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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス      

―克哉にとってはたった一つのツリーを御堂と選んで買った
だけでとても嬉しかった

 普通の恋人同士においては当たり前にある事が、今までの自分達の
関係には存在しなかったから。
 後部座席の上に横にした状態で、購入したばかりのツリーを
横たえていく。
 その隣には二日分の最低限の食料が入った買い物袋が
置かれていた。
 一通りの買い物が終わるとすぐにデパートを出て、車で
御堂の自宅へと向かっていった。
 その最中…御堂と過ごした、他愛無い買い物の時間を克哉は
幸せそうに噛みしめていた。

(…オレ、おかしいかな…。こんな風に御堂さんと一緒に買い物が
出来たってだけで凄く嬉しくなってる…)

 思い返してみると、こんな風に御堂に送迎されたり…週末を
過ごしたり、そんな事すら今の自分には新鮮な事なのだ。
 こんなのは自分達の関係が強引に始まった頃には考えられない時間で。
 気がつくと頬が緩みっぱなしになってしまう。

(何か凄く単純だよな。一緒に買い物して今日の記念になりそうな物を
購入しただけなのに…。こんなに幸せな気持ちになれるなんて、さ…)

 チラリと運転している御堂を見ながら、笑ってしまいそうになるのを
堪えていく。
 きっとこのニヤけた顔を見られてしまったら、御堂に怪訝そうにされそうな
気がしたから。
 けれど信号待ちをしている最中、ふいに相手がこちらの方に
振りかえっていった。

―そして唐突に、左手で強く手を握り締められていった

 予想もしていなかった行動に、克哉は一瞬息がつまりそうになる。
 グイ、と顔を寄せられるような動きもあったが…シートベルトがあるせいで
身体をこれ以上近づける事は叶わなかった。
 一瞬だけ御堂の瞳が情熱的に揺れた気がして、それだけで大きく
胸が高鳴っていく。
 信号が青になると同時に手は離されて…ギアの処に戻されて
いったが…今の行動だけで克哉をドキドキさせるには充分だった。

(い、今のは一体…どういう意図があったんだろう…。凄くびっくりした…)

 御堂の突然の行為に、鼓動が荒くなって頬が熱くなるのを感じていた。
 下手にキスするよりも、もしかしたら興奮してしまったのかも知れない。

(嗚呼、だからオレ…御堂さんに振り回されるんだな…。こんな風にこの人は
予想もつかない行動をしてくるから…。その度に、心臓が壊れそうになるぐらいに
ドキドキしてしまうんだ…)

 今夜は、週末でもクリスマス当日という特別な用事がある訳でもない。
 それでも買い物の後に、御堂はこうして一緒に過ごす時間を作ってくれた。
 二人きりになったら、この人は自分に触れてくれるだろうか。
 そうして…今見たいにこちらの胸を大きくドキドキさせるような事を
してくれるのだろうか。
 そんな期待感が胸の中に膨らんで…ワクワクとドキドキが同居
していった。
 克哉は其れを自覚した途端、ギュっと目を瞑って拳を握りこんでいった。

―嗚呼、オレ…本当に、この人の事を好きなんだな…

 そんな事を噛みしめながら移動中、チラチラと御堂の方を見遣っていき…
そして二人が乗った車は、今夜の目的地へと静かに辿りついていったのだった―
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この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス    
 
 
車内に乗り込んだは良いが、非常に気まずい雰囲気だった。
それまでと関係が激変して、正式に付き合うようになったは良いが…
やはりこうして二人きりになるとたまにこういう重苦しい空気になる事はあった。
 御堂はどうやら運転に集中しているらしく、殆ど言葉を発さない。
 何となく張りつめたものを其処から感じて、克哉もまた口を噤むしかなかった。
 
(ううう…やっぱり、まだ御堂さんと二人きりになると気まずい…。セックス
している時はこんな事を考えないで済むけれど…)
 
 御堂と一緒にいて、こういう空気を感じないで済むのは抱き合っている時ぐらいだ。
 その時間は熱くて激しい上に、快楽に翻弄されているおかげで…こんな
気づまりを感じないのだが、こうして平常の状態だとまだ…何を話して
良いのか判らない部分があった。
 
(何ていうか仕事の話以外、まともにした事がないしな…。本当に、正式に
恋人同士になっても…セックスと仕事以外でしか、オレ達って繋がって
いないかも知れない…)
 
 御堂に気付かれないようにそっと溜息を吐きながら、窓の外の流れていく
風景を何気なく眺めていった。
 やはり街中の景色は、クリスマス色が濃いものになっている。
 街路樹には華やかなイルミネーションが輝いて、闇の中にフワリと
浮かび上がっている様は酷く幻想的だった。
 きっとこういう処を恋人と一緒に腕でも組んで歩いていけば、外気の寒さ
など吹っ飛んでしまうだろう…とふと考えた時、自分と御堂がそうやって
歩いている様を夢想し…すぐに否定するように首を振っていった。
 
(何を考えているんだろオレ…。オレ達は同性同士で、基本的に関係を
隠さなきゃいけないのに…。そんな風に堂々と腕を組んで歩くなんて
ありえる訳がないのにさ…)
 
 すぐに首を左右に振ってその考えを否定していきながらも、きっと実現
したら自分は満たされるだろうな…と思った。
 そうしている間に、御堂の車は滑らかに目的地に向かって走り続けて…
そして、大きなデパートの中に滑り込んでいく。
 屋上の駐車場に車を停めて行けば、御堂がポツリと呟いていった。
 
「…着いたぞ。君も一緒に来てくれ…」
 
「えっ…? 此処に何の用があるんですか…?」
 
「…一緒に見たいものがあるんだ。だから来てくれ」
 
「あ、はい…判りました…」
 
 どうして今夜に限って、真っすぐに御堂の自宅ではなく此処に連れて
来られたのかその意図を測りかねて克哉は首を傾げていったが…素直に
従って、すぐに車を降りていく。
 そして御堂の後をついていくように階段を下りて、下の階へと向かっていった。
 そうして辿り着いたのは…雑貨などを扱っているフロアだった。
 現在はやはりクリスマスシーズンという事もあって、目にも鮮やかなぐらいに
クリスマスに関連したグッズや飾りなどが並べられていた。
 中にはパーティーグッズを豊富に扱っている一角もあって、仮装用の衣装が
ズラっと並べられている。
 メイド、バニー、ピエロ、サンタクロース…定番とも言える商品の他に、
面白系の色物の衣装も沢山あって…見ているだけで結構楽しめそうな感じだった。
 御堂はいきなり克哉の手を掴んでいくと、その一帯を駆け足で突っ切っていった。
 
「うわ、御堂さん…」
 
「良いから黙ってついて来い…!」
 
 余程テンパっているのだろうか。
 交際し始めてから多少は優しくなっていた筈の口調が、以前のように命令
口調に戻ってしまっていた。
 しかし背後からついて来ている克哉からは、現在の御堂の表情は窺い知れない。
 そうして駆け足で抜けていくと…其処に並べられている商品を見て、克哉は
軽く目を瞠っていった。
 
「あ…これ、は…?」
 
「ああ、ここが目的地だ…。これを一緒に君と見たかったからな…」
 
 そうしてようやく御堂が立ち止まったのは、やや小ぶりのクリスマスツリーが
沢山並べられている一角だった。
 光ファイバーの様々な色合いに変わるものから、手のひらに乗るぐらい小さな
ミニチュアサイズのもの、スノーマンなどの飾りが添えられているものなど…
多種多少なものが存在していた。
 そういうものとあまり縁がなさそうな御堂がまさか、こんな処に連れて来た事に
対して驚きを隠せないでいると…御堂は、非常に照れくさそうに咳払いを
一つしながら答えていった。
 
「…君の、今年のクリスマスの予定が空いているようなら…その日の為に、
ここで私の自宅に飾るツリーを一緒に、選んで欲しい。良いか…?」
 
 まさか御堂の口からこんな言葉が出るなんて予想もしていなかっただけに、
一瞬驚きの余りに即答出来なかった。
 けれど数秒経ってようやく言われた言葉を理解して心に染み込んでいくと…
克哉は本当に嬉しそうに笑みを浮かべていった。
 
「ええ、オレで良ければ…喜んで…」
 
 ぶっきらぼうに見せて来た御堂の本心みたいなのを感じて、口元が
ほころんでいくのを感じていった。
 そうして二人であれこれ言葉を交わしながら意見を述べた上で…
光ファイバー製の、30センチ程度の大きさのツリーを選んで、
購入していったのだった―

 本日はクリスマス当日です。
 一先ず香坂は家族と一緒に一昨日、チキンとケーキは
食べました。
 そして会社帰りにほぼ毎日立ちよっているお店のおじちゃんと
おばちゃんから大根3本貰いました…。
 クリスマスイブに、大根貰うってどうなのよ…。
 まあ、ありがたく煮物やヌカ漬けの原料にさせて貰いますけどね…。

 ちなみに冬コミに本を置かせてもらうスペースの報告も
そろそろやっておきます。
 鬼畜眼鏡の無料配布を置かせて貰うのは以下の友人の
スペースになります。

12月29日(一日目) 東1 B-12a  『NO Name』

 通販のおまけにつけた御克のほんわかラブ話を置かせて
もらうので良かったら顔を出してやって下さい。
(周囲は忍たまスペースですけど)

 もう一冊の王レベ本については以下のスペースです。

 12月29日 東5ホール ポ-28a  『Vanilla』

 まあどちらも前ジャンルから長い付き合いの友人のスペース
ですけどね…。
 前者の方は当日は本人が仕事が来れないって言ったので、
「じゃあオイラが代わりに登録と設営して、そちらの無料配布だけでも
置けるようにしようか?」と申し出て、それに便乗させて貰う形で
私の方の無料配布も置かせてもらう事になったんですけどね。
 27日夜に製本するんで、現在ちょっと追い込み中です。
 という訳で今朝は王レベの方の原稿を優先させて貰います。
 明日は一先ず、一話は掲載出来るように頑張ります。

 では皆さま…良いクリスマス当日を過ごされますように…。



 
 本日はクリスマス当日です。
 一先ず香坂は家族と一緒に一昨日、チキンとケーキは
食べました。
 そして会社帰りにほぼ毎日立ちよっているお店のおじちゃんと
おばちゃんから大根3本貰いました…。
 クリスマスイブに、大根貰うってどうなのよ…。
 まあ、ありがたく煮物やヌカ漬けの原料にさせて貰いますけどね…。

 ちなみに冬コミに本を置かせてもらうスペースの報告も
そろそろやっておきます。
 鬼畜眼鏡の無料配布を置かせて貰うのは以下の友人の
スペースになります。

12月29日(一日目) 東1 B-12a  『NO Name』

 通販のおまけにつけた御克のほんわかラブ話を置かせて
もらうので良かったら顔を出してやって下さい。
(周囲は忍たまスペースですけど)

 もう一冊の王レベ本については以下のスペースです。

 12月29日 東5ホール ポ-28a  『Vanilla』

 まあどちらも前ジャンルから長い付き合いの友人のスペース
ですけどね…。
 前者の方は当日は本人が仕事が来れないって言ったので、
「じゃあオイラが代わりに登録と設営して、そちらの無料配布だけでも
置けるようにしようか?」と申し出て、それに便乗させて貰う形で
私の方の無料配布も置かせてもらう事になったんですけどね。
 27日夜に製本するんで、現在ちょっと追い込み中です。
 という訳で今朝はそっち優先させて貰います。
 明日は一先ず、一話は掲載出来るように頑張ります。

 では皆さま…良いクリスマス当日を過ごされますように…。



 
この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

いつかのメリークリスマス  

―御堂と最初のクリスマスを迎えたのは、二人が付き合い
初めて間もない頃だった

 出会った時のお互いの印象は最悪。
 そして関係もまた、今思い返すと御堂のこちらに対しての
嫌がらせという意味合いがかなり強い形で始まっていた。
 当時の克哉は、御堂に対しては敵愾心と反発心しか抱いておらず…
強要される性的な行為には猛烈な嫌悪感を覚えていた。
 それでも関係を続けていたのは…自分が三年余り一緒に働いてきた
営業八課の仲間達を、あまりに高すぎるノルマから解放する為だった。
 だが、初めてセックスをした日から…少しずつ、冷徹だった御堂が
態度を軟化させていって、たまにこちらに対して優しさを見せるようになった。

―其処から二人の関係は確かに変化していったのだろう

 気づけば、克哉の胸には御堂に対しての想いがいっぱいになり…
其れに耐えきれなくなった頃に、玉砕覚悟で告白した。
 御堂を好きだと自覚して、彼の事で心がいっぱいに満たされてしまってから
捨てられるよりも…自分の手で覚悟して終わらせた方がマシだと思ったから。
 甘い望みなど、一切抱かないで叩きつけるように自分の想いを
御堂にぶつけていった。
 そしてその日をキッカケに、御堂もまた自分を憎からず想ってくれていた
という事実を知り…二人は結ばれ、そして恋人関係になった。
 けれどお互いに誰かにその事を打ち明ける訳でもなく、ただ密やかに…
少しずつ一緒に過ごす時間を増やしていきながら、彼らはそれまでと
関係を変化させていった。

 そして、二年前のクリスマス間際のある冬の日。
 克哉は御堂にメールで呼びだされた。

『本日、迎えに行く。君の退社予定時間を教えてほしい』

 あまりに簡潔で、用件のみしか書かれていないので…最初、素直に
答えていいものか迷ったものだ。
 だが御堂がわざわざ迎えに来てくれるというのだから無下にする訳にも
いかないと考え、メールを読み終えた直後に速攻で返信していった。
 そして就業時間を迎えると…相手から指定されたキクチ・コーポーレーションの
本社の裏口に立って、御堂が訪れるのを待ち構えていった。

(うう…緊張するなぁ…。まだ付き合い始めて三週間近くしか過ぎていないから…
御堂さんと顔を合わせるのにまだ慣れてないよな…)
 
 御堂との関係自体は三カ月前からあるが、正式に恋人になったのは
先月末からの話だ。
 だからまだまだ初心者マークがついていて、お互いに手探りの状態だった。
 克哉とて、こうして御堂が迎えに来てくれる事はとても嬉しい。
 優しくしてもらえたり、気遣って貰えれば心がフワっと暖かくなるからだ。
 しかしそれ以上に密かに頭を悩ましているのが…御堂との会話が仕事以外の
話題に関しては続かないという事だった。

(まだまだお互いに変化した関係についていけてないんだろうけどね…。
本当に、御堂さんとこうして恋人同士になれるなんて…予想もしていなかった
だけに、どうして良いのか…判らないよな…)

 そうして白い息を吐きながら、克哉はひたすら御堂の車が訪れるのを
待っていった。
 つい最近まで冬になった割に暖かい日が続いていたが…12月下旬に差し掛かると
同時にグっと気温が下がったので、こうして立っているだけでは酷く寒く感じてしまう。
 けれど暖かい飲み物を買っている間に御堂の車が来てしまったら待たせる
事になるので克哉は暫く耐えていった。
 すると…何気なく街の方を眺めていくと、遠くの方で沢山のネオンが灯って
いるのに気づいていく。

「ああ…もうクリスマスだもんな…。何となく街の明かりがいつもよりも
華やかな気がする…」

 冬になると、17時を過ぎれば辺りは真っ暗になる。
 そうなると街に灯るネオンはどこか暖かくこちらを迎えてくれているような…
そんな風に感じられてしまった。

(クリスマス、か…。御堂さんは俺なんかと一緒に過ごしてくれるのかな…?)
 
 ふと、そんな不安が克哉の脳裏をよぎっていく。
 御堂はこちらの想いを受け入れてくれた。
 だからあの日、克哉を抱いてくれたし…週末も、一緒に過ごすように配慮して
身体もすでに何度か重ねていた。
 けれど…克哉はまだ、不安を拭う事が出来なかった。
 この日々が自分が見ている、都合の良い夢に過ぎないのではないかという
漠然とした思いが…少しずつ、待っている間に克哉の胸に降り積もって
いくようだった。

「まさか…この恋が…成就するなんて、予想もしていなかったからな…」

 そう、克哉はしみじみと呟いていった。
 その瞬間、こちらに一台の車が近づいてくるのを感じていった。
 間違いない、御堂の愛車だった…そう確信すると同時に、気づけば
無意識の内に笑みを浮かべてしまっていた。
 そうして克哉の前でその車は停車し、窓を少し開いていきながら
運転席から御堂はこちらに声を掛けていった。

「…佐伯君、すまないな。少々待たせてしまった…。さあ、助手席に
乗ってくれないか…?」

「あ、はい…わざわざ迎えに来て下さってありがとうございます。
それじゃあ隣に失礼させて貰いますね…」

「うむ…」

 お互いにどこかぎこちなさを感じさせていきながら、克哉は薦められるままに
助手席へと座っていく。
 そうして…克哉がシートベルトを装着したのを見届けていくと同時に
行き先を説明しないまま、御堂は車を発進させていったのだった―

 
この話は御堂×克哉のクリスマスネタです。
切なさとほんのりとした甘さが信条の話と
なっておりますので了承の上でお読みください。

貴方と一緒に過ごすようになってすでに二年余りが
あっという間に過ぎました
 けれど毎年、クリスマスが来る度に思い出すんです
 最初の頃の、あのぎこちなかった頃のオレ達の
ささやかなクリスマスを

 御堂と付き合い始めて現在では同棲するようになって
克哉は幸せの絶頂を迎えていた。
 本日は残業も程々に切り上げて現在では自分達の正式な
自宅となっている御堂のマンションで二人きりでクリスマスを
祝っていた。
 部屋の中心には30センチ程度の大きさの光ファイバーで様々な
色合いに輝くクリスマスツリーを飾り、食卓には買って来た
ローストチキンや2人で食べるのに丁度良い小さめのケーキや、
ワインに合う何種類かのチーズを用いたオードブルやサラダの類が
並べられていた。
 今夜食べる予定の料理はすでに出揃っている。
 御堂は現在、今夜飲むワインを何にしようかミニガーヴの中の
コレクションと向き合って選んでいる事だろう。

(今夜は一体、どんなワインが飲めるのかな

 密かに、其れを楽しみにしていきながら克哉はふと、ツリーを
眺めていった。
 毎年、これを見る度に思い出す。
 自宅で祝う用に自分達が付き合い始めて間もない頃に買った
ささやかなクリスマス飾りを見る度、不器用ですれ違ってばかりだった
頃の記憶が蘇ってくる。

今年も、この飾りを見れて良かったな。こうして、このツリーを
眺めて孝典さんと一緒に祝うようになってから三度目のクリスマスが
無事に訪れてくれたって事だもんな

 ふと克哉は懐かしげに瞳を細めながら、ツリーの近くまで歩み寄って
青、緑、紫、赤、白、黄色と点滅しながら色合いが変わっていく様子を
眺めていった。
 
(あの頃のオレ達は本当に不器用で、どうして良いのか判らないで
手探りで歩み寄ろうとしていましたよね

 自分と御堂との付き合いは、最初はあまり良い形で始まっていなかった。
 強引にプロトファイバーの営業権を得て、共に仕事をするようになったばかりの
頃は散々イヤミめいた事や嫌がらせもされていた。
 御堂と肉体関係を持つに至った経緯も、到底達成出来るとは思えない
とんでもない目標数を設定されて、それに異を唱えた事から始まっている。
 結局、振り返ってみればその数字は期間内に達成する事が出来たから
あの当時、克哉が身体を張って止めなくても良かった訳なのだが。
 あの時、御堂に接待をするように強要されていなかったら自分が応えて
なかったら、こうして恋人関係になる事もなかったと思うとあれも今の
幸福を得る為に必要なプロセスだったのだと、しみじみ実感した。

ふふ、本当に今、思い返してみると微笑ましいものすら感じますよね
あの頃のオレ達の不器用さって

 二年前、恋人同士になった頃のぎこちなかった頃の御堂を
思い出して自然と笑みが漏れていった。
 ビクビクとあの頃の自分も御堂の前では緊張してしまってガチガチに
硬くなってしまっていた。
 今では空気のように、一緒にいるのが当たり前になっている。
 だからこそかつての自分達のそんな不器用さが今では愛おしくすら
感じられた。
 いつかのメリークリスマス。
 それは最初に共に過ごした、イブの夜の記憶。
 
(孝典さんきっと、今夜飲むワインを必死に吟味しているみたいだから
もう少し時間が掛かりそうだな。それなら、ちょっと昔の事を思い出して
みるのも悪くないかも知れない

 すでに5分程度、御堂が来るのを待っているがまだ暫くこちらの
部屋に顔を出す気配はなかった。
 きっとワインにうるさい御堂の事だ。
 選んだら選んだで、そのワインが最良の状態になるように温度とかを
調整したり古い年代物の品を選んだりしたら、デキャンタなどをして
澱を取り除いたり、そういう作業をしているに違いない。
 その辺は御堂と二年余り付き合っているのですぐに来ないという
事実からすぐに察していった。

(それに気持ち的には手伝いたいけどきっと、こういう日は孝典さんは
オレを喜ばせる為に全身全霊を注いでくれているのを知っているからな
下手に手を出さない方が良いし。それにあの人との思い出を振り返る方が
今日という一日と特別なワインをより有り難く感じられるだろうから

 だから、克哉は一旦席に着いて気長に待つ事にしていった。
 そうして淡い光を放つツリーを穏やかな眼差しで見つめていきながら
御堂とまだぎこちなかった頃の自分達の思い出をゆっくりと振りかえって
いったのだった
 
                     
 とりあえず、12月からやろうとしていた連載は…
資料見つからないままなので、もう少し熟成させる事にします。
 ちょっと重苦しいテーマだし、一度書くとなったら相当に気合を
入れないといけないので。

  大雑把に言えば、太一がじいさんを怒りに任せて殺してしまう
バッドエンドがあるでしょう?
 あの後に、どうやって太一と克哉が希望を見出して浮かび上がるか
って内容なんですが…刑務所内の描写するのに使いたいと思っていた
一冊が探しているのに見つからないんで。
 後は幾つか短い話が浮かんだので、それをある程度書き終わってから
でも良いかなと。

 とりあえず22日からは御堂×克哉のクリスマスネタを開始します。 
 たまには季節ネタも取り扱いさせて頂きますね。
 ではでは~。
※この話は結ばれて結構経過した眼鏡と御堂のお話です。
ふとした瞬間に、黒い欲望を克哉は覚えてしまい…それを
どう抑えるか、忠実になるか眼鏡が葛藤を覚えるお話です。

『刻印』                           


―後日、嫌でも判るさ…

 ビデオカメラでお互いの情事を、御堂の合意の上で撮影した日から
二週間後。
 御堂はその言葉の意味を嫌でも知る事になった。
 帰宅後、夕食を食べ終わってからリビングでお互いに寛いでいる最中、
ふと本を読みたくなって本棚に足を向けた時に…いつもは閉じられたままに
なっている本棚の一番下の段にある棚が微かに開いていのに気づいていった。
 克哉は向こうで、夕食後の片付けをやっているので恐らく暫くこちらの
部屋に来る気配はない。
 
(どうしてこの棚が開いているんだ…? あいつはイチイチ屈むのが面倒だと、
ここに本を置く事を好まなかった筈なのに…)

 部屋の片隅に置かれている棚は、上段から中段に掛けては本棚になり、
一番下の段は左右開きの木の扉があって、その中に物を収納出来る
ようになっていた。
 ここには本棚がひっくりかえらないように日常であまり使わない
工具の類が置かれている筈だ。
 当然、滅多に使われる場所ではない。
 その事を訝しんでいきながら扉を開いていくと…其処には一枚の
DVDのケースが入っていた。
 其れを恐る恐る確認していくと、御堂は思わず言葉に詰まっていた。

「こ、この日付は…!」

 そのケースにはタイトルらしきものは一切記されておらず、代わりに
日付だけが記載されていた。
 だが…その日付は、二週間前にビデオカメラで撮影したいと強請られた
例の日付けだったのだ。
 それだけでこれが何のDVDなのか察してしまい、御堂は顔に青筋を
うっすらと浮かべていきながら一言、こうきっぱり口にしていった。

「壊そう、こんな物は存在してはいけないものだ」

 そういってDVDに力を込めていきながら感情的に破棄をしようとした
瞬間、背後から抱きすくめられていく。

「それは困るな、孝典…。その中にはあんたと俺が愛し合っている
場面がキッチリと収められているんだからな…」

「あ、あの時は流されて許可してしまったが…や、やはりこんな物を
残しておくのは嫌だ。もし誰かに見られたら…」

「これが他の人間の目に触れないように細心の注意は払っているさ…。
これは絶対に、この部屋から外に出さないようにする…。それでも駄目か…?」

「出来れば、破棄して貰いたい…。これが残っていると思うと…
酷く居たたまれない気分になるからな…」

 そういって、背後から克哉に抱きすくめられて…お互いの顔を見ないまま
睦言のようにやりとりを続けていく。
 だが、次の瞬間…御堂にとっては反則とも言える一言が紡がれていった。

『この中に残されているあんたの可愛い寝顔は…俺にとっては一生残して
おきたいぐらいの価値のある映像なんだがな…』

「っ…!」
 
 その一言が囁かれた瞬間、ゾクっと背筋に甘い痺れが走っていった。
 また、こちらの意思に反して彼の思惑通りに流されてしまう。
 その事を悔しく思いながらも…御堂は苦々しく呟いていった。

「君は、本当にずるいな…。そんな言葉を、甘い声で囁かれてしまったら…
これ以上、抗えなくなる…」

「だが、事実だ。あんたの寝顔があまりに可愛くて…つい、延々と撮影して
あの日は夜遅くまで起きてしまったからな…。あの朝、珍しく俺があんたよりも
起きて来るのがずっと遅かったのが何よりの証拠だろ…?」

「あっ…」

 そうして、あの朝に珍しく克哉の寝顔をたっぷり見た事を思い出して…
御堂の中に甘やなか感情がゆっくりと広がっていく。
 彼と自分の平均睡眠時間はほぼ一緒だ。
 だから御堂がごく自然に目が覚めた時に…克哉もすぐ目覚めるのが
当たり前なのに、あの日だけは適用されなかった。
 その事実が何を指しているのか…御堂はようやく思い至った。

「君は…本当に、バカだな…。眠る時間を削ってまで、私の寝顔を
延々と撮影し続けるなんて…悪趣味過ぎるぞ…」

「それぐらい、あんたの無防備な姿が愛しく感じられて…俺は残して
おきたかったんだよ。それでも…駄目か…?」

 そうして克哉がグイっと顔を寄せて、背後から抱きすくめられている格好でも
お互いの目線がぶつかっていく。
 アイスブルーの瞳に、真剣な色が宿っているのに気づいて…御堂は
肩を竦めながら結局、折れる事にしていった。

「…判った、この一枚だけは残しておく事を許可しよう…。けど、こんな
恥ずかしい想いをするのはもう二度とゴメンだぞ…」

「ああ、この一枚だけで良い。これだけで…俺にとっては一生の宝物に
なっているからな…」

「そうか…」

 そうして、御堂はゆっくりと克哉の顔に唇を寄せていく。
 この困った愛しい男に、自分の痕跡を残したい気持ちが再び
湧き上がってきたから。
 だから…目立つ位置につけるのは平日は極力避けていたが、それでも
この男は自分の恋人なのだという証をどうしても刻みつけたかった。
 だから…唇を重ねた瞬間、血が出るぐらいに強く歯を立てて噛みついていった。

―それは永遠にこの男は自分のものであると自己主張を示す刻印のように…

「っ…!」

 克哉もまた、一瞬眉を顰めたが同じように御堂の唇に噛みついて
同じように血をうっすらと滲ませていく。

「…今のキス、まるで何かの契約みたいだな…。これからもずっと、
離れる事は許さないと…そう、呪いめいたものすら感じる…刻印のようだ…」

「ああ、俺はそのつもりだ…。あんたを一生、手放すつもりなんてないからな…。
覚悟してくれよ…」

「望む処だ。君だって浮気したり…二度と離れたりしたら許さないからな…」

 そうしてお互いに心底愉快そうに笑っていく。
 相手に刻んだ、己の証を眩しそうに見つめていきながら…二人は抱きあい。
今夜もまた共に熱い夜を過ごしていったのだった―
現在連載中のお話のログ

※この話は結ばれて結構経過した眼鏡と御堂のお話です。
ふとした瞬間に、黒い欲望を克哉は覚えてしまい…それを
どう抑えるか、忠実になるか眼鏡が葛藤を覚えるお話です。

『刻印』                         

 ビデオカメラは長い間、御堂にとっては苦い思い出がつきまとう
アイテムだった。
 かつて味合わされた絶望の日々の始まりが、無理やり強姦された場面を
克哉に撮影された事がキッカケだったから。
 けれど…彼から解放され、長い年月が過ぎて行く内にかつて抱いたいた
負の感情は自然と洗い流され…自分と克哉の関係も大きく変化していった。

―嫌な思い出を上書きしたかったのは私も同じだ…

 先程、こちらに対して撮影したいと申し出て来た克哉の表情が
夢うつつに浮かび上がったので、そう胸の中で呟いていく。
 どれだけ後悔したとしても過去を変える事は出来ない。
 けれど人間は嫌な思い出を忘れたり、他の思い出に上書きする事が
出来るのだ。
 だから許可をして…自分達が抱きあう光景を残すのを許可した。

―身体に残すだけではなく、他の媒体を用いて…自分達が共に過ごした
刻印を、この世界に残したいと思ったから…

 そんな自分の本心にうっすらと気づいていきながら御堂はそっと
目覚めて…傍らに眠る克哉を眺めていった。

「…全く、良く眠っているな…。良く考えてみればアクワイヤ・アソシエーションを
立ち上げてからずっと…君は誰よりも働きづくめになっているからな…。
少しぐらいそっとしておいてやるか…」

 御堂がこうして目覚めて上半身を起こしても、克哉が目覚めない時は…
彼が疲れきっているのだという何よりのサインである事を知っている。
 そういう時はそっとしておいてやって…あまり見る機会のない克哉の寝顔を
眺めるのが密かな楽しみでもあった。

(良く眠っているな…。こうして、君の無防備な姿を見れるようになったのは…
冷静に思い返してみると…つい最近までなかったように思うな…)

 克哉と御堂はお互い、睡眠時間は4~5時間程度で大丈夫という
タイプだし…あまり隙のある姿を人に見られたくないという意識が
共に強い方だった。
 それに克哉は未だにかつて御堂にした仕打ちに対して強い罪悪感を抱いて
いたせいか…なかなか、こちらにこうやって無防備に寝顔を晒す事は
滅多になかった。
 激しく抱きあって、御堂が意識を手放してた時は大抵…克哉は先に
目覚めてこちらの身体を気遣ってくれていた。
 それと何カ月か付き合っている内に…御堂の傍では、克哉はあまり
眠っていないというのも判って来た。
 最初の内は本当に彼の寝顔を見る事はなかったからだ。
 けれど…どうして、自分の傍で深く眠れないのか何となく理由を察した
時に、御堂は一言だけ克哉に向かってこう言ったのだ。

―たまには私の傍で、ゆっくり眠ってくれても良いだろう…?

 御堂が克哉に告げたのは、たったその一言だった。
 けれど…その言葉が引き金になったのか、それからたまにだが…
克哉は御堂の傍で熟睡するようになった。
 だからこそ御堂は良く判っている。
 お互いに過去のあの忌まわしい日々の事は口に出して蒸し返したり
しないようにしているが…こちらが思っている以上に、その後悔は
克哉の中で強い事を…。

「全く…私に酷い事をし続けた男と同一人物には見えないな…」

 ふと、今の優しくなった克哉を見ていると…かつての冷酷な目をして
こちらを弄り続けた頃の彼とは別人のように思える事があった。
 あの頃の克哉は御堂にとって、畏怖と恐怖と絶望を与えるだけの…
長年掛けて築き上げたものを破壊する忌まわしい略奪者だった。
 けれど…彼は、一旦決別する際に優しい一面を見せてから…
大きく変わったように思う。
 だからこそ御堂は彼の犯した罪を許し、こうして共にいる事を
選んだ訳なのだから…。

(だから、君は…もう過去に縛られなくて良い…。忌まわしい思い出は
こうして上書きして、少しずつ消していけば良いだけなのだから…)

 安らかな寝息を立てて、朝日を浴びて眠っている自分の恋人を
そっと見つめていきながら…御堂は、克哉の腕を軽く掴んで…
手首に赤い痕を刻みつけていく。
 流石に、その痛みによって克哉の目がうっすらと開かれていく。

「…痛いぞ、孝典。オイタにしては…それは眠っている身には
少々キツい気がするぞ…」

「ああ、起こしてしまったか…。いや、何…昨晩君は私の身体に散々
痕を残してくれたからな…。少しぐらい、そのお返しをしないと済まないと
思っただけだ…。悪かったな…」

「…いや、良い。あんたから痕を残されるなら男の勲章だからな…」

「…全く、君は本当に減らず口だな…」

 そうしてお互いにクスクス笑っていきながら、そっとキスを交わしていった。
 眩い朝の光がそっとベッドに差し込んでくる中…お互いに柔らかく笑みながら
口づけを交わしているシーンは、映画の中の一幕のようでもあった。
 お互いの髪や背中にさりげなく指先を這わせていき。
 ごく自然な感じで相手に触れ、労わり続けていく。
 たったそれだけでも…優しくて、穏やかな時間が紡がれていくようだった。
 暫くそんな戯れを楽しんでいたが…お互いに身を寄せ合って、体温を分かち合い
ながら…御堂はふと、昨日から感じている疑問を口に出していった。
 
「それで克哉…質問だが。昨晩撮影したあの映像は…一体どうする
つもりなんだ…?」

 そう問いかけた時、目の前の克哉は…悪戯っ子のようなそんな笑みを
浮かべていった。
 その表情に御堂は思わず、視線が釘付けになっていく。
 そうして…グイ、と御堂の身体を引き寄せていけば…耳元で甘く
彼は囁いていった。

―それは後日、嫌でも判るさ…

 そう意味深に微笑んでいきながら、克哉は強引に御堂の唇を
奪っていって…深い口づけをしながら、強くこちらの身体を胸の中に
抱きこんでいったのだった―

 


 


※この話は結ばれて結構経過した眼鏡と御堂のお話です。
ふとした瞬間に、黒い欲望を克哉は覚えてしまい…それを
どう抑えるか、忠実になるか眼鏡が葛藤を覚えるお話です。

『刻印』                      

 ビデオカメラで御堂が自慰をして徐々に乱れていく姿を見ているだけで

興奮して、克哉の性器はすっかりと堅く張りつめていた。
 その熱く猛ったペニスを御堂の中に押し入れていくと同時に、右手に
持っていた機械を近くのサイドテーブルの上に置いていった。
 その際に真横にではなく若干の角度をつけて自分たちの後方に置く事で
自分と御堂が抱き合っているのをしっかりと収められるアングルになるよう、
意識していった。

「はっ…やはり、お前の中は熱くて…気持ちいいな…。こうしている、だけで
…とろけてしまいそうだ…」

「そ、う…いう、お前だって…凄く、熱くなっているぞ…。ふふ、それだけ先程、
の…私の姿を見てて…興奮していた、訳か…」

「ああ、その通りだ…。あんたの、あんな姿を見て…俺が、煽られないで
いられる訳が、ないだろう…」

「ふふ、そうだな…はぅ…!」

 お互いに途切れ途切れになりながら、お互いだけに聞こえるぐらいに
微かな声で睦言を紡いでいった。
 その最中に、グイっと克哉が御堂の最奥を抉るように突き入れただけで、
堪えられないというように大きく全身を跳ねさせていった。
 それを皮切りに克哉のリズムは更に大胆さを増していって、御堂を
翻弄し始めていく。

「ふっ…ああ、あっ…克哉、そんなに、激しく、したら…はっ…!」

「すまん、もう…抑えられそうに、ない…。ほら、俺たちの愛し合っている
メモリーを、今夜はしっかりと残しておこうぜ…」

「そういう、言い回し、をするな…! 余計に、恥ずかしく…ふぁ…!
 ああっ…!」

 先程まで御堂を言葉で責めている間に、克哉の方も気持ちが
高められてしまっていた。
 だから御堂の内部を深く抉り、激しく往復を繰り返すのに一切の
容赦がなかった。
 その激烈と言えるまでの性急な抽送に御堂は満足に息すら出来なくなって、
何度も胸を激しく上下させて身悶えていった。

「ふっ…うぁ…! くっ…ふぁ…!」

「ああ、凄くイイ声だ孝典…。聞いているだけで、興奮してくる…!」

「うっ…もう、これ…以上、言うな…んはっ!」

 相手の言葉に何か返したくても、すでに頭は快楽で溶けきっていて
まともに形にならなかった。
 克哉が突き上げる度に押し寄せてくる快楽の波に必死になって
耐えようと彼の身体に爪を幾度も立てていった。
 その度にこちらを抱く男の背中に刻印のように赤い筋が刻まれていき、
それが御堂の心を煽っていく。

(まるで…これが、私から与える刻印みたいだな…)

 ふと瞬間的に、そんな事を考えていった。
 先程、克哉が刻んだキスマークも…今、自分が刻んだ爪痕も
相手の身体に情事の痕跡を残す意図は…相手の中に自分を
残したいという顕示欲と、相手が確かに自分のものであるという
証を少しの間だけでも残したいという想いからだ。
 克哉が他の人間をこうやって抱く事などもう許す事が出来ない。
 自分のものであるという証を、残したかった。
 その想いで御堂は幾筋も相手の背中に爪を立てていった。
 いつもならこんなに何度も、恋人の身体を傷つけるような真似は
御堂はしない方だったが…ビデオカメラでこの光景が撮影されていると
思うと、何かを残したい想いに駆られたのだ。

―自分のつけた痕が愛しい男の身体に刻まれている処を、
画像という形で残したいと御堂も思ったから…

 それはふと思いついた衝動的な行動に過ぎなかった。
 けれど幾ら傷つけても、克哉は一瞬だけ痛みで眉をしかめていくも
止めろとは一言も発さなかった。
 そうしている間にお互いの身体から汗がびっしりと玉のように
浮かび上がっていった。
 もうお互いの息も絶え絶えで苦しそうに胸を上下させて
喘いていく。
 徐々に頭が真っ白になっていくような感覚を覚えていく。
 ようやくずっと待ち望んでいた絶頂の瞬間が迫ってくるのを感じて、
御堂は大きく身体を跳ねさせていった。

「ふっ…あっ…克哉、もう…!」

「ああ、俺も限界、だ…。だから、あんたの、中に…うくっ!」

 そうして御堂の身体をきつく抱きしめながら、克哉もついに
頂点に達して熱い精を解放していった。
 ドクンドクンと、滾るような白濁が御堂の中に注ぎ込まれていく。

「孝典…」

「ん…」

 優しい目をしながら、克哉がこちらを見つめてくる。
 その瞬間だけは、いつもは感じる男のプライドや意地のようなものが
和らいで御堂も素直に頷いていく。

「克哉…」

 そして、大切そうに恋人の名を呟いていくと…フワリと羽のように
優しいキスが落とされていった。
 其れを満足そうに受け止めて生きながら御堂は相手の身体を抱きしめて…
そうして、ビデオカメラが回されている事など忘れて暫し意識を
手放していく。

―その時の御堂はとても満足そうな顔をしていたのだった―
 

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HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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