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鬼畜眼鏡の小説を一日一話ペースで書いてますv
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】                     10  
                 11

 
 ―佐伯克哉は、もう一人の自分の手を強く強く握り締めていた

 克哉にとって酷く長い一日が終わった後…もう一人の自分の容体が
どうなっているか気になって…クラブRの扉を潜っていった。
 その奥にある一室に…もう一人の自分は横たわっていた。
 克哉が彼の元を訪れたのは15分程前の事だ。
 酷くうなされている様子だったので…つい、傍らの赤いベルベットのような布地で
覆われた椅子に腰かけながら…その手を握り締めた。
 
(何でオレ…こいつの手なんて、握り締めているんだろう…)

 今の克哉は眼鏡を外して、髪型もいつものものに戻している。
 ここでは…彼を演じる必要性などまったくないからだ。
 手を握って暫く経ってから…もう一人の自分の様子が落ち着いていったので
少し安堵しながら、溜息を突いていく。
 ふと…服の裾から覗く、自分の腕を眺めて…つくづく、Mr.Rという存在は
人外の存在である事を思い知らされた。
 現実に有り得ないような望みでも、実際に叶えてしまうだけの力。
 恐らく普通に暮らしたいと望むなら、決して近づけてはいけない人物だろう。
 けれど…今の克哉には、彼の力を借りるしか…自分の望みを叶える
術は存在しなかった。

「…どうして、こんな事をしているんだろう…」

 自分でも、そう考えてしまう。
 …彼と御堂を救ったって、もうすでに…どちらの事件が起こった時にはすでに
現実に克哉の居場所など、なくなりつつあったのに。
 こんな真似をしても…誰も褒めてくれる事も、認めて貰える訳でもない。
 なのにどうして…自分はこんな真似をしているのだろうと…昨晩の出来事を
思い出して、疑問に思ってしまった。

―雨が降る中、必死になってRに訴えかける自分の姿が酷く遠く感じられた

 全てが他人事のように感じられてしまう。
 確かに現実にいるのに…自分の存在だけ、其処から浮き上がって
しまっているような乖離(かいり)を覚えていく。
 けれど…こうしてもう一人の自分の手を握り締めていると…その温もりだけが
はっきりと強く感じられてしまった。

「ねえ…『俺』…どうして、オレはお前も助けたいと…思ってしまったんだろうな…。
お前が、オレの事なんて…どうでも良いって思っているの知っているのにな…」

 そう思った瞬間…繋がっている手から、何かが流れて来た。
 
「っ…!」

 とっさに手を離そうと思った時にはすでに遅かった。
 もう一人の自分がたった今…見ていた夢の残滓が、奥底に秘めていた
感情が…堰を切ったように勢い良くこちらに流れてくる。
 それはあまりに強過ぎる、感情の奔流。
 本人でさえも自覚していない…想い。
 
―それが瞬間的に溢れて、伝わってきて…気づけば克哉は泣いていた

 シンクロ、というものかも知れなかった。
 本来なら自分たちが…こうして個別の身体を持って同時に存在するなど
あの謎の男性の力がなければ有り得ないことだから。
 そして克哉は…力なく、呟いていた。

「…お前って、本当に不器用で…バカ…だよな…」

 きっとこんな現象が起こった理由は、一つだけしか考えられなかった。
 この身体もまた…彼のものであるからだ。
 だから…記憶と感情が、短い間だけ繋がってしまったのだろう。
 双子には時々、そういった科学では説明出来ないような現象が起こるという
説をどこかで見かけたような気がするが…自分たちは厳密に双子ではないが、
それに近い存在だから…こんな奇妙なことが起こったのだろうか。

(というか…Mr.Rと知り合ってから、有り得ないことばかりが起こり続けているけどね…)

 きっと御堂は、色々と混乱しているに違いない。
 大体の裏側を知っている自分ですらも…あの男に願ってしまったばかりに
予想もつかないぐらいに沢山の糸を張り巡らされてしまって、とんでもない
事になってしまったと思っているのだから。
 確かに…こうする以外に、罪を犯した彼を救う方法はなかったと思う。
 けれどあまりに荒唐無稽な話。
 説明されたからと言って、容易に信じられることではなかった。
 今朝の時点では克哉とて…半信半疑だったが…。
 けれど今は、実際にあの男はそれをやって…御堂を救ったのだという
事実を認めざるを得なかった。

「…あの人は一体、何者なんだろう…」

 今回の一件を経て、克哉の中でその疑問が膨らんでいった。
 そして…目の前にいる、もう一人の自分も…。

「今晩は…ここにいらっしゃっていたんですね…。貴方が自ら、当店に
足を運んで下さるとは…嬉しいものですね」

「わあっ!」

 いきなり、背後に気配を感じて振り向こうとした時には…すでにMr.Rは
其処に存在していた。
 足跡も、何も感じられなかったのに…いきなり其処に降って湧いたような
そんな感じだった。

「い、いつの間に其処にいたんですか…!」

「嗚呼、失礼。貴方が私のテリトリーにいると気づいたら…少々焦って
しまいました」

(そういう問題なのか!?)

 ニッコリと笑いながら、相変わらず意味不明なことをのたまうこの男性の
存在に本気で頭を抱えたくなってしまう。
 何というか…同じ日本語を話しているのに、意志の疎通がまったく目の前の
相手と出来ていないような…そんな気分になってくる。

「それはさておき…私と昨晩、交わした約束…覚えていらっしゃいますか…?」

「っ…! は、はい…」

 悠然と笑いながら、男がその件を口にした瞬間…克哉の顔が引きつっていった。
 だが彼はまったく克哉の態度など気にする様子もなく言葉を続けていく。

「…明日の晩に、舞台をセッティングしておきました。そうですね…貴方のお仕事が
定時に終わったら、そのまま当店に足を運んで下さいませ…。其れが今回の
件に関して…私が払った労力に対しての…貴方に支払ってもらう代価です。
…宜しいですね」

「…えぇ、それが…約束…ですから…」

 そう言いつつも、克哉の表情には苦いものが浮かんでいた。
 そんな彼の両頬をそっと包み込むと、男は…綺麗に微笑んでいく。

「…おやおや、これでも…随分と私にしては代価を安く設定して差し上げたんですよ…?
たった一度、私どもの店で…こちらを存分に楽しませて頂ければ、これほどの
大がかりな舞台を紡ぎあげた事に対する対価となるのですから…。
 もう、すでに私は貴方の願いを叶えています…ですから、決してこれから
逃れようとは思わないで下さい…。それが果たされた後ならば、貴方がこの世界で
これからどう生きようとも…私は決して、干渉致しませんから…」

「はい…判って、います…。オレも、逃げる気は…ありませんから…」

 そう口にしながらも、克哉は不安で…顔を白くさせていく。
 けれど全てはこの男の言う通りなのだ。
 自分の願いは、確かに叶えて貰っている。
 ならば…自分は相手の出す要求を跳ねつける権利など、すでになくなっていた。
 だから怯えながらも頷いていくと…。

「それで結構です」

 と…男は満足そうに笑いながら、克哉の頬に…そっとキスを落としていく。
 それは…克哉にとっては、決してこちらが逃げる事を許さない…契約の
キスのように感じられてしまった―
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4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】                    10


―佐伯克哉は、夢を見ていた

 心が砕ける瞬間に見た…信じたくない光景が、こうして死に限りなく
近い眠りに落ちている間、何度も何度も蘇っていく

(もう…止めて、くれ…)

 脳裏に、目を焼くぐらいに鮮烈な…巨大な黄色の二つの光が襲いかかる。
 その瞬間、何か重いものが跳ねられ…自分の目の前で宙に舞っていき―

―そして何もかもが、次の瞬間に終わっていた

 唐突に訪れた、ピリオド。
 あまりの事に茫然として、言葉も失っていた。
 切りつけられた腕が、焼けるように熱くて。
 自分の生命の証が…雨が降り注ぐ中、ずっと止まることなく…地面に
滴り落ちていった。

「嘘、だ…」

 認めたくなかった。これが終わりだなんて…。
 けれど…たった今、トラックに跳ね飛ばされてしまった存在からは
生きている兆候が感じられなかった。
 原型は留めている。その存在を見間違うことはない。
 けれど直感で自分は判ってしまったのだ。

―もう彼の生命は、永遠に失われてしまったことを…

 助かる見込みがほんの少しでもあるのならば…大急ぎで救急車でも何でも
手配して、死力を尽くしたことだろう。
 けれど些細な運命の悪戯は…たった一瞬で、目の前の人の命を奪って…
何の救いも残してくれなかった。
 この人が死んでしまった。
 そう自覚した瞬間に…胸の中に大きな空洞が空いてしまった。
 こうなって初めて、自分の心の中に…この人が大きく存在していた事を
強く自覚した。

―本当に…もう、手遅れなのか…?

 彼は覚束ない足取りで…道路に投げ出されたその身体の方へと向かっていく。
 遠く離れた位置にあった頃は、本当にほんの少しだが…期待があった。
 けれど間近に経って、それが愚かな希望だった事に気づかされる。
 其処には悲しいぐらいの現実があった。
 まるでシュレディンガーの猫だ。
 実際に死んでいるかを確認するまでは、生きているという可能性が残されていた。
 だが確認した以上、認めざるを得なかった。

「本当に…死んで、しまったんだな…あんた、は…」

 力なく、男は呟く。
 地面に血の海が広がっていく。
 外傷はチラっと見る限りでは其処まで派手ではなかった。
 けれど…これだけの血が流れる中で、その中心に倒れている存在が…
何の反応もなく、ただ倒れている。
 その事実が…死が一瞬で、彼の元に訪れてしまったことを示していた。
 男はそれを目の当たりにした時、心の中がグチャグチャになった。
 目から涙が溢れて来る。
 拭っても拭っても、溢れ続ける想い。
 何で…自分はこんなに、泣き続けているのか…最初は判らなかった。

 そして…彼から少し離れた位置に立って、壊れたように涙を流し続けて
いたら…気づいたら、彼の周りは多くの野次馬が集まっていた。

―見るな

 と憤りを感じた。
 けれどもう、ショックの余りに…まともに声も出なかった。
 身体も満足に動かせなかった。
 強烈な体験をすると、身体と頭が停止することがあるというのは事実だと…
嫌でもその瞬間、思い知った。
 その癖、涙線だけは活発になって…壊れたように雫を零し続けていた。
 何も出来ない。何もする気が起こらない。

―これが、自分がした事の結果だと打ちのめされていたからだ

 欲望の赴くままに、彼に色んな事をした。
 愉快だった、優越感に浸り続けていた。
 だから決して彼がどれだけ止めてくれと懇願しても聞き遂げることなく…
ずっと、優位に立って彼を嬲り続けた。
 その手を決して、緩めることなどなかった。
 だから恨みを買い…今夜、彼に刺されそうになった。
 けれど幸い…腕は深く裂かれてしまったが、その状態で必死になって
公園から外に向かい歩道を渡ったら…追いかけて来た彼が、跳ねられてしまった。
 頭に血が上っていたから、向こうにはきっと…自分と違って、周囲を見渡す
余裕などなかったのだろう。
 だから…このような事になってしまった。

―俺は、馬鹿だな…。あんたを失って、どうして…こんな真似をし続けていたのか…
自分の本心を、知ったよ…

 泣いている内に、それでやっと…彼は自分の本心に気づいてしまった。
 これから自分は、この人をどうにか自分の思い通りにしようと…監禁することを
考えていた。
 何もかもを奪って、自分の手を取るしかなくなれば…きっと、この強情な人も
屈伏するだろうと。
 其処までして…自分は彼を得ようとした。
 強くこの存在に執着している…異常なまでのその想いの根っこにある想いが
何なのか…こうなって、初めて彼は知った。

―俺は、あんたを…好きだったんだ…! だから…手に入れた、かったんだな…

 失って、初めて見えた。
 自分はこの人に憧れていたのだと、強く惹かれていたのだという事実に。
 けれど今さら見えても…もう、その存在は手の届かない遠くへと向かってしまった。
 死んだ命は、生き返らない。
 その直後であるのなら蘇生法を使えば…運が良ければ引き寄せられるが、
もうすでに事故が起こって十分以上が経過して…あの出血で、誰も手を施さなかったら
決して助かることはない。

―そんな状況では、決して奇跡など起こる訳がなかった

 人だかりがいつの間にか築かれて、覆い隠されてしまっている。
 お願いだから、プライドが高く美しかったその人の哀れな亡骸を…好奇心で
軽い気持ちで眺めたりしないでくれ。
 そう憤り、全てを追い払ってしまいたかった。
 なのに、もう…身体が、動かなかった。
 血が流れつづけて痛みは感じるのに、身体の全てがマヒしてしまっている。
 そう…心が、死んでしまったのだ。砕け散ってしまったのだ。

―本当は一番、愛していた存在を一瞬で失ってしまったショックで…今の克哉は
神経という神経が、マヒしてしまっていた

 それでも悔しくて、その心に充ちている悲しみを、嘆きをどうにかして
吐き出したくて…彼は一度だけ、慟哭と呼べるぐらいに激しい叫び声を挙げていった
 雨の降り注ぐ中、哀れなぐらいの姿を曝していく。
 けれどもう…誰に見られても、構わなかった。
 この時の彼は…それぐらい、自暴自棄になっていた―

 思い出したくない夢。
 けれどそれが幾度も幾度も、こうして眠っている最中でも訪れる。
 目を逸らしたくても、逃げたくても…心に刻まれてしまった罪は、後悔からは
人はなかなか逃げられない。

―もう、好きにしろ…

 あの人が生きていない世界で、自分は生きていたくない。
 光を失ってしまった後で、それでも…生の営みを続けることは最早苦痛だ。
 心がそれでも生きている限り、こんな夢が押し寄せてくるぐらいなら…いっそ
息の根が止まって、何も感じられなくなる方がずっとマシだと思った。

―本当に愛する存在がいなくなった世界に、何の未練も感じられなかったから

 だから彼は…死に近い眠りから、目覚められない。
 それは弱さかも知れない。
 けれど…今の彼には、この世に執着する理由を見失っていた
 深い闇の中でも、光を見出すには…希望が心の中になくてはならない。
 けれどその一番の理由を失った直後に、どうやって次を見つけ出せば良いのだろうか。

―今は何も考えたくない…

 それは逃避かも知れなかった。
 だが、時に…人にとって、そういう過程が必要になることもある。
 あまりに強いショックを受けた場合…一時的にその現実から遠ざかって距離を
置くことも有効だからだ

 ―心も体も、急速に冷えていくのが判る

 けれど、その度に…誰かの手が、強く握り締めてくるので…その奥に
あるモノまで、決して辿りつけない。

―死ぬなよ…! まだ、全ては終わっていないから…!

 そう訴える声を、うっとおしい想いで聞いていく。
 そうして…夢を見るような浅い眠りから、何もかもが閉ざされてしまっている
深い眠りへと再び彼は落ちていった―

 死に近い眠りは、時に人に救いを齎す。
 それは…今の彼には、必要なものであった―
 5月9日は…咎人の夢の修正と、初めにのページに
説明書きを書いた時点で力つきました(汗)

 何だかんだ言いつつ、トータルで5~10P分くらい
書き加えたので。
 とりあえず一話完結の話に関しては、読み切りの部屋に
移動して…去年暮れから、現在までの間に連載していた
話のみ、「はじめに」のページに説明文つきで掲載
してあります。

 これで地雷踏む率、読み手さんにとって減ることを
祈ります。
 …説明書く為に、一通り連載作全てを最初からざっと目を通して…
とやっていた為、作業が亀のように遅くてマジで申し訳ありませぬ…。
 咎人の夢に関しては、複線の貼り直しと…場面転換を少しスムーズに
切り替えたり、気になる箇所を相当加筆修正しました。
 とりあえず九日分に関してはこんな感じで。
 十日分はキチンと掲載します。少々お待ち下さいませ。
 4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】                   

―御堂はその後、社内を全力で走り回ることになった。

 先程自分の私室に訪れた佐伯克哉の態度がかなり変なものであった
事は確かだったが…その事を考える隙間などないぐらい、御堂は
地震後の対処にともかく追われ続けた。
 今回の地震の震度は4.5。
 耐震強度のない窓ガラスや壁等ならひび割れがしたり、収まりが悪い
家具等が動いたり転倒したり、ライフラインの一部が破損する可能性が
ある震度だった。
 死傷者こそは出なかったが、ガラス製の器具などを利用している者が
多い商品開発研究室等では、何人か運悪く怪我人が出てしまって…
その事実確認と、手配の為にあっという間に二時間ぐらい費やされてしまった。
 ようやく御堂が一段落ついて…自分の私室に戻った頃には、日が
少し傾き始めようとしていた。

「…あぁ、藤田君はちゃんと…こちらの部屋を直しておいてくれたみたいだな…」

 佐伯克哉が何ともおかしな様子で出て行った直後、携帯で部下の藤田を
呼び出して…一緒に机を起こした後、残りの細かい後片付け等は彼に
頼んで…御堂は各部署を直接見て回っていった。
 先程、派手に床の上に散乱していた書類や関連資料の類は…藤田の
おかげですっかり元通りに片付けられている。
 こうして見ると…さっき、あれだけ派手な地震が起こったことなどまるで
嘘のように思えてくる。
 本当に何て一日なのだろう、とつくづく思った。

「…少し、休むか…」

 普段の御堂なら、決して休憩時間以外に積極的に休みを取ろうなどと
考えないが…今日一日はあまりに色んな事があり過ぎて、目まぐるしすぎた。
 自分のディスクの上に腰を掛けながら、深く溜息をついていく。

(10分程度なら…一息入れても、良いだろう…)

 自分の携帯で、現在の時刻を確認していくと素早くアラーム設定をしていく。
 自分が課した時間以上に、休まない為の防止策だ。
 準備をしてから…御堂は、ようやく様々なことを考え始めていった。

「…一体、昼前と…地震が起こった後の皆の態度の違いは…何だったんだ?
それに…ひき逃げ事件なんてものまで、この近所で昨日起こっていたらしいし…
まったく、何が何だか…判らない…」

 御堂は、社員の安全を確認する為に…様々な部署を見て回った。
 大きな災害や、事件が起こった時は誰かが率先して指示したりしなければ
大きな混乱が起こる可能性があるからだった。
 その最中に…昼間の女性社員達と顔を合わせていったが、ロビーで会った
時はあれだけこちらを恐れているような態度を見せていたのに…地震が
起こった後に偶然顔を合わせた時は、まるでそんな事などなかったかのように
普通の態度でこちらと接していた。
 藤田も同じような感じだった。

 地震が起こった直後、大急ぎでこちらの部屋へと駆けつけて来た藤田は
昼間の…ぎこちない笑顔は一切浮かべなかった。
 いつもと同じ、天真爛漫で一辺の曇りもなくこちらを信じている態度。
 まるで、その事件など存在していなかったかのように…彼らはこちらに
接していた。
 代わりに、何人かの女性社員が…昨日、誰かがこの近辺でひき逃げ
事故があったことを噂していた。
 この社内の誰かが跳ねられたらしいが、人だかりが出来ていたせいで…
MGN内の人間の殆どが、「事故は起こっていることは知っているが、
どこの誰が引かれたのか具体的に知らない」状態になっていた。

「…同じ日に、公園で…私が見た夢とほぼ被る事件が起こって…しかも
その付近で…ひき逃げ事故まで起こった。こんな偶然が重なるものなのか…?」

 御堂が一番混乱しているのは、それだけではない。
 自分は現場の指示をして社内中を走り回っている最中に、3人の女性社員が
話しこんでいる処をたまたま立ち聞きをしていっただけだ。
 その会話が御堂にとって…心に引っ掛かったのは…。

―その轢き逃げ事故が起こって、人だかりが出来ている周辺に…
佐伯克哉が、この世のものとは思えないぐらいの絶叫を挙げて泣き叫んでいる
姿を…女性社員が目撃した、という事だった

 その噂を聞いた時…御堂は混乱した。
 一体、どちらの事件が…本当に起こった事なのだろうと。
 刺されて血の海の中に倒れている佐伯克哉と。
 誰かが轢かれて、嘆き悲しんでいる姿と…真実がどちらなのか
御堂には判り兼ねていた。

「…どちらかが事実なら、片方が有り得ないものとなる。…まさに矛盾だな。
私が見た夢こそ…一体何だったんだ…?」

 御堂は、今朝見た夢のリアルさをはっきりと覚えている。
 あれが事実なら…もし、誰かが罪を言及しても御堂は言い逃れることが
出来なかった。
 しかし…轢き逃げ事故の情報を聞いた挙句に、藤田と昼間の女性社員の態度が
いつもと変わらないものにこの短時間で戻っているのを目の当たりにして…
余計に判らなくなってしまった。
 どこに本当の答えがあるのか…判らない。
 けれど…共通しているのは、どちらの事件にも佐伯克哉が関わっている。
 それだけは…確かだった。

(佐伯…一体、君は何を知っているんだ…?)

 不可解な態度を、別人のような顔を見せた…さっきの佐伯克哉の事を
思い出していく。
 彼を中心に、全ての謎が存在しているような気がした。ならば…。

―君に近づけば、私はこの謎を解き明かすことが出来るのだろうか…?

 そう考えた瞬間、御堂は…今まで心の中で強い嫌悪や、違和感を覚えていた
佐伯克哉という存在に…急速に興味を覚えていき。
 彼にどうにか近づいて、答えを知りたいと思う心が…一層強まっていくのを
感じていったのだった―
 とりあえず、現在連載中の話…自分自身でもやっと、
話の全体像が自分の組み上がって、見通せる状態になってきたので
7日分はこれから今まで書いた話の調整に費やす形にして、
八日に改めて掲載します。

 慣れない方式を試みているので、現時点では拙い部分…整合性が
取れていない部分がある話ですが、やっとどこをどうすれば良いのか…
話作りの勘が戻って、見えるようになって来ました。
 手探りでやっている実験作なので、お見苦しい部分もあると思います。
 それでも付き合って下さっている方…どうもありがとうございました。

 精一杯やりますので、良ければお付き合いして頂けたら幸いです。
 これから過去の話にもメス入れて、整えて参ります。
 とりあえず以前の話の修正は、八日の昼までには終わらせる予定。
 
 それでは…これからちょいと、直しに行って来ます。ではでは…。

(今夜~明日未明に掛けて、既に掲載済みの1~9話全部に多少なりとも
修正を入れますのでご了解くださいませ)
  4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
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 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
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―ここならば、貴方の望む結果が得られるでしょう。

 先程、自分がどうすれば良い…と問いかけた時、男は悠然と
微笑みながら…そう告げていった。
 あの場所では、一応細工をしたが…多くの人間が関わってしまって
いる以上…難しいと、男は告げた。

―だから男は言った。自分が予想もしていなかったとんでもない発想を。

 その事に意を唱えようと思ったが…今の自分の身体もまた、その罪を心から悔いた
「俺」によって与えられているものだった。

―さあ、貴方はどうしますか? 追いかけますか…?

―当然です

 そして、悩むことなく…克哉は受け入れざるを得なかった。
 誰も救われない未来を二つ作るよりも…一つ、救われた未来を作った方が
良いとそう思ったから…。

―そのやりとりを朧げに思い出していきながら克哉は緊張した面持ちで、御堂の私室へと
足を踏み入れていった。

「失礼します…御堂部長」

 恭しく頭を下げていきながら、自分のディスクの上で両腕を組みながら
こちらを待ち構えている御堂の元へと向かっていく。
 そして…御堂の目の前に、報告書が収められているクリアファイルを
そっと目の前に差し出していった。

「…こちらが今月の結果報告書です。まずは目を通して頂けますか…?」

「うむ…」

 そうして暫く、その書類を真剣そうな顔を浮かべていきながら…御堂は
一つ一つ、字面を読み進めていった。
 二枚目の書類を見た途端、御堂の顔が一瞬…驚きの顔を浮かべていく。

「…驚いたな。まさかキクチの面々が…この短期間にここまでの結果を
出すとは…失礼だが、予想外だった…」

「…えぇ、そちらの営業活動の方は順調です。すでに最初の目標値は達成して…
現在の時点では、『貴方』が改めて引き上げようとした方の数字に
近い売り上げとなっているのは…其処に書かれている通りですよ…」

 きっと、もう一人の自分ならここで皮肉めいた事を言うだろうから…
わざと「貴方」という部分を強調して口にしていく。
 その瞬間、御堂の眉がピクリと揺れていく。
 それから…御堂はムスっと口を閉じて不機嫌そうになり…結果的に
沈黙が続いていく。
 いつもの克哉だったらそれだけの反応で怯むが…今はもう一人の自分に
なりきっているのだ。これぐらいで引く訳にはいかなかった。

(決して怪しまれてはいけない…どこで、綻びが出るか…判らないのだから…)

 全てのカラクリは、御堂に決して知られる訳に行かない。
 あの男が用意した舞台は…裏側の部分も、複雑に様々な秘密の糸が
絡まり合っている。
 決して、この人に知られる訳にはいかない秘密が…どこから破綻して
漏れていくのか判らないから。
 この人は何も知らないで良い。自分だけが…この重すぎる秘密を抱えて
いけば良いのだ。
 顔を見れば見るだけ、胸が痛む。結果的に…自分達は…。

―二人の御堂を、不幸にしたのだから…

 その事実がふと蘇った瞬間…演技の途中であるのに、克哉はどこか
辛そうな顔を浮かべてしまう。
 …沈黙しているせいで、逆に自分の心がうるさく騒ぎ始めていく。
 何かこの本筋の話に近い話題を言わなければ、と思うのに…思考を巡らせて
いくと余計なことばかりが頭の中でグルグル回り始めていった。

(…さっき気合を入れて、振り払うようにしたつもりなのに…やっぱり、
この人を見ると…胸の、痛みが…)

 チクチクチク…と胸が痛んで、堪らない。
 克哉は、裏側を…その仕組みの全てを知っている。
 それが…今、御堂と対峙している今となっては逆に恨めしくて仕方なかった。

―知らなければ、こんなに胸の痛みを覚えることなどなかったから…。

(言わなきゃ…ここで会話を途切れさせたら、怪しまれる…!)

「…おや、御堂部長。どうして…さっきから黙ったままなんですか? まだ
報告は始まったばかりですよ? どうして…貴方は不機嫌そうにして
いらっしゃるんですか…?」

「…君がわざわざ、こちらを不快にさせるような言い回しをするからだろう…」

「…さっきの俺の発言のどこに、貴方を不快にさせるような言葉があったのか
判り兼ねますね…。事実を言っただけでしょう…?」

 そうして、ククっと喉の奥で笑って…意地の悪い表情を浮かべて見せる。
 元々御堂は、自分たちが新商品であるプロトファイバーの営業を担当することを
快く思っていなかった。
 そんな彼にとっては、この数字を叩き出して…結果を出している時点で相当に
皮肉となっているのだ。
 それを承知の上で、決して疑われないように演技を続けていく。

「…君の戯言に付き合うつもりはない。自覚がないとは…本当に失礼な男だな。
口の聞き方というのを…一から、誰かに教わった方が良い。が…実際にこの
短期間で、これだけの数字を達成するとはな…。悔しいが、君たちの実力を
こちらが侮って見ていた…その事実だけは、認めよう…」

「えっ…?」

 なのに、こちらが皮肉めいた言い回しと態度を取っているにも関わらず…
御堂の口から、遠まわしにでもこちらを認める発言が零れたことに…克哉は
驚きを隠せなかった。
 とっさに信じられなくて、相手の机の上に手をついて…その顔を間近に
見つめてしまう。

「…何をそんなに驚いた顔を浮かべている…?」

「いや、だって…今…そちらが…」

 一瞬、演じることを疎かにして…もう一人の自分の声音ではなく、通常の自分に
近い声を出していってしまう。一瞬…御堂の眉が訝しげにピクンと動いたのを見て
克哉は顔色が変わったが、運よく言及されずに済んだ。

「…確かに君のように自意識過剰で、傲慢な男を認める言葉を褒めるのは癪だ。
だが私は…それだけの事をやっている人間を、自分の好き嫌いで何をやっても
認めないなどと考える程…幼稚でも、大人げない訳ではない。
 実際に…今までのドリンク業界内で、この短い期間でこれほどの数字を
叩き出した商品の数はそんなにないだろう…」

「はっ…はい! ありがとうございます!」

 予想外の言葉を言われてしまった事が嬉しくて、つい…演じることを一瞬忘れて、
素直な感謝の言葉が漏れてしまう。
 その瞬間…ハっとなって口元を押さえていったが…すでに遅かった。
 御堂は非常に難しい顔を浮かべていきながら…何か考え込んでいる。

(はっ…しまった! つい嬉しくて…素直にお礼を言って…)

 その瞬間、克哉の顔は一瞬で蒼白になった。
 いけない…もう一人の自分だったら、こんな事で感情を乱さない。
 なのに焦れば焦るだけ、克哉の意思に反して…モロに顔に出てしまっている。

「…何か、本日の君は非常に変に思えるんだが…気のせいか? もしかして昼間に
何か悪いものでも食べたのか…?」

「いやっ! 何でもないですよ…御堂さん。ほら、俺はこの通り…元気ですから!」

 そういって、両肩を大きく上げたり、力コブを作るように折り曲げたりして
元気だという事実をアピールしている。
 だが…御堂には疑わしげにジーと見つめられている有様だった。

(あぁ…御堂さんの視線が痛い…)

 食い入るように、御堂がこちらを見つめてくると…こっちの正体まで見透かされて
しまうんじゃないかとつい疑いたくなった。
 いや、御堂は自分たちが二つの心を持っている事など知りはしない。
 けれど…何か、普段の自分と違うという事実ぐらいはバレてしまうんじゃいかと
不安を覚えていく。
 心拍数が上昇して、ドクドクドク…と大きく音を立てているのがうるさいぐらいだった。

「…それなら良いのだが。それで…君の報告したい事は、以上だろうか…?」

「いえ…もう少し続きがあります。次にこちらのファイルを…」

 と言って、克哉がカバンからもう一つのクリアファイルを取り出そうとした瞬間…
大きく地面が揺れ始めた。

「地震かっ!」

「うわっ!」

 その瞬間、とっさに克哉は机の方に両手を突いていった。
 それと同時に、更に揺れが激しくなり…まともに立っていられなくなる。

「佐伯君っ!」

 とっさに、御堂が目の前の克哉の身体を反射的に受け止めて支えて
いくような格好になる。
 だがそんな行動を嘲笑うかのように、瞬間的に激震が襲い…克哉は
思いっきりバランスを崩してしまう。
 大きめに作られたディスクすら、180センチもある男が全体重を持って
圧し掛かればまともに立っていることすら出来ない状況だった。

「わわわわわっ!」

「うわぁ!!」

 二人の叫びが同時に響くと同時に、上質のカーペットの上に…グラリと
御堂のディスクが倒れ込み…。

―二人は眼を見開いて、驚く羽目になった

 現実が咄嗟に理解出来ない。
 何が起こったのか、信じたくなかった。
 しかし…今の地震のせいでバランスを崩して、御堂の方に倒れ込んで
しまったせいで…そんな克哉を支えたせいで…二人は机が倒れると同時に
大きく窓際の方に投げ出される格好になっていき…。

―歯が思いっきりぶつかりあいながら、キスしてしまっていた

「…………?」

「…………っ!!」

 御堂は、何が起こったのか把握したくなくて茫然となっている。
 代わりに克哉の方は、少し経って…現状を把握した途端に、慌てて御堂の
顔から、自分の顔を離していった。

(な、何で…こんな、事が起こっているんだよ~!!)

 よりにもよって、自分と御堂がキスするなんて…予想してもいなかっただけに
克哉の頭は正にパニック。支離滅裂状態になっていた。

「ご、ごめんなさい! 御堂さん! こんな形でそちらの唇を奪ってしまって…!」

 とっさに、克哉は必死になって謝った。
 だが御堂は…まだ現実を把握していないようだった。
 起こった事実を認めたくないという気持ちが強く働いているからだろう。
 いつもの…どんな時でも冷静さを崩さない彼にしては、珍しい反応だった。

「…今、何が起こったんだ…?」

「い、今のは事故です! 大地震のせいであぁなっただけですから気にしないで
下さい! 後、今の地震で会社がどうなっているか心配なので一旦失礼します!
じゃあ…!」

「ま、待ちたまえ!! まだ報告が終わっていないだろう!!」

 あからさまに慌てて、背を向ける克哉に向かって…御堂が叫んでいくが
一旦それを振り切るように脱兎の勢いで逃げていく。

(早く目の前から逃げないと…絶対に不審がられる!)

 今のキスで動揺してしまって、今の自分は…演技を全う出来ない。
 長く一緒にいればいるだけ、ボロを出してしまうのは明白だった。
 けれど…もうダメだ。一旦逃げて体制を整える以外に手がなかった。
 今は頭がグルグルして、まともに御堂の顔を見れない心境だった。
 一昔前のラブコメでもないのに、こんな展開になるなどまったく思っても
いなかっただけに克哉の精神的なダメージは相当なものになっていた。

「す、すみません! 今のオレが貴方の目の前にいても…醜態を晒すだけなので!
 それでは失礼します!!」

 そして振り向く様子を一切見せずに、バタンと大きくドアを閉めて克哉の姿は
完全に消えていく。

「…一体、今のは何だったんだ…?」

 そして残された御堂は茫然となるしか、なかった。
 今のは本当に…佐伯克哉だったのだろうか?
 自分の記憶にある、眼鏡を掛けた佐伯克哉というのは…憎たらしいぐらいに
自信に充ち溢れて、ちょっとのことでは動じることなどなかった筈だ。
 なのに…今の別人のような態度と反応は、一体何だというのだろうか…?

「本当にあれは…佐伯克哉、だったのか…?」

 御堂は目覚めてから、疑問符が浮かぶようなことばかりが続いていて…
本当に混乱していた。
 一体、自分の周りで何が起こっているのかまったく判らない。
 さらに謎が増えてしまって…御堂はその場に膝をついてがっくりと
項垂れてしまった。

「…これが悪い夢なら、早く醒めてくれ…」

 今朝見ていた夢が現実だったら、それはそれで悪夢だが…何だか今の佐伯克哉の
反応を見ていると、本当にパラレルワールドだが、別の世界に自分一人だけが
放り込まれたような…そんな気分にさえなってくる。

(漫画や映画の世界であるまいし…現実にそんな事はないだろうが…)

 そう思いながら、軽く部屋の中を見回していく。
 …部屋の中は酷い有様だった。
 机は派手に倒れて、その上に置かれていた書類やファイルケース、電話や筆記用具の
類が散乱してとんでもないことになっている。
 片付けて元通りにするのは、結構時間が掛かりそうな感じだった。

(とりあえず藤田でも呼んで…机を起こすのを手伝って貰おう。全てはそれからだ…)

 そうして、御堂は身体を起こして…社内の状況が今の地震でどうなったのかを
内線を通して確認していき、とりあえず各所の復旧作業と…その指示に暫く時間を
取られることになってしまったのだった―

 とりあえずこのブログ運営して一年半。
 投降した記事数が、1000を超えました。
 毎日毎日、最初の頃は一話ずつ。途中からは一日一個分は
何かしら投稿しよう…と頑張ったら、この数まで達することが
出来ました。
読んで下さっている方々、どうもありがとうございますv

 後、色々と考える事があったので…一口メモみたいなページを
本日、リンクから外しました。
 私自身が今、考えたり悩んだり落ち込んだり立ち直ったりを繰り返していて
内容が暗いものを書きがちなので…それぐらいならいっそ
削除した方が良いだろう。
 それで言い訳めいた内容を書いたり何だりするより…スパっと消して
その分のエネルギーを創作に回した方が健全な気がしたので…
こうする事にしました。
 日記書いてウダウダしているよりも、それでオリジナルの一本でも書き上げて
どっかに投稿する方が生活の足しになる可能性があるだけマシな気がするし。

 とりあえず暇見て、作品掲載ページの説明文をつけることと…例のおまけのURL
配信作業やらせて頂きます。
 それでは、今夜はこの辺で失礼します~。
 
 4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】              

 佐伯克哉は、MGNの男性用のトイレの手洗い所の処で…
鏡に映る自分を眺めていきながら、切なく瞳を細めていった。
 今…鏡に映る自分は、紛れもなく…忌わしいもう一人の自分のものだった。
 一挙一足、言動…それらの全てを今…彼は生来持っているものではなく、
恐れを抱いているもう一人の自分のものに変えている。
 
―これから、この一世一代の舞台の佳境へと入っていくのだ…

 そう思うと彼は、身震いがした。
 御堂にこれからする事を見破られはしないか…その為には完全に
眼鏡を掛けた自分の方になり切るのが不可欠だった。

(…弱気になるな。今は…自信に充ち溢れて傲慢な方の…俺になり切るんだ)

 そうする事が、彼の望みを叶える為に必要だったから。
 だから自己暗示を掛けていくように…真っ直ぐ、鏡に映る自分の顔を
見つめていく。

「そう…オレは、やり遂げなければいけないんだ…」

 そういって鋭い表情を浮かべながら、昨晩の記憶を思い出していった。

 命の源である…大量の血が自分の身体から零れ落ちていく。
 目の前に血の海が広がっていく。
 その中心にこの身体が横たえられて…彼は虫の息になりながら…
心から、願っていった。
 
―やり直させて下さい

 彼が罪を犯した晩、一人の青年はそう祈った。

―このままじゃあまりに…可哀想過ぎます。救われなさ過ぎます…

 凄惨な現場に、青年の魂の叫びが木霊していく。
 けれど心の中でどれだけ思っても、決してその声が届くことはない。
 涙を流しながら…その手を汚してしまった存在を見つめる。

―こんな、の…理不尽だ…

 あいつに、あんな身勝手なことをされ続けて。
 この人が罪を犯してまで解放されたくなった気持ちが良く判る。
 誰だって、理不尽に自分の気持ちを抑え続けられてしまったら…
自分の意思を殺され続けてしまったら、その束縛から逃れる為には
死ぬもの狂いとなるだろう。
 同じことをされたら、自分だって…同じ罪を犯してしまったかも知れない。
 もう一人の自分が解き放たれた時…彼は、この人を凌辱した罪から逃れたくて
必死に目を逸らした。

―オレはこんな事、したくなかった! 望んでいなかった!

 その罪悪感から逃れたくて、彼は現実から結果的に逃げた。
 自らの殻の中に籠り、いつしか肉体の主導権は…眼鏡を掛けた自分の
ものと変わっていった。
 遠い意識で、何度もこの人が…踏み躙られている過程を知った。
 けれど、そんな事を平然とやってしまうもう一人の自分が怖かった。
 自分の中にこんな酷いことが出来る一面が潜んでいる事を決して認めたくなかった。
 
―けれど…血に汚れてしまっているこの人の姿を見た時、彼は心から悔いた

「ごめんなさい…」

 薄れゆく意識の中で、彼は…短い時間だけ、肉体の主導権を得て…
小さく謝罪の言葉を口にしていった。

―自分の罪から、目を逸らし続けて…ごめんなさい…

 その声は絶え絶えで、本当にか細いものだった。
 口元から血を滴らせながら、佐伯克哉はそれでも謝罪する。
 最後の瞬間はもう間近まで迫って来ていた。

―貴方を、殺人者にしてしまって…ごめん、なさい…

 自分とさえ出会わなければ…輝ける未来が約束されている人だった。
 けれどどれだけの労力を重ねて来た功績だろうと、「殺人」という咎を
犯してしまえば…瞬く間に夢幻のごとく、全ての栄光は消えていく。
 こっちが今さら、謝った処で…この人の罪は消えない。
 どうしたら…この人を救えるんだろう。オレ達と出会った事で変わってしまった
未来を…覆せるんだろう、と心から祈った。

―克哉はポロポロと泣きながら、悲痛な嗚咽を漏らしていく

「ど、うか…この、人を…」

 内側から見てて、十分に…もう一人の自分が犯した罪は知っている。
 この結果は因果応報。
 起こるべくして起こったこと。
 どんな出来事にも原因となる因子があり、それが積み重なることによって
大きな事件は起こっていく。
 人にはそれぞれ…別の意思があり、別の考えを持っている。
 誰かにその誇りを、矜持を…信念を踏み躙られたのなら、怒る権利はあるのだ。
 この人は…犯された挙句に、それを盾に脅迫されて…強引な肉体関係を
強いられて来た。
 だから…この人は、悪くない。確かに自分だって腹を立てていた。
 最初の頃は酷い対応をされて傷ついたし…何て冷たい人だって思ったけれど…。

―けど、それで人生が終わってしまうのは…きっと行き過ぎだ…

 どうして今、自分が表に出ているのかは判らない…
 けれど刺された瞬間から…例の眼鏡を掛けているにも関わらず…久しぶりに
彼は解放された。
 命の火が、もう消えようとしている。
 死にたくなかった…いや、もうせめて助からないのなら…この身体が動くならば
どうにかして…この人の身体に残る様々な痕跡を拭いとりたかった。

―助けて、下さい…

 彼はそれを、自分に対してではなく…倒れている青年に向かって告げた

―どうか、この人を…助けて下さい…

 自分を刺した人間に向かって、彼は心からそう祈っていく。
 それはあまりに切なく、悲痛な願い。
 散々逃げ続けて、もう一人の自分の所業から目を逸らしていた青年は
人生の最後にようやく…その罪を見据えていった。

―どうか、オレに贖う機会を与えて下さい…

 こんな自分を殺して、全てを失ってしまわないように…どうか、と願った
瞬間…視界に、黄金の豊かな髪が視界に入っていった。

―大丈夫、ですか…?

 歌うように男が…声を掛けてくる。
 そして次の瞬間…焼けつくようだった腹部の痛みが…いきなり
スっと軽くなっていった。

―そして彼は、謎起き男性に…寸前で救われた。
 その後に、彼とかわした契約とその詳細、そしてこちらが支払わなければ
ならない代価を思い出した時…ふと、苦しげに眉をひそめていった。

「…この先の事は、今は考えないでおこう…。今はともかく…演じるんだ…」

 そうして、眼鏡を押し上げる仕草をして…深呼吸をしていく。
 鏡の前には、自分の記憶にある通りの…自信に充ち溢れた傲慢な笑顔を
湛えた男が立っていた。

「…さて、行くか…」

 そして、掠れた低い声音で呟きながら…彼は踵を返していく。
 そうしてゆっくりした足取りで、御堂の私室へと歩いて向かっていったのだった―
 4月24日からの新連載です。
 無印の眼鏡×御堂ルートのED.NO「因果応報」を前提にした話です。
 シリアスで、ちょっとサスペンス風味の強い話です。
 眼鏡×御堂ルート前提ですが、眼鏡なしの克哉も色々と出張ります。
 それでも良い、という方だけ付き合ってやって下さいませ。
 
 【咎人の夢 過去ログ】            

 ―御堂が佐伯克哉と対峙するのとほぼ同じ頃…Mr.Rは
真紅の天幕で覆われた部屋で、一人の青年の寝顔を眺めていた

「…お加減は如何ですか?」

 整ったその顔立ちは…瞼を閉じると少しだけ無防備な印象になる。
 切れ長の瞳が隠されるだけで日頃の彼とはまた、雰囲気が変わって見えた。
 キングサイズのベッドの上に…上質のシーツに覆われたその寝具の中心に
一人の青年が静かに眠っていた。
 確認するように…Mr.Rはその頬をそっと撫ぜていく。
 けれど相手の身体は微動だにしない。

「…やはり、これぐらいの刺激では…貴方は目覚めませんね。これ程までに
長い眠りにつかなければいけない程…貴方の負った傷は深かったんですね…」

 Rの持っている力で、傷はとっくの昔に塞がっていた。
 けれど…この青年は未だに目覚めない。
 身体の傷はすでに癒えている。
 彼は自分にとって、実に得難い素材だから。
 数多もの運命を背負い、多種多様な未来を作りあげる可能性のある
存在だからこそ…男はこの青年を何よりも大切に思っている。

―まだ、この青年は完成されていないから。だから…自分の望むものに
なる可能性がある内は、男は出来る限りの助力をするつもりだった

 そっと相手の髪を梳いて、愛しげに微笑む。
 けれどどれだけ大切に扱っても…相手の意識が目覚めないままでは
深い献身も何の意味を成さなかった。

(あの時…貴方の心は一旦死んでしまわれたのですね…)

 彼の心は、腹部を刺されたあの晩に…一旦死んでしまった。
 あの傷の深さから、きっともう自分は助からないと観念したのだろう。
 その潔さの故に…彼は、こうしてRが傷を塞いだ後も…「自分はすでに
死んでいる」と思い込んでしまっている為に目覚める事がなかった。
 
「普通の眠りならば…丸一日も経てば目覚めるでしょうがね…。
貴方が目覚める為には…どれ程の月日を重ねれば宜しいんでしょうかね…」

 そうして、彼は慈しむようにその頬を撫ぜ続ける。
 けれど…幸いなのは、彼は元々…二つの魂を持つ存在だった。
 だから片方の心が死んでしまっても、もう片方が生きていれば…
そちら側の生命力に促されて、再生する可能性を持っていた。

「ねえ…佐伯克哉さん。貴方は…まだ、こうして生きているし…とても
この身体も温かいままなのですよ…。傷は、まだ激しい運動が出来るように
なるにはもう少し掛かりますが、こうして閉じているのに…いつまでそうやって
眠り続けているつもりですか…?」

 この男にしては珍しい、どこか優しい声音で問いかけていく。
 けれど…限りなく「死」に近い眠りに堕ちてしまった青年は…
それでも目覚めない。
 いつになれば…かつてのように、欲望に煌めくあの美しい瞳を
眺められるのだろうか…と、男はつくづく残念に思った。
 一週間か、一か月か、半年か一年か…一度、自分がすでに
死んでしまったと…心だけが死んでしまった人間が目覚めるまで
要する時間は、まったく読めない。

 後はどれだけ…彼にとって、生きる気力を与えるものが存在
しているかの問題になる。
 大切なもの、失いたくない人間…そういったものを持ち、自分が生きなければと
思っている人間は強い。
 逆にそういった執着するものがなく…罪の意識に囚われて、自分など
生きている価値がないと思っている人間は…いつまで経っても目覚めることがない。
 死はどんな生物にも等しく訪れる絶対的な恐怖であると同時に…苦痛から
解き放つ最大の安らぎでもあり、解放でもあるからだ。
 本当に追い詰められた人間が自殺に走る最大の理由もそこにある。

―死ぬ事で苦痛から逃れられる側面があるからだ

 だから彼は眠る。
 一時の仮初の「死」に浸ることで…きっと魂を癒しているのかも知れない。

「ねえ…まだ、貴方が亡くなるには早いですよ…。こんなにも若く、輝いている時に…
これほどまでに美しい存在である貴方が…いつまでも、仮初の死という殻に籠って
年をとるなど…勿体ないでしょう…? ですから、一日も早く目覚めて下さいませ…。
貴方という素材が、どのような進化を経て…完成していくのか、私は是非とも…
見守りたいですからね…」

 そうして男は真摯に、青年の顔を覗き込んで…妖しく微笑んでいく。

―ですから、一日も早く蘇って下さい…そう、伝説に存在する…まさに
不死鳥のごとくにね…

 そう呟きながら、男は…青年の唇をゆっくりと指先で辿っていく。
 それでも…その形の良い唇から、微かに温かい吐息が零れているのを
指先で感じ取っていくと…微笑を浮かべながら、Mr.Rはその場から
静かに立ち去っていった―
※この記事は投稿したのは四日の夜ですが、連載作品を
四日分でアップするので、こちらは昨日の日付で掲載させて頂きます。


 こんにちは香坂です。皆様、スパコミお疲れ様でした。
 そしてこちらのスペースを探し当てて、買いに来て下さった方…
どうもありがとうございます。
 本当に今回はこっそり参加だったので、さぞ見つけにくかっただろうと
思います。それでも本を手に取って下さった方、感謝致します。

 今回、スランプが酷くて…別ジャンルの原稿と、今回の新刊のネタが
やっと浮かんだのが5月入ってからで。
 その時点で、原稿二本分…どっち途中まで書いていたけど、それ以前に
書いた文が何かしっくり来ない状況で…。

 いいや、一から作り直そう!

 と決意して1日に別ジャンルのゲスト原稿一本分を完成させて相手に送信して。
 2日は朝五時から起床して夜中三時半まで作業して…本文と表紙を
仕上げて、製本まで仕上げて持って行きました。
 …おかげで頭がピヨって携帯電話すら忘れる始末さ…ふっ…(遠い目)
 ほんっきで寝不足だったので、目付き悪かったりハイになって異様なテンションに
なっておりました。
 誰も来なかったらどうしよう…って本気で怖かったんですが、何人かは探し当てて
くれた方がいたみたいでほっとしました。
 本気で今回のイベントでは影が薄くて申し訳ございません(汗)

 けど…久しぶりに一日で本を仕上げたり、前ジャンルの方のスペースに座って
古い馴染みの人達と色々話したら…少し初心に戻れました。
 ちょっと自分の原点を思い出して、あぁ…昔はこういう気持ちで本気で同人を
やっておったんやな~と。
 そういうのを思い出せた分だけ、勇気を出して参加して良かったと
思っております。
 そして昨日は、こちらの会話に色々と付き合ってくれた方々…ありがとうございました!

 …そして、お礼記事とか連載とかの掲載遅れてすみません。
 何か1日&2日、ムチャしたせいで…その反動で四日は殆ど寝ているか
ボーとしているかで一日終わっておりました。
 良い子はこんな無茶苦茶な事はやっちゃ駄目だよ!(やった人間が言うな!)
 まあ…私の場合、それでもやり遂げたいからやったんですがね・・・・

 香坂の場合、同人始めた時から…二つだけ決めている事があって。

・自分がやっているジャンルのオンリーイベントは、東京&大阪の行ける範囲で
開催されている場合は出来るだけ参加する(運悪く落選する時もありますが…)

・自分がイベント参加する時は、薄い無料配布一冊だろうと新刊を用意する

 一応…この二つだけは、同人活動十年やってて…ほぼ守り続けていた事なので。
 ちょっと諸事情で弱気になってて、本気で本を出すか今回悩んでしまったんですよ。
 けど…十年守り続けていた事を、これで崩すの嫌やな~と…その意地は守りたくて
その一心で今回の本は出したので…例え何人かであったとしても、手に取って
下さる方がいて嬉しかったです。

 四日分の執筆はこれからになります。
 日付ギリギリになるか、もしくは超えるかも知れませんがこれから書いて来ます。
 スパコミに参加されたサークル様、一般参加の方…お疲れ様でした。
 本日はこれにて失礼致します(ペコリ)

 
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プロフィール
HN:
香坂
性別:
女性
職業:
派遣社員
趣味:
小説書く事。マッサージ。ゲームを遊ぶ事
自己紹介:
 鬼畜眼鏡にハマり込みました。
 当面は、一日一話ぐらいのペースで
小説を書いていく予定。
 とりあえず読んでくれる人がいるのを
励みに頑張っていきますので宜しくです。
一応2月1日生まれのみずがめ座のB型。相性の判断辺りにでもどうぞv(待てぃ)

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 …一言報告して貰えると凄く嬉しいです。
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