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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※ この話は香坂のオリジナルの人魚姫の
お話です。
 鬼畜眼鏡とはまったく関係ありません。

 子供の頃から人魚姫の話が好きで頭の中であれこれと
弄っている内に十年ぐらい前から出来上がっていた話です。
 興味ある方だけ目を通してやって下さい。

 『過去ログ』

 マーメイド・ティア      


ティアとリュカが出会ってから二年の月日はあっという間に流れました。
その間、ティアはテティスや他の人魚達から教育を受けて必死に学び…
この近隣の国の言語を一通り話せるようになり、読み書きも最低限
出来るようになりました。
片言しか話せなかった頃は地上に出るのに問題がありましたが、これで
言葉での憂いはなくなったと確信したテティスは…海の底でこう切り出しました。
 
「ティア、そろそろ貴方を丘の上に出しても問題ない段階になりましたね。
ここまで良く頑張りました。私達、海の中にいる者が教えられるのはここまで。
後は…30年以上前に人魚から人になった私達の姉さんの元に貴方を預ける
ことにします。覚悟は良いですか…?」
 
「はい、テティス姉さま…お願いします。私は早くリュカの傍に行きたいですから…」
 
海底にある人魚達が澄む宮殿の奥で、人魚の姉妹達はそうやりとり
していました。
ティアの覚悟をしかと受け止めたテティスは…そうして意を決して、妹姫の
手を引いて…ゆっくりと地上まで泳いでいきました。
 その時、他の人魚達は寂しそうに…けど精一杯笑顔を浮かべていきながら
末の妹姫の門出を祝っていきました。
 
「さようなら…ティア。元気でやるのよ~!」
 
「レイア姉さまに宜しくと伝えておいてね~!」
 
「必ず幸せになるのよ~! 人間になっても元気でね~!」
 
 人魚達は皆、輝くような美貌を持った女性達でした。
 
「はい、姉さま! 姉さま達が精一杯のものを与えてくれた事…私を大切に
してくださった事を決して無駄にしません。今まで本当にお世話になりました…!」
 
 二年前目覚めたばかりの頃はまともにしゃべれなかったティアが流暢な
言葉で気持ちを伝えた事で人魚達の目に涙が浮かびそうになりました。
 
「さあ、ティア…他の姉妹達の気持ちを決して無下にしてはいけませんよ…。
さあ、夜明けの頃も近くなりました。そろそろ行きましょう…」
 
「はい…」
 
 ティアは名残惜しげに自分と姉妹同然に過ごした人魚達の姿を
焼き付けました。
 人間になってしまえば、もう二度とこうして水中で共にすごすことが
出来ないという事実がとても寂しく思ってしまったけれど…リュカとの約束を
思い出してその感傷を振り切りました。
 
(姉様達と離れるのはとっても寂しい…けど、これが私が選んだ道だから…)
 
 ジワっと涙が出そうになるのを堪えて、ティアはテティスの後に
ついていきました。
 海の中で泣いてもすぐには他の人には判らないけれど、顔をクシャクシャに
してしまったらきっと皆にわかってしまうし…他の人にそんな顔を覚えていて
欲しくなかったから気丈にティアは笑いました。
 泣き笑いに近い感じでしたが…どうにか微笑み、そしてゆっくりと二人で
地上に向かって泳ぎ始めていきました。
そのまま海底から水面に上がる途中で夜が終わっていき、丁度時刻は
朝日が昇る頃を迎えました。
海は朝日によって美しく照らされ、輝くようでした。そんな中、テティスは
妹をある小さな港町へと泳いで連れていったのでした。
その港町は随分と見た目は寂れていましたが、港の周辺だけは
活気がありました。
水面に上がるとまず、人々の喧騒が風に流されて届いて来ます。
どうやら少し離れた処で大きな市場が開かれているようです。
 
「姉さま、姉さま…どうしてこんなにうるさいの? 私、怖いです…」
 
「ああ、ティア。大丈夫よ…少し離れた処で人間が集まって騒いでいる
だけだから。こっそりと隠れていれば平気だからそんなに怖そうな顔を
しないで…。今、レイア姉さまを呼ぶから少し待っててね」
 
「は、はい…」
 
そうしてティアは怯えた様子で、テティスが目を閉じて30年前に
丘に上がったという姉姫に呼びかけていきます。
人魚達は全て、海底にある大きなアコヤ貝から新たな命を授けて
もらったという繋がりがあります。ですから『人間であった時は赤の他人
同士であった少女や女性達も、人魚になった時点では姉妹となるのです』
同じ『母』を持つ為に心で強く念じれば相手に呼びかけて位置を知らせる
ぐらいは可能なのです。
そうして十分ほど経過した頃でしょうか。
太陽はすっかりと昇っていって昼近くになっていきました。
 
(レイア姉さまってどんな感じの人なんだろう…)
 
ドキドキしながら、ティアは待ち構えていきます。
 
「へえ…あんたが末妹かい! 随分とべっぴんに育ったもんだねぇ!」 
 
いきなり港の縁に黒髪の気風の良い長身の女性が立っていました。
見た目的には四十前半ぐらいの、けれど美しい女性でした。
 
「レイヤ姉さま! 久しぶりです! ああ、相変わらずお元気そうですね…
すっかり、港の女性っぽくなってしまわれて…」
 
「おやまあ、テティスも相変わらず綺麗なままだねぇ…。昔、私が人間に
なったばかりの頃は私の方があんたを姉さまって呼んでいたのに、今では
すっかり年上になってしまったからねぇ。人魚だから…成人を迎えれば
そのままもっとも美しい姿のまま寿命を迎えるまで年を取らずに生きて
いけるか…。ここまで丘に上がって老けてしまうとそれが少し
うらやましくなるけどね…」
 
「そんな事をいわないで下さい。私は逆に、人と結ばれてちゃんと人間に
戻ることに成功した貴方が羨ましいのですから…。私にはその勇気が
なかっただけですから…」
 
(えっ…この女の人よりもテティス姉さまの方が本当は年上だったの…?
 けど、全然そんな風には見えないわ…?)
 
 二人のやりとりを聞いてティアはびっくりしましたが、会話に入り込める
様子はありません。
 質問をして話を止めてしまうのもはばかられてしまったので、暫くティアは
口を閉ざしていました。
 
「…つもる話はいっぱいあるけど…この子が退屈そうだし、そろそろその話は
止めておこうよ。さて、この子がティアで良いのかい? 随分と綺麗な子だね…。
本当、せがれが惚れたこの国の姫さんにそっくりだよ…」
 
「っ! レイア姉さま! その事は言わないで下さい! まだティアには
話していないんですから…!」
 
「えっ…?」
 
その一言を聞いて、ティアは心底驚きました。二人の会話にまったく入り込めず、
完全に聞き役に回っていたティアは今の一言に大きな引っ掛かりを感じていきました。
 
(リュカ…も、私を誰かに似ているって言っていた…。私と、似ている人が
いる…どうして?) 
 
ティアは凄く疑問に思いながらも、そこで会話を止めようとする二人を
見ているとそれ以上突っ込んだことを聞けませんでした。
そうして三人の間に沈黙が落ちていくとレイアはいきなり、一本の短剣を
右手で持ち…己の腕にそっと宛がいました。
その光景にティアは心底びっくりしてしまい、大声で叫んでしまいました。
 
「レイア姉さま! 何でそんな事をするんですか! どうして?」
 
その瞬間、レイアはフっと微笑みながら迷いなく己の腕に一筋の傷を
つけていき、其処から己の血を出していきました。
 
「簡単だよ。人魚から人間になった私の血を飲むことで…お前はあの厄介な
魔女と取引をする事なく、人間になれるから。薬みたいなものだと思っておくれ。
さあ、私の血をお飲み、ティア…」
 
そうしてレイアは血を流した腕をそっとティアの方に差し出していきました。
突然の展開にティアはついていけず困惑した様子で小さく呟きました。
 
「魔女の代償…?」
 
 その問いに答えたのはテティスでした。
 
「そうよ、私達人魚が住んでいる海よりも遥か遠く…薄暗い深海に、私達人魚を
人間に戻す秘薬を作れる最古の人魚―私達は魔女と呼んでいる存在がいるのよ…。
魔女はね、覚悟を見せなければ…代償を払わなければ決してその秘薬を
譲ってくれない。遠い昔に海の泡となった人魚は声を奪われ、レイア姉さまは…
最初の三ヶ月、歩く度に耐え難い激痛と…美しい紫の瞳を魔女の漆黒の瞳と
交換したのよ。それでも声を失うよりはマシだと受け入れたけれどね…。
けれど、秘薬がすっかりと浸透した姉さまの血を定期的に与えてもらえれば…
貴方は人間に戻れるのよ。その事に深く感謝しなさい…」
 
神妙な顔をして姉がそう説明すると、最初は怯えていたティアも…相手に
感謝しながら、そっとレイアの腕に唇を寄せました。
痛々しい様子に眉をひそめながらも…何も失うことなく、人間になれること。
そう考えたらとても幸せだと思い…そっといつくしむように先に人間になった
姉の腕に口を寄せて、その血を舐めとりました。
そうして暫くすると…ティアの身体は熱を怯えていって。
急激に身体の変化が起こっていきました…。
 
「うっ…ううううっ…はっ…」
 
 そうして、ティアは苦悶の声を挙げていきました。そんな妹の身体を
テティスは必死に港に上げていきます…。
 
「レイア姉さま…どうか、この子をお願いします…」
「ああ、わかっているよ。私が責任を持って面倒を見るから…。だから
あんたはこれ以上、苦しまなくて良いんだからね…」
 
レイアは優しく微笑みながら、テティスに向かってそう告げました。
その瞬間彼女は泣きそうな顔になりながら神妙に頭を下げていき…姉に
感謝しながら、ティアを託して…静かに海の底に戻っていきました。
それからレイアはティアを自分の家まで運んでいくと献身的に看病をして、
翌日にはすっかり熱も引いて体調が良くなりました。
そして簡素なベッドの上で目覚めていくと、その時にはティアの足は人魚の
証であった大きなヒレが二つに割れて…スラリとした綺麗な脚が現れていました。
 
「ん…んん、ここは…?」
 
「ああ、やっと目覚めたのかい? あんた、相当に苦しんでいたけど一晩で
終わって良かったよ。私の時にはその苦しみは三日三晩だったからねぇ…
脚の痛みも半端じゃなかったし。脚の具合はどうだい?」
 
「あ、はい…。大丈夫です。ちょっと足先が痛いけど、そんなに辛くは
ないですから…」
 
どうにか微笑みながらそう答えていくと、レイアはニカっと愉快そうに微笑みなました。
 
「ほほう! 随分と頼もしい言葉を返してくるじゃないか…! そんなに
早くリュカの処に行きたいのかい?」
 
「はい! 行きたいです! 私、約束しました! リュカの傍に絶対に
行くって!それを果たしたいですから…!」
 
ティアがしっかりした口調でそう答えていくとレイアは嬉しそうな笑みを
浮かべていきました。
 
「ふふ、あんたがそれだけ本気になってくれているなら嬉しいよ。なら…
今日から私があんたがリュカの傍にいられるように…侍女としての知識や
技術をビシバシと叩き込むよ! まず働かざるもの食うべからず! 幾ら
あの子が王子という身分だからって、あの子の母親に瓜二つだからって
それだけでずっと一緒にいられる程世の中は甘くないよ! まず城に
勤められるだけの能力があると認めさせて、その上じゃなきゃあの子の
傍にいられない! だから全力で行くよ!」
 
「はい! お願いします…レイア姉さま! 私にその為の知識を
教えてください!」
 
そうして…初めて顔を合わす先代と、現人魚姫は本気で熱く心を
通わしながらガシっと手を組んでいきました。
 しかしこの時、ティアはまだ地上の風習とかに疎かったので気づきませんでした。
 この国の王子様であるリュカをこの女性が親しげに、呼び捨てで名前を
呼んでいることの意味とその理由に…。
そうして…リュカの元にいる為に、ティアは地上でも厳しい特訓の
日々を数ヶ月送ることになりました―

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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