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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 掲載が随分と間が空きました。
 こちらもボチボチ終わらせていくので良ければお付き合い
下さいませ~。

 2009年度 御堂誕生日祝い小説
(Mr.Rから渡された謎の鍵を使う空間に眼鏡と御堂の二人が
迷い込む話です。ちょっとファンタジーっぽい描写が出て来ます)

  魔法の鍵  
              7  

  御堂が立ち止まり、奇妙な反応をしていた部屋の扉を
開いていくと…其処にh見覚えがある光景が広がっていた。
 それを目の当たりにして克哉は言葉を失い、呼吸すらも
困難になりそうだった。

「ここ、は…」

 確信を深めていくと同時に、強烈な眩暈すら覚えていった。
 間違いない、此処は…この光景は決して忘れることなど出来ない。
 薄暗くて視界は効かなかったが…此処は以前の御堂の部屋だった。
 今、ビジネスのパートナーとして傍らにいる御堂はあの時とは
別の部屋に住んでいる。
 一度、克哉と決別をした際に…それ以前に住んでいたマンションは
引き払っている。
 コレは、以前に彼が住んでいた部屋の方だった。
 今では決して失うことが出来ない最愛の人間に…拭い去ることの
出来ない行為を繰り返した…。

「あ、あああ…!」

 知らない間に唇から声が零れていた。
 其れは嘆き、後悔の念が現れた叫びだった。

「俺は…俺は…あんた、に…!」

 しかも部屋の中は「あの当時」を再現したものだった。
 御堂の自由を奪っていた拘束具が壁に取り付けられて…彼を
快楽で苛んでいた無数の性具が散らばっていた。
 独特のすえた臭気が部屋の中に漂っている。
 其れは克哉にとって決して忘れることが出来ない罪を示した部屋。
 幸せで満たされた日々を送っていたからこそ…半ば
忘れていたかつての鬼畜めいた己の行動。
 其れを再び思い出して、さっきまで腕の中にあった幸福が…
一片に克哉の心の中で消え去ってしまいそうだった。

「み、どう…」

 すまない、とは素直にいえなかった。
 ごめんさないだの、すまなかったなど…そんな言葉一つで流せる程…
かつて自分が犯してしまった罪は軽くなどないのだから。
 思い出せば思い出すだけ、御堂という存在への愛情があの頃とは
比べ物にならないぐらいに強くなったからこそ…その罪が一層
彼の心に重く圧し掛かる。

―そうだ、俺は一生掛けて償えないぐらいの行為をあんたにしたんだ…

 その部屋を見た時、克哉は己の罪を鮮明に思い出していく。
 幸せだった日々に忘れかけてしまっていたかつての所業を。
 決して消え去ることが出来ない過去の証が、其処に存在していた。

「俺は…本当に、何て事をしたんだろうな…」

 自嘲的な笑みが口元に知らず浮かんでいた。
 ただ一人の人間を欲しくて、その為に陥れようとした。
 自分よりも遥かに上に…高みに存在していたその人を
己の位置まで落とそうと相手を監禁して、貶め続けた。
 その行動によって御堂は十年掛けて築き上げた大企業MGNでの
部長職を失う結果になった。
 しかもあろう事か…自分がその後釜に収まり、相手の怒りを
煽るような言動を繰り返していた。
 最初は憤りに燃えていた御堂が…年月を重ねるごとに
空ろな表情を瞳を浮かべるようになり…何の反応も返さない
人形に等しくなったのはいつぐらいの事だったろうか。

「思い、出した…俺、は…あんたに…」

 再会してから十ヶ月近くが経過している。
 そして…決別してから、再び出会うまでは一年以上の時間が
過ぎている。
 合計すれば二年近くの時間が流れていたから…すでに
遠いものになっていて、忘れかけていた。
 その忌まわしい記憶も罪も、上書きして幸せなものに
する為にアクワイヤ・アソシエーションを建設してから
一緒に頑張り続けた。

(それで俺は…自分の罪を償った気になっていた。けれど…
果たして本当にそうだったのか…? 御堂は本当に俺の事を
心から許しているのか…? こんな愚かで、卑劣極まりない行為を
した俺の事を…!)

 さっきまで腕の中に抱いて、愛情を確かめ合った筈だった。
 心から愛おしいと、この人が大切だと思い知った直後に…かつての
己の罪を思い知らされたことで克哉は自分という存在が全否定を
されたような気持ちになった。
 身体が大きく震えて、情けない事にその場に膝をつきそうになった。
 それぐらいの衝撃を、すでに失われたはずの光景を目の当たりにする事で
彼は覚えてしまったのだ。
 息をする事すら忘れて、克哉は食い入るようにその薄暗い部屋の中を
見つめていく。
 その瞬間…克哉は信じられないものを見た。

―其処に立っていたのは…もう一人の自分。眼鏡を掛けていない方の
自分が…いつの間にか部屋の中心に立っていたのだ…

「お前、は…!」

―やっと思い出したんだね…かつての自分の罪を…。そうだよ、お前は
これだけ酷い事をあの人にしたんだよ…?

 いつも気弱でおどおどした表情を浮かべていたもう一人の自分が…
信じられないぐらいに凶悪な目を浮かべていきながら…こちらの
罪を言及していく。
 其れは黒衣の男が仕掛けた、罠でもあり…問いかけでもあった。

「うるさい…黙れ!」

―へえ? オレにそんな事をいう権利がお前にあるんだ…?
此処はお前の罪の証が眠る場所。…すでに現実では御堂さんが手放して
存在しなくなったとしても…お前がした事の全てが消える訳じゃない。
…お前は、容易に許されない…それだけの事を御堂さんにした。
その事は…決して忘れちゃダメなんだよ…?

 クスクスと、尋常じゃない笑みを浮かべていきながら…もう一人の
自分が断罪するように…言葉を連ねていった。
 狂気すら感じられる澄んだ蒼い双眸が…こちらを真っ直ぐに
見据えてくる。
 たったそれだけの事に、こちらは呼吸すら困難になりそうだった。

「判っている…俺は、忘れない! 忘れる訳がないだろう…!
あいつに、してしまったことを…!」

 引き絞るように声を張り上げていく。
 それは…克哉の心の中に、奥底ではずっと眠っていた…後悔の念であり
本心でもあった。
 決して得られる筈がなかった筈の愛を得られたことで…幸福を
感じながら、素直に享受することが出来ないでいた。
 何故なら…克哉の中にはずっと、かつて犯した罪の…その罪悪感が、
後悔する気持ちが潜んでいたからだ。

『にはこの幸せを受け取る権利などない…!』

 心のどこかで、自分を責め続けていた。
 其れは癒えることのない傷のように…ずっと心の奥底で血を
流し続けて存在し続けてきた思いであり、傷でもあった。
 かつての罪を喚起されて、思い知った。
 自分は…あの人と幸せになる権利など、存在しない事を。
 本当の意味で許されることなど有り得ないのだと…その重さを思い知らされる
事で確信を深めていった。

―そうだよ。やっと判ったんだ…。だってそうだろ…? お前が同じことを
されたら、相手を許せるかな…? 無理だよね? だってオレだって許すことなど
出来ないもの…。そんな事も判らなかったなんて、お前は本当におめでたいよね…?

 そして凶悪に、ゾっとするぐらいに綺麗に微笑んでいきながら…もう一人の
自分はゆっくりと克哉の方に歩み寄っていく。
 その眼差しが、澄み切っているそのアイスブルーの双眸が、今の克哉の
恐怖心を煽っていく。
 まるで己の罪の全てをその目に映して見せ付けられてしまいそうで…
本当に怖くて仕方なかった。
 だが、それでも目を逸らすことが出来ず…硬直していると…。

「惑わされるな、克哉…。其れは全部、戯言に過ぎない…!」

 不意に肩に暖かい手の感触を覚えた。

「孝典…!」

 もう一人の自分が断罪する為にゆっくりと歩み寄っている最中、
克哉の背後には…気づけば、本物の御堂が傍らに存在し、励ますように…
言葉を放っていったのだった―
 

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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