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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 昨晩から大概の異常事態には慣れたつもり―だった。
 だが、大会社の会議室の真ん中に自分と同じ顔をしてヒラヒラと白いドレスを着た奴が
突然現れた時には、克哉は声にならない雄叫びを上げるしか出来なかった。

(あぁぁぁぁ! 片桐さんにも、本多にも…出会ったばかりの御堂さんにまで思いっきり
あれが見られてるぅぅ…!)

 もう、ここまで言ったら笑うしか出来ない領域である。
 片桐も、本多もあっけに取られるしかない。
 だが…御堂だけは反応が違っていた。さっきまでクールで怜悧な表情を浮かべていたのに
真っ青になって、冷や汗まで流れ始めている。
 恐らく長年御堂の下についている部下達も、彼がこんな風に取り乱す様は今まで
見たことなかっただろう。目の前の光景はそれぐらいレアなものだった。

「ど、どうして…貴様が、ここにいるんだぁぁ!! お前は私の夢の中にしか現れない
奴じゃなかったのかっ!」

『久しぶりだな…ミドォール。確かに現実にあんたの前に現れるのはこれが初めてだが…
随分と連れない態度だな?』

(へっ?)

 二人のやり取りを聞いて、克哉は驚くしかなかった。
 今朝の夢に出てきた青年と、この人がそっくりであった事だけでも驚いているのに
御堂と…セレニティ・眼鏡はどうやら初対面ではないらしかった。

「誰がミドォール、だ! 私の名前は御堂孝典だ! そんな怪しい外人くさい名前では
断じてない! お前とは無関係だっ!」

『…酷いな。一度は俺達は…式まで挙げた仲だと言うのに…な?』

 ピシッ!

 その発言を聞いた瞬間、克哉はその場にどっと倒れた。
 リノリウムの床に膝を突いて、もう力なく笑うしか出来ない。
 本気でこの場で意識を失って卒倒したいくらいの気分である。
 たった二日間でどこまでこちらの神経をぶち壊すような事態や情報が舞い込んでくれば
気が済むのだろうか。 
 確か自分はこの人と婚約する、という夢を見ていて…こいつが紛れもなく自分と同一人物
だというのなら、イコール自分と御堂は前世で結婚していた、という事になる。
 いっそ、悪い夢なら一刻も早く覚めてくれと破れかぶれな気持ちになった。

(もう、誰か助けてくれぇ…っ!)

 助けを求めた瞬間、克哉の意識は短い間だけ白昼夢の中に落ちていく。
 広がるのは満開の花畑。そこに…王族としてではなく、一時の自由を得ていた
自分が座り込んでいる。
 芳醇な花の香りと、様々な色彩の花々に囲まれて…背後から、誰かにしっかりと
抱きすくめられていた。

―カ……ヤ…さん…大好きだよ…

 それは―王家の一員とか、そういうのから解放されていた間の、とても幸福で
大切に感じていた思い出のカケラ。
 その声の主は、ミドォールという人でも、もう一人の自分でもなく…。

(太、一に…声が、似てる…?)

 そう思った瞬間、何故か安らいだ。
 そして克哉は―もう一つの記憶を思い出していく。
 黒い玉座に豪奢な貴族風の衣装を纏って君臨する、セレニティ・眼鏡と…それを
必死に睨んでいる自分の記憶を―。
 それは克哉の魂の底に眠る真実の、ほんのごく一部でしかない。
 けれどたったそれだけでも、克哉は少しだけ救われた気持ちになった。
 …自分達は、同一人物ではない。どんな形であっても今、一瞬だけ流れた映像は
前世で「二人」で存在していた証明でもあったからだ。
 まだまだ疑問は尽きなかったが、思考を切り替えて辺りを見回していく。

 御堂とセレニティの言い争いはその間も続けられていたらしいが…態度から
察するに、御堂の方が明らかな劣勢であることは疑いなかった。
 
『もう…俺に言いたい事は尽きたか? それじゃあそろそろ本題に入らせて貰おうか。
今…この会社は敵の標的に入ってしまっている。このまま放置しておけば、目標物を
探し出す為にこのビルを破壊し尽くすぐらいは余裕でやるだろう…」

「何っ! このMGN本社ビルを…破壊、だと…? そんな事が出来る訳が…っ!」

 御堂が叫ぶと同時に、高層ビル全体が大きく揺れ動いていく。
 先程感じた揺れと同等か、それ以上か…ともかく、一瞬…立っているのが
困難なくらいの大きな振動が襲ってきたのは事実だった。
 それが…皮肉にも眼鏡の言葉に強い説得力を持たせていた。
 結局、黙るしかなく…その場にいた全員が息を呑んで眼鏡の言葉に耳を
傾けていった。

『…それを阻止、したいか?』

「当然だっ! 本社ビルが倒壊などしたら…当然、全ての業務が立ち行かなくなる!
そんな事態になったらどれくらいの数の社員が路頭に迷うと思っているんだっ!」

『なら、さっき話題に上っていた新商品の営業をこいつらに任せる…という条件でなら
俺が力を貸してやろう…』

『『『えぇぇっ?』』』

 その場にいた克哉、片桐、本多の三人の声がハモっていく。

「…そんな無茶な条件を、呑めというのかっ! プロトファイバーは…我が社が威信を
掛けて全力で作り上げた新製品だっ! それをこんな得体の知れない連中に任せて
フイにしろというのかっ!?」

『…このまま、この本社が駄目になったら…売り出すもクソもないだろ? 良く
考えて見ろ…どちらが得か。納得いかないのなら期限と売り上げ目標とかを
設定して、一定期間任せる形でも良い。とりあえず…お前がそれを承諾するなら
俺も全力でこの状況を打破してやろう。…取引としては悪くないと思うがな…?』

 眼鏡の話が終わった瞬間、また大きな揺れと…MGN内にいる沢山の人間の
悲鳴が響き渡っていく。
 こんな奴の言う事など、信じるものじゃない。そう理性が訴えかけているが…
同時にこの大きな揺れをどうにかしない事には本当にMGN本社ビルは倒壊
してしまうかも知れない。
 そうなった場合…新商品の営業先を間違えて、営業不振…というレベルの
話ではない。下手をすれば会社の存続すら危なくなるかも知れない。
 だから精一杯、平静を取り繕いながら…御堂も答える。

「…判った。本当に君達がこの状況を解決出来たのなら、新商品の取り扱いを
君達に一任する、という取引に応じよう。だが…こちらにそれだけ大きな口を
叩いたからには…それなりの成果は期待させてもらうぞ…?」

 半信半疑ながらも、その条件の上に…御堂は眼鏡の取引を承諾していく。

『任せておけ。…それじゃあ、お前達にも協力して貰うぞ! おい、お前…
ムーンプリズムパワーメイクアップ! と大声で叫べっ!」

「えっ…あぁ、判った! ムーンプリズムパワーメイクアップっ!」

 いきなり話を、自分の顔を見られながら振られてしまったので、とっさに
良く考えもせずに例の呪文を口にしてしまった。

 今回は克哉が叫ぶのと同時に、部屋中がプリズムの鮮やかな光に
包まれていく。それがその場にいた全員を一斉に飲み込んでいった。

「うわっ! 何だこれはっ!」

「眩しい、ですね…わわわっ!!」

「一体何が…起こったんだっ!!」

 本多、片桐、御堂の叫び声が一斉に響き渡ると同時に…瞬く間に光の洪水は
過ぎ去って、視界が効くようになっていく。
 次の瞬間、その場にいた全員が硬直するしかなかった。

『『『うわぁぁぁぁぁ!!!』』』

 三人の心からの雄叫びが会議室中に響き渡っていく。

(ご、ご愁傷様です…みんな…)

 その様子を見て、克哉は心から他三名に同情していった。
 彼らの叫びと混乱は、まさに昨日…自分が体験した物だったからだ。
 
 眩い光が過ぎ去った後、その場にいた全員が…例のセーラー服風のヒラヒラしたスカートと
長いブーツを履いた装いに…変身させられてしまっていたのだった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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