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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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※御克ルート前提の、鬼畜眼鏡R内で判明した澤村や 
ノーマル克哉の大学時代の過去が絡む話です。
 RのED後から一年後の春…という設定の話なので
ご了承くださいませ。

 桜の回想 
            

 ―見も知らぬ男性を振り切って、御堂は強引に克哉を自宅に
連れて行ったが…その瞳は、ガラス玉のようなままだった。
 とりあえずリビングのソファの上に座らせて…お互いにスーツの上着
だけは脱いでいったが…腰を掛けている克哉は四肢をダラリとさせていて
呆然としているようだった。
 ネクタイを解いていきながら、まるで人形のように生気を失った恋人を
眺めて御堂は困惑の表情を浮かべていく。

―ごめんなさい…

 必死になって、壊れたスピーカーのように相手への謝罪の言葉を
繰り返していた克哉の姿を見て痛ましいと思うと同時に、大きな
疑念が膨れ上がっていく。

(本当に君は…あの男を知らないのか?)

 あの男は、克哉と何かしらの因縁がありそうだった。
 言動と雰囲気からして、それを十分に察することは出来た。
 だが、克哉は知らないと…相手を思い出せないという言動を
繰り返して涙まで浮かべている。
 その様子はあまりに悲痛で、傍らで見ている御堂ですら
これ以上は見ていられないという心境に陥った。
 だから…あの男から引き離す意味で、強引に連れて返った訳だが
同時に…これで良かったのか? という思いも胸の中に生じていく。

「…克哉、聞こえているか?」

 出来るだけ穏やかな声を作って、克哉に声を掛けていく。
 だが、相手は殆ど反応を見せない。

「…今、君の傍にいるのは私だ。聞こえているのなら…何か返事を
してみせてくれ…」

「あっ…」

 真っ直ぐに強い視線で相手の瞳を覗き込み、頬を撫ぜながらそう
問いかけてやっと…僅かな反応が返ってくる。
 真摯な声で御堂が問いかけ、呼びかけていった。
 …そうしている間に、克哉の瞳に生気が戻っていく。
 先程までは夢幻を彷徨っていた眼差しが焦点が宿っていくのを見て
少しだけ御堂は安堵していった。

「…克哉、もう一度聞く。あの男は…誰だ…?」

「…御免なさい。孝典さんに…隠し事はしたくないのに、どうしても…
オレ、思い出せないんです…」

 まるで怯えた子供のように、弱々しく訴えかける。
 その度に胸の中に疑念と、憤りが生まれていく。
 あの男の正体を知りたいという猛烈な欲求と、こんな参っている風の
克哉に問い質してはダメだという両方の思いが胸の中に
宿って葛藤していく。

(…ここで強く出ても、きっと回答は出ないな…。それで判ると
いうのなら幾らでも強気に出れるのだが…)

 辛うじて、胸の中のモヤモヤを抑えて…克哉の身体をそっと
抱きしめていく。
 暫く優しく背中を撫ぜていくと、少し相手の緊張も解れていったようだ。
 最初は硬かった克哉の身体も…その動作を繰り返している内に
少しずつ柔らかくなっていく。

「…克哉。無理に思い出さなくて良い。だが…何か糸口ぐらいは
思い出せないだろうか…? あの男本人のことは思い出せなくても…
あの男を思い出すことで、連想出来る何かはないか…?」

「あの人を思い出して、連想する…事、ですか…?」

 そう、人間の記憶というのは案外繋がっている。
 関連する事柄や、イメージ…キーワードの類を思い出すことによって
普段は沈められていた記憶が浮かび上がってくるものだ。
 御堂はあの男の事を思い出せないなら、代わりに思い浮かぶものを
辿ってみるのも良いのではないか。
 そう判断して、提案を持ちかけていった。

「あぁ…そうだ。克哉…連想することを辿って、思い出していくというのは
案外有効な筈だ。人間の記憶というのは繋がっている。連想出来る
事柄を思い出すことで芋づる式に昔の事を思い出せるかも知れない…」

「…判りました、ちょっと連想してみます…」

 そうして、先程まで話していた男性を鮮明に脳裏に思い描いていく。
 克哉はその途端に奇妙な感覚を覚えていった。

(…何でだろう。まったく記憶に残っていない人の筈なのに…思い浮かべると
心の中に強く引っ掛かる…)

 あの男性の事を思い浮かべると、心の中が大きくざわめいて…
激しく警鐘が鳴り響いていく。
 思い出すな、と…それ以上は考えるなと無意識が訴えかけていく。
 それはまるで心の奥底にある禁断の扉とも、パンドラの箱とも
称することが出来るのかも知れない。

―それ以上、思い出すな…

(えっ…? 俺…?)

 不意に鮮明に、久しく聞くことがなかったもう一人の自分の声が
脳裏に響き渡る。
 だが、その注意を無視して…克哉はただ、記憶を思い出すことだけに
専念していく。
 その瞬間、頭が真っ白になるのを感じていった。

「っ!!」

「克哉っ…?」

 克哉の目が唐突に大きく見開いていって、御堂は驚愕の
声を漏らしていく。
 だが、克哉の意識は一瞬で…開かれた記憶の扉から覗いた
イメージの中に浚われていく。
 目にも鮮やかな桜の花の大群。
 百花繚乱と形容するに相応しいそのイメージが頭と意識を支配していき、
克哉はその光景に囚われていく。

「桜、だ…」

 そう、消え入りそうな声で呟くと同時に…克哉は澤村紀次に再会した夜、
御堂の目の前で…突然意識を失って、ソファから転げ落ち…床の上に
倒れこんでいったのだった― 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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