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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 咎人の夢(眼鏡×御堂×克哉)                           10
                                                        11  12


―御堂はその夜、夢を見ていた

 奇妙な一日が終わり、やっとの想いで夜遅くに自室で就寝に就くと…明け方頃から
再び夢を見始めていた。
 普段、常に深い眠りに誘われているおかげで…夢とは無縁の筈なのに、
二日連続でこうして長い夢を見るなど…随分と珍しいことだった。
 
 自分は気づけば朽ち果てた…所々に眩い白い光が注ぎ込んでくる教会の
中に一人で佇んでいた。
 雰囲気的に、長い時間…人の手が入っていない場所のようだった。
 それでも奥の方にイエス・キリストの像と…ボロボロの祭壇が置かれていることで
辛うじてここが教会である名残が残されていた。
 天井や壁には何か所か大きな穴が空いているせいで、其処からジワジワと
侵食が続いている。
 それでも降り注ぐ鮮烈な光が、その荒れ果てた空間を酷く厳かなものに変えていた。

(…ここは、教会か…?)

 それはどこまでも白が埋め尽くしている空間だった。
 光がここまで…場を神々しく見せるなど、今までの人生の中で目の当たりに
したことは殆どなかった。
 祭壇の前に…一人の白い服を着た青年が立っている。
 最初は…光が目を焼いていたせいで、シルエットのみしか認識出来なかったが
その眩しさに慣れていくと…それは、間もなくして佐伯克哉だと判った。
 御堂は言葉を失いながら…彼の背中を見守っていく。
 白いアルバと言われる祭礼用の服装に身を包みながら…彼は祭壇の
方に向かって跪き、祈りを捧げていく。
 チングリムと呼ばれる腰紐や、ストラなどの身分を表す肩章も何もつけていない。
 基礎となる白い祭礼服だけを身につけたその姿は…余分なものがないだけに
逆に清らかに映った。

―背後から見ているだけなのに、酷くそれは神聖な光景のように思えた

 彼はこちらを振り返ることなく…一心不乱に、何かに祈りを捧げている。
 その姿に…御堂は言葉もなく、後ろから眺めつづける。
 声を掛けることすらも…出来ないぐらい、彼は真剣な様子だった。
 どれくらいの時間、自分たちはそうやって重い沈黙の中で無言で佇んで
いたのだろう。
 ふいに、真剣な声音で佐伯克哉が高らかに告げていった。

―どうか…安らかに眠って下さい…御堂さん

 その一言を聞いた瞬間、御堂は雷で貫かれたような衝撃を覚えていく。
 厳粛な空気を破るように、早足で祭壇の方へと向かっていく。
 祭壇の奥には、一つの大きな棺があった。
 朽ち果てた教会にはそぐなわないぐらいに…棺の中には色鮮やかな
花で埋め尽くされている。
 そして…その中に眠っていたのは…紛れもなく、自分だった。

「っ! …これはっ!」

 こちらが必死になって叫ぶ。
 けれどまるで…御堂の事など見えていないように、眼鏡をかけていない
佐伯克哉は呟いていく。

―貴方の魂が憎しみに囚われぬよう、少しでも安らかに天国へと召されるように…
心から、祈ります…

 そうして、御堂はその横顔を見つめる中…克哉は再び、祈りを捧げていく。
 頬に一筋の涙が伝っているのを見えた。
 あまりに真摯で…純粋な様子に、御堂は言葉もなく立ち尽くしていく。
 棺の中には…生気をすでに失った自分の亡骸が、胸の辺りで手を組みながら
横たわっている。
 まるで自分の葬儀に立ち会っているかのような、奇妙な錯覚。

「私はこうして生きている! どうして…そんな、事を…!」

 声の限り、御堂は気づけば叫んでいた。
 そうなって初めて…佐伯克哉は彼の存在を認識していく。
 その瞳に浮かぶのは憐れむような眼差し。

―いいえ、貴方がこうして亡くなっているのも…また真実なんです…

「嘘だ! それならどうして私は生きているんだ!」

 自分はまだ死んでいない、と御堂は確信していた。
 だが…それでも、佐伯克哉は首を横に振って否定していく。

―貴方が生きている未来も、死んでいる未来も…同時に存在している

 そして、意味不明な言葉を彼は紡いでいった。
 御堂にはその一言に込められた意味が、どうしても理解出来なかった。

「君は一体…何を言っているんだ…?」

 自分はこうして、ここにいるのに…彼の瞳にあるのは憐憫と言われる感情だけ。
 透明な涙を流しながら…彼はまっすぐに御堂に対峙していく。

―貴方の魂が、憎しみから解放されて…あるべき姿を取り戻すことを…オレは
心から祈ります…

 そして、どこか悲しそうな声で…彼はそう告げていった。

―憎しみは、人の心を歪めます。強い憎悪は、目を大きく曇らせます。
本来は輝いている筈だった貴方が、それによって…自らの手を汚すまでに
堕ちてしまったことがオレには悲しかった…ですから…

 そして彼は、そっと瞼を伏せながら口にしていく。

―全てを忘れて、貴方にどうか平穏を。俺(オレ)という存在を忘れて…
どうか、元通りの日常へ戻って下さい。それが…オレ達が出来る、貴方に対しての
唯一の贖罪であると…思いますから…

 彼が涙ながらに告げた瞬間、光が一層鮮やかに満ちていく。
 眩しくて目を開けていられなくなる。
 御堂は思わず…両腕を身体の前に掲げて、己の目を守った。
 そうしている間に…この場を構成していた、教会が…光の粒子へと徐々に
変わって崩れ落ちていく。
 世界は輪郭を失い…ただ、白い光だけで覆い尽くされようとしていた。

「待て! 君は…どうして、そう一方的なんだ! 私には…君に、どうしてそんな
事を言うのか…その疑問すら、投げかけさせてはくれないのか!!」

 声の限りに叫んで、訴えかけていく。
 だが世界の崩壊は決して止まらない。
 そうして世界はグニャリ…と奇妙に歪んで、光の代わりに黒い闇が瞬く間に…
全てを食らい尽くしていった。

「うわっ!」

 ふいに、足場の感覚がなくなっていく。
 そして光満ちる世界から、一転して…奈落の底へと御堂は突き落とされた。
 どこまでもどこまでも、深い場所へと堕ちていく。
 平衡感覚の全てが狂わされていくような感じだった。
 そして…気づけばまっ暗い闇の中に一人で、立っていた。

―其処は暗闇で覆い尽くされた空間だった

 光が一遍も存在しない、不毛な世界。
 その世界で、御堂が何かを見出そうと必死になって周囲を見渡していくと…
暫くして、一人の人影が…その闇の中にポツンと立っているその事実に
気づいていったのだった―
 
 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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