の二種類です。

 とりあえずジャンル二つやっているし、時々本を読んだり
ゲームを遊んで補給する時間を確保するには…二日に一度は
アップする程度、週に3~4回程度SSを更新するって感じで
まったりこれからもやっていきます。

 これからはボチボチ、春コミの新刊情報を挟みつつ…
連載等を消化していきますので宜しく。
 今週中には、新刊のCPを決めます。
 ではでは~!

※この話はバレンタインにちなんだ克克話です。
 あまり深いテーマ性もなくイチャついているだけの
ゆる~いお話です。それを了承の上でお読み下さいませ~。
 克克が書きたかったんです!

 チョコレート・キッス 
     


―確かに蕩けるような情熱的なキスを欲しいと最初に
望んだのは克哉の方だった

 何を希望するのかもう一人の自分に聞克哉の中にはもう一人の自分に
抱かれたいという想いもあった。
 けれど相手の態度を見て、率直に欲求を伝えてしまったら自分たちは本当に
身体だけの関係になってしまような気がしたから。

(愛して欲しいとか、甘くて優しい言葉をお前に囁いて欲しい訳じゃない。
あったかくなるような気持ちだけでもオレ達の間にあって欲しいと
望んだだけなんだ…)

 眼鏡を掛けたもう一人の自分が優しくないことなど百も承知だった。
 だから甘いキスを希望しても、本当にもらえるかどうか半信半疑だったが…
強引に引き寄せられ、目を瞑っているように言われてから与えられたキスは
腰が砕けそうになるぐらいに官能的で甘いものだった。

―こんなキスを与えられたら、立っていられ、ないだろ…!

 心の中で盛大に相手に文句を叫んでいきながら、克哉は相手が
与えてくれる感覚を全て享受していく。
 五感の全てがフルで刺激されているような気がした。
 相手の匂い、触れ合って伝わる体温、抱きしめられる感触、そして真っ直ぐに
注がれる視線に、お互いの舌が絡まり合う音に…そして口付けの味。
 そのキスは本当に情熱的で甘かった。

―相手から口移しでチョコレートを舌先と一緒に送られていたから…

 濃厚で甘いチョコレートの味と、相手の味が合わさって…本来なら甘い物が
そんなに得意じゃない克哉でも、本当に蕩けてしまいそうなぐらいに
甘やかだった。
 チョコレート特有のカカオの風味が、フワっと鼻腔を擽る。
 グチャグチャと淫靡な水音が脳裏に大きく響き渡って、それだけでフルフルと
身体が震えるぐらいの羞恥と快感を覚えていく。

「あっ…はっ…」

 キスの合間に克哉は艶かしい声を漏らしていく。
 その瞳はトロンと蕩けきって、相手を縋るように見つめていた。

「はっ…んんっ…もっと…くれ、よ…」

「…随分と欲張りだな。お前が望んだものは…今、たっぷりと与えてやった
ばかりだろうに…」

「…仕方ない、だろ…。あんなキスをされたら、もっとお前が欲しくなるよ…」

 相手が与えてくれるものが、もっと欲しかった。
 今、与えてくれた情熱的で甘いキスは…克哉の中にあった小さな意地や
プライドを急速に溶かしていった。
 もう一人の自分が、猛烈に欲しかった。
 相手の袖を縋るように掴んで、その目を見つめていく。
 ペロっと唇の輪郭を舌で舐め上げられて。
 まだ、微かにチョコレートの味と香りが口腔内に残っているのを感じて
いくと…今度は克哉の方から積極的に、相手の口の中に舌を
絡めていった。

(キスって不思議だ…。しているだけで、繋がっているような気持ちになれる…)
 
 当然、どれだけ身体を繋げようとも…何百何千回とキスを重ねようとも、
本当の意味で相手と心を重ねられる訳ではない。
 それでも、ほんの一瞬で良い。
 克哉は相手と心が通っている実感が欲しかった。
 錯覚に過ぎないと判っていても、気持ちが満たされたかったのだ。
 だからさっきまでは言えなかった一言が、唇から零れていく。

「なあ…もっと、お前を…感じ、たい…」

「嗚呼、お前は欲張りだからな…。キスだけで到底満足出来る筈が
ないからな…」

「…っ! もう、どうしてお前ってそんな言い方しか…ムガッ!」

 克哉がカっとなって反論しようとした矢先に、相手から強引に唇を
塞がれて、いつの間にかベッドの方まで誘導されていた。
 こちらが気づかない間に、此処まで相手にさりげなく移動させられて
しまったらしい。
 
(いつの間に…ここまで移動させられていたんだ…?)

 克哉が内心、そう突っ込んでいくもすでに遅かった。
 相手はこちらの体を押し倒すと、一気に下肢の衣類を剥ぎ取っていき…
全てを晒させると、大きく足を開かせて己の身体を割り込ませて来た。

「わわっ…! きゅ、急すぎるだろ…ああっ!」

「…何を今更…。さっきから俺が欲しくて堪らなくなっていたのは
お前の方だろうが…」

 そうして、抵抗する間すら与えられず…一気に最奥までペニスを
穿たれていった。
 普通慣らしもせずにこんな行為をされたら激痛が走るだけなのだが…
この男の性器は魔法でも掛かっているのか、入って来た瞬間に…
どうしようもない圧迫感を与えつつも、早くも克哉の感じるポイントを
探り当てて、強烈な快楽を引きずり出していた。

「ん、あっ…! ふっ…ああっ…!」

 足を開かされて、こちらのペニスを握りこまれていきながら…最奥を
突き上げられていくと全身から痺れるような強烈な快感を覚えていった。
 もう、何も満足に考える事など出来なかった。
 相手から与えられる感覚だけが、克哉の中で全てになる。
 無我夢中で、相手の背中に縋りついてその感覚に耐えていくと…
克哉の目元から、生理的な涙が溢れ始めていった。

「ん、はっ…! ああっ…もっと、くれよ…お前、を…オレの、中に…!」

「嗚呼、くれてやろう…。しっかりと、お前のこちらの口で…俺のを
飲み干すと良い…」

「は、あっ…うん…判った…うあっ!」

 身体の奥で、相手が圧倒的な存在感を持って息づいているのを
感じて…それだけでブルリと震えていく。
 ゾクゾクして、止まらなくなっていくようだった。
 溢れる唾液を嚥下することも忘れて、夢中で相手の刻む律動に合わせて
腰を振り続けていく。
 絶頂は、もう間近だった。
 
「くっ…!」

「ああっ…あああっ…!」

 相手が息を詰める声が聞こえると同時に、克哉にも限界が訪れていった。
 勢い良くもう一人の自分の熱が注ぎ込まれて、こちらの中を
満たしていった。

「はっ…んんっ…」

 克哉が満足したように甘い声を漏らしていくと…相手が背後から
こちらを抱きしめてくれたのが判った。
 そして、顎を捉えられて深く口付けられていく。
 その瞬間、意地も何もかもが完全に消えて…零れたのは、素直な
一言だけだった。

「…今日、会えて嬉しかったよ…『俺』…。来てくれて、ありがとう…」

「っ…!」

 その一言はもう一人の自分にとっても意外だったのだろう。
 驚いたように目を見開いていくが…直ぐに呆れたように瞳を眇めて
微笑んでいく。

「…まったく、しょうがない奴だな…」

 そして、そう呟きながら…もう一度だけ、仄かにチョコレートの味と香りが
する甘い口付けを克哉の唇に落として、与えてくれたのだった―



 

※この話はバレンタインにちなんだ克克話です。
 あまり深いテーマ性もなくイチャついているだけの
ゆる~いお話です。それを了承の上でお読み下さいませ~。
 克克が書きたかったんです!

 チョコレート・キッス 
  


 あっ、と克哉が思った時にはすでに遅かった。
 肩を掴まれて強引に引き寄せられていくと、自分の眼前に
もう一人の自分の端正な顔立ちが存在していた。 
 その瞬間、ドクンと大きく鼓動が高鳴っていうのを自覚していく。

「な、何…?」

「…ようやく素直になったお前に、なにか褒美をやろうか…? 
何が良い…?」

「えっ…褒美って…?」

 予想もしていなかった展開に、克哉が目を見開いていくと相手は
愉快そうに喉の奥で笑っていく。
 その様子に一瞬、ムっとなった…相手がこちらに対して何か与えて
くれようとしている事を考えて、言葉を飲み込んでいく。
 息を飲んで肩を竦めていくと…眼鏡が、自分の瞳を覗き込んで
いるのが判った。
 お互いの吐息が掛かりそうなぐらいに間近に…もう一人の自分の
アイスブルーの瞳が存在している。

(こいつの目…綺麗だな…)

 自分と同じ顔の造作をしている筈なのに、まるでその双眸が宝石の
ように感じられてしまって、克哉の意識は釘付けになっていく。
 心臓が早鐘を打って、顔が火照り始めていった。
 どんな言葉を言えば良いのか、判らない。
 頬を撫ぜられて…愛撫するように指を上から下へと滑らされていくと
たったそれだけの刺激で、ビクっと身体が震えてしまっていた。

「…ほう? お前の要望は何もないのか…?」

「そ、そんな事…急に言われたって、思いつかないよ…。一体、
どんなことを願えば良いのか…判らない…」

「…率直に自分の欲望を言えば良いだろう? 俺にグチャグチャになるまで
奥まで突き上げられて犯されたいとか、刺激的な夜が欲しいとかな…?」

「っ…! 馬鹿、そういう事しかお前は言えないのかよ!」

「…何を今更…お前が俺に望んでいるのは、まさにそういう事じゃ
ないのか…?」

「うっ…!」

 相手の言葉に、とっさに否定出来なかった自分が情けなかった。
 確かにこの男に何度も好き放題にされて来た。
 克哉の脳裏には確かに相手が与えてくれた猛烈な快楽が焼きついて
しまっている。
 だからこうして…肩を抱かれているだけで血液が沸騰するように
熱くなっているのが判った。
 けど、相手の言い方では…本当に自分達には肉体関係とか、快楽とか
そういうものしか存在していないような感じがして寂しくなった。

(…まあ、こいつにそんな甘ったるいものを求めたって無駄だというのは
判っているけどな…)
 
 半ば、諦めている。
 けれど…心のどこかではそれ以外のものが存在していると
期待したかった。
 克哉は、何かを訴えるように…真摯な瞳で相手を見つめていった。
 目は口程に物を言うという言葉がある。
 上手く言い表せないこちらの想いが…少しでも伝わってくれればと
望みながら…。

「…何だその目は。言いたいことがあるなら…ちゃんと口で言え。
言わなければ決してこちらに伝わらないぞ…?」

「……。なら、言っても良いのか…? オレが望んでいるものを
本当に…与えてくれるのか…?」

「嗚呼、出来る範囲で叶えてやろう…」

「なら、キスが欲しい。セックスじゃなくて…お前から、脳髄が蕩けるような
そんな情熱的なキスが、今…欲しい」

「…ほう、キスだけで足りるのか…?」

「うん、まず…セックスよりも前に、そっちが欲しい。良く考えたら
お前に何度か抱かれているけど、キスされた事は殆どなかったから…」

 そう克哉が望んだのは大晦日の記憶があったからだった。
 あの日に初めて、もう一人の自分とキスをした。
 そうしたら気持ちがホワっと暖かくなって幸せな気持ちが満ちたから。
 何度も抱かれているけれど、キスもなくただ貫かれている時は強烈な
快感はあったけれど…心ではどこかで拒絶していた。
 けど、あのキスをした瞬間に…自分の中にあった壁がゆっくりと溶けて
いくのを感じたから…。
 だから克哉はそれを希望していった。
 
(キスをしたからって…こいつの心が判る訳ではないけれど…。大晦日の
夜に感じたあの気持ちを…思い出したいんだ…)

 それが結局、克哉にバレンタインチョコを用意させるという酔狂にも
取られかねない行為に繋がっているのだから。
 だから…キスを強請るように相手の袖をギュっと握って…瞳を
閉じて唇を軽く突き出していく。

「……そのまま、目を閉じていろ…」

 暫くしてから、相手のそう押し殺した声が聞こえていった。
 その十数秒の間、克哉は本当に指先を震えさせていきながら…
相手の唇を待っていった。
 カサコソ、という何かが擦れ合う音が聞こえた。

(何だろう…この音は…?)

 相手が何かをしていることは判ったが、目を閉じているので確認が
出来ない。

「わっ…!」

 だが、とっさに目を開こうとした瞬間…相手の手のひらで目元を
覆われて阻まれてしまった。

「…目を閉じていろと言っただろうが…。俺が良いと許可を出すまで
決して開けるな。判ったな…」

「う、うん…」

 そうしてこちらが頷くと、相手の手のひらが離れていった。
 その次の瞬間…克哉は相手の腕の中に強く抱きしめられて…
深く深く、唇を重ねられて。
 相手の情熱と、甘やかなものを一緒に贈られていったのだった―
 

 ※この記事は香坂が現在やっている、痩せる為に
有効かな~という習慣を記している記事です。
 ペース的に一ヶ月で1キロぐらいの効能ですが
一応痩せているので、ちょっと書いてみた。
 あくまで私はこれらを出来るだけ守るようにしたら
ずっと横ばい状態だった体重が落ちて来たという程度
ですので、興味ある方だけお読みください。

 興味ない方はスルー方向で宜しく~。

 ※この話はバレンタインにちなんだ克克話です。
 あまり深いテーマ性もなくイチャついているだけの
ゆる~いお話です。それを了承の上でお読み下さいませ~。
 克克が書きたかったんです!

 チョコレート・キッス 

 ―この二週間我ながら場かな真似をしてしまったと
何度思ったか判らなかった。

 誕生日を祝ってくれたお礼だからと言って、もう一人の自分に男である
自分がバレンタインチョコを贈るなんておかしいって事ぐらい
判っていた。
 けれど街行く女性達や、同じ会社内にいる人達が好きな男の
ことを語ったり、幸せそうにチョコレートを選んでいる姿を見ていると
自分もふと、そんなお祭り騒ぎに参加してみたいと思ってしまったのだ。
 今の自分の感情が、相手が気になる程度のレベルであったと
しても…「お前は本当に馬鹿だな」と言いながら、どこかであいつが
出て来てくれる事を密かに祈っていたのだが…。

(実際に叶うなんて、思ってみなかった…)

 玄関からズカズカと入り込んで来た男の姿を見ながら、克哉は
未だに信じられないといった表情を浮かべていた。
 もう、会えないままなのかと思っていた分だけ…内心ではこうして
会えた事に少しだけ嬉しさはあったけれど、やはりもう一人の自分で
あるせいか…意地の方が先立って、素直に喜びを表せなかった。

「…よお、久しぶりじゃないか、オレ…。俺に会えなくて寂しかったか…?」

「そ、そんな事…ある訳、ないだろ…! オレはお前に会えなくったって…
別に寂しくはないよ…!」

 と、口で言いつつも相手にチョコレートなんて用意してしまった為か
いつ先に気づかれてしまうのか気が気じゃなくて…まともに顔を
見ることが出来ず、頬を赤らめたまま相手から目を逸らすことしか
出来なかった。
 しかしきっと、相手はこんなこちらの動揺などお見通しなのだろう。
 ククっと喉の奥で笑いを噛み殺しているのが聞こえて、克哉はカっと
なりそうだった。

(うううう…実際にこいつと顔を合わせると、メチャクチャ恥ずかしくて
仕方ない…! 何でオレ、チョコレートなんて用意しちゃったんだろ…!)

 しかも相手から真っ直ぐに見つめられているのが判るだけに
ドンドン居たたまれなくなってしまった。
 しかしチョコレートの存在を相手から完全に隠してしまったら今度は
本末転倒になってしまうので…どうすれば良いのか判らず、克哉は
内心パニックに陥りかけていた。

「…ほら、どうした…? お前は俺に何か贈り物をしたいから…
強く会いたいと望んでいたんじゃないのか…?」

「…っ! それは…!」

「…ほら、図星だろう…? それならば…少しぐらい素直になった方が
良いんじゃないのか…? 変な意地を張り続けているとロクな事に
ならないもんだからな…」

「そ、んな事…言われたって…」

 克哉は困ったように、つい机の上のチョコレートを見つめていくと
相手は目ざとく、その存在を発見していく。

「…おいオレ、それがそうじゃないのか…? お前が何も俺に対して
用がないんだったら…俺はこのまま、大人しく退散するが…どうする?」

「っ…! ちょっと待って! 判った、判ったよ…!お前にこれを渡すから…
帰るのは止めろよ!」

 そうして克哉は反射的にチョコレートの箱に飛びついていって、
相手に押し付けるように渡していく。
 ムードや情緒のカケラもない渡し方だった。
 それに少しだけ後悔しかけたが…二十代半ばの成人男子が
女性のように可愛らしくチョコを贈るなど到底出来る訳がない。

「…これ、受け取って! とりあえず…オレの誕生日に、こっちを祝って
くれたお礼だから! 他意はないから…! た、単なる義理チョコだから!」

 恥ずかしさの余りに、本心とは裏腹の言葉ばかりが口から零れていくが…
こっちの思惑に反して、顔は見る見る内に赤くなり耳まで火照り始めていた。
 その様子を見て、こっちが意地を張っているだけだと丸判りに
なってしまっているに違いない。
 もう一人の自分は相変わらず、ククク…と笑い続けていきながら
意地悪そうな笑みを浮かべてこちらを見つめて来ていた。

(うううう…バレンタインにチョコを相手に贈るのってこんなにも
恥ずかしいことだったのかよ…!)

 うっかり魔が差して、どうして自分はコイツにチョコを贈ろうと
などと考えてしまったのかその軽率さに本気で後悔しかけた。

「…ほう、義理なのか。なら…お前の気持ちなど、これにはまったく
込められていないと…そういうんだな…?」

「あっ…」

 自分からそう言ったのに、相手に先にそういわれてしまうと…何故か
唐突に寂しくなってしまった。
 どうして、眼鏡にそういわれてしまったらこんなにも胸が痛く
なってしまうのだろう。
 ふと、寂しくなって縋るように相手を見つめてしまうが…相手は変わらず
意地の悪い光を瞳にたたえるばかりで、特に反応がない。
 こちらが何も言わないままでいれば…ただ、義理チョコを贈っただけに
なり…自分の想いも、何も伝わらないままになってしまうと考えた時、
何となく寂しくなった。

「…違う、よ…」

 だから、猛烈な羞恥を堪えていきながら…自分から、撤回していく。
 せっかく、会いたいと思っていたその願いが叶ったのならば…せめて
素直にならなければ勿体無いと思ったから。

「…ほう? 何が違うというんだ…?」

「…今日、オレはお前に逢いたいと思ったから…チョコを用意したんだ。
こんなの全然オレらしくないって判っていたけど、お前に馬鹿にされるかも
知れないとも考えたけど…贈りたいと思ったのは本当だから…」

 縋るように相手を見つめていきながら、そう…精一杯の想いを
搾り出していく。
 愛しているとか、好きだとか…臆面もなく言える性格じゃない。
 相手に抱いている感情がそういったものなのかもまだ自分では
判らないけれど…。

「…お前に逢いたい、と思ったのは本当だから…お前に馬鹿な奴だな
といわれるだけでも構わないから…顔を、見たかったんだ…」

「…やっと素直になったな」

 克哉の口からやっと本心が零れ落ちると同時にもう一人の自分が
満足そうに微笑み、そして間合いを詰めていく。

「えっ…」

 克哉が間の抜けた声をつい漏らしてしまった時にはすでに…
相手の顔は、彼のすぐ眼前にまで迫って来ていたのだった―
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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