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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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 以前に報告を受けた、「恋人の条件の10話のリンクが
繋がっていない」という件の、全話の冒頭のリンクを修正
させて頂きました。
 1~30話まではすぐにやりましたが、残り31~50話の
作業が若干、間が空いてしまってすみませんでした。
 これで全部の話から問題なく飛べると思います。

 とりあえず、今日明日中にまた見直し作業をやって
おきたいと思います。
 本当に、報告して下さった方…対応が完了するまで
遅くなってしまってすみませんでした。
 後、報告ありがとうございました。では…。
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※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                      10 11

―そしてフワフワと暖かい気持ちを抱いたまま、三カ月が
緩やかに過ぎていった

 相手への想いをここに来てから十日目に自覚していきながら。
 記憶を取り戻したいという強い願いを抱きながら…この暮らしを
失うのが怖くて、克哉は何の行動に出る事もなく、流れに身を委ねて
その間…過ごしていった。

 今朝も相手の腕の中で目覚めた。
 そうしてこちらがシャワーを浴びている間に、相手が作ってくれた朝食を
食べていき。
 そうしてまたじゃれ合い、抱きあう流れになって、其れを一日の内に
平均2度ぐらい繰り返していく。
 そうしている間に克哉の中では、眼鏡は愛しい存在になりつつあった。
 けれど言葉で、お互いに好きだと愛しているという言葉を交わした事は
一度だってなかった。
 ふと、色々と考えを整理したくて…克哉は白いパーカーにジーンズと
スニーカーという実にラフな格好をしながら、建物の外を何気なく
歩き回っていった。

(そろそろ…せめて好きだって言葉ぐらい口にするべきかな…?)

 相手への想いが、強くなって抑えきれなくなってきたからこそ…
克哉は悩み始めていた。
 言葉の上で伝えられない代わりに、自分達はあれだけ抱きあって
いるようにすら感じられる。
 一緒にいるとドキドキして、どうしようもなくなる。 
 けれど何故か自分達二人の間には…素直に好き、とかそういった
言葉をやりとりしてはいけないような空気が流れているように思える。
 自分が好きだと言ったら、この関係は何か変わるのだろうか?
 この閉ざされた世界で、いつか必ず終わりを迎えると告げられたからこそ…
相手を好きになってしまったからこそ、克哉の中に恐れが生まれていく。

「終わって、欲しくないな…」

 自分が記憶を取り戻す事を求めれば、この世界は終わってしまうと
いつか言われた事を思い出す。 
 失いたくなくて、目を閉じてやり過ごしていた。
 けれど…克哉の中には、いつだって…どうして自分達がこうして二人で
この世界に来ることになったのか、一緒に過ごしているのかその経緯を
どうしても知りたいという欲求があった。
 けれど其れは…この暖かな日々を失う行為だと知って、一度は
諦める事にした。
 脅かされて、余りに哀れな末路を辿った自分の姿を見せつけれらて…
あの時点で真実を探るのは中断した。
 
(…オレは一体、どうしたら良いんだろう…。あいつとこのまま、この世界で
いつまでも過ごしたい気持ちと…記憶を取り戻したい気持ちが、同じぐらいの
強さで存在している…)

 けれど、その願いはどちらも相反するもので。
 片方を積極的に選びとれば、もう一つの可能性は消えてしまう。
 だから両方の可能性を残す為には…克哉は何の行動にも出ず、曖昧に
して消極的にならざるを得なかった。

(けど、もう駄目だ…。オレはそろそろ…どちらか一つの可能性を選びとる
べき時期に来ているのかも知れない…。行動をしたら、確実に何かが
変わってしまうだろうし…下手したら、何かを失うかも知れない…。
けど、もうこれ以上目を背けてなんていられないよな…)

 曖昧な状態は、色んな可能性を内包する。
 何も失いたくなければ目を逸らして口を閉ざしていれば良い。
 そうすれば様々な未来が存在して、何かを失う可能性も少なくなる。
 けれど…今の自分には明らかにそれでは満たされなくなっている
部分が存在していた。

(もう、駄目だな…。曖昧にして逃げれば、このままの生活を送り続ける
事は可能かも知れないけれど…。もうそれじゃ、満たされなくなっている
自分がいるから…)

 愛し始めているからこそ、この世界と自分達の関係の成り立ちを
どうしても知りたかった。
 其れはパンドラの箱をまさに開ける事に等しいのかも知れない。
 けれどどちらか片方しか得られないのなら…その片方だけでも
欲しいと強く望む気持ちを、克哉は自覚していった。

(もう、このままじゃいられない…。あいつに、この気持ちを伝えよう…)

 そう決意した瞬間、声が聞こえた。
 其れは…三カ月前に、克哉に忠告をした人物の声とは明らかに
違うものだった。

―ああ、それで良い…。お前さえ、それで幸せに過ごしてくれるなら…

 その声を聞いた瞬間、克哉はハっとなった。
 何故この場所で…この声を聞くのか、心底疑問に思った。
 けれど幻聴では絶対にない、と確信していった。

「…えっ、何で…本多の、声が…今…聞こえた、んだ…?」

 自分と彼以外、存在しない世界。
 だから他の人物の声を聞く事は暫くなかったからこそ…
克哉は驚愕を覚えていく。
 しかし、まだ克哉は知らない。
 此処がどのように成り立っている世界であるかを。
 何故、大学時代からの付き合いである本多の声が…今、
聞こえたのかも。
 その言葉の意味も、何もかもを忘れている。

―そして疑問を覚えていきながら、克哉は行動に移す事を
決意していく

 其れが…この幸せなまどろみの世界を、打ち砕く結果を招く事を
薄々と感じていきながら…

※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                      10

 抱きあったまま、静かに部屋の片隅に置いてあるベッドの上に
二人で倒れ込んでいった。
 現在二人で暮らしている高級ペンション風の家には、あちこちに
ベッドが備え付けられている。
 キッチンと風呂、物置、リビング以外の客室にはほぼ、備え付けられて
いると言っても過言ではない。
 克哉がこの部屋にいたのも、何処かでこの流れを期待しているからに
他ならなかった。

(浅ましいな、オレって…)

 今の克哉は記憶がないからこそ、自分がからっぽになっているという
自覚がある。
 その抜け落ちてしまった部分が酷く意識されて、不安で…だからこそ
無償に他のもので埋めたいという欲求が強くなっていく。
 抱きあい、口づけて…相手の鼓動や吐息を間近に感じている間だけは
そのカラッポな部分を意識しないで済むから。
 だから、抱かれる事を望んでいるのかも知れない。
 そんな事をシーツの上に組み敷かれていきながら…ふと、考えていき。
 深く舌をもう一度差し入れられて、舌を濃厚に絡ませ合うキスを交わす
頃には再び、欲望だけを忠実に追いかけ始めていった。

「あっ…」

 相手の手が、手早くこちらの衣類を剥いていって…胸板全体と、
最も敏感な突起を的確に弄り上げてくる。
 その手つきは、日増しに優しいものに変わっていくような気がする。
 初日のセックスが、こちらの性欲を強引に煽って一方的にされたものと
するなら、抱かれる度に相手の手は羽のように柔らかくなっているように
感じられていく。
 愛撫の基本はソフトタッチ、だと男女のハウツー本とか、どこかの雑誌の
特集とかにも書いてあったように思う。
 実際、こうして抱かれてみると…妙にその言葉に納得出来るように
なってしまった。
 眼鏡を掛けた、自分と全く同じ顔をした男の手が…スウっと肌全体を
撫ぜるように触れてくるだけで、皮膚に電流が走っていくようだ。
 慈しむような触れ方に、まるで女のように敏感に反応しまくっている
自分がいて…其れが一層、羞恥を煽っていく。
 欲望を煽るようなキスと、優しすぎる触れ方の落差に、頭の芯が
ボウっとなってしまいそうだ。
 下半身の衣類を剥かれて、己のペニスが飛び出していくとそれだけで
頭から火を噴きそうになってしまう。

「やっ…見る、なよ…」

「何を言うんだ。すでにキスと胸だけでこんなにさせているのは…
お前が、いやらしい身体をしているからだろう…」

「うっ、それはそうなんだけど…あ、やっぱり…見る、なよ…はっ…ん」

 相手の右手が的確にこちらのペニスを弄り上げてくる。
 克哉が感じるポイントなど、とっくにお見通しだというぐらいに…その手は
巧みに性感を高める部位を刺激していった。
 まるで魔法の手のようだ。
 眼鏡に触れられる度に、何もかもがどうでも良くなってしまいそうで…
そんな自分に怖くなる。
 
「こんなにさっきからお前の此処は浅ましく蜜を零して…俺の手を
汚している癖に。今更…いや、とか見るなを繰り返すのか…」

「あ、当たり前だろ…。は、恥ずかしい、んだから…」

 そういってイヤイヤするように頭を必死に振りかぶっていく。
 そんな自分を相手は、欲情に濡れた双眸で見つめてくる。
 この目が本当に、毎回反則だと思う。
 見られれば見られるだけ恥ずかしくて死にそうになるのに…同時に、背筋から
ジワリと欲望がせり上がって来て頭がおかしくなりそうだった。
 
「後、服…お願いだからお前も脱げよ…。いつも、一回目の時点では
お前、脱いでない事の方が多いじゃないか…。抱きあうなら、どうせなら
お互い裸になった方が良いし…」

「別にその後、脱ぐんだから同じようなものだろう。其れに俺が服を
脱ぎ忘れるのはお前がそんなにいやらしく、こっちの欲情を煽ってくるからだ。
お前こそ少しは加減したらどうだ…」

「な、何だよそれ! そ、そんな言い方って…! はあ!」

 相手の物言いに恥ずかしくて大声で反論しようとすると、いきなりペニスを
宛がって入口部分を執拗に擦り上げてくる。
 満足に慣らしてもいない個所に、いきなり猛りきったモノを宛がわれて
克哉はぎょっとしていく。
 コレが克哉にとって強烈な快楽を与える存在だっていうのは判っているが、
こちらはあくまで男である。
 慣らしていない状態で踏み込まれたら激痛が走るのも本能的に判っているから
思わず身体を固くしてしまう。

「…俺はいつだって、お前の中に早くコレを挿れたくて仕方ないんだ…。
あまり、こちらを煽るな…」

「煽るなって言われたって、どうすれば良いんだよ…は、あ…!」

 そうして入口にペニスを宛がわれた状態で、こちらの性器を扱きあげられて
しまうと必要以上に感じてしまう。
 いつ、挿入されてしまうかも知れないスリルと、相手の欲望を如実に感じて
否応なしに高揚していってしまう。

「やっ…あっ…お願いだから、ソレ…ど、うにかして…!」

 腰が焦れて、揺れてしまう気持ちと…痛みを怖がる気持ちがない混ぜになって
克哉は泣きそうになってしまう。
 本人には自覚はない、そういった今にも泣きそうな切なそうな顔をしながら
身体をしきりに捩る仕草が、余計に男心を煽ってしまう事を。
 そうして眼鏡の手の中で克哉のペニスは大きく膨れ上がり、あっという間に
大量の白濁を放っていく。

「んあ、あああっ!」

 そして達して、身体の緊張が一気に緩んだタイミングを見計らって相手の
ペニスが強引にこちらの中に押し入ってくる。
 一瞬、キツく締めつけていったが、同時に相手の舌先がこちらの口腔に
侵入してきたのでそちらに意識が向けられていくと…強張った内部が自然に
緩み始めていく。

「ふっ…うっ…」

 優しさと強引さを同時に感じさせる交歓に、克哉は身も心も日増しに
籠絡されていってしまう。
 そして相手の身体が緩やかに動き始めていくと…こちらも其れに
合わせて腰を揺らしていく。

 そして何度も相手の精を絞り尽くすぐらいに今日も激しく抱きあい…
行為が終わった頃、克哉は泥のように眠っていった。

―束の間だけでも、胸の中に湧き上がる疑問から目を逸らす為に…
 2月16日…長年、この家で飼われていた猫は
永眠しました。
 とりあえず数日前に、自宅から出て行こうとする行動をいきなり
取っていたりしたので覚悟はしていましたけどね。
 今日、帰宅後は付きっきりで傍にいて…私と、両親が見守りながら
最後を看取りました。
 一先ず、最後に孤独を感じさせないで見送ってやろう…と考えていたので
無事にそれは達成出来たので良しとします。

 12月ぐらいから急激にやせ始めたので、この冬は越せないだろうなって
薄々感じていたので…その辺りから、二カ月ちょい…出来るだけ応接間で
寝るようにして、自分の部屋にあまり戻って来ない生活を送っていたんですが
これで一区切りつきました。
 ベッドじゃなくて、基本ソファの上で寝る暮らしをしていたのでね。
 そのせいで連日、若干疲れが残ってしまっていたんですよ(苦笑)
 まあ…これで心おきなくベッドで寝れる生活に戻れる訳ですが。
 やはりちょっぴりさびしいです(涙)

 けど、ま…どんな生物にも死というのは必ず訪れる訳で。
 天寿を迎えてしまう時、周りの人間が出来る事といったら傍にいてその人(動物)に
孤独を感じさせない、見守ってその死を見届けるぐらいしか出来ない訳で。
 今日は、三人で交代で傍にいたり…見守って、出来るだけ寂しい想いを
させないようにしていましたし。
 本日の早い時間帯だったからこそ、三人で看取る事が出来た訳だし…
比較的理想に近い終わりだったので、納得する事にします。

 けど、すみません。
 納得はしていても何となく心にぽっかり穴が空いた気分なので
17日は休ませて頂きます。
 18日以降にまた連載は書かせて頂きますね。
 それでは失礼致します。では…(ペコリ)
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                   

―この世界で目覚めてから、気づけば十日余りが経過していた

 目覚めた翌朝に見せつけられた、別の結末を辿った哀れな自分の
姿はあまりに衝撃的過ぎたから。
 今はまだ、思い出すべきじゃない。
 そのメッセージを受け取ったからこそ…克哉は、当面は記憶を無理に
蘇らせようとは考えなくなった。

(…もう、十日ぐらい経っているのかな…。一応昼夜は存在しているし、
時間の経過もあるみたいだけど…。けど、本当に不思議な場所だよな…)

 自分達が生活している、高級なペンションを思わせる建物の中から
外の風景を眺めていきながら…克哉は物思いに耽っていく。
 毎日、眼鏡を掛けた自分と同じ男の手によって、美味しい食事は
出されていく。
 そしてこの十日間にも何度も抱きあい、彼の手で絶頂に導かれ続けた。
 最初は抱かれる事にも抵抗はあったが、二度…三度と行為を重ねている内に
慣れて来て、今では当たり前のように相手に触れられ…口づけられるのが
日常になってきている。

「…何か、真綿で包まれているみたいだな…今の、オレって…」

 自分と相手との間にある感情や関係は、一体何なのかという疑問はある。
 けれど…克哉は薄々、感じ取っている。
 相手に、こちらに対しての悪意や害意の類は一切感じられない事を。
 もしそんな想いを抱きながらこちらに接しているとしたら…きっと自分は
こんなに寛げないと思うから。
 相手から、こちらに対しての慈しみを…優しさを感じ取っているから。
 けれど同時に感じている。
 
―相手は決して、自分を恋愛感情の意味で愛している訳ではない事を…

 何かに、いや…誰かに対して遠慮をしているような部分を、ふとした
瞬間に感じる。
 時々眼鏡の奥にあるアイスブルーの瞳が、切なそうに歪む事も…
肌を重ねている瞬間に感じ取る時がある。
 その目を見る度に…彼が、どうして自分に対してそんな目を向けてくるのか
空白の記憶の内容を知りたくなる。
 何故、彼はこの不可思議な世界に自分と共にいてくれるのか…その理由を
猛烈に知りたい。
 けれど…同時に薄々と感じている。

(あいつが…あんな目をしてオレを見つめる理由を知りたい…。けれどその
理由を知ったら、きっと…この世界にいられなくなる気がする…)

 世界の消失だけならまだ良い。
 一番、克哉が恐れているのは…彼と過ごせなくなるかも知れない事だった。
 知りたいという欲と…この真綿で包まれた心地良い時間を失いたくないと
いう気持ちが強烈にぶつかりあっていく。
 それはまるで…パンドラの箱を前にして葛藤する女のような心境だった。
 自分が思い出せば、きっと本気で箱の鍵を探せば思い出す事は可能だろう。
 けれどその時、今ある環境は消えうせるのと引き換えになる事が
判っているからこそ…今は、克哉は自分の本心を隠すしかなかった。

(…何か、今のオレって…真実を知りたいって気持ちと…この場所を
失いたくないって気持ちが戦ってしまっている気がする…。それに、あいつが
オレにとってどんな存在だったのか…どうしても知りたい。…せめて、それだけでも…)

 オーロラのように美しく、様々な色合いを映す空を眺めていきながら…
克哉はそう願っていく。
 この十日間だけで、少しずつ自分に触れて慈しむ男に対して…強烈な
情を抱き始めていたから。
 彼と自分がどんな間柄だったのか。
 どういう経緯で此処で二人で過ごすようになったのかを…どうしても
知りたいという欲が、溢れてくるようだった。
 そう、克哉は惹かれ始めていた。

『克哉』

 そう、自分の事を甘く呼びながら…彼の熱がこちらの最奥に注がれる度に、
ジワリと胸の中に湧き上がってくる想いがあるから。
 彼はこちらに名前を決して教えてくれない。
 だから、どう呼べば良いのか判らない。
 仕方なく、克哉は彼の事を「お前」と呼び、相手もそれで良いと流されて
しまっているのが現状だった。
 相手はこちらの名前を呼ぶのに、こちらは呼ぶことが出来ない。
 そんな関係なのに、優しさと慈しみを注がれ…守られているのだと
実感していく。
 たった十日、それだけの日数でも…人の中に想いを生み出すには
充分で…だからこそ克哉は知りたいという欲が日増しに強くなっていく。

「ねえ…教えてくれよ…。お前とオレって…どんな関係だったの…?」

 自分と同じ顔をしている人間に向かって、こんな想いを抱くなんて…
どこまでナルシストなんだ、と思う。
 けれど…克哉はもう、目を背ける事が出来なくなっていた。
 この世界でただ一人、自分と共に過ごす相手に対して…強い想いが
生まれてしまった事を。

―そしてその想い故に、真実を知りたいという気持ちが深まっていく事も…

 そうして葛藤し、思い悩み…遠くを眺めている最中。
 背後からドアが開閉する音が静かに聞こえていき…眼鏡を掛けた男が
部屋の中に入ってくるのに気づいていく。

「…この部屋にいたのか。探したぞ…」

「あ、うん…。ちょっと空を眺めたくなったから…」

「…まあ、この家の中にいるのならイチイチ俺に断りを入れなくても
構わないがな。外に行く時は一応言っておいてくれ。あまり遠くまで行くと
迷子になる可能性があるからな…」

「う、うん…それは、気をつけるよ」

 克哉は数日前、当てもなく彷徨っていたら夜まで帰って来れないという
失態をかましてしまったばかりなので相手にそう言われると…肩身の
狭い想いをするしかなかった。
 相手が必死に探してくれてこちらを見つけてくれたから良かったものの
このままこの家に帰れないままだったら…と考えるとゾっとする。

(まあ、その一件があったから…更にコイツを意識してしまったのかも
知れないけどな…)

 そうして、何気なく眼鏡の顔を見つめていく。
 其れに応えるように…男は、こちらに歩み寄って来た。
 ごく自然に目を閉じていけば…吐息が、間近に感じられていった。

「ん…」

 そして、ごく自然に唇は重なって、抱きしめられていく。
 少しずつそのやりとりが自分の日常の一部になっているのを感じる。
 確かな安堵を感じていきながら…克哉は一時、思案を止めて相手の腕の中に
収まる。

―その鼓動を聞きながら、克哉もまたそうして…彼の身体に腕を回して
一時、温もりに身を委ねていったのだった―
逆転検事2 面白い! らしい
 
兄上に昨日、逆転検事2を良かったらプレイしてくれ! と
渡されました。
 今回、結構ボリュームがあるらしく2月3日の発売日当日に買ったにも
関わらず十日ぐらい掛かっているので。
(大抵逆転裁判シリーズだと、私ら兄妹は一週間前後で終わるのが通例)
 
それでその時に色々とネタばれになりすぎない範囲での感想を
聞かされたんですが、逆転検事2は「佳作以上の良作まで成長している!」と
言っておりました。
 
 兄上は逆転裁判シリーズの方は、シナリオ担当している巧さんを
「狂人じみた処がある天才(褒め言葉です)」と称していて、ミステリーを
書く作者は実際、少し狂った処があるぐらいの方が常に人を驚かそうと
心がけているので、実際面白いと良く知っているんですが、逆転裁判の
シナリオはまさにそんな感じ。
 1~3まではともかく、意表を突く、驚かせる、人の予想を裏切りまくるが
基本だった。
 けれど4で大きな失敗をしてしまい、逆転検事シリーズは別の人が
シナリオを担当。結果、逆転裁判4よりはこの世界観を表現しているけれど、
私の方も評価は「ファンゲームの域は出ているけど、本家本元にはちょっと
及ばない佳作」という評価だった。
 それでも結構、楽しんで遊べましたけど。
 
けど、兄上がプレイ中…幾つかの場面を見せられたんですが。
 
「えええええっ!」
 
 と驚いた個所が多数。そして兄上は、私にこれを渡した時に早く遊んで
貰って、早く語りたい様子だった。
 これは兄上が自分が気に入ったゲームをプレイした時に見せる反応。
 そして評価は「今回は秀才が前回の不満点を必死に改善しようとして
頑張って良作にまで成長している!」と力説していた。
 という訳で、香坂も通勤の合間とかにプレイしてみようと思っております。
 
 今回の他の評価は「4話と5話だけ見れば傑作と言える出来」「ラスボスが今までの
シリーズと違って司法に関係してくる人間じゃない」「1話から3話までがちょっと饒舌、
けどその中に4話、5話の盛り上がりに必要な伏線がちりばめられているので、
その辺は必要なものと納得出来るレベル」という感じです。
 
 逆転検事2、興味あって買おうかなと思っている方…良ければ参考に
して見てください。
 一応、うちの兄上は沢山のゲームを今まで遊んでいるだけ、的確にゲームを
評価する目を持っていると思っておりますので。(好みはかなり偏っているけど)
 
 
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に                 

 目の前に立っている、自分の姿に…死の影を濃厚に感じた。
 やせ細った骨ばった身体に、ランランと異様に輝いている眼差しに
何か不吉なものすら感じていく。

―これが、記憶を思い出した時の貴方が辿る姿ですよ…

 思い出せない事が不安で怖くて。
 早く記憶がよみがえって欲しいと願っている今の克哉にとっては
これはあまりに衝撃的な姿だった。
 だが、目の前の自分は一言だけ、言葉を発していった。

『太一…』

 その言葉を聞いた時、信じられない想いだった。
 瞬間、明るい髪をして笑っている自分の友人の顔を鮮明に
思い出していく。
 それはさっきまで、思い出せなかった…空白の時間の間に知り合った
人物だと即座に理解していく。
 だが克哉は知らない。其れが…太一の手を取って、そして…幾つかのすれ違いの
果てに…太一と、その祖父が悲劇的な結末を遂げるのを目の当たりにして
心を壊してしまった自分の姿である事を。
 けど、謎の男もその事実までは克哉に打ち明けなかった。
 …何故なら、これは『今の克哉』とは別の未来を歩んだ…別の人間の手を
取って様々な結末の内、最悪のものを歩んでしまった結果のものだからだ。

 「あっ…ああっ…」

 名前を聞いた瞬間、消えてしまった記憶のピースが一つ、埋まって
五十嵐太一という人物と過ごした時間を思い出していく。
 まだ、全てのピースは埋まっておらず…全貌は判らないままだったけれど
たった一つ、その名前を聞いただけで…確かに、蘇るものが在った。

―記憶というのは…何処かで繋がっております。たった一言…五十嵐様の
手を取って悲劇的な結末を辿った…御自分の放った言葉を、名前を聞いただけで
それだけ思い出す事があるように…『繋がり』を示すキーワードを聞けば
貴方は徐々に思い出すでしょう。今の貴方にとって五十嵐様は『友人』という
間柄であっても、それだけの衝撃があるでしょう…? 貴方の心を病ませるに
至った出来ごとは、もっと深い処まで関わった存在に纏わるものです…。
其れは今、思い出すべきものではありません…。
もう少し緩やかに、この世界で過ごして見て下さい…。いずれこの世界は
終わりを迎えます。その日が自然と訪れるまでは…この箱庭で、あの方と
二人でどうぞお過ごし下さい…

「ま、待って下さい…貴方は、一体…!」

 先程から声だけはこんなにも鮮明に聞こえているのに、肝心の声の主の
姿が全く見えない事に克哉は疑問を覚えていく。

「…教えて下さい! 貴方は誰なんですが! せめて姿ぐらい…見せて下さい…!
お願い、します…」

 まだ相手の声が頭の中に聞こえている内に、克哉は必死になって
訴えかけていく。
 相手の見えてくれた光景は、衝撃的だった。
 それだけで無理に記憶を思い出すべきじゃないと理解するには充分だった。
 けれど声だけで姿すら見せない相手の言葉を全て鵜呑みにするには不安で。
 だから必死になって克哉が叫んでいくと…哀れな末路をたどった自分の姿は
消えていき、代わりに漆黒のコートを身にまとった長い金髪の男が姿を現していく。

「あ、あああっ…!」

 ホログラムのように浮かび上がる…眼鏡を掛けた妖しい男の姿に、
また克哉の記憶は一つ、ピースが埋まっていく。
 その瞬間…目覚めてから自分と共に過ごしている人物が誰なのか、
ヒントを得て…更に目を見開いていった。

「オレは…オレは、一体…! 何が、起こっているんだよ…!」

 克哉の混乱は、一層深まって叫ばずにはいられなくなっていく。
 そんな彼を…黒衣の男は…Mr.Rは慈しみすらこもった眼差しで
見つめていった。
 泣きじゃくる子供を慰めるように、どこまでも柔らかく優しい声音で…
言い聞かせるように、告げてくる。

―今は何も考えずに、この優しい世界に身を委ねていれば良いのです…。
此処は、ある方の願いによって…貴方への愛によって紡がれた
ゆりかごのような世界…。だからその終焉の時まで…今は無理に考えずに
その優しさを目いっぱい享受して下さいませ…

「えっ…」

 それを聞いて、克哉は目を見開いていく。
 自分への愛で、紡がれたゆりかごのような世界…。
 其れは克哉を驚かすには充分で、そうして…目の前の男は幻のように
消えていった。
 初めから誰も其処に存在していなかったのかのように…痕跡すら
一切残さずに。
 そうして草むらで克哉は一人、立ちつくしていく。

―貴方への愛で…

 その言葉が脳裏にどうしても引っかかっていく。

「教えてくれよ…誰の愛で、此処は紡がれているのかを…せめて、
それだけでも…」

 其れを思い出せず、もどかしい想いを抱いていきながら…克哉は
自然と、涙を一粒、二粒と零して…暫くその場に立ちつくして
いったのだった―
  何て言うか、うちで長年飼っている猫がそろそろ
本気で天寿を全うしそうな感じになっております。
 恐らく推定、14~5歳ぐらいだから人間で言えば70~80歳
ぐらいになっているんだし、どんな生物でも死は必ず訪れる
訳だから、ああこの子にも順番が来たんだなって判っているんですが
日増しに…徐々に弱っていく姿を見て、最近テンションが
下がってしまっております。
 もうこの冬を越せない、というのは薄々感じていたんですが…
多分、今月いっぱい持てば良い状況かなという感じになっております。
 随分と痩せてしまって、ちっちゃくなって…本当に、赤ん坊の
ようになってしまっております。

 出来るだけ一緒にいてあげるようにしたり。
 父も母も抱っこして構ったりしています。
 んで、私も良くこの子に今…言っている言葉がある。

『最後まで、うちの子として死んでね』

 猫って、死期を悟るとスウっと姿を消すって聞いた事があるから
最近、繰り返しそう言い聞かせている。
 人間の言葉を猫はちゃんと理解するそうだから、元々は迷い猫なんですけど
十二~三年、この家の猫として暮らしてきたのならもう此処は貴方の家なんだから
ここで最後をちゃんと迎えて欲しい、と願っている。
 これだけ長く暮らせば、猫だって家族と同様なんだから。
 そうやって覚悟をしているけどね。最近、ちょっと切なくなっております。
 …出来るだけ最後まで、可愛がって大切にしたいと思っていますけどね。
 やっぱり、ちょっと悲しいです。ぐすん…(涙)
 会社の方で一悶着があったので、それでドっと疲れ果ててしまい
こっちを書く気力失っておりました。
 …まあ、その件に関してはボチボチ自分の中で整理をつきましたので
再開しますけど。
 とりあえず、まあ…落ち着いたので。

 何て言うか、起こった出来事にガクっと気が抜けてしまい…
何もかもがアホらしくなったというか。
 デタラメな人に何で振りまわさなきゃアカンのやろう…とまあ、
大雑把に言えばそういう感じです。
 詳細は暗くなるので伏せますが、そういった感じの出来ごとです。
 とりあえず軽く近況のみ。
 ボチボチまた連載、書ける範囲で続けていきますです。はい。
※この話は記憶を一部欠落した状態で生活している設定の
ノマと、真実を隠している眼鏡と閉ざされた空間で生きると
いう内容のものです。
 一部ダークな展開や描写を含むのでご了承下さいませ。

忘却の彼方に               

 一旦現実逃避する為に寝て、起きた後…克哉は自分と同じ顔をした
男と一緒にいたくなくて、散歩する事にした。
  一度抱かれてから気づくのもマヌケな話だが、目が覚めた後に
身支度を整える為に鏡を見た時にやっとその事実に気付いた。
 印象とかそういうのは自分と全然違うが、昨晩あれだけ間近で
相手の顔を見たのだから間違いようがない。

―彼と自分の顔のパーツが全く同一であることを…

 その事実が判った途端、また克哉は混乱していった。
 彼の言ったシェルターという意味。
 そして目覚めた時から断片的に思い浮かぶ光景が何の
事実を指しているのか。
 そして何故、この世界に自分と全く同じ顔をした男と二人きりで
存在しているのか。
 白いワイシャツにジーンズというラフな格好に着替えた状態で
あてもなく彷徨い歩き…そして不思議な色合いをした空を眺めていく。

(普通…ここが異世界だって言われたら相手の正気を疑う処だけど…
この不思議な空の色を眺めるとつい納得してしまうよな…)

 そう、きっと空の色が青色だったなら、その言葉の方を疑って
いただろう。
 けれど青、緑、黄色、黄緑、赤、ピンク、紫…オーロラのように様々な色合いが
混ざって輝いている空を見ると、ここが現実ではない事は妙に納得して
しまえるのは確かだった。
 けれどやはり気に掛かるのは、どうして自分がここに来たのか…
その経緯を全く思い出せない事だった。

「ここは一体、何処なんだろう…。どうして、オレはあの人と一緒に
二人でいるんだ…?」

 彼は今は思い出すな、と言った。
 この場所は自分の為に生み出されたシェルターのようなものだと。
 どうしてもその疑問が膨らんでしまって、抑える事が出来ない。
 知るな、と言われれば知りたくなるのが人間のサガというもので。
 今なら決して開けるなと言い含められてしまってもパンドラの箱を開けてしまった
女や、決して神に口にしてはならないと言われていながら蛇に唆されてしまって
知恵の実を食べてしまったアダムとイブの気持ちが判る気がした。

「知りたい…どうしても。オレがどうして此処に来るに至ったのか…
その原因を…」

 強い気持ちを持って呟いたその瞬間、奇妙にも脳裏に声が
聞こえていった。
 
―困りますね。まだ真実を知るには…早すぎますよ…佐伯克哉さん

 一瞬、誰かと思った。
 しかし周囲を見回しても誰も存在していない。
 なのに声だけはこんなにもはっきりと鮮明に頭の中に響いている状態に
克哉は困惑していった。

「誰、誰なんですか! 今の声は一体…」

―私が誰かなのは、今の貴方にとっては限りなくどうでも良い事です…
しかし、今の時点で記憶を思い出すのは決して良い事ではありません。
ですが口で説明しても判っては貰えないでしょう…。ですから、今から
例を一つお見せする事にしましょう…

「れ、例って一体…何を、ですか…?」

 克哉の声が震えていく。
 だが、相手の声はそれきり全く聞こえなくなった。
 その不気味な沈黙に克哉は、ゾワっと寒気すら覚えていった。
 一体これから何が起こるのだろうかと身構えていく。
 しかし風は変わらず穏やかに吹き続けて、周囲の様子にも何か大きく
異なった変化が起こる訳でもなかった。

「えっ…?」

 何が起こるのかと身構えていた分だけ、すぐに変化が何も
起こらなかった事に拍子抜けを覚えていく。
 その瞬間、少し離れた位置からガサリ…という草音が響いて
とっさに振り向いていった。
 その先に存在していたものに、克哉は驚きを隠せなかった。

「えっ…まさか、オレ…?」

 其処に立っていたのは、まるで幽霊のように透き通った…ホログラムの
ようにすら見える、青白い死んだ目をした自分だった。
 さっきの眼鏡を掛けた自分と同じ顔をした人物じゃない、紛れもなく…
眼鏡を掛けていない今の自分と全く同じ顔をしていた。
 だが、目の輝きは全く異なっている。
 全てに絶望して、食べる事すら止めているのだと一目で判るぐらい…
憔悴して、やつれきっている。
 自分のそんな姿をいきなり突きつけられて、克哉はパニックになりかけた。

「う、ああああっ!」

 そして絶叫が喉からほとばしる。
 理解を越えた出来事ばかりが立て続けに起こる事に耐えきれず、
一瞬だけでも逃避をする為にともかく克哉は叫び続ける。
 その瞬間、先程の謎の声がまた頭の中に聞こえていった。

―まだ、時期が来ていない状態で思い出せば…貴方はこの状態と
全く同じになり果てるでしょう…。これは異なる未来を辿った、貴方とは
別の道を歩んだ貴方の姿。けれど記憶を持ったままでいれば…
確実に同じ姿になっていたでしょう…? それでも、貴方はすぐに
思い出す事を望みますか…?

 謎の人物の声は、諭すように優しく…同時に事実を容赦なくつきつけてくる
残酷さをもって響き渡る。
 そして克哉は今は何も考えられなくなり…茫然と、目の前に存在する
哀れな自分の姿を凝視していったのだった―
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小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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