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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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  かなりお待たせしました。
  結局一話ではラストエピソードは収まり切らなかったので
2~3回に分けて掲載する形にしました。
  37とか38で終わるのキリが悪いけれど、ここで妥協するよりも
キチっと書きたいことを書いて終わりたいので決断しました。
 
  御克前提の澤村話。テーマは桜です。
  桜の花が舞い散る中、自分という心が生まれる前のことを
探り始める克哉がメインの話です。後、鬼畜眼鏡Rではあまりに
澤村が不憫だったのでちょっと救済の為に執筆しました。

 桜の回想                      10  
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 もう一人の自と佐伯克哉が統合してから一年の月日が過ぎた。
 そして克哉が御堂と交際してから三年目を迎えていった。
 今では同居して一緒に暮らすようにもなり…この世でもっとも
愛しい人との関係は安定していた。
 仕事上も順調で、本多、片桐、太一、藤田、川出等…周囲にいる人達との
関係も良好だ。
 これ以上を望んだらきっとバチが当たるだろうと思えるぐらいに今、克哉は
恵まれた環境にある。
 その事に深く感謝しつつ…三月の下旬のある昼下がり。
 克哉はその日は少し遠くの会社に営業に回っていた。
 そしてようやく商談が終わった頃には午後四時を回っていて…一度会社に
戻るとかなり遅くなってしまうので、克哉は連絡して直帰をする事に
決めていった。
 御堂の方は本日は遅くまで社に残って業務をこなす予定だと連絡が
あったので…クタクタになって帰宅してくるであろう恋人に、手料理の
一つでも作って出迎えようと考えたからだった。
 
(さ~て、今夜のおかずは何を作ろうかな…。孝典さん、きっと疲れて帰ってくる
だろうからあっさりしていて…身体に優しい料理を幾つか作ろうかな…)
 
 上機嫌でそんな事をあれこれを考えながら帰路についていくと…たまたま
通りかかった河川敷の付近に見事な桜並木が並んでいるのが見えた。
 それを見た途端、克哉は一瞬怯みかけたがすぐに気を取り直して
それを眺めていった。
 
「ん、大丈夫…。うん、以前よりも桜は大丈夫になってきたな…」
 
 ドクドクと乱れる鼓動を深呼吸して落ち着かせていきながら…克哉は
改めてその淡い花びらをつけた桜の木の群集を眺めていった。
 まだ苦手意識が完全に消えたとは言い難い。
 それでも一時に比べれば随分と改善していた。
 かつては見る度に訳も判らない焦燥感を覚えていき、不快な想いや
怖いという感情が桜を見る度に湧き上がっていた。
 だが、今の克哉が感じるのは…もう一人の自分とその親友だった
少年の悲しいすれ違いを切なく思う感情が主だった。
 小さな歯車の狂いから決別する事になった二人。
 それを悲しく思うと同時に…自分という人間は、その体験があったからこそ
生まれて…今、こうして生きているという矛盾した感情が桜を見ると
嫌でも実感してしまう。
 
「欺瞞、だな…。本当にあの二人を想うならオレは消えなきゃいけないのに…
今は絶対に生きる事を手放したくない…。孝典さんを、みんなを…泣かせたくないから…」
 
 
 かつての何もない頃の自分だったら、もしかしたら全てを手放して
あの二人の為に消える事を選択してしまったかも知れない。
 けれど今の克哉にはそれは絶対に出来なかった。
 きっと自分が消えてしまったら、御堂を悲しませて絶望させてしまうだろうから。
 その想いが克哉を現実に引き留める楔となっていた。
 そして克哉もまた…寿命が訪れてしまった時は仕方ないが、それまでは…
命ある限りは御堂孝典という愛しい人の傍に寄り添って生きていきたい。
 その強い願いがあるからこそ、もうその道を選ぶことが出来ない事を
克哉は実感していった。
 その気持ちだけはどれだけ長い年月が過ぎても決して変わる事はなかった。
 
「ごめんな…」
 
 それは自分の中にとけこんでしまったもう一人の自分に対して
向けられた言葉だった。
 けれど言葉が返ってくる事はない。
 それは判りきった事だった。 
 自分の中に彼は溶けて、完全に一部となっている。
 かつて自分たちを隔てていた境界線のようなものが今は完全に
消えてあるべき形に戻っている。
 判っていてもその事実に克哉は胸が締め付けられるようだった。
 そして遠い目になっていきながら、満開の桜並木を眺めていく。
 その時、背後から呼びかける声が聞こえていった。
 
「克哉君…」
 
「っ…!」
 
 その声を聞いた時、心臓がとっさに止まるかと思った。
 弾かれたようにその方向を振り返っていくと…其処には予想通りの
人物が立っていた。
 顔を合わせるのは丁度一年ぶりだった。
 もう一人の自分が消えた時期を境にこの男性もまた接触をして
来なくなったから殆ど忘れかけていた部分があった。
 澤村紀次、もう一人の自分にとって親友だと信じていて手酷く裏切られた存在。
 そして克哉にとっては…今の自分が生まれるキッカケになった人物でもあった。
 彼があのような行為をしなければ、もし二人が親友のままであったなら
きっと今の克哉の人格は存在していなかっただろう。
 
「澤村、さん…どうして、此処に…」
 
「…心配しなくて良いよ。単なる偶然だ。この付近の会社に面接でちょっと
足を向けて…この辺りで桜をぼんやり眺めていたら、たまたま君が
ここに訪れたからね…」
 
「面接…? あれ、確か澤村さんってクリスタルトラストに勤めていたんじゃ…」
 
「ああ、先月辞表を出してね。今月一杯で辞めるつもりなんだ…。今は
再就職先を探している真っ最中かな…」
 
「このご時世に転職ですか…? それってかなり大変なんじゃ…」
 
「ああ、正直言うとこうやって就職活動をする度に今は本当に景気が
悪いんだなって肌身で実感していくよ。けど、後悔はしていないんだよね。
最悪…半年ぐらいは貯金とか失業保険で食いつなげるし、どっか一カ所
ぐらいは受け入れてくれる会社も必ず見つかる筈だからね…」
 
「…はい、そうですね…」
 
 相手の言葉に相槌を打ちながらも、克哉は妙な違和感を覚えていた。
 目の前にいるのは間違いなく澤村本人だ。
 だが、一年前に顔を合わせた時とはまるで別人のように穏やかな顔を
浮かべて前向きな発言を繰り返していた。
 そのせいか会話している印象も以前とはまったく異なって感じられた。
 
(澤村さん…以前よりも柔らかい雰囲気になっていないか…?)
 
 それに以前の彼だったらクリスタルトラストを辞めてなんて新しい所に
転職するなんて発言は決して口に出す事はなかっただろう。
 だが目の前に立っている澤村にはその事に対しての迷いや後悔の
ようなものはまったく感じられない。
 自分で考え抜いた末に選んだ。
 そういう潔さのようなものが態度に染み出していたのだ。
 だからどうしても突っぱねるような態度を取る事が出来ず、曖昧に
微笑んで相槌を打つことしか出来なかった。
 その態度に相手も引っかかりを覚えたのだろう。
 少し経ってから、澤村は怪訝そうに呟いていった。
 
「…ねえ、君と…僕が良く知っている克哉君とは別人格だっていうのは…
本当の話かい?」
 
「えっ…?」
 
 いきなり、予想もしていなかった話題を振られて克哉は言葉を失いかける。
 何故、この男性が自分たちの事を知っているのだろうかと疑問に思った瞬間。
 
ー唐突にもう一人の自分と澤村との間に起こった、桜が舞う中での出来事が
…回想が克哉の中に流れ込んで来た
 
 それは克哉にとっては知らない体験。
 もう一人の自分の記憶であり、思い出だった。
 そして彼の最後の場面でもあるその事実がゆっくりと伝わってくると
同時に克哉は知らず、目元が潤み始めていった。
 
(これは…お前の最後の記憶…なの、か…?)
 
 鮮やかに桜の花が咲き誇る光景の中、もう一人の自分がかつて
親友だった存在を許して消える運命を受け入れていく場面が
脳裏に浮かび上がっていく。
 
―そう、か…お前はこの人を…許した、のか…
 
 そしてもう一つの強い願いを感じ取っていく。
 彼もまた、自分の最愛の人を…御堂を想い、そして配慮
してくれていたのだ。
 だから親友と和解しても、自らが消える運命を享受したことを知って…
再び克哉は切ない気分になっていった。
 本当に桜の花のように潔い引き際だと感じた。
 桜の花が強く印象に残るのは美しいのと同時に、その花が咲く期間は
短くあっと言う間に散りゆくからだろう。
 それは時間にすれは本当に瞬く間の出来事だった。
 そして逡巡し、若干間を空けてから返答していった。
 
「えぇ、その通りです。貴方の親友であった佐伯克哉と…
今、目の前に存在するオレは…同じ身体を共有していても感じ方も考え方も、
持っている記憶もそれぞれ異なります…」
 
 自分の恋人である御堂にすらまだ打ち明けていない事実を
目の前の相手に告げていった。
 だが、澤村はその言葉をいっさい疑う様子を見せなかった。
 そっと目を伏せていき、克哉の言葉を受け入れていく。
 
「そっか…なら、もう一人の克哉君は…本当に消えてしまったのかな…?」
 
「いいえ、オレの中にいます…。今は完全に溶けてしまいましたが…
ちゃんと此処に存在しています…」
 
 そして克哉は無意識の内に己の胸元に手を当てていった。
 そう、もう一人の自分は今は言葉を交わせなくても…対面する事が
叶わなくても、ここにいてくれる。
 確信しているから、はっきりした口調で克哉は口にしていった。
 
「そっか…やはり、もう二度と…あちらの克哉君と僕は会えないんだね…」
 
「はい…」
 
 相手の悲しそうな表情を見て、僅かに残っていた相手への警戒心や
敵愾心が静かに溶けていった。
 克哉と同じようにもう一人の自分が消えてしまった事に対して
切なそうにしている態度が、共感を呼んだからかも知れなかった。
 そのまま澤村は口を閉ざして、何かいいたそうな眼差しを浮かべて
こちらを見つめてきた。
 克哉も無言で、相手を見つめ返していく。
 お互いの瞳に浮かぶ感情は複雑で、これ以上何を口にすれば良いのか
二人とも判断しかねた。
 
( …例え同じ佐伯克哉であっても、この人はオレにとっては親友でも、
友人でもどちらでもない…)
 
 もう一人の自分の存在を惜しんでくれている相手に対して残された
克哉はどんな言葉を掛ければ良いのか判らない。
 それは克哉の中には「澤村」は眼鏡の方の親友だったという想いが
存在するからだ。
 今の自分と深く関わった訳でも、友人として繋がった事がある訳でもない。
 この人と自分は「知り合い」や「顔見知り」以上の関係ではないのだから…
だから、何も言えないまま無言の時が過ぎていった。
 そして長い沈黙の後、先に口を開いたのは澤村の方だった。
 
「…これは僕の勝手な気持ちなんだけど…君に、聞いて欲しいんだけど…
良いかな…?」
 
「えっ…はい、オレで良ければ構いませんよ…」
 
 そう男が問いかけて来た時、以前からは考えられないぐらいに穏やかな
瞳をしていたから克哉は少し身構えながらも了承していく。
 その返答を聞いて、澤村もまた優しい表情を浮かべていった。
 
「…ありがとう。感謝するよ…。さっき出会い頭に言った通り、今…僕は
クリスタルトラストを辞める決意をして…再就職先を探している最中なんだけど…
そうしようと思ったキッカケを作ったのは、もう一人の克哉君との間に
起こった事が一番の理由なんだ…」
 
「…そう、なんですか…?」
 
「…うん。上手く言葉に出来ない…。君の方に、どう伝えれば良いのか
判らないんだけど…僕はいつの間にか人を貶めるような事を何度も
繰り返して来た。クリスタルトラストという会社自体がそういう事を生業に
しているような企業だ。其処にいても僕は克哉君との一件以前は何も
感じなかった。むしろ僕にもっとも適している会社に勤務出来ていると
すら思っていたんだ…」
 
「………」
 
 相手の言葉は更に続いていく。
 克哉は余計な口を挟まずに、澤村の言葉に真剣に耳を傾けていった。
 纏っている雰囲気も以前とは異なり、優しいものに変わっているからだろう。
 かつて相手に感じていた嫌な感じは綺麗に払拭されていたからこそ…
克哉も相手の独白に付き合う気持ちになっていた。
 
「けどね…克哉君が僕の目の前で鮮やかに、と言えば良いのかな…まるで
桜の花が散るみたいに綺麗に消えてしまってから、初めて…僕は自分の仕事が
汚いって。胸を晴れるような事をやっていなかったって…そんな事に気づいたんだ。
それでも認められてそれなりの地位を得た会社をこの年で辞めるのは
結構な迷いがあった。…だけど、僕はもしもう一度…僕の親友だった方の
克哉君に会える事があったなら、胸を張って彼に会いたいと…信じたくないけど、
そんな気持ちが芽生えてしまったんだ。だから僕は…生きる場所を
変える決意をしたんだよ…」
 
「澤村、さん…」
 
「僕は…彼の傍にいたかった…。肩を並べて、生きたかったんだ…。
今、君と…君の隣にいる人との関係のように…切磋琢磨して、お互いに
高めあって刺激しあえるような…そんな関係を作りたかったんだと…
今更ながらに、思ったから…」
 
 その瞬間、澤村は顔を少し歪めて僅かに涙を浮かべていった。
 克哉はその表情を目の当たりにして…何も、言葉を掛けれなかった。
 小さな罪悪感のようなものが芽生えていく。
 だが、それに囚われる訳にはいかなかった。
 自分が生きる、という事はこの人に寂しさと痛みを与えることが判っていても…
今の克哉には決して手放したくない存在がいるから。
 だから…少し考えた後、しっかりとした口調で克哉は告げていった。
 
「…なら、その痛みをしっかりと受け止めて生きて下さい…。あいつが
貴方に残した想いをどうか無駄にしないで下さい…」
 
「うん、そのつもりだよ…」
 
「そして…もう一つ。オレは決して、もう一人の『俺』の代わりにはなりません…。
貴方は以前の俺の親友という存在であっても、オレにとって貴方は…ただの
顔見知りや百歩譲って友人という存在でしかありません。だから…あいつを
本当に大事に想っているのなら、オレとは必要以上に関わらず、その気持ちを
大切に抱いていて下さい…。オレと貴方は、決して親友にはなれません。
貴方はオレの中に…いえ、オレの向こうに必ずあいつの影を求めてしまう
でしょうから…。『オレ』を必要としない、見てくれない相手の友人や
親友には決してなれません…」
 
「っ…!」
 
 それは痛烈に、もう一人の佐伯克哉を求める今の澤村紀次に
とっては死刑宣告にも等しい言葉だった。
 だが、克哉は決して譲るつもりはなかった。
 澤村が眼鏡の方を求めて、その夢を追い求めて…今の自分と
繋がりたいと望むならばそれを決して受け入れる訳にはいかなかった。
 自分は、あいつじゃない。
 例え同じ身体を共有していて…佐伯克哉と呼ばれる存在であっても、
その心のあり方は大きく異なる存在同士なのだから。
 もう一人の自分の心を御堂が恋人とみなす事がなかったように…
澤村紀次にとっても、今の佐伯克哉が親友の座に収まる訳にはいかない。
 克哉はそう確信して、残酷だと承知しながらも…その言葉を告げていった。
 その瞬間、澤村は泣きそうな顔を浮かべていた。
 けれど断腸の思いで、克哉は相手に決して手を伸ばさなかった。
 相手の瞳の奥に宿る想いを…薄々とは察していく。
 だが、敢えて気づかない振りをしてそっと…目を伏せていった。
 直視しないようにしながら…克哉はそっと言葉を紡いでいく。
 
「…ごめんなさい。貴方にとって残酷な言葉であると承知しています…。
けれど中途半端にオレと関わることはあいつの最後の想いを無下に
する事に繋がると思いますから…。あいつを大切に思うのならば、
その面影を大事にして下さい…。もう一度言います、オレはその代わりには
なれませんから…」
 
「そうだね…判ったよ。御免ね…未練がましい態度を取ってしまって…。
僕はもう、行くよ…。けど、最後にこれだけ言わせて欲しい…。僕は、
もう一人の克哉君と再会出来て…最後に長い間わだかまっていた事を
ぶつけて解り合うことが出来て本当に良かったと思っているよ…」
 
 そうして澤村は寂しそうな笑みを浮かべながら、克哉から
背を向けていった。
 その立ち去っていく姿は切ないものが感じられた。
 後ろ髪を引かれる想いを感じても、それでも克哉はグっと堪えて
澤村を見送っていく。
 
「…さようなら、佐伯君。君の未来に幸いがある事を心から祈っているよ…」
 
「えぇ、さよなら…澤村さん。オレの方からも貴方が幸せになる事を
祈らせて頂きます…」
 
 どこまでも他人行事な別れの挨拶だった。
 けれど、これが今の佐伯克哉と澤村紀次との正しい距離間なのだ。
 最後だけ澤村はこちらを「佐伯」と呼んだ。
 それは今、ここにいる佐伯克哉を自分の親友だった少年と違うという
事実を受け入れた何よりの証だった。
 桜が舞い散る中、澤村の姿が遠くなっていく。
 あっという間にその姿は遠くなり、そして…花吹雪の中に紛れて
消えていこうとしていた。
 そして完全に消える寸前、一度だけ澤村は振り返って…離れていても
しっかりと聞こえるようにこう告げていった。
 
―ありがとう。どんな形でも…もう一度君に出会えて、僕は
嬉しかったよ…克哉君…
 
 そして最後に、『もう一人の佐伯克哉』に向かって別れの言葉を
告げながら…精一杯の笑顔を見せて…彼はその場を立ち去っていった。
 その瞬間、克哉の涙腺は緩んでいった。
 視界が歪んで、頬に涙が伝い始める。
 
「あれ…オレ、どうして…涙、が…」
 
 自分の意思と関係なく、熱い涙が後から後から溢れてくる。
 その瞬間克哉は…自分の中にいる眼鏡の心が、泣いているのだと実感していく。
 
(…やっぱり…お前も、澤村さんの事を今でも大切に想っているんだな…)
 
 再び切なさと罪悪感を覚えていくが…克哉はこれで良かったのだと
自分に言い聞かせていく。
 澤村の中に潜んでいた想いは、きっと恋に近いものだ。
 本人に自覚はなかったようだが…克哉は今日のやりとりの最中、
その事を確信していた。
 それまでの自分の生き方を変えようと想うぐらいにもう一人の自分が
澤村にとって大きな存在になっているからこそ…克哉は自分が、
彼と関わる訳にはいかないと思ったから…。
 
(これで良いんだ…。あの人とオレが交流を持っても、あの人はオレを
あいつの代わりとしか見ない…。それにオレには孝典さんが…最愛の人がいる。
だから…こうするしかなかったんだ…)
 
 自分が傍にいれば、きっと澤村を縛ってしまうから。
 いつまでもいつまでも叶わぬ想いを胸に秘めて…苦しめてしまうから。
 彼の中にある佐伯克哉への想いに、ピリオドを打つ為には克哉はそういうしかなかった。
 けれど…このやりきれない思いは、どこに向ければ良いのだろう。
 自分の存在が二人を引き裂いた事実に、克哉は胸が潰れそうになった…。
 その瞬間、突風が吹きぬけていき…大量の花びらが周囲に舞い散っていったのだった―
 
 
 
 


  後書き
(興味ある方だけつづきはこちらをクリックして読んでやって下さい)

  今回のノマと澤村と…そして33話の眼鏡と澤村との別れ。
  この二つの場面が書きたくて、この連載をやっていたようなものです。
  同時に、鬼畜眼鏡Rでこれをやって欲しかった~! っていう
気持ちからこのシリーズを始めました。

  だって人格が別れる原因を作った存在だっていうのに
あまりに澤村の扱い、ファンディスクの中では軽すぎたので…(涙)
 確かに攻略対象キャラ、ハッピーエンドを迎えた人達…本来いた
人たちを食ってしまうぐらい目立たせる訳にはいかないって
判っているんですよ。
 雑誌のTAMAMIさんへのコメントでも「意識的に澤村を
目立たせないように配慮した」みたいは発言ありましたし…。

 けど、澤村って絶対にこうやって上手く組み込めば輝く奴だって
いうのを示したくて…この話書いたのです。
 もうちょい、この話は続きますが…澤村の事をある程度書き切れて
満足しました。
 そしてもう1~2話、この話は続きます。

 とりあえずここまで長期間引っ張ったからには読んで良かったと
思えるようなものを書き上げるようにしますわ。
 最後まで読めばどうしてこの話が「桜の回想」なのか理解出来ると
思います。ではでは~!

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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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