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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】                     10  
                 11

 
 ―佐伯克哉は、もう一人の自分の手を強く強く握り締めていた

 克哉にとって酷く長い一日が終わった後…もう一人の自分の容体が
どうなっているか気になって…クラブRの扉を潜っていった。
 その奥にある一室に…もう一人の自分は横たわっていた。
 克哉が彼の元を訪れたのは15分程前の事だ。
 酷くうなされている様子だったので…つい、傍らの赤いベルベットのような布地で
覆われた椅子に腰かけながら…その手を握り締めた。
 
(何でオレ…こいつの手なんて、握り締めているんだろう…)

 今の克哉は眼鏡を外して、髪型もいつものものに戻している。
 ここでは…彼を演じる必要性などまったくないからだ。
 手を握って暫く経ってから…もう一人の自分の様子が落ち着いていったので
少し安堵しながら、溜息を突いていく。
 ふと…服の裾から覗く、自分の腕を眺めて…つくづく、Mr.Rという存在は
人外の存在である事を思い知らされた。
 現実に有り得ないような望みでも、実際に叶えてしまうだけの力。
 恐らく普通に暮らしたいと望むなら、決して近づけてはいけない人物だろう。
 けれど…今の克哉には、彼の力を借りるしか…自分の望みを叶える
術は存在しなかった。

「…どうして、こんな事をしているんだろう…」

 自分でも、そう考えてしまう。
 …彼と御堂を救ったって、もうすでに…どちらの事件が起こった時にはすでに
現実に克哉の居場所など、なくなりつつあったのに。
 こんな真似をしても…誰も褒めてくれる事も、認めて貰える訳でもない。
 なのにどうして…自分はこんな真似をしているのだろうと…昨晩の出来事を
思い出して、疑問に思ってしまった。

―雨が降る中、必死になってRに訴えかける自分の姿が酷く遠く感じられた

 全てが他人事のように感じられてしまう。
 確かに現実にいるのに…自分の存在だけ、其処から浮き上がって
しまっているような乖離(かいり)を覚えていく。
 けれど…こうしてもう一人の自分の手を握り締めていると…その温もりだけが
はっきりと強く感じられてしまった。

「ねえ…『俺』…どうして、オレはお前も助けたいと…思ってしまったんだろうな…。
お前が、オレの事なんて…どうでも良いって思っているの知っているのにな…」

 そう思った瞬間…繋がっている手から、何かが流れて来た。
 
「っ…!」

 とっさに手を離そうと思った時にはすでに遅かった。
 もう一人の自分がたった今…見ていた夢の残滓が、奥底に秘めていた
感情が…堰を切ったように勢い良くこちらに流れてくる。
 それはあまりに強過ぎる、感情の奔流。
 本人でさえも自覚していない…想い。
 
―それが瞬間的に溢れて、伝わってきて…気づけば克哉は泣いていた

 シンクロ、というものかも知れなかった。
 本来なら自分たちが…こうして個別の身体を持って同時に存在するなど
あの謎の男性の力がなければ有り得ないことだから。
 そして克哉は…力なく、呟いていた。

「…お前って、本当に不器用で…バカ…だよな…」

 きっとこんな現象が起こった理由は、一つだけしか考えられなかった。
 この身体もまた…彼のものであるからだ。
 だから…記憶と感情が、短い間だけ繋がってしまったのだろう。
 双子には時々、そういった科学では説明出来ないような現象が起こるという
説をどこかで見かけたような気がするが…自分たちは厳密に双子ではないが、
それに近い存在だから…こんな奇妙なことが起こったのだろうか。

(というか…Mr.Rと知り合ってから、有り得ないことばかりが起こり続けているけどね…)

 きっと御堂は、色々と混乱しているに違いない。
 大体の裏側を知っている自分ですらも…あの男に願ってしまったばかりに
予想もつかないぐらいに沢山の糸を張り巡らされてしまって、とんでもない
事になってしまったと思っているのだから。
 確かに…こうする以外に、罪を犯した彼を救う方法はなかったと思う。
 けれどあまりに荒唐無稽な話。
 説明されたからと言って、容易に信じられることではなかった。
 今朝の時点では克哉とて…半信半疑だったが…。
 けれど今は、実際にあの男はそれをやって…御堂を救ったのだという
事実を認めざるを得なかった。

「…あの人は一体、何者なんだろう…」

 今回の一件を経て、克哉の中でその疑問が膨らんでいった。
 そして…目の前にいる、もう一人の自分も…。

「今晩は…ここにいらっしゃっていたんですね…。貴方が自ら、当店に
足を運んで下さるとは…嬉しいものですね」

「わあっ!」

 いきなり、背後に気配を感じて振り向こうとした時には…すでにMr.Rは
其処に存在していた。
 足跡も、何も感じられなかったのに…いきなり其処に降って湧いたような
そんな感じだった。

「い、いつの間に其処にいたんですか…!」

「嗚呼、失礼。貴方が私のテリトリーにいると気づいたら…少々焦って
しまいました」

(そういう問題なのか!?)

 ニッコリと笑いながら、相変わらず意味不明なことをのたまうこの男性の
存在に本気で頭を抱えたくなってしまう。
 何というか…同じ日本語を話しているのに、意志の疎通がまったく目の前の
相手と出来ていないような…そんな気分になってくる。

「それはさておき…私と昨晩、交わした約束…覚えていらっしゃいますか…?」

「っ…! は、はい…」

 悠然と笑いながら、男がその件を口にした瞬間…克哉の顔が引きつっていった。
 だが彼はまったく克哉の態度など気にする様子もなく言葉を続けていく。

「…明日の晩に、舞台をセッティングしておきました。そうですね…貴方のお仕事が
定時に終わったら、そのまま当店に足を運んで下さいませ…。其れが今回の
件に関して…私が払った労力に対しての…貴方に支払ってもらう代価です。
…宜しいですね」

「…えぇ、それが…約束…ですから…」

 そう言いつつも、克哉の表情には苦いものが浮かんでいた。
 そんな彼の両頬をそっと包み込むと、男は…綺麗に微笑んでいく。

「…おやおや、これでも…随分と私にしては代価を安く設定して差し上げたんですよ…?
たった一度、私どもの店で…こちらを存分に楽しませて頂ければ、これほどの
大がかりな舞台を紡ぎあげた事に対する対価となるのですから…。
 もう、すでに私は貴方の願いを叶えています…ですから、決してこれから
逃れようとは思わないで下さい…。それが果たされた後ならば、貴方がこの世界で
これからどう生きようとも…私は決して、干渉致しませんから…」

「はい…判って、います…。オレも、逃げる気は…ありませんから…」

 そう口にしながらも、克哉は不安で…顔を白くさせていく。
 けれど全てはこの男の言う通りなのだ。
 自分の願いは、確かに叶えて貰っている。
 ならば…自分は相手の出す要求を跳ねつける権利など、すでになくなっていた。
 だから怯えながらも頷いていくと…。

「それで結構です」

 と…男は満足そうに笑いながら、克哉の頬に…そっとキスを落としていく。
 それは…克哉にとっては、決してこちらが逃げる事を許さない…契約の
キスのように感じられてしまった―
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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