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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 ※この作品は現在、不定期連載中です。(週1~2回程度のペースで掲載)
 その為以前のを読み返しやすいようにトップにリンクを繋げておきます。

  バーニングクリスマス!(不定期連載)                    10 
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―完全に日が落ちようとした瞬間、黒衣の男が問いかける。

『…ご自分の半身を追いかけなくて宜しいのですか?』

『…昨日、俺がお前に頼んだことはちゃんと手配してあるのか?』

 眼鏡が傲然と言い放つと、Mr.Rは愉快そうに微笑んでいく。

『えぇ、貴方に頼まれた事をやらないで放っておくなど私には出来ませんから。
その点なら抜かりなく…』

『なら、慌てる必要はない。今からでも向かえば充分間に合う筈だ。
車はすぐに出せるのか…?』

 眼鏡は、もう一人の自分の携帯に…本日、御堂がどのレストランと
ホテルを回るのか記されていたのですでに把握していた。
 …この場合、ホテルの方に先に行けば確実に捕まえられる。
 Rに、どの部屋に泊まることになるのか…すでに調べさせたからだ。
 だから、ゴール地点を知っている分だけ彼には余裕があった。

『はい、ご用意してあります。…貴方が望めばどこにだってお連れ致しましょう』

 そうして男は恭しく、レッドカーペットに賓客を招くようなそんな仕草で…
眼鏡を誘導し始めていく。

『なら、あいつが御堂と約束したホテルに俺を連れて行け…。本多には
御堂の車が駐車場にある事を…キクチ社内のPCを使用して匿名メールで
伝えてある。時間稼ぎならあいつが充分に役割を果たしてくれている筈だ。
…それと、お前に依頼した手段で多少なら時間は大丈夫だろう。この状況で
俺がするべき事は…その混乱状態の中で、いかにして御堂から鮮やかに
あいつを取り戻すか…それだけだ』

 そういって、憤りさえ含みながら力強く眼鏡が言い放っていく。その様子を
Rは嬉しそうに眺めていた。

(嗚呼…静かな怒りを湛えていらっしゃる貴方は本当に美しい…)

 心の底から感嘆を込めていきながら、男は自分が手配した車が
ひっそりと置かれている方角へと共に向かっていく。

『貴方にお供しましょう…』

 と一言、どこか心酔しきったような返事をしていきながら―

                     *

 眼鏡が動き始めたのとほぼ同じ頃…本多は真剣な表情を浮かべながら
タクシーの前面部の窓から覗いている御堂の愛車を凝視していた。
 その表情はどこか鬼気迫るものがあった。
 本気の怒りを込めながら、前の車を睨みつけている彼の様子に
運転手も怪訝そうな顔を浮かべていく。
 だが今の本多に迂闊に何か言ったら大変なことになりそうな気配が
あるので…黙って、運転手は本多に依頼された通りに車を走らせ
続けていた。

(…御堂の奴、克哉にチョッカイ掛けるとは…本気で許せねぇ…!)

 同性である克哉に、恋心を抱いているのを自覚してからすでに
一年以上になる。
 そしてその事に気づいた時、無自覚だったが自分は大学時代から
克哉を特別な存在と見なしていた事も判ってしまった。
 だから誰にも…本多は克哉を渡したくなどなかった。
 自分がハンドルを握っていたら、本多は全力でアクセルを噴かせて
前を走る御堂の車に背後にぶつけてでも止めていただろう。
 …この場合、むしろ他の人間が車を走らせてくれていることに真剣に
感謝しなければならないだろう。

(後ろから見ている限り…今は克哉に手を出していないみたいだけどな…。
けれど、さっきは…!)

 ギリ、と奥歯を強く噛み締めていきながらさっき見た光景を脳裏に
思い浮かべていく。
 誰が送ったのか判らない正体不明のメールを見て…だが、謎の爆発騒ぎで
騒然となっている社内で二人の姿を見失ってしまっていた本多は…藁にも
縋る思いで試しに駐車場まで向かったら、そのメールに記されていた
黄色いタクシーを発見した直後に、現場から少し離れた場所から…衝撃の場面に
出くわしてしまったのだ。

―御堂と克哉のキスシーンだった

 それを見て、言葉を失いかけた。
 何が起こったのか頭が真っ白になって…ショックの余りに何も行動も、
言う事も出来なかった。
 呆然とその光景を見届けてしまった時、タクシーの運転手がこちらに
声を掛けて来た。

『おい、兄さん。さっき…身体の大きな紺色のスーツを着た男をここから乗せて
くれなんて奇妙な依頼を本社の方に受けたんだが…あんたの事かい?』

「えっ…?」

 本多は驚きの余りに言葉を失う。
 さっきのメールにも…ここに黄色のタクシーがいる筈なので、必要ならば
それを使え…と実に横柄な文章が綴られていた。
 ますます訳が判らなかった。まるで知らない人間に見えない糸で操られて
しまっているような奇妙な錯覚を受けていった。
 しかし…今、この場にこれ以外の移動手段は存在しなかった。
 このタクシーを使って追いかけなければ、二人を確実に見失ってしまう。
 だから疑念が心の中で渦巻いていても、使うしかなかった。
 
―だが、一体どうやって第三者が…このタクシーを手配して、本多に
克哉を追うように手配したのかまったく予想がつかなかった。

 考えれば考えるだけ、判らない。
 だからつい…知らない内に呟いてしまっていた。

「訳が本気で判らねぇよ…。今日の会社内の騒ぎも、あのメールも…一体
誰が糸を引いているのか…」

 しかしただ一つ判っていることは、それらの二つはどちらも…克哉を中心に
して引き起こされた事だという事ぐらいだ。
 タクシーの運転手はただ…本多の依頼の通り、御堂のセダンを追いかけるように
して尾行を続けていた。
 この40代後半ぐらいの運転手も大変な貧乏くじを引いたものである。
 ピリピリした空気を発している本多を乗せて、かなりのスピードを出しながら
訳も判らない状態で尾行などやらされているのだから。
 しかし、本多にとってラッキーだったのは…このドライバーの腕前が
確かなことだった。

 前を走る御堂の車がどれだけ速度を出していても、日が沈んだ直後で
視界が利き辛く、帰宅途中の車がひしめき合っている場所を通り抜ける
ことになっても付かず離れずの距離でずっとぴったりとくっついて走って
くれていた事だった。
 そして御堂の車は、どこかのホテルの地下の駐車場へと静かに
入っていった。
 本多が乗っているタクシーも其処に入ろうとしたが、入り口の付近で
運悪く…その間に一台の車が入り込んでしまったので、距離が離されて
しまっていた。

(ちくしょう…!)

 その時、悔しさの余りに叫び出したい衝動に駆られたが…どうにかそれを
押さえ込んでいく。
 しかし、その瞬間…見てしまった。

「克哉っ…?」

 そう、気のせいかも知れない。ただの見間違えかも知れないが…今、
御堂と本多のタクシーの間に割り込んできた黒いベンツには…眼鏡を
掛けた克哉と良く似た人物が乗っているのが見えた。
 それに本気で本多は驚きながら…言葉を失っていく。
 暫くそのおかげで…タクシーの運転手が声を掛けてくれていたのにも
気づけないぐらい、ショックを受けてしまっていたのだ。

(何で…気のせい、だよな…。俺は確かに御堂の車に乗っている克哉を
追いかけていた筈なのに…。どうして、あいつが前の車にも乗っているんだ…?)

 思考が纏まらないまま、グルグルと回っているのが判った。

「お客さん! 前の車…この駐車場のどっかに止まっているみたいですが…
探しますか? それともここで降りますか? どっちか早く決めてくれませんかね!
モタモタしている間にも、メーターは上がり続けますぜ!」

 いい加減、タクシーのドライバーもイライラして、大声でそう訴えかけた時に
やっと正気に戻って現状を把握していく。

「あっ…ここまでで良いです。…とりあえず一旦清算で…。ただ、また必要に
なるかも知れねぇから、少しの間…この場所で待ってて貰って良いすか?
とりあえずこれで…」

 そういいながら、本多は一万を差し出していく。
 細かいものが、今…財布の中になかったからだ。
 心の中では相当に焦っていた。
 こうしている間に、御堂に部屋に入られてしまったら…もう本多には
打つ手がなくなる。
 とりあえず清算を終えて、慌ててタクシーの外に飛び出していくと…その直後に
再び携帯のメールの着信音が聞こえていった。
 急いでその内容を確認していくと、其処には一言…こう記されていた。

―最上階のスイートルーム。1001号室に向かえ

 たったそれだけが書かれているメールを見て…本多は迷っている暇は
ないと思った。
 怪しいことこの上ないメールだ。しかもメルアドはやはり見覚えがない
ものからだった。
 しかし今は疑っている暇はない。
 ヒントがあるならそれに縋るしか…術はなかった。
 そうして…本多はエレベーターに乗り込んで、指定された通り…最上階に
向かっていく。

―其処で予想もしていなかった衝撃の光景に遭遇するなど、まったく
思いも寄らずに―
 

 
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プロフィール
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香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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